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愛に推理は必要ない 《非募》/139


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自分のトピックを作る
101: 雪彦・H・芳賀 [×]
2017-02-06 20:25:10


その手紙…たしかクレア・ボスロイドの書いた手紙だったか?
( ホームズが取り出した古い手紙は内ポケットに保管されていたせいか少々クセがついていたが、幸運な事に血が付着することはなかったようだ。中に何が書いてあるのかは分からないが彼の口振りからしておそらく頑なに真相を話すことを拒む犯人にとって良い薬になるのだろう。そこでまだ一連の事件が収束していない事にあらためてはたと気がついて。犯人の逮捕で一先ず連続殺人の悪夢自体は既に終幕し一区切りついていたので危うく忘れるところだった。そしてホームズは最後まで見届けないと落ち着かないはずだ。おそらく担当してくれたERの医師からも説明があったはずだが念には念を、と思い腕組みをしてじろりと相手を見やり「…言っておくが君は最短でもこの病院に二泊三日コースだぞ。特に手術前はベッドの上で絶対安静だ。君は肩を骨折してるんだ…包帯である程度固定してあるとはいえ今無茶に動けば骨のかけらが転位しかねない。僕は君の肩がトゲトゲになるのは嫌だぞ。無理しないと僕と約束してくれるよな?」一応尋ねる形ではあるもののその問いかけは相手にイエスとしか言わせないぞというやや高圧的な態度で。そして右手を顎に添え少し視線を逸らして彼のやり遂げたい仕事が今後いつ実現するか考えを巡らせると「幸いそんなに腫れてないから明日には手術できるんじゃないかな。それまでの辛抱だ。犯人は逃げやしないさ。完全黙秘してるなら取り調べも長引きそうだし」と自分の見解を述べ。音楽が恋しいという彼の言葉にふ、と表情を緩めると柔らかに微笑みかけて。
「ふむ、久しぶりに君のピアノが聴けるのか。それはとても楽しみだね。…じゃあ僕は今夜は家に帰るよ。明日非常勤の仕事が終わったら見舞いに来る。何か必要なものとか欲しいものはあるかい? 」)

(/ああったしかにそうですよね!名門校は男女別学な気が…!!じゃあ旧友も男でいいですかね笑 ホームズくんはいいとこの学校通ってそうですし。
はい、かしこまりましたー!)

102: アルバート・ペンバートン [×]
2017-02-06 23:00:04



( 引き寄せたコートを元の場所に戻すには少し遠い位置にコートスタンドがある為に、掛けることを諦めてベッドの上にぽいと放り投げる。「その通り。まぁ気になる内容は尋問室で披露するとしよう。」彼に向けてニコリと笑いかけながら意気揚々と語る。ミス・ボスロイドの手紙の内容は実際読んでみるととても純粋で一途な愛が語られていた。それは犯人であるショーン・ノリントンという男と彼女の関係が円満であり素晴らしいものであったことを物語っていた。だからこそこの手紙は犯人を捕まえる際に使おうと思っていたのだったが。然しこの手紙に新たな使命が与えられたのは明確だ。彼にじろりとした瞳で見られ、高圧的且つ絶対的な態度でそう告げられると思わずたじろいだ。「ぅ、…まぁ医師である君の言う通り安静にしておこう。絶対とは言いきれな…あ、いや、何でもない。」言いかけた途中で彼の目が鋭く光ったように感じるとすぐ様言い直してははは、と誤魔化し笑い。「ふむ。その点について心配はしていないんだが…アッシュフォード夫人を殺害しようとした時の犯人の行動に幾つか疑問を抱いた。私はその事と残りの幾つかの犯行の手口についての事実を知りたいと思っている。ああ、もし興味があるのなら君も来てくれて構わないぞワトソンくん。」暫し眉根を寄せてずっと気になっていた事を口にすると何処かをじっと見据え、右手の指の腹で顎の辺りを撫でた。一人目の被害者から四人目の被害者までは___不謹慎ではあるが___素晴らしいまでの完全犯罪が成し遂げられていた。だが何故か今回は違い、誰が見ても素人だと分かるくらい無防備で粗雑な犯行だった。これが何を意味するのか。もしかしたら共犯者、或いは裏で操っていた人物が居たのかもしれないと考えを巡らせた。「安心したまえ、もう朝の3時にピアノは弾かない。4時か5時にしておくよ。」久しぶりだ、と頬を緩ませる彼を見て冗談っぽくそう言い、何時ぞやか 突然のインスピレーションに突き動かされ午前の3時過ぎだったのにも関わらず盛大にピアノを弾き始め、飛び起きたワトソンにこっぴどく叱られたのを思い出して一人クス、と笑みを漏らした。「ん、もう帰るのか。足元に気をつけて、雪道は君の足では歩くのが少々辛いだろう?…わかった。そうだな、レコベリー通りにあるマリオン・アンド・ウイリアムズのフィッシュアンドチップスが食べたい。あそこのサパーは隠し味に林檎のすり身とスイス産のビールを使ってるんだ。」そう告げると口元を緩ませて )


( / うわあこちらの失念でした、申し訳ないです汗汗
わかりました!では折角なので代わりに先生の方を女性にしますか?
はい! )



103: 雪彦・H・芳賀 [×]
2017-02-07 14:57:58


そうか。まだこの一連の事件は終っていないのだな。無論僕も君にお供する事にするよ。
(どうやらホームズにはこの事件に関して引っかかる所が未だに多くあるようだ。ならば自分はそれを最後まで側で見届けるまでだ。
「それあんまり変わらないじゃないか」彼の冗談にじろ、と睨んでみせるがすぐに笑いだしてしまい。レコベリー通りのフィッシュ&チップスの店を記憶の中から引っ張り出してきて、“分かった。買ってくるよ”と口を開きかけたとき、彼に手術が控えていることを思い出して。「あー…大変申し上げにくいんだが麻酔を使うから手術の8時間前からは絶食だ…。だから手術が終わってからだな。うん、お楽しみが増えたじゃないか」軽く咳払いすると気まずそうにそう言い。おそらく彼はもどかしい思いをしていることだろう。事件は未だ解決していないのだからなおの事だ。
「うんありがとう。さて、じゃあもう行くよ。おやすみ、アルバート。……愛してるよ」足をさすると意を決して立ち上がり挨拶を述べたのち、一瞬の間があってから普段は口が裂けても言わないような言葉をそっと呟いて。気丈に振舞ってはいるもののどうやら彼の怪我は自分を弱気にさせるには充分過ぎたらしい。

