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▼ 死にたがりの天使 ── NL ▼/15


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■: 金貸し屋の悪魔。 [×]
2017-06-24 02:00:04 




生きるために死ぬ男、
死ぬために生きる少女。

かつても今もまるで正反対なふたりが恋仲へ堕ちることなど、本来なかった筈だった。

>>1【ストーリー】
>>2【キャラクター】
>>3【最後に】

──暫しお静かに。






1: 金貸し屋の悪魔。 [×]
2017-06-24 02:19:08



【ストーリー】

傲慢で冷酷、異常なまでに金にがめつい。
そんな悪徳な金貸し屋の男は、不穏な金が要り用な裏世界において常に需要の高い存在ではあったが、彼が実際に住んでいる街の近隣住民からは「悪魔」と忌み嫌われていた。
捻くれた性格も最悪だし、違法の金貸しがもしも貴族にバレたなら、街全体が罰せられるからだ。しかし裏世界に不可欠な存在であるが故に、迂闊に通報も出来ないから更にたちが悪かった。
そんな嫌われ者の彼はある日、墓地で雨に打たれながら気を失っているひとりの少女に巡り会う。

彼女はかつて、彼とは正反対に街の住民皆から愛されている、街でいちばん人気の高い料亭の看板娘だった。
しかし彼女の料亭は、繁盛が過ぎて小さな資産家にまで昇りつめたため、貧民から富豪が出ることを恐れる貴族の目に留まって糾弾され、濡れ衣を着せられる。
食堂は差し押さえられ、汗水垂らして稼いだ資産は没収され、少女と、唯一の家族である父親は運命が転落し、屋根の下で眠ることすら叶わない境遇に。
助ければ同罪として、街の人々は見て見ぬふりだ。当時の貴族の暴君ぶりは、だれにも彼らを救わせなかった。
理不尽な仕打ちに怒りを滾らせた少女の父親は、濡れ衣を着せた貴族を暗殺しようとしたが失敗し、挙句に処刑されてしまう。

家も、店も、財産も、ただひとりの家族だった父親も、全てを失った。
絶望した少女は、父親の墓のそばでそのまま死のうとする。
ところがどんな腹積もりか、街中で嫌われているあの金貸し屋が彼女を拾い、自宅で手厚く看病したのだ。

「死にたかったのに。何故助けたりしたの?」
「良い見た目をしているから、俺が引き取って客を取らせたら金になるかと考えただけだ。──だがまあ、望まないことをしたのは悪かった。どことなり消えて、好きなように死んだら良いさ。  ただし、それにはひとつだけ条件がある」

雨に打たれて高熱を発したお前のために、高い薬を買ったんだ。
その薬代だけは、くたばって墓場入りする前に汗水流して働いて、きっちり返してもらおうか。

悪名高い金貸し屋に借りを作りたくなかった少女は、自由の身となって死ぬために、金貸し屋に借りた薬代を稼ぐことを約束し、結果金貸し屋の助手となる。
金貸し屋は最近さらに金が欲しいと言い出して、便利屋稼業にも手を出したのだ。

ところが、仕事を共にするうちに少女は少しずつ知ることになる。
金貸し屋が異常に金にがめついのは、裏世界の人間たちと関わる生業で暮らしているのは、目的があってのことだったと。
──軍資金を蓄えつつある金貸し屋は、最終的には刺し違えになる覚悟で、悪政を敷く街の貴族に謀反を起こすつもりだったのだ。

虐げられることなく自由に生きられる社会を実現させるために、無駄死にに近い無謀な企みを抱きながら悪事に手を染める男。
運命に翻弄されて絶望し、最後の「死ぬ自由」を得るために日々生きることになる絶望の少女。
ふたりはどこか、アンバランスだった。

──だから、惹かれあったのかもしれない。


◆悪名高い金貸し屋と、人生が転落して希死願望を抱いた元料亭店員の少女が、便利屋として街を駆け巡って働きながら、やがて悪辣な貴族に対し謀反を企てる復讐譚。

……の皮を被った、成程看板娘だっただけあって随所で魅力的な少女に次第にぞっこんになる小悪党と、何だかんだ見せる優しさや、街の青年たちにはない知性に惹かれ、彼にわりと大きく心を開くようになる少女の、甘いふたりきりの日々の物語。




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