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Once again./69


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自分のトピックを作る
50: yyy [×]
2017-04-02 14:43:14




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(相手の協力のおかげで女教師を救出でき地上に出ては、そのまま一人になるのも怖いだろうと今夜は自宅の空き部屋に泊めてやることにし、部屋を準備して空腹も考え軽食を用意して。
『ありがとう…。ねえ、さっきのあの人。変わり者なのかしら』
「…え?」
『だって、ほら。これね、私が食べるのを拒否してたら持ってきてくれたのよ』
(そういう女の手には綺麗な花形の菓子。子供向けにしては上品なそれは孤児荘の子どもたちのために買ってあったとは思えなくわざわざ買ったのだろうと推察し、「不器用なんだよ」と僅かに眉を下げ小さく笑んで。
『……ねえ、菊さんとあの人って敵同士なのよね?』
(女教師の問いに先程の相手の言動を思い返し、自分の中で徐々に膨れ上がっている相手に対する疑念がまた濃くなり表情を険しくして。
『菊さん?』
「いや、何でもない。食べたら今日はもう寝るといい。明日の授業は休んですぐ自分の組織に報告に行けよ」
『いやよ。私から組織に菊さんにも迷惑掛からないようにうまく言っておくわ。私これでもお気に入りだから大丈夫よ。だから授業はやっていくわ』
(まっすぐ此方を見てくる女教師。こうなったら意見を変えないというのはこの短期間で熟知したため渋りながらも頷いては「おやすみ」と一声かけ自室に戻るも、考えるのは相手のことばかりで。

(翌日、授業も全て終えて女教師を無事に送り出し明日の準備に取り掛かろうというところ、組織の者が来て招集をかけられては仕方なく拠点へ向かい。
てっきり女教師を勝手に連れ出したことを咎められるかと思ったが、なぜか組織の男は上機嫌で『取引先が女(女教師)を連れ帰った礼に、本邸の場所を教え取引を継続してくれるそうだ』と。
どうやら本当にあの女教師が上手く話を進めてくれたらしく、相手がそのせいで殴られたとは知らず少し安堵して。
『にしても、あの野郎(相手組織のリーダー各)勝手に乗り込んできやがって。まだ腹の虫が収まらん』
(苛立たしげに声を荒げかと思えば乱暴に一枚の紙を渡され、開いてみると見慣れない銃の取引先が記されていて。
『そこは相手組織が目をつけてる新しい取引所だ。そこの所有主が護衛を探しているから、お前が先に取り入って相手組織との契約を阻止するんだ』
(また面倒な意地を張って…、と内心呆れるが断ると更に厄介なため仕事を引き受けると早速紙に記された場所へ向かって。


51: xxx [×]
2017-04-02 21:55:18





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( やはり女教師を逃がしたのは自分の責任等と言われては次の依頼を断る訳にも行かず、夜、依頼内容の書かれた髪をやや苛立たしげに渡されれば面倒臭そうにそれを受け取る。
新しい取引先が見付かった様で、今日はその取引先との取り引きを完了させるという仕事。
ならこちら組織の一番のリーダー格であるお前が行くべきだろうに等と思うもそんな事口にした所で今回は女教師との一件がある。
紙を受け取るなりさっさと行こうとするも呼び止められては『その身なりで行くつもりか』と。
強引に正装にされ、愛想と言葉遣い等に気を付け気に入って貰える様にしろと命じられては聞いてるのか聞いてないのか分からぬ様な態度で拠点を後にして。

( 訪れたのは町外れの豪邸、客間の奥の大きな椅子に腰掛ける取引主は自分を物珍しげに見詰めては『随分若い餓鬼が来たものだ』と。
「組織の命により本日は私が仰せつかりました」
『ほう、その理由は』
( 一言話しただけでもやはり猫被るのは面倒、どうせいつかボロが出る様なら最初から猫被る必要なんぞないかと判断しては白い鞘の刀を出す。
「さぁ、俺は組織の考えなんぞ知らねぇから理由は知らねぇな。ただ俺も組織の犬、組織が命じるならあんたとの取り引き完了させなきゃだし…」
( 刀をだしたままそのまま無表情で取引主を見詰めては「あんたの犬にもなるぞ」と。
刀を咥えそのまま能力を解放しては銀毛の狼へと姿を変える。
周りの召使や護衛などが銃を向ける中、取引主の男が『おお………なんと………』と驚きの声をあげこちらへ歩み寄る最中、他の召使の者がノックと共に部屋へと訪れては何故かその召使の背後には相手の姿があり。

52: yyy [×]
2017-04-03 00:39:00




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(豪邸に着き案内された部屋に入った瞬間、目に飛び込んできたのは狼姿の相手。
驚きと共になんてめぐり合わせが悪いんだろうと自分の運の悪さを恨む。
加えて、取引主は相手の姿に釘付けで此方に気づいても『後にしてくれ』と全く見向きもせずに。
正直この仕事も組織の男の我儘。相手の仕事をこれ以上邪魔したくないしこのまま帰ってしまおうかと半ば思うが、部屋のあちこちに飾られる数多くの鹿や狐の剥製、趣味の悪い獣皮の絨毯、男の纏う毛皮の服、そして相手を嘗めるような視線。
はっきり言って嫌な予感しかせず、身勝手ながら“その目で相手を見るな”と独占欲が沸いては、相手に疑念を抱いていたことなど忘れてスタスタと前へ出ると、相手を背後へ隠すように取引主の前に跪いて。
「お取り込みのところ申し訳ありません。私は貴方様の護衛をしたく組織から参った者です。失礼を承知で申し上げますが、今なさろうとしている取引、辞めておいたほうがいいですよ」
(外向きようの笑顔を貼り付け普段より2割増しで声に色を乗せては、まだ煙たそうにする取引主に一枚の紙を渡す。
そこには相手組織をこの取引から失脚させるために調べ上げた相手組織のこれまでの失態や悪行が記されており。
「そこに記されている通り、その組織の幹部は頭が弱い。此処に危害が及ぶのは時間の問題です。私は貴方様の築き上げた美しい名声に泥を塗りたくない」
(心から願うよう切なさを滲ませ述べるも、内心は取引さえ破棄できれば相手は取引主と関わらずに済むというあまりにも身勝手な私情。
再度取引の決定を考え直すよう願い出て跪いた状態で頭を下げるも、取引主の視線がいまだに相手にあることが嫌でもわかり、見えないのをいいことに唇を噛み締めて。