その翌日は何かと散々だった。あの忌々しい弾丸がホームズの心臓を貫くぞっとするような悪夢をみて、深夜に自分の声で目が覚めた。それからは浅い眠りと覚醒の繰り返しが続き、ようやく深い眠りに入りかけたところで耳障りなアラーム音に叩き起こされて。仕事中も睡魔と疲労との戦いは続き、余程疲れた雰囲気を醸し出していたのか看護師のみならず患者にまでどうしたんですかと声をかけられてしまった。
午後に仕事が終わって見舞いに向かうと病院の廊下で彼の担当の医師とばったり会った。経過は順調らしい。一先ずほっとして彼の元へ向かう。
「やあ。どんな感じだい。もうこれから手術なんだって? 間に合ってよかったよ」と笑ってそう声をかけて。手に持っていた紙袋を彼に見えるように持ち上げると「退院した時のために着替えを持ってきた。シャツとコートは僕のお下がりで悪いけど、血塗れのを着て職質されるよりはましだろ」そう言ってベッドのそばの小さな机の上に置き。)


(/いえいえそんなとんでもないです! こちらこそ全く気がつかず…汗
そうですね、先生は女性にしましょうか。悪女の描写に腕がなりますね笑)

104: アルバート・ペンバートン [×]
2017-02-07 18:41:24



( 彼の言葉に頷く。自分にとって心の拠り所でもある彼が傍に居てくれることはいつだって非常に心強かった。今回もそうだ。必ず犯人から情報を得る自信が何処からか湧いてくるのを感じる。彼が笑い出した時に釣られてこちらも笑みを漏らした。然し直後に彼の口から出てきた言葉にハッとさせられる。そういえばそうだ、と改めて気がつけば苦笑いを浮かべて。「私の楽しみはいつでも何かに邪魔されるな」なんて皮肉って言ってみるものの、退院したあかつきにはもれなく犯人への尋問とフィッシュアンドチップスとワトソンの手料理が待っていると思い直すことにして。そろそろ、と椅子から立ち上がって別れの言葉を口にした彼を見た。「おやすみユキヒコ。私も愛して…え、君、今なんて?」愛している、と言いかけた途中で彼が自分に向けて何を言ったのか気がつくと即座に耳を疑い動揺しつつも問いかけた。彼は確かに愛していると言った、と、思う。そんな言葉は驚きと喜びで心を満たすのに1秒もかからなかった。彼の顔を改めて見上げて満面の笑みを浮かべた。
彼が帰った後の病室はなんだか物寂しく、怪我を負っていることもあってか心細く感じた。暫く事件の事やワトソンの事について考え込んでいると気がつけば時刻は既に午前2時を回っていた。もう寝よう。そう思ってゴロンと右肩を下に寝返りを打てば静かに目を閉じた。それでも瞼の裏に浮かぶのは犯行の手口の事だ。頭の中で犯人がどう動いたのか、どう計画を立てたのか、どうやって途中まで完全犯罪を成し遂げていたのかを推測していく。然し段々思考は停止していき、気がつけば深い眠りに落ちていったのだった。 目が覚めたのは時計の短針が10時を指した頃だった。包帯のせいで少々動かしづらくなった左肩を庇いながら身を起こすと看護師が気分はどうか、と尋ねてきた。"まぁまぁだ。"と答えると看護師はニッコリと笑い、手術の時間まであともう少しありますから、とゆっくりと過ごすように指示を出した。どうにもこの時間が暇なもので、コートのポケットの中に入れていた本を取り出す。表紙の端には自身の血が少し付着してしまっていて、真ん中には汚れたゴールドで"What is freedom?"といったタイトルが書かれている。くすんだマホガニー色のその本は見るからに何年も前から繰り返し読まれているのが分かるくらいにボロボロになっていた。実はこの本の作者であるクリスチアン・アンダーソンの密かなファンである自分は彼の著書を沢山所有していた。その中でも自由とは何か、というフレーズを題材としたこの本は非常に興味深く何度読んでも考えさせられる。紙と紙との間に挟んでいた栞を手に取り初めのページに挟み込んで読みかけのページに目を通した。そして暫く没頭して読み続けていると足音が聴こえてくる。堅い革靴の底の音と規則正しくあるが特徴のあるその聞き慣れた足音に「ワトソンか。」と呟いた。「ああ、君が来てくれて大変心強いよワトソンくん。」本から視線を彼に向け、ニコリと笑いかけてそういった。「ありがとう。いやいや、君のお陰で私は服を買わなくて済むからね。助かるよ。」冗談とも本気とも取れないようなニュアンスでそう言うと彼の顔色が多少悪い事に気がつく。「ところで何か悪いことでもあったのか?随分と顔色が悪いみたいだ。ちゃんと昨日は睡眠を取ったのか?」相手の顔をのぞき込みながらいつもは自分自身が相手に言われるような言葉を口にして )


( / あ、そうだったんですか!いやぁそう言っていただけて助かります笑
了解しました!本当ですね笑 どれだけ悪い女性になるのかワクワクしてます笑 )



105: 雪彦・H・芳賀 [×]
2017-02-07 20:45:46


(どうやら彼は読書をしていたようだ。体調もそんなに悪くはないようで安心した。
彼の本気とも冗談とも取れる言葉に「そうか、それならよかった」と、うわの空で謎の納得を示す返事をしたものの内心ではんん?とやや違和感を覚えて首を捻り。単なる思い過ごしにすぎないとは思う(むしろそうであってほしい)が、ホームズと暮らしていると時々彼の思い通りに誘導されているような気がする事がある。
ホームズの的確かつ核心をついた観察結果に目を丸くして一瞬固まり、「ああ…うん」と歯切れの悪い曖昧な返事をすると側にあった丸椅子を引き寄せて座りしょんぼりと肩を落として。「しまったな、君にはバレないようにするつもりだったんだ。君に隠し事はできないね。…ま、ホームズを欺けたら表彰ものだけど」眼鏡を外して眉間を押さえ、もう一度眼鏡をかけて彼を見つめると少し落ち込んだ様子で微笑んで。「実を言うとあんまり眠れていない。それも些細な理由からなんだけど、夢を見たんだ。その夢で君は心臓を撃ち抜かれてしまうんだ…僕に出来る事は何一つなくて、僕は腕の中で体温を失っていく君を……」そこで言葉がつかえてしまった。いつの間にかひどく沈んだ声音と表情になってしまっていたことに気がつくとぱっと顔をあげて虚勢をはるように普段の自分を演じ。「すまない。こんな話、縁起でもないよな。君はこうして生きているんだから何も落ち込む必要は無いのにね。少しだけ感傷的になってしまっているみたいだ」言葉の裏に自嘲を隠して力なく微笑み。
「昨夜も僕、変じゃなかったかい? その…あれは気が動転していたからつい口が滑ったんだよ。早急に忘れるように」昨夜の彼の表情を思い出して僅かに頬を赤らめ、それを悟られまいとして顔を背けて片手の拳で咳払いをするように口を覆い。あの時の彼の表情が忘れられないでいた。彼の驚きと喜びの混じった素直な笑顔にどきりとしてしまう。うっかりさらっと言ってしまったが、あの笑顔で “言ってしまった!!” と自覚し照れてしまったのは確かで。)

(/ はい、楽しみですね〜笑 ではまた何かありましたらお呼びくださいませ!)

