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自分のトピックを作る
121:  [×]
2024-08-23 22:06:29

共食いの誘いを受けたのは人生で初めてだわ。

(丁度いいってなにがだ……と呟きながらもなんだかご機嫌な東の様子に口の端を綻ばせてしまう。だいたい平とたい焼きって無理があんだろ。東はアズって呼ばれてるからいいが俺はタイとは呼ばれてねぇぞ。いや別に呼んでほしくはねーんだけど……。
そうこうしているうちに路地を抜けて大通りへ。目の前を快速で走り抜けていく単車になんとなく視線を奪われていると少し先の信号が点滅するのが見えた。)

ここ信号ハマると長いんだよな……。

(いけるかいけないかというタイミングで明滅を繰り返していた信号機はとうとう俺たちがたどり着く前に紅に点った。走ればおそらく間に合っていた距離。どうにも急ぐ気になれず歩き続けた結果だ。普段なら絶対走っていただろう。まあ、仮に俺が間に合っても東が間に合うかは微妙なところだが。
横断歩道を挟んで寸断された俺と東の図を思い浮かばて笑いそうになる。あとでまた『ドゥクシ!』とかいって殴られるやつ。)

…………東。あっち。

(俺はちょいちょいと右辺を指さした。向かいに行くための歩道橋。これまで一度も使った事のないその存在を思い出したように促した。普段ならスマホでも眺めながらぼんやり信号の切り替えを待つところなのに今日に限ってはやった事のない行動を東としてみたくなった。まあ、使ったところで多分いいとこ橋の半分くらいのあたりで信号機は青に切り替わるんだろうなとは思う。東が面倒がったらそれはそれだ。)

122:  [×]
2024-08-24 00:23:14

んじゃ平の初めて、私が奪っちゃったな。
……あ。またドラマのスダケンみたいなこと言ったわ。キュンさせすぎてすまん。

(なんて、指ハート作りながらキメ顔で言ってはみたけど……こんなんでキュンさせられるなら、私は何も苦労してない。てか、そんなことが可能なら私は今すぐスダケンになりたい。いいよな、スダケン……私もこれまでかなりときめいてるし。あのモテオーラ、羨ましいわ……。あれの一部でいいから──そう、平限定で効くやつとか。ないかな。ないか。
脳内が見事にたい焼きからスダケンにすり替わって、まあどっちにしろ考え事しまくりで歩みを進めていたら。)

……あー。間に合わんか。

(大通りの信号が点滅し始めたのがわかったけど、いろいろ考えて気持ちふわふわしちゃってたし正直そんな急ぐ理由もなかったから、口ではこう言いつつも端から間に合わせる気はなかった。平がどうだったかはさておき、まあ結果的に二人とも走ってないんだからそーいうことなんだろう。そんなわけでぼーっと待つ体制に入りかけた時、平に声をかけられて小首を傾げながら指し示された方へ視線を向けた。
──歩道橋。明らかに遠回りだし、最後にいつ登ったのかも、登ったことあるのかすら覚えてないけど……なんか面白そうだと思ってしまった。平に誘われなかったら、こんなこと思いつかなかっただろう。平に誘われたから、めちゃくちゃ興味が湧いてきた。私はやけにワクワクしながら歩道橋を見上げる。あそこからの景色を平と一緒に見れたら、どんな風に見えるんだろう。ただの見慣れた街が、すっげーキラキラしたりすんのかな……。)

おけおけ。──私、ここ登んの初めてかも。

(平の提案に即頷いて、早速小走りで歩道橋に向かう。子どもみたいにテンションが上がってきた。私は何に浮かれてるんだろう。平が誘ってくれたこと?平と一緒にいられること?平に初めてを奪い返されたこと?……全部。私は全部が嬉しくて、平といるだけで全部にときめけるんだ。その勢いのまま、歩道橋の階段に足をかけていって──ついてきてるであろう平をチラッと振り返り、初めてだなんて感想を言ってみた。)