53: xxx [×]
2017-04-04 00:44:55




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( 突然現れた相手の姿に瞬時人姿へと戻り怒りに表情を歪ませるも相手がふと顔を上げた途端取引主の男はその美しさに自分から相手に視線を移してしまい内心少しばかり慌てる。
相手の顎を持ち上げ端正な顔立ちを確かめる様に見詰める取引主に「あんたと取引しに来たのは俺だろ!?良いのか、数少ない能力者をみすみす逃がしちまっても」と声を荒らげる。
取引主も取引主だが相手がこんな男に媚びる様な姿を見てしまった事に苛立ちは拭えず相手の頬に滑らせる取引主の手をグッと掴んで。
『これはこれは、随分良いのに取り合いされたもんだな』
( 愉快そうに笑う男は自分の髪をぐしゃりと掴むと首を傾げ『ほう、自毛だったか』と。
どうやらこの男、相手も自分も離すつもりはないようで自分の腕を掴んだままもう片方の手を相手の腰に回すと先程この男が座っていた座席の元へと連れられて。
『本来なら殺し合いでもして貰うところだったが…色男に傷でもつこうものなら堪らぬ』
( 相手を見詰めニヤリと笑う男に苛立ち、歯をギリッと噛み締めた後に「は、良いのかよ。俺の能力みすみす逃して」と追い打ちをかける。
「こいつを雇うってんなら俺は手を引くぞ」
『おぉ、それは困るな。だがお前も銃を仕入れられなくなったら困るんじゃないのか?』
「…っ!!!」
( 一息置き、男はニタリと微笑むと『明日の夜、街の中心で祭りが行われるのはお前達も知ってるな?私も祭りの中心人物だ。そこに付き添え、目を引く色男と銀色の犬を飼ってるなんて街に広まったら私の株は大上がりだからな』と。
必然的に自分は能力を解放した姿での参加になるのかと呆れるもここで男の機嫌を上げ上手く自分のみとの交渉に持ち込もうと考えては口角を上げ、「しっかり手網引いてくれよ、飼い主さんよ」と。

54: yyy [×]
2017-04-04 20:03:16





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(何とか男の気を引くことは出来たがそれは相手も同じ。
相手の態度に気をよくする男もそうだがどこか乗り気の相手に苛立ち、これ以上男に近づかせるものかと男に身体を少し密着させ「ではこの後、祭りの手筈について共に話し合いませんか?」と“共に”を強調し甘みを含ませ言うと意味ありげに男の肩に指先を置いて。
勿論酒を飲み交わすだけのつもりだが、男が迷いつつ頷くのを見てはさも嬉しそうに微笑み相手を除け者にするようにして。
その後、相手だけ翌夜の祭りの時間に落ち合い、ひとまず自分は屋敷に残ることになれば他の護衛が相手を戸口まで送り出すのに自分もついていき、護衛が中に戻ったのを確認したところで帰ろうとする相手の腕を掴んで無理矢理近くの路地に引き込むと壁際に追い込んで。
「あんたはこの取引にこれ以上関わるな」
(単刀直入に先程の色など微塵も感じさせない冷たい声で言い放っては、「だいたい…、」と何か言いかけ頭を抱えるように額を抑えて苛立たしげに表情を歪め。
「…あんな見せ物みたいに能力を使うなよ」
(額から手を離し視線を地面にやっては力なく述べる。
相手が能力をどう使おうと勝手だが、相手が過去に見世物小屋で苦しんだ経緯を想うとやぶさかではなく、増して下心のある男がこれ以上相手に近づくことは心配で。
しかし本心を明け透けに語れるほどの素直さは持ち合わせておらず、鋭い視線を相手に向け。
「兎に角、あんたに取引はさせない」
(冷ややかな声ではっきりと告げては、踵を返して屋敷に戻っていき。

(その夜、男との話し合いを終えた後、やることがあるからと自宅に戻っては、祭りの夜どうにか相手を男から避けられないか考え、身勝手な感情が相手の仕事を邪魔していることを自覚しつつ、隙を見て相手を眠らせるための身体には無害の睡眠薬を用意して。

(一方、自分の組織。祭りの朝になって相手が参列することを知っては、相手が問題を起こせば取引が破断になると考え。
すぐに脳を麻痺させ錯乱させる薬を用意するとそれを飴に見立たせ街へ出ると犬と遊んでいる子どもに声をかけ『お嬢ちゃん、この飴、今日の夜に見られる狼さんに上げてごらん。面白いものが見られるから』と。


55: xxx [×]
2017-04-06 00:09:36




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( 屋敷を出た後、先程の相手が取引主の男に擦り寄る姿や自分に対してのあの冷たい視線などが再び脳内に流れて来ては行き場のない苛立ちとやり切れなさが溢れて。
“見世物みたいに能力を使うな”と切なげに言ったあの時、相手はどんな気持ちで何を思ってその言葉を言ったのだろうか。
只の哀れみかそれとも、等と淡い期待を振り払う様に首をぶんぶんと振っては明日の為にも早く逸早く孤児荘へと戻り身体を休めようと。