106: アルバート・ペンバートン [×]
2017-02-08 13:02:33



( 彼は曖昧な返事で言葉を濁す。肩を落としてポツリポツリと弱音のように話す言葉に耳を傾ける。「ふむ、どうやら事件の反動があとになってきたようだな。」話を聞く限り、と簡単に分析してみる。酷く落ち込んでいる様子の彼を見てこれは相当だな、なんて考える。そして手を伸ばすと彼の手を手に取り、両手で包み込んだ。「どうだ?私の手は冷たいか?君が現実を見ているなら私の手は暖かいはずだよ。」そう言って不安そうな相手に慰めるかのように優しく微笑みかけた。「だいぶ疲れてるな。少し休んだらどうだ?私の胸を貸してやってもいいぞ。」心配しつつも冗談を交えて笑った。半分本気で半分冗談のつもりだ。ふふん、と自分が怪我をしている側であるのにも関わらず上から目線である。彼がほんの少し頬を赤くさせて忘れろ、と言うのを聞くとわざとっぽく腕組みをして考える素振りをしてみせる。「んん?昨夜か。えーっと何があったかな?ふむ、思い出せないなあ。」どこかニヤついた表情を浮かべて相手の顔を覗き込んだ。自分で言っておいて照れている彼が可愛らしくてついついからかいたくなったのだ。「あーなんだか思い出せそうな気がするなあ。あから始まってよで終わる言葉だったような」そう言うとたまらずニヤッと笑う。愛してるという言葉はめったに聞けたものではないからだ。「ま、そう照れるなワトソンくん。そう可愛らしい態度を取られるとこちらとしてもそれ相応の対処を取らせてもらうことになる。」最後に一言付け足すとゴホン、と咳払いをする。赤らめた頬でこちらを見つめられるとどうにもキスをしたくなるのを頑張って抑えなければならないのが辛く )

( / かしこまりました!では背後は一旦失礼致しますね! )



107: 雪彦・H・芳賀 [×]
2017-02-08 18:40:11



( 彼の手が自分の片手を引き寄せ、両の手で包みこむ。穏やかな温もりにはっとして彼を見つめて。「うん…温かいな、君は。」両目を細めて安堵した微笑みをうかべて、噛みしめるようにぽつりとそう言って。その温もりで初めて本当の意味で彼が生きている事をはっきりと確信できたような気がした。彼がどこか得意げに冗談ぽく言うのでどうにも可笑しく堪えきれずにふふ、と笑みを漏らす。こうしていると鉛のようだった心が随分軽くなるようだ。「はは、怪我人の君に看病されては世話がないね。君が良くなってくれれば僕も平気さ。ついでにこれからはあんまり危険な事をしないようにしてくれると僕の寿命が延びると思うんだけど」お返しにとばかりに冗談めかしてそう言って。しかしおそらく自分がこんな事を言ったところでホームズはこれからもそれが正しいと思えば無茶な判断も強行するだろう。彼がそういう意味で真っ直ぐな人物なのは分かっていたつもりだったが、どうやら考えが甘かったらしい事を今回の一件で知った。自分は彼の側に居てやるくらいしか出来ないのだろうか。

彼がいつになく生き生きと追い討ちをかけてくるので益々照れくさくなる。“アルバートめ、はっきり聞いてしっかり覚えてる癖に!”と心の中でぼやいてまだ微かに熱の残る表情で恨めしそうにじろっと睨み。「ああもう! 違うんだ! 本当にアレはうっかり口が滑っただけなんだって。いや、もちろん本当はそう思ってないとか嘘を言ったってわけじゃないんだが…」慌ててどうにか誤魔化そうとするが動揺しすぎて墓穴を掘る一方なのでそこで口を噤んだ。片手で目頭を押さえてはぁ…と力なくため息をつく。彼の付け足した一言に顔を上げると「相応の対処? なんだろう。“僕はヘタレです”って書かれたTシャツを着せられるとか? ははは…もういっそ楽しみだよ」遠い目をして力なく呟いて。

それから暫くして1人の看護師が車椅子を押しながらやってきた。彼女は『これから手術の準備にとりかかりますからね〜』と告げると手際よくホームズのバイタルチェックを始めて。手術は大体2時間前後らしい。その間にレコベリー通りに行ってこようかな、などと考えながら準備の様子を眺め。「いってらっしゃい」と、微笑んで彼を見送り)

(/ はーい! それでは引き続きよろしくお願いいたします!)

108: アルバート・ペンバートン [×]
2017-02-08 21:07:27



( ホッとした様子の表情を浮かべた彼を見て微笑んだ。ようやく心の底から笑ってくれたような気がしてこちらも心に安心感が広がっていくのを感じる。笑みを漏らして冗談っぽくそう言った彼に釣られて笑い。「残念ながらそれは保証出来ないな。私は探偵として犯人を突き止め、犯行を阻止するという義務がある。ま、でも確かに君の言う通りかもしれない。暫くは危険とは無縁の生活を送るとするよ。…入院なんて無駄な時間をこれ以上過ごしたくないからね。」彼にはそう返した。彼がどんな気持ちでああ言ったのかは分かっているつもりだ。然し危険を冒さない約束はやはり出来なかった。それは自分自身の探偵としての性格と彼なら分かってくれる、というほんの少しの甘えから出てきた答えで。じろっと睨んでくる彼だったが少し照れた様子が垣間見える為か全く迫力を感じられない。「ぷっ…君は動揺すると自分から墓穴を掘っていくな。聞いてて飽きないよ。」笑いを含んだ声色でまたからかうように言う。全く可愛らしくてたまらない。慌てる様子もしっかりとこの目に焼きつけておこうと密かに思うのだ。「はははっ、そうじゃないよ。私が考えていたのは…あ、でもそれも面白そうだ。」途中まで言いかけて彼のいうヘタレTシャツの案に興味を示して。特注で作らせて本当に着せてみようかな、なんて悪戯心が密かに湧き出してくる。そんな事を考えていると自然と口元に笑みを浮かべてしまうのだ。
自分に向けて微笑みかけてくれる彼に安心する。「ああ、行ってくるよ。」看護師の指示に従いながらこちらも彼に向けて笑みを返した。そろそろか、と思うもののやけに冷静だった。最後に彼の顔を一目見てそれから看護師に連れられるがままに手術室へと向かった。手術衣に着替え、手術室に入り台の上へと横になった。それから全身麻酔を打たれ、真上から自分を照らし出す明かりを最後に意識が途切れた。
気がつくと自分は再びベッドに横たわり真っ白な天井を見つめていた。時刻を見ると先ほど見た時より2時間弱は経っていた。肩に視線を移すとどうやら手術は成功したようだった。横には担当医が立っていて様子はどうですか、と尋ねてきた。「かなり良いですね。」と答えると担当医はニコリと微笑んで、それは良かったです、と返事をした。それから今度は自分が医師に尋ねた。「今日中には帰れますね?」すると担当医はゆっくりと頷き、約3時間お身体を回復させていただければすぐに、と返した。その言葉をきいて嬉しそうな表情を浮かべると、辺りをキョロキョロと見渡した。ユキヒコは何処だろうか、と )