123:  [×]
2024-08-24 15:51:44

俺も使った事ねえなここ……つか歩道橋自体が久しぶりだわ。ガキの頃は当たり前に使ってたはずなんだけどな……。

(跳ねるように元気に前を行く東が振り返る。その表情はちょうど逆光になっていてよく見えなかった。それでも足取りと声音から面倒とは思っていなさそうでほっとした。
薄く伸ばした石造りの段差を二つ飛ばしでゆっくりと踏みしめる。階段というには細々とした起伏は一段ずつあがるには自分の歩幅と微妙に噛み合わなかった。これまで気にしたことはなかったが、もしかすると歩道橋とは子供向けなのかもしれないなと少し思った。ちょっとの信号でも全力ダッシュで歩道橋を駆け上がっていく子供時代の記憶。側道として自転車を手押しできるなだらかな坂もついてる。これ実は結構キツイんだよなつかうと……。
記憶を掘り起こすと筋肉痛がしそうだ。
当たり前にそこにあった子供時代。
俺がそうであるように、東にもあったはずだ。
……まるで想像できないが。
俺の知らない時間。俺の知らない、東。
元カレはそんな東も知っているんだろうか。
……当たり前か。
過ごした時間が俺とは違うんだから。
別にそんなのはわかっていたことだ。
大したことじゃない。
べつにたいしたことじゃ…………。)

……………………。

(前方をゆく東をみる。なにか。なにかが……もやぁっとしたなにかが。肺の奥のほうから積もってくるような感覚。知らず、俺は奥歯を噛み締めていた。
そもそもスダケンスダケンいうわりに元カレのアイツはスダケンに似てなくね?
好みっつーのは顔じゃねーってことか?
性格? スダケンの性格知らねえだろ。じゃなんだアレか。雰囲気か。いや雰囲気も似てねーわ。なんだコイツ。なにが良くてアレと付き合ってたんだ……。俺は意識せず舌打ちをして歩道橋の上り階段の最後の一段をあがりきった。)


124:  [×]
2024-08-24 16:51:47

おー、ちゃんと高いな~。なんかさ、高いとこってテンション上がら──ん?

(最後の数段は、小走りどころか完全に駆け足で登っていく。そのまま近くの手すりに駆け寄って両手を乗せ、身を乗り出すようにして景色を眺める。ついさっきまで私らがいた信号前には別の親子が手を繋いで立ってたけど、ここからだと子どもだけじゃなくて母親の方までかなり小さく見えた。いつもとちょっと視点が変わるだけで、なんか楽しくなってくるのは何なんだろう。ちゃんとした展望台とかだと、もっと高くてワクワクするんだろうな。そんなワクワクを、一刻も早く平と共有したい気分になった。あそこにこれから行くファミレス見えるなとか、どっかに同じ学校の制服いないかなとか。他愛もない話をしながら、並んで同じ景色を見たいなと思った。待ちきれないと言わんばかりに勢いよく振り返って、後ろにいるはずの平に話しかけようとした。)

……えー。何その顔?疲労?

(顔色が悪いというか不機嫌というか暗すぎるというか。全部当てはまるようでどれとも言えない、何考えてんのか全くわかんない顔。負のオーラ出しまくりっていうか──いや、それは見慣れてる気もするけど。平って、急にそういうモード入る時あるよな。いつも何をそんなにグチャグチャ考え込んでるのかは謎だけど……それ今くるか?と、呆然としながら平を見つめる。さっきまで普通に喋りながら階段登ってたのに、この短時間に何があった。ちょっと心配な気持ちもあり、私は数歩戻って平に近づき不思議に思いながら顔を覗き込もうとした。)

125:  [×]
2024-08-25 17:21:21

疲労っつーか苦労っつーか……いや別にたいしたことじゃねぇってわかっててもどうにもならねー不可逆性についての悩みなんだよ……そもそも何についてのアレなのかも全然わからねぇし……俺ごときが何目線で不満を抱いてんだっつー話だよな……わかってんだけどなんかモヤモヤしたもんが腹の下に積もってく感じがまた困るっつーか……ブツブツ。

(テンション上がらんって? むしろなんか下がったわ……。
俺ははぁ……とでかいため息をついた。身体の中心に澱のように濁ったソレを少しでも吐き出したかった。
ふと東が近づいていくる。俺がこの階段で疲れたとでも勘違いしたのか。さすがにこんな程度で息切らすほどヤワじゃねーよ……。
と思ったのだが。
いや顔、近っ。
俺を見上げるように覗き込むその髪からほんのりと知ってる香りが鼻腔をくすぐる。健康ランドのトリートメントかもしれない。
グレーのおり混ざった水晶石のような瞳が目尻の緩やかな流れに沿ってくりくりと動いてみえて。こいつ、睫毛なげーよな……。なんて。そんなことを思って。
一瞬――ふと湧いた衝動に俺は拳をぎゅっと握りしめて顔を軽く引いた。)