( 翌日の夜、取引主と屋敷にて今宵の流れなどを説明されている最中も取引主は相手がさぞお気に入りの様子。
しっかりと相手を隣に付き添わせては相手と自分が話す瞬間などある筈も無く、姿を変えるように命じられれば大人しく言う事を聞く。
まだ若干怯えた様な態度を見せる使いの者に首輪を付けられては取引主は相手を連れ先に派手な馬車へと乗り込み。
高い位置から見下ろされながらも手綱はしっかりと男の手の中にあり、好奇の目を向けられながら街の大通りを歩かされるのにはやや屈辱を感じるもここは早く取引を済ませるのが優先だと堪えて。

( 祭りも始まり主催者の挨拶等が一通り終わった後、この祭りの資金等に多く関与してる取引主の挨拶(と言っても相手と自分を見せびらかす為だけの演説)が始まっては自慢げに話す男のその姿をつまらなそうに見詰める。
長い話の中盤、不意に壇上に幼い少女が上がってくるなり自分の目眩に立ってはじっと見詰めて来て。
取引主は壇上に庶民が上がってきた事に一瞬むっとした表情をするも、目線で『愛想でも振りまいとけ』と伝えられては再び少女に目をやる。
『あのね、狼さんが好きな飴私持ってるの。あげるね、はい、あーん』
( にこやかに飴を口元にやってくる少女を拒むにも拒めず仕方無しにぱくりとそれを咥えれば口の中で一瞬で溶け、それは舌を痺れさせる様な感覚と共に頭に激痛が走って。
自分の様子に取引主の男が『爛、どうした』と声を掛けるも今自分の目に移っているのは“取引主”ではなく過去に自分を見世物として弄んでいた“見世物屋の店主”の姿で。
様々な感情が流れ込んで来るも一番の感情はやはり恐怖、狼姿のまま離れようと後ずさるも手綱がそれを許してくれずがむしゃらに暴れては能力が中途半端に解けてしまい、長く鋭い牙と獣の瞳をそのままに人姿に戻ってしまい。
観客の悲鳴が飛び交う中取引主の使いが自分を取り押さえようとするも恐怖に囚われた思考はまともに働いてくれずに。

56: yyy [×]
2017-04-06 20:53:23




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(祭りの少し前、相手に睡眠薬を飲ませる期を伺うも男の存在がそれを阻み、とうとう祭りを迎えてしまっては、能力を開放し町衆に晒される相手を苦い想いで見る。
こうなったら祭りの後半だけでも眠らせ、男の機嫌を損ねさせることで相手から遠ざけさせようと目論んでいたところ、当然壇上に上がってきた少女が与えた飴により苦しみだす相手に何事かと焦り。
飴に細工があるのは確か。相手の変貌に涙する少女にできるだけ優しく飴をどうしたか問えば『黒のおじさんがくれたの。狼さん喜ぶって言ってたもん』と。
その言葉に少女の頭を撫でながら混乱する町衆の奥に目をやっては、丁度組織の男達が路地裏に身を隠すところ。
その口元に浮かぶ不敵な笑みに状況を悟ると焦る気持ちを抑えて少女にその場から離れるように言い母親の胸に飛び込んでいくのを確認してから、相手と取引主の方を向き。
苦しげな相手を『どうしたんだ。落ち着け』と手綱を引っ張るだけの取引主。
加えて町衆に『あ、あんたそんな化物を祭りの日に出してどういうつもりだ!』『いくら裕福だからって…_』と責められ狼狽えるばかりの様にギリッと奥歯を噛み締めては、無礼など構いなく男から手綱を乱暴にひったくると相手に近付き嫌がるのを無理矢理肩に担ぎ上げて壇上を降り立ち男を一瞥して。
「こっちは何とかするから、そっちは自分で何とかしろ」
(飾った口調を使う余裕もなく告げては、未だに混乱する町衆の声を背になるべく人気ないところを探して。

(微かに祭りの音が聞こえる人気のない路地、相手の背を壁にもたせ掛けるように座らせては、状態を見るため相手の両頬を包んで顔を固定しぐっと顔を近づけ瞳を見て。
未だに身体は震え焦点も合っておらず、自分のことを認識しているかも危うい様に険しい表情をしては、手持ちの睡眠薬を使うかと考えるがそれでは中和できないまま眠らせることになり逆に危険。
かと言って中和薬も持ち合わせておらず、少々荒療治になるが致し方ないと元々睡眠薬と混ぜて飲ませるつもりだった竹筒に入った普通の水を相手の口元へ持っていき、無理矢理一気に飲ませ。
「少し苦しいが我慢しろよ。すぐ楽になるから」
(優しく声をかけつつ、抵抗されては困るため力尽くで相手の頭を押さえつけ低く下げさせるともう一方の手を相手の口元へ近づけ、牙が当たるのも厭わず口内に指を入れては体内にはいった薬を水と一緒に外へ出すのを促して。


57: xxx [×]
2017-04-07 05:28:29




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( 相手でさえまともに認識出来ず、只取引主の隣にいた事から“見世物屋の店主の仲間”と判断しては担ぎ上げられるのに激しく抵抗するも薬による頭痛のせいでちゃんと動けずにいて。
路地裏に連れられ頬に手を添えられては恐怖にビクッと肩が震えるも先程の唸りや警戒は僅かに解け相手の名前などこの状況で思い出せる筈も無いのに無意識に「……………き、」と言葉に出ていて。
その刹那、竹筒の水を一気に流し込まれたと思えば喉元を掻き乱される様な感覚にのざえながら何度も何度も咳き込む。
水と一緒に吐き出されたのは先程の飴の色でもある独特な緑色の液体。
頭痛はまだ残る物の興奮状態が解けたせいか姿もちゃんとした人の姿で、ハアハアと呼吸を整えながらもゆっくりと顔を上げる。
先程の事が頭から抜けてる訳では無く、今この状況に見世物屋の店主がいる筈もない事を冷静に思い出しては錯覚か何かに合っていたのだろうと瞬時理解して。
自分の顔を覗き込む相手の手は鋭い牙により血だらけ、僅かに慌てた様に表情を歪めながら相手の腕をぐっと掴んだ所で腕に巻かれた包帯に気付き眉を潜める。
無言で包帯を乱し目に入ったのは刀傷、これは確かに以前自分が依頼の時あの“人影”に付けたもので位置も全く同じ。
目を見開き、血だらけの指とまだ痛々しく残る刀傷を目にしては薬の成分が完全に抜け切ってない事もありわなわなとしては相手から距離を取る。
「あ、……………俺…あんたの事……………、斬っ………」
( 言葉にならないままズルズルと後ずさるその様子は悪い事を仕出かしたのがばれた餓鬼のようなもので。
謝罪の言葉が頭にあるものの言葉になってくれずに立ち上がっては逃げる様に駆け出して。