109: 雪彦・H・芳賀 [×]
2017-02-08 23:33:50



( その日の午後は曇っていたが雪は降っておらず比較的過ごしやすい日だった。手術室へ向かうホームズを見送ってから1時間後、病院前の大通りをのんびり歩いている。なるべく悪い想像をしないようにしながら。彼を見送ってからしばらくは病院の廊下に設置されたベンチに腰掛けて、ぱたぱたと小走りで行き交う看護師や医師を眺めるでもなく眺めてみたり、偶然会った昔馴染みの医師と少しの間雑談をしたりして時間を潰していたが病院にいるとどうにも手術室の中の様子が気になってソワソワしてしまう。そういう訳で、思い切って外へ出かける事にしたのだ。ステッキが地面に触れて規則正しくコツコツと鳴る音、ロンドンの街並み、行き交う人々。それらに意識を集中していれば何も考えないで済む。大通りを30分程真っ直ぐ進むとレコベリー通りにぶつかる。小さな飲食店や雑貨屋が並ぶ小洒落た通りを道なりに進み記憶を総動員させようやくマリオン・アンド・ウイリアムズにたどり着くとフィッシュ&チップスを注文して。お金を払って品物の入った温かい紙袋を受け取ると足取りも軽く元来た道を戻り。

彼のいないがらんとした病室に戻ると思うとなんとなく気分が沈む。しかし病室の入り口で彼の担当医とすれ違い、おや?と思って二時間前に彼が横たわっていたベッドへ目をやると、ぱっと表情を明るくして。「アルバート」そう彼の名を呼んだ。どうやら手術は思っていたより早めに終わったらしい。
「お疲れ様。無事に終わったようで何よりだ。…ああそうそう、これなんだと思う? 気分が悪くなければ一緒に食べないか。ほっとしたら僕もお腹空いてきたよ」椅子に腰掛けながら店名の入ったまだ温かい紙袋を彼に見せ、微笑んで。
「ところでどれくらいで退院出来そうか聞いたか? 君、どうせ此処から直接拘置所に向かうつもりだろ。警部に連絡入れとこうと思って」出来れば家に帰って安静にしていて欲しいものだが彼の性格ではそんな穏やかな夕どきは望めないだろう。それに事件の完全な解明は彼にとって何よりの薬だ、と半ば諦念の如き心境で。)

110: アルバート・ペンバートン [×]
2017-02-09 15:13:33



( 担当医が病室を出ていくと入れ違いで彼が入ってきた。彼は自分の顔を見ると同時にパッと表情を明るくさせてこちらの名前を呼んだ。どうやら手に持っている紙袋から香るのは香ばしいフィッシュアンドチップスのようで。「ああ、ありがとう。最高の気分だよ。ん、勿論いただこう。」ニコリと笑いかけながらそう言うと紙袋を受け取ろうと手を伸ばして。まだ肩は動かしづらく、右手だけを動かす。「うーん、このM&Wのマークは懐かしい。久しく通っていなかったからね。」暫く出かけていなかった事と仕事とが重なってフィッシュアンドチップスを味わう機会が減っていたのを改めて思い出す。「その通りだ。あと3時間身体をゆっくりと休ませればすぐにでも帰れると聞いたよ。」彼の言葉に頷いてそう言うと言葉を続ける。「なら早速警部に電報…じゃなくてメールか手紙でも送っておいてくれ。3時間後にそちらへ向かう、とね。」最近はあまり使われなくなった電報という手段は古臭いだろうか、と思い直して言いかけた途中で言葉を変えた。手術前に読みかけていた本をコートの中から引っ張りだしてついでに彼の持ってきてくれた紙袋の中に手を伸ばしフィッシュアンドチップスの一欠片を取り出した。口に含むと懐かしい味が口の中に広がっていった。「懐かしいな。前はよく食べていたものだったが…ところでワトソンくん。君はクリスチアン・アンダーソンのThe difference between the dwarf and the elf _ドワーフとエルフの違い_ という本を読んだことがあるかな?」本をベッドの横に付属されている小さなテーブルの上に置くと視線を彼に向けて問いかけた。「もし読んでいないのならば、一度目を通してみるといい。題材は小人達だが、人の見分け方がよくわかるよ。これから先役に立つだろう。」そういうと再び本に視線を戻して )



111: 雪彦・H・芳賀 [×]
2017-02-09 16:48:38


( 彼がにっこりと笑ったので安心した表情になり。しかし左肩を庇って右手だけで紙袋を受け取る仕草に気がつくと数秒の僅かな間じっと左肩を見つめて。傷を意識するとまだ少し胸が痛む。彼の言葉に我に帰ると肩から目を逸らして頷いて。「ああ、勿論さ。電報でもEメールでもここは君の助手に任せておきたまえ」わざと厳めしい表現で冗談ぽくそう言い、ポケットからスマートフォンを取り出して早速レストレード警部にメールを送った。メールを送ってしまうと自分もひょいとフィッシュ&チップスを摘んで口の中に放り込んだ。そういえば今日は朝から何も食べてなかったな、と思い出すと安心したのも相まって余計に空腹を感じて。空腹は最高のスパイスと言うがそれを抜きにしても美味しいフィッシュ&チップスだと思う。「そうだな、君は随分忙しかったようだしね。一緒にあのフラットで暮らし始めてから随分経つように思うけど、大抵君はいつも何らかの事件に関わってる気がするよ」初めて彼の捜査を目のあたりにした時の衝撃は忘れられない。そしてどうやらあの時からずっと虜のようだ。
「いや、読んだことないな」ちらりと机の上に置かれた本に目をやる。著者は“クリスチアン・アンダーソン”とある。そういえば時々彼がこの著者の本を読んでいるところを見かける気がする。「君がそう言うならきっと有意義な本に違いないね。今度読んでみるよ。…でも僕はホームズのようにはなれないだろうな。僕は__大抵の人間はそうだけど__物事の表面、それも本当に目立つ箇所にしか気付くことが出来ない。でも君は裏側まで見透かしてしまう」そこで一旦言葉を切ると彼に視線を戻して。「例えば…そうだな、君の手術を担当してくれたあの医師についてだ。僕が観察して分かったのは年齢は30代後半くらい、左手に結婚指輪をしていたから既婚者、人当たりが良くて使命感を持った情熱的な仕事人って事くらいだ。君はどうだい?」脚を組んで両の手で膝を抱え込むように座り直すと記憶の中のホームズの担当医をなるべく鮮明に思い出して。)

