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  傷ましの愛に灯を  /12


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■: Writer [×]
2017-02-03 23:59:58 






  おお、プロサピーナよ。
  あなたが驚いてディスの車から
  落とした花が今欲しい。

   ――ウィリアム・シェイクスピア『 冬物語 』





  傷ましの愛に灯を



目次

 >1頁 前文
 >2頁 登場人物
 >3頁 序章








1: Writer [×]
2017-02-04 00:10:04



前文

 舞台は19世紀後半、ヴィクトリア朝英国。すでに産業革命を終え、議会制民主主義を確立したこの国は、政治、経済、軍事、文化など、ありとあらゆる面において「大英帝国」の名に恥じぬ世界の盟主国となり、華々しい黄金時代を築いていた。しかしその栄華の傍らに、身分格差の深刻化が潜んでいたのもまた、事実である。


「 お花を買ってくださいな 」

 少女は花を売り、その日パンを買うための僅かな賃金を得る。薄暗い裏路地の端に佇んで、道行く男のコートの裾を引き、籠から取り出した一輪の花をその口元に寄せて__最後には男と肩を並べ、路の奥へと消えてゆく。愛を知らぬ少女は今日もまた、生きるために春を鬻ぐ。
 或る雨の日。頻りに降り注ぐ雨水の冷たさに身を震わせながら、少女がまた花を売っていたとき。ひとりの男が少女の前で足を止め、静かに声をかけた。少女は何時もと同じよう、こうもり傘の向こうから差し伸べられた大きな手に、躊躇うことなく自身のそれをそっと重ね、導かれるままに男の家へ。しかし男は少女に夕食と服を与え、痩せ細った彼女の身体を寝台に横たえると、その肌に触れることなく、そっと部屋を後にしたのだ。少女は男の行動を不思議に思いながらも、重たい睡魔に身を委ね、瞼を閉じて深い眠りの底へと落ちていった。


  ―――かくして若き娼婦と謎多き紳士、ふたりの長い物語が幕を開けたのである―――




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