( 翌日、あのまま逃げ帰ってくるなり孤児荘の自室にてすぐに眠ってしまった様で。
目が覚めるなりツキンと頭痛が走るも大したものでなく風呂に入り身体を流してはぼんやりとして。
取り引き先には見離されただろうか、それなら自分の組織の者はご立腹だろうな、何よりまず相手に会わなければ、謝らなければ。
しっかり順序も決めずどこか気持ちが不安定なまま孤児荘を後にしては無意識に寺子屋へと足を急がせていて。

58: yyy [×]
2017-04-07 19:42:05





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(駆け出していく相手をすぐに追おうと立ち上がろうとするが、地面に手をついた瞬間傷がズキリと痛み一瞬動きがとまってしまい、それが大きな遅れとなって路地から出る頃には相手ははるか遠く、追いつけそうにないと諦め一度取引主のところへ戻ろうとしたところ黒い影が前に立ちふさがり、顔を上げれば自分の組織の男達がいて。
『どういうつもりだ』
「なにが…」
『とぼけるな。たった今、敵対組織の男を助けただろ。もっと暴れさせればいいものを』
『まさかお前、まだあの餓鬼と仲良しごっこしてるのか?』
「さあ…。でもあのままにしておけば町民はもっと混乱していた。俺は今あの取引主の護衛だから騒ぎを収めて当然だろ。何もしないほうが問題だ」
『はっ、それで言い逃れできるとでも?……いいだろう』
(そう言うやいきなり胸倉を捕まれ引き寄せられれば耳元で『子ども…』と囁かれピクリと反応し男を睨むも、男は意に介さず不敵に笑み『身寄りのない孤児荘の餓鬼は売りやすいんだよなァ』と嫌味ったらしく述べては乱暴に突き放され『監視、つけるからな』と言い残しその場を去っていき。
一人になった路地、男の言葉や先程の相手の困惑したような辛い表情が浮かんではやりきれない想いがこみ上げてグッと拳を握る。
動物が持つ特有の毒のせいか、指先がドクドクと熱を持ち始め痛みが増していきジワジワと胸の奥に響いてきて。

(簡単に指の手当てをした後、取引主の元へ戻ってみれば既に騒ぎは収まっていて、自分の姿を確認するや否や肩を捕まれ、相手はどうしたかと凄い剣幕で聞かれ。
『そうか…、では身体は無事なんだな。……しかし誰がこんなことを』
「___。怒ってないのか?……俺のことも」
『フン、あれしきのことで名声が下がるわけあるまい。それに猫被りは元々気づいてたわ。見くびるな』
「……。あいつを手放す気はないのか」
『当然だ。あれほどの美しく珍しいもの、儂の手にあってこそだ。ああ、取引なら心配するな。爛さえ戻れば平等にやってやる』
(先程の騒動で狼狽えていたのが嘘の様で、相手が孤児荘を切り盛りしていることを知っててか部下に明日にでも孤児荘に大量の食料と生活用品を送るよう指示していて、このままでは相手が男の手に落ちてしまうと焦るも、ついさっき組織に釘を刺されたこともあり止める気力は起きずに。

(翌朝、自宅で目を覚まし寺子屋の準備をしていると女教師がやってきて手の怪我を酷く心配されるが本当に大したことがなかったため大丈夫と微笑み返すも、相手の昨夜の様子が頭にこびりついて離れず、体調も心配でずっと浮かない表情をしていたのは気づかず。
そして子供たちを出迎える時間、門の入口に立っていると現れた相手の姿に目を見開く。
その何処か憔悴した様子にやはり薬が抜け切れていないかと思わず身を案じようとしてしまうが、組織の“監視している”という言葉がチラついてはグッと堪えて。
「何しに来た。……あんたは俺の敵なんだろ?…こんなところまで来られては迷惑だ」
(子供たちに聞こえないよう小声で、しかし突き放すように冷ややかに述べる。
急変する態度は違和感そのもの。目を見ると本音が溢れてしまいそうなため視線はずっと地面に向けられたままで。


59: xxx [×]
2017-04-09 00:43:33




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( 冷たい言葉で突き放す相手をぼんやりと見詰め、子供達が相手を呼ぶのに気付き其方へ向かおうとする相手の手を咄嗟に掴めば眉を寄せ小さな声で「……………傷、と指………ごめん」と呟き。
そのまま寺子屋を急ぎ足で後にしては孤児荘の入口付近にて自分の組織の男が立っており何事だろうと駆け寄る。
『おお、爛、出来したな。組織の頭領はお前を褒め称えていたぞ』
「なんでだよ…取り引き失敗したってのに」
『逆だよ、今回の騒動でお前を化け物だと恐れた者も居ればその逆もいるという事だ。取り引き先のあの男はお前を気に入ったみたいだぞ、今日の宵屋敷に来いとの事だ』
( 男が懐からチラリと見せたのは1丁の銃、どうやら取り引き先の男がこれから長い付き合いになるからと1丁だけ売ってくれた様で。
組織の男と別れ取り引きが破談にならなかった事に安堵しながら孤児荘へと入れば子供達の騒がしい声が聞こえ何事かと。
『あら兄さんお帰りなさい。見てこれ!素敵なお着物に…わぁ!外国のお菓子よ!』
『美味しそう!僕これ食べたい!』
『今日の夕飯は豪華だぞ!』
( 大量の食料や衣服、文房具やらが詰められてた大きな箱の送り主を見ればどうやら送り主はあの取り引き先の男。
“そういう事か”と子供達が人質に取られてる様な感覚を覚えるも組織の事もあり逆らえる様な立場には無く一度部屋へと戻ればそのまま夕方まで眠りに付いて。