112: アルバート・ペンバートン [×]
2017-02-09 18:19:06



( 態とらしい口調で得意げに言うので思わずふふ、と笑ってしまう。早速警部にメールでも打っているのだろう。スマートフォンを取り出して指先を慣れた手つきで動かしている彼を暫くの間見つめていた。「ああ、期待しているよワトソンくん。」なんてこちらも合わせて同じような口調__というか普段とあまり変わらないが__で返す。フィッシュアンドチップスをまた1つ摘んで口の中に放り込む。衣に加えられている隠し味のビールと林檎の甘味が丁度良くマッチしていてとても美味しい。彼の言葉に少し首を傾ける。「そうだったかな?私はこの生活リズムが普通だと感じているから分からなかったな。…ま、君が言うなら忙しかったのかもしれない。」常に謎や事件と深く関わる職業故か、他人がどのような生活を送っているのか興味を示したことも知る機会もなかった。それに自身の性格上、1つの事に没頭すると眠気も疲れも感じないのだから余計気がつかなかったのだ。そういう点については彼はよく見てくれているな、なんて思ってみたり。彼の突然の推察を興味深そうにじっと聞いていた。彼が何をどう見てそこから何を導き出したのかを聞くのが新鮮でとても面白かった。聞き終わるとふむ、と顎に手を当てた。「なかなか良い推理だ。既婚者というところは勿論当たりだ。年齢も皺や髪の色、全体的な外見からして恐らく合ってるんじゃないか?」そこまで言うと一旦言葉を区切って考え込んだ。そしてすぐにまた口を開く。「…そうだな。私の推察では、あの医師は人と話す時 初対面の人が相手でも_まぁその相手が私なわけだが_目線を合わせ、はきはきと淀みのない返事をした。これだけでまず彼は自信家であり何事にも協力的な人物である事が分かる。それから仕切りにウエットティッシュで手や指先を拭いていた。恐らく潔癖症なのだろう。キッチリとした身なりや、私の病室から出て行く際に花瓶をわざわざテーブルの真ん中に起き直して小さな埃をゴミ箱に捨てていった事からもそれが伺える。あと右手の人差し指の横にマメが出来ていた。勉強熱心で真面目な性格で周りからの信頼も厚い。_これは手を見て推測しただけに過ぎないことだが_ 趣味は読書で休日は1人で過ごすことが多い。ああ、それから彼の歩き方をじっくりと観察したかい?ほんの僅かにだが左足を引きずって歩きづらそうにしていた。多分持病か過去に軽い事故に遭っているかのどちらかだ。」そこまで一気に言ってしまうと一呼吸置いて彼を見た。「私の推理は以上だ。答え合わせは病院を出ていく時でも遅くないだろう。質問はあるかな?」に、と笑ってそう言い )



113: 雪彦・H・芳賀 [×]
2017-02-09 21:37:22


( 彼はまるで一言一句違わず用意された台本通りに台詞を読み上げる舞台俳優のように途切れる事なく自身の推理を述べた。こちらが口を挟む間も無くつらつらと続く言葉を聞きながら驚きと好奇心の入り混じる、実に楽しそうな表情で彼を見つめて。
「いいや、疑問点は全部君がすっかり説明してくれたとも。まったく、君の推理にはいつだって驚かされるよ。探偵は君の天職に違いないね。レストレード警部が毎度毎度君の元へ訪ねてくる理由もよくわかる」非常に感心した様子でそう言い。彼の推理を聞く機会は多いが毎回違った新鮮さがあり飽きることがない。こんな事を言うのは一般的な倫理観からすると不謹慎な話だが事件解決の過程を楽しんでいる自分が少なからずいる。はたから見れば似ても似つかないだろうが、ある意味でホームズと自分はよく似た同類なのだと思う。

そうこうしているうちにおおよそ3時間が経過して。例の担当の医師が看護師を1人引き連れてホームズの元へやってきた。今まで気がつかなかったがよく観察すると左足を僅かに引きずっているような不自然な歩き方をしている。彼はホームズに明朗快活に質問を投げかける。『肩の痛みは如何ですか? ご気分は悪くありませんかな?』手際よく診察をする両手の爪は几帳面に切り揃えられ汚れひとつない。右手の人差し指にはマメがある。面白いほどホームズの言っていた通りなのでにやっと笑ってホームズに“君の言っていた通りだ!”と目で会話して。ポケットに入れっぱなしになっていたスマートフォンが鳴り、見るとレストレード警部から面会の了承の連絡だった。)

114: アルバート・ペンバートン [×]
2017-02-10 09:10:22



( 2人で暫くの間楽しい一時を過ごしていると早くも3時間が経ったのか、担当医が自分達の元へとやってきた。テキパキとした口調でこちらにそう問いかけてきて、自分は少し笑みを浮かべて言葉を返す。「問題があるような事は全く。先生のお陰です。」こちらの言葉に担当医はニッコリと爽やかな笑顔を浮かべると、それは良かった、と言った。チラ、とワトソンの方を見ると目線で"君の言う通りだ"なんて事を言ってきたのでこちらも目線で"観察して人物像を作り出すのは基本的なことだよ、ワトソンくん。"なんて悪戯っぽくこっそり笑って見せて。『それではペンバートンさん、もう体調も良さそうなら退院出来ますよ。おめでとうございます。』担当医とその横に居る看護師も微笑みながら祝福の言葉を送ってくれた。ありがとうございます、とこちらも返す。再びワトソンの方に視線を移すとスマートフォンを取り出して画面を覗いていた。恐らく警部からだろう。「さぁ、もう外に出られるというのならグズグズしてはいられないな。早く警部の元へ行こう。」ワトソンが持ってきてくれていた、彼のお下がりの服に着替えようと手に取りながらそう言った。病衣の上衣部分をいつもの調子で脱ぎ捨てるようにしてしまい____たかったが左肩が引っかかって上手く脱げなかった。そのため右手で左袖を引っ張ってようやく脱いでしまうと綺麗に巻かれた包帯が顔を覗かせた。彼のシャツに腕を通すと割と丁度良く、ついでに言うと彼の香りに包まれて心がホッとしたような気がした。担当医と看護師が『それでは請求書が出来次第、お部屋までお呼びに伺いますのでその際は1階の入退院フロントまでお越しください。』と丁寧に説明して病室を出て行った。ズボンの方も着替え、彼のコートを手に取ると机に置いた本をポケットに突っ込み、自身の穴あきコートから懐中時計と手紙を取り出して新しい方にしまいこんだ。「さて、私の方は準備完了だ。聞くまでもないだろうが、君は?」そう言ってニコリと笑いかけながら彼の方を見て )