…………腹減ってんだろ。行くぞ。

(極力平静を装ってぶっきらぼうに言い放ち東の横を通り過ぎて先を歩く。
…………俺、今なにしようとした? ……触れようとした?
まさか……。いやいやいやいや。
軽く被りを振って何故か火照った顔を少しでも冷まそうと試みた。)

126:  [×]
2024-08-25 19:59:56

──?

(やばい。何言ってんのか全然わからん。悩みとか不満とかモヤモヤとかって聞こえたから、疲れてて元気ないわけじゃなさそうだけど──じゃあなんだ?私、何かした?ここには平と私しかいないし、このタイミングで平をモヤモヤさせる要因っていったら私くらいしか思い浮かばないんだけど──心当たりがなさすぎる。私はぽかんと首を傾げちゃって、さっぱりわからんってのが顔に出まくってたと思う。
いやまあ、このタイミングに限らなかったらさっきから心当たりはありすぎるんだけど。大雨の中失くしたキーホルダーを探してて結果的に平に傘買わせる羽目になっちゃったり、元カレとの面倒なゴタゴタに巻き込んじゃったり、それで泣かせて怪我までさせちゃったり……むしろ、心当たりしかないじゃん。溜まりに溜まった不満が、時間差でいま爆発しそうになってる的な?だとしたら、まずはどれから謝ればいいんだ──平の顔を見つめながらどう声をかけようか考えてたら、先に口を開いたのは平の方だった。)

へ?あ、ああ……うん……?

(私をスッと追い抜いて歩き始めた平の背中を眺めながら、何とも言えない不安な気持ちになる。この感じ、どっかで──そうだ、あの時だ。みんなでイルミネーションを見た帰り道、あーこれ平に避けられてんなって気付いちゃったあの感じ。今だってなんか不自然に突き放されたような気がするし、やっぱ私ちょいちょい拒絶されてるよな……。ふと、今朝の出来事を思い出す。私が平の手を取ろうとした時も、思いっきり嫌がってたな……。)

…………。

(脈ナシなのはわかってる。けど、友達としてならフツーに仲良い方だと思ってたのに。時々こうやって平に距離とられてるのを察する度に胸がチクッとして、心が折れそうになってしまう。でもファミレスには行ってくれるっぽいし、嫌われてるってわけじゃなさそうなのに……平は一体、何を考えてるんだろう。何とも言えない不安と寂しさに押し潰されそうになるのをグッと堪えながら、背負っているカバンの肩紐を両手でぎゅっと握りしめる。それから、平の後を追うように私も歩き始めた。)

127:  [×]
2024-08-27 20:23:55

(――なんだこれ。
ドッドッと強く胸を打つ鼓動に収まれと願って握った拳を押し付ける。手首がじくと痛んだ。――ああ怪我してたんだっけ。そんなことさえもう昔のことのようで。鳴り止まない鼓動の音は緊張とよく似ていた。
例えるなら学校。新クラスで見知らぬクラスメイトに自己紹介を一人ずつ告げてゆく。さあもうあと次が自分の番だ、というような……別に死ぬような思いをするわけでもないのに鼓動が破裂しそうな感じ。
……いや違うな。
自分で考えておいてなんだが鼓動が激しいこと以外に共通点ねーな。つい、と肩越しに東を見る。後ろを歩く東は若干俯き気味にみえる。表情はよく見えない。だというのにただそこに居る、居てくれるという事実を嬉しく感じる。
いや、いやいや。どうなってんだこれ。
歩道橋も中頃に差し掛かった辺りで風が吹き抜けた。ざんばらに舞う前髪が眉毛を掠めてゆく。不意に漂う香気。先刻東に感じたものに近い。自身の髪から東と似た匂いがする事実に一瞬、気分が高揚しそうになって。直後にそんな自分に自己嫌悪する。)