( 夜、言い付け通り屋敷へと訪れてはまだ自分を気持ち悪そうに接してくる使いの者や護衛達に嫌気を感じながら中へと入る。
取引主はどうやら相手の事も呼んでいる様で『揃うまで待て』と言われては大人しく腰を下ろし俯いていて。
『体調はどうだ』
「………あの、」
『昨夜の事なら気にするな。何、庶民になんぞ好き勝手言わせておけ』
( 言葉を遮る様に言われてしまえばそれ以上何を口にする訳でも無く、再び俯いて。

60: yyy [×]
2017-04-09 18:39:34





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(普段からは想像が付かない弱々しい態度で謝罪され、少しでも相手のことを疑っていた自分が間違っていたのかと罪悪感で胸が締め付けられる。
去りゆくのを引き止めそうになるのを堪えるが、その後は子供たちに指摘されるほど上の空で。

(夕刻、呼び出されていた組織の元へ行けば、リーダー格の男は大層ご立腹で、取引主が相手組織との取引をほぼ決定したことをなじられる。
あんた等だって余計な手出しをしただろと反論の言葉を飲み込み大人しく愚痴混じりの罵詈雑言を聞き入れていると、突如目の前に先日相手を苦しめた飴に見立てた薬をばらまかれては眉を顰め。
『それをまたあの餓鬼に飲ませろ。何、水にもすぐ溶ける代物だ。飯にでも混ぜれば良い。それは飲めば飲むだけ中毒性も脳への影響も強くなる。見境がなくなり問題が続けばさすがのあの取引主も手を引くだろ』
「そんな…_、もし町民にまで影響が出てこの薬を仕込んだのが俺達だとバレればこの組織の評判が下がる」
『そんなもの、お前の能力を持ってすればどうとでもなるだろ』
「…能力は使わない。組織と契約するとき、そう約束した」
『どうだか。本当は能力を使って俺達を良いように扱ってるんじゃないか?……まあ良い。兎に角今回の計画は実行して貰う。見張りとして取引先の護衛の中に組織の者を侵入させておいたから下手なことは考えるなよ』
(絶対に受けたくない仕事だったが孤児荘の子どもを人質に取られている以上逆らえずに、床に散らばる薬をザッとさらって内ポケットにしまうと部屋を出て、気の進まないまま取引主の屋敷へ向かって。

(取引主の部屋に着くと既に相手は居て、一瞬目が合うがいたたまれなさからすぐに逸してしまい、取引主に指定された場所に座って。
『遅かったな。…それにしてもその暑苦しいコート、脱いだらどうだ』
「見た目より通気性が良い」
『見てるこっちが暑苦しいわ』
(脱げと言われ、至極面倒そうな顔を隠さず立ち上がっては仕方なしにコートを脱ぎ簡単にたたむも、その際に内ポケットにしまっていた薬が一つ転げ落ち相手と取引主の丁度真ん中あたりで止まり、ヒヤリと冷たい汗が流れる。
取引主は始めなにか分からなかったようだが、すぐに何か悟ったのか厳しい顔つきになって。
『まさか、お前だったのか?爛を陥れて騒動を起こしたのは』
「…だったら何だ」
(白を切っても仕方ないだろうと無表情で言いながら、薬をあまり相手の目に触れさせてはいけないと床に落ちた薬に手を伸ばして。


61: xxx [×]
2017-04-10 23:11:22




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( 相手も揃い話が始まるのかと言うところ、相手のコートから落ちた薬の様な物に目をやれば一瞬思考が停止し昨日の祭りでの事を思い出す。
既に昨日の薬の効果は抜け落ちておりまともな判断は出来るところ、その薬の独特な色から昨夜薬を少女に持たせたのは相手だったのだろうかと僅かな疑いが生まれては一筋汗が落ちて。
取引主は相手が持ってる薬はそれ一つのみだと勘違いし、相手が薬を拾う前にひょいとそれを取り上げては使いの者に『処分しておけ』と。
薬が相手の手元にある事を知ってもやはり相手を手放すのは嫌な様子の取引主は相手に目をやり『私の手下にある以上お前達の好きにはさせんぞ』と言っては話を戻して。
どうやら昨夜の祭りでの騒動は裏職の者達には評判が良かった様子、取引主も仕事が増えたと機嫌良さそうに話しており報酬として相手組織と自分組織に銃の弾のみを送ったとの事で。
『銃を手に入れたければお前達がもっともっと私を喜ばせればいい。何、海外にも知り合いはいるし銃なんぞいくらでも仕入れてやろう』
( 機嫌良さそうに話す取引主の言葉も先程の薬を目にした途端から耳に入らずぼんやりとしていてはいつの間にか話は終わっていて。
また依頼が入り次第呼ぶと言われては解散になり相手と話を交わすのも嫌で足早に屋敷を後にしては一度自分組織の拠点へと訪れて。

( 組織の拠点にて先程の話し合いの結果を話してはリーダー格の男は昨日の自分の不始末を叱り付けて来て。
『これだから犬は………お前は少し薬に耐性を付けておけ』
「んな事言われても…」
( 理不尽な言い付けをしてくるリーダー格の男にはほとほと呆れてたところ、駆け寄ってきた下っ端の男に銃を1丁渡されてはリーダー格の男に『相手組織の者を誰でもいいから一人殺せ』と。
「いや、取引主の手下にある以上勝手な事は出来ないと言われたばかりだ」
『こちとら大事な犬をやられたんだ、何、ちょっと仕返ししてやるだけだ』
「仕返しで殺すまでしなくていいだろ」
( 言い合いになるもこの組織にいる以上リーダー格の男の指示は絶対。
どうしようものかと頭を悩ませながらも既に時刻は朝方の為孤児荘へと戻る事にして。