115: 雪彦・H・芳賀 [×]
2017-02-10 13:03:50


( ホームズの悪戯っぽく意味を含んだ笑み。担当の医師は自分が話題になっていたともつゆ知らず人の良さそうな笑顔でホームズに祝福の言葉を送る。警部からのメールには拘置所の住所も書かれていた。タクシーを捕まえれば直ぐに着く距離だ。“グズグズしてはいられない” という実に彼らしい言葉に目線をスマートフォンの煌々と眩しく明るい画面から目線を病室内に戻すと看護師から会計の説明があり、そして医師と看護師は去っていった。手持ち無沙汰なのでぽいと脱ぎ捨てられた病衣を律儀に畳んで机の上に置いたり、彼が肩のせいで着替えにくそうにしていれば少しだけ手伝ってみたりして。しかしそれにしても___と、シャツのボタンを留める彼を不意に眉間にしわを寄せてじろ、と睨んで。自分で用意しておきながら言うことでもないが彼が自分の服を着ていると妙な感じがする。…いやダメだ。自分で用意してるんだからこれでは相当にアブナイ奴になってしまう…。そんな葛藤に頭を悩ませていると会計の準備が整ったらしく看護師が呼びにきた。一階へ降りて会計を済ませ、併設された薬局窓口で痛み止めと腫れ止めの薬を受け取り。医療費諸々はゼロ、払ったのは薬代のみ。この医療制度には色々問題は多いものの我が家の経済状況からすれば高福祉社会に感謝するばかりだ。病室へ戻ると彼の支度も整ったようで。彼はにこりと笑ってこちらの用意を尋ねた。「無論さ。さあ行こう」口角を少し上げてそう答えて。

さて閑話休題、僕らが向かうべき場所はただ一つだ。外は夕やみが差し迫っており些か不穏な空気を感じたものの決着をつけるべきは今日であると分かっていて。コートの襟を正して気持ちを入れ替えると大通りに出てタクシーを止め彼と連れ立って乗り込む。レストレード警部のメールに書かれた住所を運転手に告げると一瞬の間ののち承諾の返事があった。まあ病院から出てきた男二人がその足で拘置所へ向かうとなれば普通は何らかのドラマを想像するだろう。
拘置所の入り口で相変わらず浮かない表情を浮かべたレストレード警部が出迎えてくれた。簡単な挨拶を交わすと彼は取調室へ僕らを案内しながら状況を説明する。『あれから私どもで取り調べを続けていますがサッパリで。膠着状態ってところですね』そう言う彼は苦々しい表情で。)

116: アルバート・ペンバートン [×]
2017-02-10 16:34:31



( 彼が慣れた手つきでシャツのボタンを留めた。その行動に不覚にもドキリと心臓が高鳴ってしまう。"全くこの無意識な行動がどれだけ私の心を乱していくのか自覚しているのかな。"心の中で呟く。看護師からのお呼び出しがかかりワトソンと2人で1階へと降りていった。支払いや薬の受け取りは全てワトソンに任せると自身は先程コートにしまいこんだ懐中時計を取り出して時刻を確認していた。そろそろ夕方になる頃だ。彼と共に病院を出てすぐにタクシーを捕まえると目的地を伝えてその場所まで送ってもらう。
拘置所に着くとレストレード警部が自分達を出迎えてくれた。どうやら未だに犯人は口を割らない様で、苦戦している様が警部の表情を見て取れた。苦々しい表情を浮かべ、取調室まで案内してくれながらそんな事を言った。「…なるほど。分かりました。とりあえず、まずは私と彼とワトソンの3人だけにしていただけますか?警戒させてしまっては元も子もありませんので。」警部は少し躊躇した表情をしたものの、すぐに分かりました、と言って了承してくれた。中に入るとこじんまりとした狭い部屋の真ん中に置かれた小さなテーブルと粗末な椅子に座り、俯いて暗い表情を浮かべた男と、部屋の隅で黙々と機械的に仕事をこなす1人の警官が居るだけだった。自分達の気配に気がついた男はゆっくりと顔を見上げると落ち窪んだ目で睨むようにこちらを見つめた。男の向かい側に用意された簡易的な椅子を引いて腰掛けると男の方から口を開いた。『…俺は何も言わないし、言うつもりもない。』ふてぶてしく険のある声で男は言った。「ふむ、どうやらその様だ。君は頑固で自分の意志は必ず貫き通し、周りとの馴れ合いを嫌う。頭もよく切れ、その上相当我慢強い。…だが、そんな貴方がなぜ誰かも知らない人物の命令を聞いているのです?」そう言うと男はハッと驚いた様な顔をし、それと共に怯えたような表情も浮かべた。『な、なぜ…いや、俺は知らな…ああ、どうして?』かなり動揺していて嘘をつけない様子だった。慌てて目線を逸らした男にやはりか、と心の中で確信した。「ええ、ただ貴方を観察して推測しただけの事です。高確率でそうだとは思っていましたが、その反応を見る限りどうやら当たっていたようですね。私が貴方に聞きたいことは2つあります。」話しを持ちかけると男は身を引いてこちらの言葉を拒むようにした。それでも構わず話を続ける。「まず、貴方の犯行の手口についてだ。1人目の被害者、アンドリュー・カインは頭部を強く凶器で打ちつけられ死亡した。遺体付近には犯人の手がかりとなるようなものは何一つ見つからなかった。恐らく貴方は彼を撲殺したあと、何か手がかりとなってしまうようなものはないかと徹底的に探し出したのでしょう。そして破片や足跡を残さないような全て消し去った。」男はこちらの話を聞くうちにみるみる顔色が悪くなっていった。「2人目の被害者、アザレア・マクアードル、3人目の被害者、チャド・ビリンガムの時も同様。然し変ですね?頭が切れるとはいえ、全くの素人である貴方がこうも簡単に完全犯罪を成し遂げられるとは。もしやと思いますが、裏で誰かに復讐をするよう焚き付けられ、その上警察に見つからないよう口添えもされたのでは?」その言葉をきいた男はサッと顔を青白くさせてこちらに視線を向けた。何かおぞましいものでも見るかのようだ。『あんたは…あんたは一体…何処かで俺を見ていたのか?何が目的だ?もしや…奴の使いなのか?俺を…俺を殺す気か!?』震えた声ではあるものの段々落ち着きを無くしてそういう男。「そうではありませんよ。私はただ、私の推理が正しいかどうか知りたいだけです。さぁ、お願いです。私に教えてください。」宥めながら言うと椅子から身を乗り出しかけていた男はゆっくりと椅子に座り直し、暫し躊躇したあと口を開いた )