マジかよ俺……。

(ぽつりとそう呟いて顔を掌で覆った。ごちゃごちゃの思考に辟易とする。今日はもう色んなことがあった。ありすぎた。駅で動揺して、雨に濡れてコンビニまで走って、人生でも数少ない暴力なんてもんも振るった。人前でみっともなく感情のままに泣いてしまった。
その、どこにも東がいる。
行動の中心に東がいる。
……俺は東が好きだ。それがどういう類のものかはともかく――その好きな相手の前でカッコ悪い、情けない姿しかみせていない。おまけに純粋に俺を心配してくれる東に余裕をもって接することもできない。さっきのもやもやなんかアレはなんだ。
俺からすりゃ元カレはクズだがそんなクズでも笑って許すような東だからこそ俺にも分け隔てなく応援してくれるのだろう。
なんだ東、お前神様かなんかか? 自分を削って施しをするカミサマ。じゃあその神様は誰が救ってくれるんだって話。
俺はお前に――……。)

幸せに、なってもらいてぇよ。

(歩道橋の段差を下る。ぽつりと口からでた本心は間違いなくて。けれど気分は降り階段とどこか似ていた。この階段を下れば目的地はすぐそこだ。)

128:  [×]
2024-08-27 21:30:39

(一歩一歩進む度に、残りの距離が短くなっていく。あんなに楽しみにしていた景色もろくに楽しまないまま、今はただ俯いて歩いてるだけ。私、何やってんだろ……歩道橋、終わっちゃうな。
いや、平も平だ。向こうから歩道橋に誘ってきたくせに、期待させるだけさせといてさっさと前を歩いてっちゃうとか何考えてるんだ。結局こんなことで浮かれてたのは私だけで、一緒に景色見たり感想言い合ったりしたかったのも私だけで──なんか悔しい。気持ち自覚する前の方が、無駄な期待することも変に意識しすぎることもなくて、平との時間をもっと純粋に楽しめてた気がする──。)

はあ……。

(下りの階段が目前に差し掛かり、最後にもう一度街の景色を見下ろす。……ちっともワクワクしなかった。少し先を行く平はどんどん下っていってるし、誰にも聞かれてないって思ったら気が緩んで思いっきり溜息をついてしまう。恋ってもっとこう、なんかキラキラして楽しいものなんじゃないのか。少なくとも私から見たら鈴木も谷も山田もみんな何だかんだで幸せそうだし、絶対もっと若々しくて青春!って感じの“ちゃんとした恋愛”してるよな……。そーいうのいいなあって思うし憧れるけど……マジでやり方がわからん。今までは向こうからガンガンくるパターンばっかだったから、片思いとかした事ないし……。)

──こら、置いてくなっ!

(……いやだ。こんなんじゃダメだ。私ばっかり勝手に盛り上がって落ち込んで、こんなんで気まずくなりたくない。せっかく一緒にいられるんだから、せめていつも通りに楽しみたい。そうだ、いつも通り。ただ普通にしてればいいんだ。平の態度になんでちょっと違和感あったのかはわかんないし、怒らせちゃうような心当たりはあるにはあるけど──私が普段通り接してれば、平だって普段通りに文句言ってくるだろう。良くも悪くも、平の方はこっちを何も意識してないんだから。
私は一度深呼吸して走り出す。そのまま駆け足で階段を下り、横から平を追い抜き下りきった地点に先回りして振り返り、抗議するように平を見上げて睨みつけようとした。)

129:  [×]
2024-08-28 14:36:29

(もの凄い勢いで俺を追い抜いて行く東に「おお……」とよくわからん声を漏らす。なんつーか、元気だな……腹減ってんじゃねーのか。先に降りきって相対する姿はなんつーかアレだ。アレ……。
→タイラはにげようとした。
→しかしアズマにまわりこまれてしまった!
なんて、ゲーム画面がぼんやりと浮かんできた。いやべつに逃げようとはしてねーけど……。
つか、なんだその顔。なんか怒ってる……?)