62: yyy [×]
2017-04-11 19:13:00



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(屋敷を後にしてすぐ、自分の見張りとして屋敷に付く男に呼び止められ、先程の失態を咎められると共に『我々は銃が欲しいわけではない。本来の目的を忘れるな』と忠告される。
加えて自分を避けるように帰った相手の態度、当然と言えば当然だが悪くなる一方の仲に気は滅入るばかりで。

(翌日、昼の時間になって女教師が外で文を預かったと紙を渡され開いて見ると取引主から。
なんでも“夜に外国人の取引先と会食があるから和服で同席しろ”とのこと。
相手に薬を盛るなら絶好の期であるが、全くその気がない。
かと言って人質の子どももいる。
どうしたものかと頭を悩ませ溜息を吐くと子供たちに『先生また溜息吐いてるー!』と指さされ「ごめんごめん」と笑って小さな頭を撫でては気を取り直して午後の授業に取り組んで。

(会食の夜、結局、策はなにも浮かばず会食の場であるいかにも高級な料亭に訪れる。
小池に鹿威しまである日本庭を臨む個室では既に外国人と取引主が会食を始めていて、取引主が此方に気がつくと手招きされ、挨拶するよう命じられれば一応その場に粗ぐい正座して頭を垂れて。
『もう少ししたら面白いのがくる。色男な上に剣技も優れているから貴方も気に入るはずだ』
(上機嫌にまだ来ぬ相手を完全自分の物のように自慢する男に苛立つも表情には出さずに外国人に愛想笑を浮かべお酌をする。
懐には一応薬が入っているが、やはり使う気にはなれず今夜は大人しくしてようと適当に話を合わせていて。


63: xxx [×]
2017-04-12 21:02:54




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( 相手同文の文を取引主の男の手下に渡され、夜料亭へと訪れては取引主の男のいる個室へと向かい襖の前で一呼吸置いて。
静かに襖を開けるなり取引主の男に手招きされてはそちらへと向かい外国人に頭を下げる。
外国人が相手を気に入ってる様子でお酌を受けながら自分と話してる最中もやはり相手の事が気になってしまい気付かぬ内に眉間に眉を寄せては取引主に腕を軽く小突かれて。
運ばれてくる食事に気付き挨拶は終わりにしようとの取引主の一言で全員席に付いて。
相手が自分より先に来てた事もあり皿に毒でも仕込まれてるんではないかと僅かな疑心と戦いながら取引主に進められた酒を小さく1口啜る。
自分の衣服の懐には銃が1丁、相手組織の内の誰か1人を殺せとは言われた者の罪もない人間を殺す気はないし自分が相手組織の者と関わる機会なんてものは一切無い。
さして言うなら関わりがあるのは“相手”のみ。
『それにしても日本人は実に美しいな、特に彼は本当に美しい』
( 外国人が相手の頬に手を滑らせるのに動揺してしまいガタリと箸置きを落としてしまえば慌てて拾い上げて。
『礼儀作法がなってない』と小声で叱る取引主は『どうやら貴方が彼にばかり構っているのに嫉妬してしまった様です。どうか許してやって欲しい』と愛想笑いを受けて。
自分もいつまでも無言で座ってられないと、外国人の隣に行けば「自分は………剣技しか、」と言いかけたところで取引主が『何を言っている、素晴らしい“芸”があるだろう』と。
『ほう、芸とは気になるね』
『きっと驚きますよ』
( “やれ”と目線で告げる取引主には逆らえず、部屋の広い一角に移れば瞳を閉じ能力を解放する。
外国人の反応も見ずに人目に触れる訳にはいかないとすぐに人姿に戻っては俯いたまま席に戻り。


64: yyy [×]
2017-04-13 04:46:11




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(馴れ馴れし外国人に嫌悪感を抱きつつ嫌な顔はせず適当にあしらう。
が、相手が能力の開放を命じられては不快感から表情が険しくなって。
反して優美な相手の狼の姿を目にした外国人は一気に相手に魅せられ、やや興奮気味に取引主に詰め寄り。
『今のは何だ??もう一度見せてくれ。実に美しかった』
『そうだろう。私も一目で気に入ってね。__爛、まだ席に戻っていいとは言ってないぞ。もう一度やるんだ』
『彼、剣技もできるんだろ?………どのくらいで譲ってくれるかな?』
『申し訳ない。奴はいくら出されても譲る気はない』
(笑って下世話な話をする男達に見えないところで拳を握りしめては、これ以上相手が晒し者になるところを見ていたくなく「少々御手水へ」と一言残し席を外して。

(部屋を出てすぐ、見張りで立っていた自分の組織の者に肩を掴まれては休むこともできず諦めてそちらに視線だけやって。
『何をぐずついてるだ。薬を盛るなら今だろ』
「あの取引主は彼奴(相手)を手放す気はない。騒動を起こすだけ無駄だ」
(きっぱり言い切ると組織の男は苛立ちに顔を歪めるが、仲居が次のお膳を持ってくるのを目にしてはニタリと笑い、此方が止める間もなく一つの椀にあの薬をいれて。
薬はあっと言う間に溶け見る影もなくなれば、驚く仲居の懐に高額の札を差し入れ『この椀を銀髪の餓鬼に配膳しろ』と有無を言わさず命じる。
仲居はこういったことに慣れた様子で頷き、部屋の襖を開けては淑やかに配膳し、きっちり薬入りの椀を相手の席に置いて。
相手は丁度取引主に促されもう一度能力を開放しているところ。
このまま席に戻ってきて椀の食事を口にすればまた苦しむことになる。
しかし食べるのを止めるにしても大っぴらにすれば、また助けたとして孤児荘の子どもが危ない。
何とか分かりにくく_と考え何食わぬ顔で部屋に戻っては、もしもの為に用意していた中和薬を死角で酒の入ったとっくりに入れると丁度席に戻ってきた相手の御猪口にそれを注ぎ入れ「お疲れ様…」となるべく不自然のないよう差し出して。
しかし相手とは気まずい仲。この状況事態不自然そのもの。
内心では頼むから椀を口にする前に飲んでくれと祈る思いで。


