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― なりきり / ロル練習 →/233


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2015-08-08 14:02:58

>創作NL
ねえ、殺し屋さん。―…キスして。
(照明の類は全て眠りおち、部屋を照らすのは夜空に浮かぶ美しい満月の明かりのみ。夜風に靡くカーテンを腕で払い音もなく小窓から侵入し、無駄に広い寝台に横たわる己の身体を組み敷くように覆い被さる男に、甘ったるく強請る。消息筋から得た情報通りに現れた殺し屋の青年は、その特徴的な瑠璃色の瞳を小さく瞠って此方を見下ろしており。いつの間にか首筋には小剣の切削部があてがわれ、皮膚を裂く手前で止まっている。死の危険が迫っているというのに不思議と恐怖を感じる事はなく、真っすぐに視線を絡め合わせて。まだ幼さの残る中性的な顔立ちは東洋の血筋を思わせるもので、暗闇に溶ける艶やかな濡羽色の髪は枝垂れのように垂れ下がっている。引き結ばれていた薄い唇が開いたかと思うと、呆れの色を含んだ溜息を吐き "…あんた、俺のこと知っててそれ言ってんの?" 容姿に釣り合う中高音、久方振りに聞いた繕わない口調に安堵して。素性がばれている事や、自らを仕留める依頼が外部に漏洩していた事を問い質すつもりはないらしい。彼の問いに明確な肯定をの言葉を伝えず、口許に笑みを浮かべておき。[ 汗や唾液の一滴でさえ人間の致死量となりうる、強力な有毒物質を体内に保持している奇怪な体質を持った若い殺し屋。 ]彼の反応を見る限り、入手した情報は真である様子。それを他言せず、誘い出すようにわざと無防備な状況を作り上げていたのは単なる火遊びに近い好奇心だが、毎日の如く繰り広げられる退屈な舞踏会や、全てを与えられる窮屈な生活から逃れられるならば、目の前の彼の口付で死へ堕ちることのほうが人生の最期を美しく彩ることが出来る。先程の自分の科白はまさに死の糸を自ら手繰り寄せているようなものだが、どうせなら鮮血で部屋を染めるよりも眠ったように命を絶ちたいというのが自身の願望で。その意思を全て汲み取ったか否かは感情を見せない無表情な面から察することは出来ないが、浅く息を吐きながら首の横にあった刃物を懐に仕舞う様子を見ると心臓が跳ね。漸く無感動な毎日と決別出来る、そんな期待は死の恐怖をはるかに上回るが、生に執着する人間の本能はそれと反し、自らの中にある全く異なる感情は面白可笑しいもので思わず笑みが零れてしまう。相手は一瞬怪訝そうに形の良い眉をしかめるが、些末な事を見流すと顔の横に片方の肘下を付いて上半身を支え、空いた右手で頬の輪郭をなぞり親指の腹で下唇を撫でる。洗練された手慣れた動作が少々腹立たしいのは、嫉妬とも呼べるかもしれない。 "…本当にいいのか。" 最終確認、殺し屋にしては甘すぎるやり方が躊躇しているようにも見え、 「死んでも構わないわ。」 間近にある彼にしか聞こえないような声量で、東洋の文献にあった愛の科白を囁く。顔色一つ変えぬ様子から真意は伝わっていないのだろう、耳元で吐き出される "目を瞑れ。" との簡素な命令に、絡んだ視線の糸を名残惜しむようにゆっくりと瞼を伏せることで断ち切り。羽毛枕と後頭部の間に右手を差し込むと、近付いてくる気配を感じた後に柔らかな感触が唇を塞ぐと頭上から降る聞き覚えのある声を最後に、澱みに沈んでゆく意識を手放して。)

( 殺し屋の青年×上流階級の御嬢様。 )

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