117: 雪彦・H・芳賀 [×]
2017-02-10 19:49:03


( ホームズと共に通されたのは質素で無機質な冷たい部屋だった。ショーン・ノリントンは以前顔を付き合わせた時よりやつれて年老い、いくらか小さくなったように見えた。完全黙秘を貫いてきたということは警部たちの厳しい取調べの緊張感にも耐えてきたというわけで。無論拷問が認可されているはずもないので取り調べは会話を通してのみ行われた筈だが、その緊迫した空気に何時間も耐えぬくのは生易しいものではないだろう。ホームズの隣に腰掛けると、2人のやりとりにじっと耳を傾けて。ホームズの言葉は最初から予想外な内容で、驚きを隠せずに彼の横顔へ視線を移した。予想外だったのは犯人も同じだったようで明らかに動揺している。___ホームズは要するに “真犯人がいる” と、そう言いたいのだろうか?しかし彼の言葉は聞けば聞くほど納得がいく。
“ 私はただ、私の推理が正しいかどうか知りたいだけ” ホームズのその言葉は神経が過敏になっているショーン・ノリントンを宥めさせ警戒を解くための言葉に違いないが、それと同時に心からの本心でもある事を僕は知っている。彼は頑固そうな人柄をよく表している双眸を鈍く光らせてゆっくりと重々しく答えた。
『……俺の仕事は未だ終わっていない。だから俺は口を割るつもりはない。俺には果たさなければならない使命があるんだ』低く掠れた声は苦しみと覚悟に満ちている。そうして気がついた。この男は一切のも改悛の情も後悔の念も、砂の粒ひと粒ほども持ち合わせていないのだ!恐るべき覚悟、恐るべき傲慢さだ。たまりかねて今まで押し黙っていた口を開く。「君がその仕事を完遂させる事はもうないと思うけどね」ショーン・ノリントンは右の口角を歪めた。『ふっ…ああ。そうだろうな。俺の中での問題だ。最初からそこから始まってる。このまま一生壁の中に閉じ込められようが知ったこっちゃねえよ。例え果たせずとも俺は使命を諦める事はない』そして彼は視線を僕から自分の手元に移した。
『俺の後ろにいる存在を当てたのはあんたが初めてだ。だが奴についてもノー・コメントだ。…殺される』
歯の隙間から絞り出すような声。目線を逸らしたのはもしや動揺からなのだろうか。「殺されるって、君がその “奴” に? 馬鹿な。君は拘置所にいるんだぞ。この厳しい監視の中で誰がどうやって君を殺すんだ?」そう問いかけると彼の視線が不自然に泳いだ。『ああ。必ず仕留めに来る。それも最も惨い方法でな。奴はその為の手脚を持っている。自分の手は絶対に汚さない…。1つだけ俺があんたらに教えられる事があるとすれば……』そこで彼は言葉を一旦切った。完全な無音と重苦しい空気でその一瞬は永遠にも感じられた。
『 “教授” だ。奴はそう呼ばれている』
「教授?」彼の口から吐き出された単語を脳もなく繰り返した。彼が “そうだ” と無言で頷く。
『…とにかくこれ以上話す気はない』ショーン・ノリントンはいら立たしげに片脚を細かくゆすりながらそう言い。僕はふぅと深く息をつき、この難しい局面でホームズの次の手は果たして何だろうかと考えて)

118: アルバート・ペンバートン [×]
2017-02-11 11:02:18



( 男の口から謎の"教授"という言葉が発せられた。その教授とやらがどんな人物で、何が目的でこの男を焚き付けたのか思考を巡らせていると、男は"これ以上話す気はない"とまたその堅い口を閉じてしまった。「まだ貴方は私の質問に答えていませんよ、ショーン・ノリントンさん。」そう言うと男は鋭い視線でじろりとこちらを睨んだ。『話す気はないと言っただろう。』低い声で一言そう言う。「…そうですか。そんな事では、クレア・ボスロイドさんも報われませんね。」こちらが口にした名前に僅かではあるがピクッと男の身体が震えた。「貴方の犯行動機は分かっています。3年前に起きたバス事故でただ1人犠牲者になってしまった恋人の恨みを晴らすため、ですよね?」問いかけると男は何も言わず、ただこちらの話を聞きたくないかのように身を引いていた。「然しそんなやり方では誰も報われませんよ。…これが何だか分かりますか?」そう言ってコートの内ポケットからあの手紙を取り出すと男の視界に入るようにテーブルの上に置いた。男はチラリと手紙を横目で見ただけだった。その様子を見てふぅ、と息を吐くと手紙を手に取り中身を取り出した。「これはクレアさんの遺族から預かったものです。貴方が目を通すつもりがないなら、私が読み上げてもよろしいですか?」そう尋ねるも男は黙って目を瞑るだけだった。その行動をYESと勝手に捉えると声に出して読み始める。
「"こんな手紙を急に送ったら貴方は驚くかしら。でも手書きのものを送った方が温かみがあるでしょう?
ねぇショーン。この間の事は貴方の責任じゃないわ。あれは仕方のないことだったのよ。貴方は真面目で責任感の強い人だから、きっと今酷くショックを受けていると思う。周りの人達もあれは貴方のせいだって言っていたのを聞いたわ。だけど私は知ってる。貴方は悪い事なんてしない、誠実で素敵な人だってこと。自分に自信を持って。貴方は私の誇りよ。
それにしても、来週は久しぶりのデートね!バス旅行なんてあまりした事がないから楽しみだわ。絶対に遅刻しちゃダメよ? 愛してるわ。
      私の愛しい人、ショーンへ  貴方の恋人、クレアより"」読み終わり、手紙から男へと視線を移すと男はこちらを黙って見つめていた。『…ふん、情に訴えかけて口を割ろうっていう魂胆か?見え透いているな。』棘のある冷ややかな口調で男はそう言ったが、僅かに声が震えていたのを聞き逃さなかった。「だが貴方は既に話すしかないと考えている。違いますか?」そう静かな声で尋ねる。男はそれでも無言だった。然し、閉じていた目を開くとその瞳に少し迷いを浮かべた。そして遂に何かを諦めたかのように一度深く溜め息をつくとその重い口を開いたのだ。『…もういい。分かった、俺の負けだ。…クレアには敵わない。あんたはその手紙が俺に口を開かせるものだと初めから分かっていたんだろう?』そう言ったのち、暫く間を置いて男は話し始めた。『あんたは俺の犯行の手口を知りたいんだったか?いいだろう、それなら分かりやすくするためにまずは何故俺が殺人事件を起こすことになったのかという所から始めよう。俺とクレアは3年前、バス旅行をする為に出かけていた。その日は雨が降っていて不運にも俺達が乗っていたバスは対向車と接触し、横転した。俺は頭を酷く打ちつけられ、朦朧とする意識の中隣にいるクレアの体温がどんどん下がっていくのを感じていた。そしてクレアだけが死に、俺を含む他の乗客は全員助かった。俺は絶望した。なぜ彼女だけが死ぬことになってしまったのか、と。然しその時の俺は悲しみに暮れ、生きる希望を失ってしまった絶望感に苛まれはしたが、生き残った奴らを殺してやろうと思ったわけじゃなかった。それから最近の事だった。確か1ヶ月くらい前の話だ。知らない人物から手紙が届いた。その手紙にはこう書かれていた。"なぜ彼女だけが死に、他のヤツらはのうのうと生きているのか?" たった一言、それだけの短い文章だった。然し何故か俺はその文章に強烈に惹き付けられた。というより、復讐心を生み出されたと言った方が正しいだろうな。そこからの俺の行動は早かったと思う。まずバス事故の生存者リストが詳しく書かれた書類はないかと、近くの新聞社に真夜中に忍び込んだ。その会社に過去の記事や資料が沢山保管されている資料室があることは知っていた。なぜならそこには俺の知り合いが勤めていて、昔そいつから話を聞いていたからだ。』そこで一旦話を区切ると、こちらの目を真っ直ぐに見て再び口を開き )