65: xxx [×]
2017-04-14 23:44:41




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( 相手が戻って来るなりここで初めて相手と言葉を交わす事になるが相手に注がれた酒をじっと見詰めては中々口にはせずにいて。
この酒に関しては器から何から最初から置いてあったものだし先程取引主に進められた酒を口にしたばかり、だか相手の事。
気付かない内に薬を含ませる事など容易いだろうと疑心は解けずに眉間に眉を寄せたまま酒をじっと見詰めていて。
運ばれて来た椀に外国人が『おお来たか、先日日本に来た時にこれを食べたんだが実に美味しくてね』と得意気に語り出す。
蓋を開ければ豪華にたっぷりのウニが乗せられた煮物。
今目の前で運ばれて来たこの椀は安全だと判断したものの実はウニが苦手で。
『ほら、君も食べてみたまえ』
( にこやかに進める外国人の言葉に取引主も進めてくるも中々口に出来ずにヒヤリとする。
相手も席に戻され煮物を食べる様に進められるも中々手を付けない自分に不審に思った様子。
『爛、どうした。お前達の為にわざわざ頼み込んで貰ったんだぞ』
「あー…、あぁ…」
( 流石にここを回避するのは難しいと判断しては先に酒をぐいっと煽りその勢いでぱくりと口に含みごくんと飲み込んで。
動物故に感じたのか、鼻に抜ける様な薬っぽさを感じたが身体に異変も無いし気のせいかと。
『どうだ、美味しいだろう』
「………あー、…とても」
( ぎこちなく微笑みなんとかその場を回避してはふうっと胸をなで下ろすも、その硬い感触に銃の存在を思い出し。
相手を撃つだなんて考えられないが相手組織の者に都合良く出くわすなんて想像つかない。
なんとかやり過ごす事を考えながらも外国人との話に愛想笑いを浮かべては次々運ばれてくる料理に警戒しながらも少しずつ口にして。

( 会食も終盤、外国人はやはり相手にべったりで仲居を呼ぶなりかなり強めの酒を自分や相手、取引主に気付かれない様に注文して。
先程まであったとっくりと全く同じとっくりではあるものの中身はかなり強い酒。
相手の御猪口に酒を注いでは飲むように促すも、自分はその強い酒の匂いに気付き、無意識の内に咄嗟に御猪口を持つ相手の腕を掴んでいて。

66: yyy [×]
2017-04-16 02:35:02



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(相手が中和薬入りの酒を口にしてくれ毒を凌いでは、ほっと肩を撫で下ろし後は組織の者に“どうせ耐性がついただけだ”と適当に言い訳すればいいとすっかり気を抜いて。
そのせいで強いお酒を注文されたことなど全く気が付かずに、外国人にお酌されたのは今まで出されているものと同じだと思い、それなら酒の弱い自分でもまだ大丈夫だと。
口に運ぶ直前、相手に制止されては突然のことに驚き訝しげに相手を見てはその意図を探る。
様々な考えが交錯し「どうした?」と自分が問う前に、中々酒を口にしない自分にじれた取引主が口を開いて。
『菊、折角彼がお酌してくれたんだ。さっさと飲まないと失礼だろ。それに爛、お前も呑みたいなら自分のを飲みなさい』
(すみませんねと外国人に謝り、視線が自分に注がれてはいよいよ飲まないといけなくなり相手の手を退けさせては疑心を抱きながらもお猪口の酒を半分ほど流し込み。
瞬間、熱い塊が喉から食道を通り一気に胃まで落ちてきて、いつまでも身体の内を焼くような感覚に小さく噎せて。
『おいおい、何してるんだ。さっきから失礼だぞ』
「…いや、だってこのお酒……」
(明らかに先程まで呑んでいたものと違うと抗議しようとするが、お酌を飲めないこと事態が失礼。
了見を飲み込み、せめてこの一杯だけでも飲まねばと少しずつ口に運び何とか会食終わりまで繋いで。
そして解散となり部屋を出るというところ、ゆっくり立ち上がるもぐるぐると酒が身体をめぐるのが嫌でも分かり、襲い来る浮遊感に眉間を押さえる。
情けない姿は相手に見せたくないが今歩いたらもっと醜態を晒してしまいそうなため、暫く休んでいくと取引主に断りを入れては、一人部屋に残り。
先ほどとは打って変わって静かな空間。少し涼もうと日本庭が臨める襖を開いては、縁側と部屋の丁度真ん中あたりに腰掛け身体を襖にもたせかけ。
少し肌寒い夜風は火照った身体には心地よく、静かに瞼を閉じ気持ちを落ち着かせる。
_これから先どう相手と関わっていけば良いのか…いくら考えても今の頭では打開策は浮かばず、先程相手に掴まれた腕の部分がジワリと熱を持っては相手の名を小さく呟いていて。


67: xxx [×]
2017-04-17 23:03:28




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( 明らかに宜しくない様子の相手にどうこうする事も出来ずにそのまま解散時刻になり。
相手が残ると言い自分と取引主と外国人のみで残り暫く他愛ない話をするが外国人が『ちょっと彼(相手)の事が心配だ。見に行ってくるよ』と。
取引主はにこやかに外国人を送り出すが先程の強い酒を進める外国人を思い出すからに明らかに相手を狙っている。
「俺も行く」
『いやいや、彼にはちょっと話もあってね。良ければ私一人で行かせて欲しい』
『爛、先程から我儘ばかり失礼だぞ』
( 取引主に腕を掴まれては従うしかなく唇を噛み締めながら個室へと戻る外国人の背中を睨み付けていて。