アズ――……。

(マ、と出しかけた声は、
『アズ――――――――――ッッ、危ないから走らないの!!』
という超でかい声にかき消された。
見るとちょうど俺たちが来た方向、歩道橋を使わなければ待っていたはずの信号を駆ける子供とそれを追う母親の姿だ。
俺はしばし呆然とその様子を眺める。
子供はさも応援してもらったかのように一層意気込んで脚を跳ねあげる。母親の方は鬼気迫る表情でそれを追い――あ、捕まえた。
…………。
俺は無言のまま階段を降りきって東の肩にポンと手を置こうと差し伸ばす。
そして一言こう伝えよう。)

…………アズ。危ないから走らないの。

130:  [×]
2024-08-28 16:33:51

(でかい声で急に名前を呼ばれて、ビクッと大げさに反応してしまった。振り返ってみたら──いや私じゃないんかい。子どもを追いかける母親の姿を見て状況を察し、ちょっと脱力してしまう。まあ、そりゃそっか。知らない人の声だったし……さっきの子ども、アズっていうんだ。偶然だな。そんなことを考えながら親子の方を見ていたら、平が近付いてくる気配に気付いて視線を戻す。今思いっきり反応しちゃったの、見られてたらちょい恥ずいかも。いやその前に何か言えよ。なんで黙ったままなんだ。私は私で反応しすぎかもだけど、逆に平は反応薄くね?
目をぱちくりさせながら、下りてくる平を見上げる。たった数秒の時間がやけに長く感じた。肩に触れられると、距離の近さにほんの一瞬だけドキッとして顔が熱くなったけど──、)

へ?……ふふ、あはは!なんだそれ、私のパパか?

(予想外すぎる言葉にぽかんとしてしまったけど、たった今しっかりと聞こえてきたばかりの母親の言葉と全く同じセリフに笑いが止まらなくなる。突然謎の親子ごっこが始まったことも、どう考えても私の方がママじゃね?って思ってしまったことも笑えるんだけど──平が普通に接してくれたことにホッとしたのが、笑っちゃった一番の理由。
口元に手を添えながら、軽く涙目になってけらけらと笑い続ける。……気は済んだからそろそろ行こうか。なんか知らんけど子ども扱いされたし、こっちからも仕返ししてやろう。ファミレスに向かって歩き出そうとしながら、親子ごっこのノリのまま棒読みで返した。)

パパー。アズ、でっかいパフェたべたーい。

131:  [×]
2024-08-29 14:35:59

イヤだろ、娘のこと苗字で呼ぶ父親……。

(眉根を寄せて半ば呆れ気味にそう告げて俺もひひひと笑う。
……よし、うん。
フツーだよな。普通に、できたよな。
東がけとけと笑う姿を見て安心する。
ああ、やっぱりこいつはこういう顔の方が似合うよなり
中学の時とは髪型もまとう雰囲気もまるで違っていて。陽キャグループとつるんではいても悪ノリに流されたりはしないようなどこかクールなイメージがあった。
その頃のまま――そのイメージのままならきっと俺は東とは今こうして一緒に歩いてはいないだろう。
だが、である。
だからっていま俺が東の悪ノリに付き合うかといえばそれは別な話。軽妙に棒読みしてくる東に俺は思わず顔を顰めた。)

俺はどのポジションなんだよ。そもそもパパもアズじゃねーかよ……。

(じっとりと睨んで返す。別にいつまでも擦る気はないがそのパフェにアズキは入ってんだろうな、なんて思いながら。
『レストラン ゴスト』の自動ドアをくぐって内扉の取っ手を引く。からんからんとドアについた鐘がけたたましい音を立てて来客を告げる。
ここのゴストは前に来たことがあるがその時とは内装やテーブル席の配置が微妙に異なっている気がした。店員は手が離せないのか『お好きな席へどうぞー』なんて声が飛んでくる。確かに誘導が必要なほど混んではいなさそうだった。二人で使うにはアレだが俺は大きめのボックス席を東にちょいちょいと指し示した。)

132:  [×]
2024-08-29 16:36:04

意外とすいてんねー。あ、そっか雨の日だ。

(平に続いて入店し、軽く店内を見渡してみれば結構空席があった。これならそんなに待つこともなさそうでラッキーだと思いながら平が指した席に向かい、よいしょっなんて零しながらぽふりと腰掛ける。
早速メニュー冊子を手に取り、同じく着席したであろう平にも見えるよう横向きにしてテーブルの中央にどーんと広げる。さすがにタッチパネルがあるのは知ってる──二度も同じ手に引っかかってたまるか──けど、やっぱ紙のメニュー見ちゃうんだよね。なんかこっちのが見やすくない?ってわけで、広げたメニューを覗き込みながら、何を頼もうか悩み始める。)