119: 雪彦・H・芳賀 [×]
2017-02-11 18:42:29

(ショーン・ノリントンはホームズの目を見据え、話を続けた。
『どういう仕組みかわからんが “奴” は俺が行動を起こした直後に見計らったようにコンタクトをはかってきた。教授、とだけ名乗ってな。俺は教授の言う通りに動けばいいだけだった…』彼はホームズに向かって皮肉に歪んだ笑みを向ける。その裏側にあるのは自虐と諦めだろうか。どうやらクレア・ボスロイドの手紙が相当こたえたらしい。
『あとの事はあんたはもうすっかり分かっているんじゃねえか? 教授の指示に従ってアルファベットの順に片付けたんだ。監視カメラ網の抜け穴、凶器の選び方、証拠の消し方…全部奴の入れ知恵だ。誤算だったのはジェドだな。あのタイミングで出くわすとは思っていなかったし、まさかあいつが勘付くとはね。想定外だった。ダイイングメッセージが遺っていたらしいが俺は気づけなかった…全てが誤算だ』
「…アッシュフォードさんを殺すことに躊躇いはなかったのか?」ずっと疑問に思っていたシンプルな問いが口をついて出て。ショーン・ノリントンは眉根を寄せて暫く沈黙し、そしてようやく重たい声音で答えた。
『………無いね。いや、正しくは無かった、か。俺にとってはクレアが全てだったんだ。クレアがいない世界なんて間違ってる』そう言うと彼は両ひじを机につくと目の上に庇を作るように両手を額に当て。彼の言葉は徐々に悲痛な響きを増していく。
『でももう全部お終いだ。俺のやった事にはなんの意味も無かったじゃねえか…。クレアは理不尽に死んだとしても恨んだりなんかする女じゃなかった! 初めからそんな事分かりきっていたのに…なんで俺は今の今まで、あいつの手紙を知るまで気が付かなかったんだ?なぜクレアだけが死んだ!? どうして俺じゃないんだ!?』ショーン・ノリントンは固く握った右の拳で机を力任せに叩いた。不快な音が空気を劈く。蛍光灯の白い明かりが俯いている男の顔に陰を作り、その鬼のような形相は悲しみに沈んでいるようにも、或いは怒りに歪んでいるようにも見えた。
哀れな叫びに胸が締め付けられるようだ。三年前のあの日にあと10秒バスが出るのが遅かったら、雨が降っていなかったら、対向車が車線をはみ出していなかったら、バスは横転せずにクレア・ボスロイドは生きていたかもしれない。もし彼女が生きていれば連続殺人の被害者たちは無惨に、無意味に殴り殺されることもなく今も日常を過ごしたはずだ。きっかけはほんの少しの事だったはずなのに…。この一連の事件は全部が全部無意味な死だ。そこにあったはずの愛情を全て踏みにじった結果の不条理で無意味な殺しだったのだ。
『……他に聞きたいことは?』消え入りそうな声で男がそう言った。)

120: アルバート・ペンバートン [×]
2017-02-12 13:15:52



( 男は終始感情を昂らせ、強く机を叩いた。叩きつけられた拳は徐々に赤くなり始めていたが、そんな事は気にもしない様子だった。他に聞きたいことは、と問いかけられるとこう尋ねた。「ええ、一つ。貴方はジェド・アッシュフォード氏を殺害するまでは完璧な犯罪を遂行していた。アルファベット順でまだ殺害する番ではない彼を殺してしまった事で計画が狂ったことは予想できます。然し本来先に殺害するはずだったエマ・アッシュフォード夫人を殺害しようとした際、貴方の行動や服装は素人目にも分かるくらい全くの素人だという事が分かりました。まるで今まで殺人を犯してきた人物とは別人だと思えるくらいにね。これは、貴方のいう"教授"の指示と何か関係が?」男は少し落ち着きを取り戻した様子でこちらの話を聞いていた。眉根を寄せたまま暫く黙っていたが、少しすると男はこちらの質問にぽつりぽつりと答え始めた。『…ああ、関係はある。それも、あんたが言う通りジェドを殺害するまでのことだ。奴は俺が3人目を殺すまでは事細かく指示が書かれた手紙を送ってきた。だが俺が奴の指示になかったジェドを殺してしまうと、まるでその場にいたかのような手紙を送りつけてきやがった。』男はまるで恐ろしい怪物に出会ってしまったかのように顔を青白くさせ、身震いをした。『手紙の内容はこうだった。"お前は神から受けた使命を真っ当しなかった。神のご加護は受けられないであろう。彼女の命は永遠に報われないであろう。" それを最後に奴からの手紙は一切来なくなった。俺は恐ろしくなったが、クレアの為にと思って殺害を続けようとした。だが俺の自己流のやり方じゃ、あっさりと捕まっちまったわけだが。』言い終わると男は目を逸らして深く溜め息をついた。話を聞いて疑問点は殆ど解消された。残る謎は教授という人物のことだけだが、恐らくショーン・ノリントンは何も知らないだろう。もう聞くことは無くなったと判断すれば椅子からゆっくりと立ち上がった。「話してくれてありがとうございます。残念ながら私は警察ではありませんので、今回は私的にお聞きしたい事を伺いました。入れ違いで警部が戻ってくるでしょう。貴方のするべき事はもうお分かりですね?」去り際に振り返ってそう言うと男は暗い表情ながらも、小さく頷いた。
外へ出るとレストレード警部がすぐに話しかけてきた。『ああペンバートンさん。何か情報は得られましたかな?』切羽詰まった表情で詰め寄られ、少し後ずさりしながらまぁまぁ、と宥める。「いえ、大したことは。ですが彼はもう大丈夫です。警部の質問に答えてくれるでしょう。」ニコリと笑いかけながらそう言うと警部はぽかんとした表情を浮かべた。『ほう、一体どんな風にあの頑固者を?…おっと、これは失礼。ですがまぁ、ともあれ助かります。』警部は一度軽く咳払いをしてからこちらに向かって笑いかけた。警部が取調室へ入ってしまうとワトソンに尋ねた。「ワトソン。君は彼のいう"教授"という人物についてどう思う?」自身も考えながら難しそうな表情を浮かべ )




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