( 個室へと戻った外国人は座り込む相手の隣にしゃがみ込み艶やかな髪を撫でては『どうした、飲み過ぎたのかな?』と白々しく問い掛ける。
『日本に来てから色々な物や人を見てきたが君は別格に美しいな』
( 外国人らしく気恥ずかしくなるような口説き文句を言いながら相手の唇を撫で、耳元で『多額の金でも銃でも、なんでも君の望むものを与えよう。私の物になる事を条件にね』と。
相手の返事を聞く前に身体を密着させ相手の腕を肩に掛けるようにして立ち上がらせれば『まだ酒が回っててきついだろう?今から私の屋敷へ行こう、そこでゆっくり休んだらいい』と。

( 相手と外国人が戻るのがやけに長く感じ何度も取引主に自分も行くと言うが止められて。
こうなったら急行突破だと取引主の首元にトンと手刀を落とせば崩れ落ちる取引主を上手く抱え、馬車で待つ召使に「酒にやられたみたいで、悪いが先に乗せてやってくれ。俺はあの外国人とあいつ呼びに行ってくる」と。
そう言い取引主を馬車に乗せるや否や足早に先程の個室へと向かって。

68: yyy [×]
2017-04-18 20:49:20




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(夜風にあたり火照りが少し落ち着き今度は睡魔が襲ってきたころ、突然何かが髪に触れては不快感から眉を潜めうっすら閉じていた瞼を上げるも、まだぼんやりとした視界と思考ではそれが何か分からず。
次いで耳元で囁かれる言葉もほとんど聞き取れておらず、前半だけ聞き取れば「……なんでも」と小声で復唱し思い浮かべるは相手のこと。
ほぼ無抵抗で立たされながら無意識に欲しいもの_相手の名を口にしていて。
『…蘭?…いや爛、先程の青年のことか。彼も素晴らしかったな。あの取引主の手元にあると思うと妬けてしまう。買い取りは出来ないと言っていたが何としても手に入れたいな』
(相手のことを語る男、それに対しての嫌悪感からか徐々に意識がはっきりしてきて此処で初めて外国人を認識すると驚きで反射的に逃れようとする。
が、如何せん足が言うことを聞かずにもつれてしまい外国人の方へ倒れては、外国人も突然の抵抗に対応が遅れ、外国人を下敷きにする形で派手に転倒して。
数秒後、『イタタ…』と呻く声にはっとなってはすぐに身を起こそうとガバッと起き上がるも何故かグンッと下に引っ張られる感覚が残り疑問に思うがすぐ解決する。
今日は和服、袖も長い。あろうことかその右袖が倒れた際に男の下敷きになって、その状態で自分が勢いよく起き上がったため引っ張られた所為で右肩から着物がはだけてしまっていて。
更には転倒の際に髪留めが緩んだのか長い髪がパサリと落ちる。
「……わ、悪い。突然あんたがいて、驚いて……」
(謝罪を口にしながら早くこの恥ずかしい状況を何とかしようと下敷きになった袖を引き抜こうとした瞬間、襖が開かれ相手とばっちり目が合っては咄嗟に“違う”と否定しようとするも下手に動いたせいか酔いと同時に気持ち悪さまでぶり返し言葉は空を切って。
代わりに外国人が何を思ったのかニタリと笑み『丁度いいところに来たな。君も混ざるかい?』と。


69: yyy [×]
2017-05-02 20:40:45





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(外国人の言葉に一体何を言い出すのかとぐらつく思考が一時停止するも、これ以上の誤解だけはされたくないと、下敷きになっていた袖を力づくでなんとか引きずりだす。
ようやく自由になればまだふらつく足取りで立ち上がり乱れた着物を正しながら、上半身を起こす外国人に「さっきの話だが、今は手一杯だから遠慮しておくよ」と断って。
髪も適当に結い直すと、まだ部屋の入口に立っている相手を外国人と二人きりにはしたくなく、少々周りを気にしてから手を取って戸口まで向かう。
自分がほろ酔いだからか元々相手の体温が低いのか、その手は冷たく感じるのに触れ合う部分は酷く熱を持っている気がして、外に出る直前手を離さすのを名残惜しく思えばほんの瞬間でも長く相手の指先に触れるように手を離し。
「…悪い、あの外国人に用あったんだろ?…でもあいつにまであんたをお気に入りにされたら俺が組織に何を言われるか分からないから…」
(“邪魔をした”と勘違いも交えて、自分の行動に適当な言い訳をつけると監視が気になることもあり目もあまり合わせることなくその場を後にして。

(寺子屋に向かう途中、一件の長屋から出てきた兄と出会しては丁度仕事終わりとの事。
『あれ?もしかして酔ってる?』
「もうほとんど醒めた。…さっさと寝たい」
『はは、今夜はよく眠れそうだね。…ところでさ、爛とはどうなの?』
「……さあ」
(短く返し、まともに話せないのに“どう”なんて分からないとまで考えはっとなると兄に顔を向け「凛、少し頼まれてくれないか?」と。
首を傾げながらも頷いてくれた兄と共に自室に帰っては、兄に茶を出してから自分は机に向かって相手宛の文を書く。
内容は、組織の対立で孤児荘の子どもが人質に取られ監視もあるから相手とは公に近づけないこと。勿論子どもと相手には危害が及ばないようにする旨を記して。
ここに一言相手への想いをしたためる可愛げはなく、業務連絡のような文を『かわいい弟に会えるの楽しみだなー』と零す兄に託して。

(一方外国人、此方の生意気な態度に機嫌を悪くし外へ出ては、相手を見つけるなりその肩を掴んで『さっきの見せ物は素晴らしかった。あの取引主よりうんと良い待遇をするから私の元へ来ないか?』と銀髪に指を滑らせながら白い歯を見せて。


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