“雨の日クーポン”使えるから、ポテトフライは絶対。で、和風パフェ……あっでもハンバーグ&海老フライのセットもいいな──よし全部いこう。

(私の中で、ゴストが公式アプリで配布している雨の日クーポンを使わない手はない。ポテトフライのページを見る前に断言する。それから、私が普通に食べたいパフェも。フルーツパフェもあったけど、一応あずきが乗ってるやつにしとくか。パフェも結構でかいし、正直そんくらいで十分っちゃ十分なんだけど──片手でスマホを操作しながらアプリのクーポンを確認してみると、ハンバーグ&海老フライのセットも“雨の日クーポン”の対象みたいだ。そうなってくると、脳内にいる別の私がせっかくだからいっちゃおっかって唆してくる。う~~~ん。軽く唸りながら考え込んで──よし、まあいけるだろ。ここでうじうじ悩んでたら、せっかく待ち時間短くても意味ないし。こーいうのは勢いだ。迷ったら全部頼んで、更に雨の日クーポンでドリンクバーもつけちゃえ。私はキリッと宣言しながらメニューから顔を上げ、見終わったメニューの向きを平の方に向けようとした。)

133:  [×]
2024-08-30 12:02:09

――ん。ほれ。

(メニューを向けられたと同時に俺は注文用のタッチパネルを充電台から引き抜いて東側へとテーブルを滑らせた。
終始楽しそうにメニューでアレコレ考える東の様子を頬杖をついてぼんやり見つめていたが飽きなかった。雨の日クーポンとか俺より全然ゴストに詳しいし。アプリとかあんだな。まあ今だとどこもかしこもやれネットオーダーだ公式アプリだと顧客とのエンゲージメントをとにかく高めようとするのが企業傾向だ。
俺みたいな極力余計なアプリを入れたくない派には生きにくい世の中。スマホのホーム画面とか二ページ超えんの嫌だし。
それでも。東がそんな楽しそうにしてるなら俺も取ってみるかなんて事を思った。)

よく食うな……マジで腹減ってたんだな。

(メニューに視線を落としてポツリと洩らす。本当は空腹なんてただの口実で、なんとなくただこのまま帰るのがちょっと惜しいような――そんな俺と同じ気持ちだったらなと思ったが違ったらしい。
そういえばあんな事がなければ今頃健康ランドでソフトクリームでもつまみつつマッサージ機に打たれていたかもしれないんだよな……。
ゴストのメニューはトップページの季節物の限定商品から始まって定番の肉料理、パスタ、サラダと続く。ページこそめくっているが俺の目はリストを泳いでいるだけでなにかを捉えることはなかった。
沈澱させた気持ちが浮上してこようとするのを無意識に封じる。今はごちゃごちゃ考えても東に心配かけるだけだ。どうせ家に帰って一人になればもうどうしようもない葛藤に苛まれるのは確定している。自分の気持ちを言語化して整理するのはそれからでいい。
それまでは無でいよう。
今の不安定な感情はともすれば予期さえしてないことを口に出しかねない。
視線をメニューから東へ向ける。
タッチパネルを操作しているであろうその姿をみて、ふと頭によぎったのは鈴木の台詞だ。谷と付き合いだしたばかりの頃、あいつらの馴れ初めを知りたくて鈴木に問いかけた。『なんで谷なの?』と。それを受けた鈴木は勘違いして確かこういった。『俺にしとけよ?』。
今思いだしても何言ってんだコイツと思う。
なのにさっき歩道橋で名状し難い感情にとらわれた時――東から顔を覗き込まれた時。
俺はこう思ったのか?
――俺の事を好きになればいいのに。
いやいやいや……まさか。勘弁してくれ。
無でいると決めたはずの俺は顔を手で覆って唸った。)

134:  [×]
2024-08-30 15:55:31

さんきゅ。……あー、まあねっ。

(タッチパネルを操作して、注文したいものを一つずつ追加していく。既に決まってるからそんなに時間はかからなくて、最後にスマホを見ながらクーポンコードを入力すれば私の分は完了。途中聞こえてきた平の言葉には、ちょっとギクッとしたけど──まだ帰りたくなくて誘っちゃったとか絶対言えないし、お腹がすいてないわけでもないからこれは嘘じゃない。嘘じゃないのに勝手に焦りながら答えて、なんとなく視線を逸らし店内を見渡す。
店内には他のカップルが何組かいた。いや他のって!私らは全然そんなんじゃないけど……え。てか超今更だけどこーやって二人で座って喋ってんのって、他の客からどう見えてるんだろ……うわマジで今更すぎる。平と二人でファミレスなんか、もう何回も来てるのに。全っ然考えたことなかった……。
意識した途端にめちゃくちゃ恥ずかしくなってきて、他のカップルなんかもう見てらんなくて頭を抱えながら視線を前に戻した。それはそれでフツーに平がいて、バッチリ顔見ちゃったら顔というか耳というか何なら首まで火照ってきた気がする。どうしよ、ドキドキしすぎ。てか、よく見たら平もめちゃくちゃ考え込んでるっぽいし。そんなに食べたい物が決まらないのか……。)

平、決まった?まだならピザとかどうだ?ピザ。これ私好き。クーポンも使えるよ。

(とにかく胸がふわふわして平の方を見ていられなくなって、誤魔化すように既に私の注文が入力済みになっているタッチパネルを見下ろした。そわそわしてとにかく何か喋ろうと思って、パッと目についたマルゲリータピザのページを開いてくるりと画面を平に向ける。なるべく自然に振舞おうとしながら、画面を指差し畳み掛けた。)

135:  [×]
2024-08-31 13:55:29

ピザな――……キライじゃねえけど。

(無にまとわりつこうとする益体もない思考を振り払うように軽く首を振ってから指し示されたタッチパネルを一瞥する。
ゴストのマルゲリータピザといえば値段の割に美味しく腹も膨れる人気メニューだ。もちろんデリバリー中心の有名ピザチェーン店などとは比べるべくもないが懐事情の厳しい学生にはありがたい。
ふと。そういえば、と思い至る。
今日だけでそこそこの出費をしている気がするが――東は大丈夫なんだろうか。
タッチパネルに煌々と灯る注文数は今のところ東だけのものだ。
確か東もラーメン屋だかでバイトはしてたはずだが……まぁ大丈夫じゃなきゃ頼まねーか……。
俺の場合はこういう時の為にコンビニバイトしてたのだから使うぶんには問題ない。普段は無駄遣いなんてしたくないがこういう友人と過ごす貴重な時間でケチケチするのはもったいないと思っている。
思っているのだが――……。)

……どうも食い切れる気がしねえ。なんかもう今日は胸いっぱいなんだよな。

(そういいながらメニューの最後のページを捲りきって裏表紙へひっくり返す。裏面は酒類やつまみが色とりどりと並んでいてその驚きの価格提供であることをこれでもかと強調していた。
もちろん制服きてる俺らには無縁の広告だ。アルコールでなにもかも忘れたい大人の気持ちが今だけはなぜかよくわかる気がした。
俺は頬杖をついてだらしなくテーブルに体重を預けた。)

ゴストっていや昔『ゴストバーガー』ってあったんだよな。ガキの頃食って異様に好きだったの思い出したわ……。

136:  [×]
2024-08-31 15:16:30

あー、わかる。私、ハンバーグの中にチーズ入ってんのが好きだったな。

(少しずつ具材を変えながらなくなったり復活したりを繰り返していた気がするゴストバーガーの存在を思い出してたら、急に食べたくなってきたけど無いものは仕方ない。てか平、注文が決まらないってよりお腹すいてない感じ?……そういえば急に誘ったのも私からだし、平の口から腹減ったなんて返事は一言も貰ってなかったな。
うわ。私、完全にやらかしてんじゃん。ちょっとでも長く一緒に居たいのなんて私だけなんだから、平が腹減ってないってことはここに立ち寄るの自体全然乗り気じゃないわけで──嫌々付き合わせちゃってるってことだ。二人で寄り道してるとか、舞い上がってる場合じゃなかった。今日一日いろいろあったけど、たしかに平からしたらただただ疲れるだけだわ……。完全にまた平を巻き込んじゃってるよなぁ、これ……。)

そ?んじゃ私ピザにするから、テキトーにつまも。あ、ここ私出すから安心して。

(平が食欲ないとしたら確実にさっきまでの出来事のせいだろうし、その上来たくもないファミレスに付き合わせといて無理やり注文させるってのもなかなかに鬼だろう。だったら二人でつまめそうな物を頼んで、食べられる分だけ食べてもらう方がよさそうだ。そもそも平って、さっき高そうな傘も買ってたよな……。半分以上私のせいで。
タッチパネルを再び自身の方に向け、ハンバーグ&海老フライのセットをピザに変更してドリンクバーも二人分入力しながらそう提案してみた。)

137:  [×]
2024-09-01 13:54:58

…………は!? いや金の問題じゃなくて……それは無しだろ……そういうのはやめようぜ。

(東の唐突な提案に俺は自分でも思わぬ大きな声をあげてしまう。やべ、と慌ててボリュームを絞って囁くように伝える。
奢りは貸し借りとはまた違うのだろうけど、金銭で誰かに負担をかけたくはない。
それが親や先輩といった立場が上の相手であるならその顔を立てるという意味でもご馳走になるというのは理解できる……それでも苦手には違いないが。
見返りを求めているんじゃないとわかってはいても、俺はそれをしてもらえるだけのなにかを返せる気が到底しない。
なにより東とは対等でいたい、と思う。
全然対等じゃねーし陰キャが何言ってんだって感じだけど……。
だいたい男が女にご馳走してもらうって構図がまずどうなんだって話。やっぱり時代錯誤な考えなのか……?
それでも――もしも。)

……恋人ならやっぱり俺が奢る側の方がいいかな。

(頬杖をついたままそう洩らす。カッコ悪りいとこばかりでもせめてそのくらいの甲斐性はもちたいと思う。
もう一度メニューを見返そう。考えてみりゃ東もなにも食ってねー相手の前で落ち着いて食えるわけねーよな……。タッチパネルを凝視して東が変更した箇所に唸る。)

――このピザとドリンクバーは俺がもらうから東もちゃんと自分の食いたいもん食えよな。

138:  [×]
2024-09-01 15:29:25

え?…………???

(誘ったの私だしとか、さっき傘買わせてるしとか、キーホルダーとハンカチのこととか、今日のお詫びにこれくらいはとか──いろいろ浮かんでた考えはあるけど、次の平の言葉で全部ぶっ飛んでしまった。思わずぽかーんと固まる。あれ私、なんて返そうとしてたっけ……?いやいや、それよりなんでそこで恋人って言葉が急に出てくるんだ。そっちが気になりすぎて、何も言葉出てこん……。
ぽぽぽぽ……と、顔から湯気でも出そうな勢いで熱が集まってくる。恋人なんて言葉がなければ、私はまたさっきと同じことを考えて凹んじゃってたかもしれない。友達同士だし、そのくらい甘えてくれてもいいじゃんって。何の脈略もなく私が一方的に払わされてるとかならまだしも、今日はいろいろ巻き込んじゃって平に迷惑かけまくってるし助けられてるし、お礼にファミレス奢るくらいはそんな頑なに拒否されるほどおかしい提案でもないだろって。仲良いと思ってたのは私だけで、また一線引かれてるのかって──でも、今のは。)

~~~っ!

(平が変なこと言うから、全身がまた火照ってくる。さっきはちょっとそっけない感じで人のこと置いてこうとしたくせに、急にボソッと期待させるようなこと言うのは何なんだもう。……絶対何も考えてないんだろうな。何も考えてないから、そんな適当なことがさらっと言えるんだ。こっちは浮かれすぎないように必死だっていうのに。私ばっかドキドキさせられて、ほんとズルいよなぁ……。
なんかもう、私も胸がいっぱいになってきた。こっからハンバーグとか海老フライとか、明らかに食える気がしない。なんならパフェとポテトフライだけでも厳しいかもしれない。)

うん、いいからもう確定ボタン押して……。

(落ち着け私。熱くなった頬に片手を添えながら、こっちの分はもう追加しなくていいって意味を込めて空いている手を横に振る。何でもいいから早く頼んで、早くこの話題を終わらせよう。頭が真っ白になってろくに返答が思いつかない中、タッチパネルを平に近付けるように押し出しながらなんとか言葉を絞り出した。)

139:  [×]
2024-09-02 21:27:13

? おう…………?

(――なんだ?
ずいっと押しだされたタッチパネルを受け取りながら首を傾げる。
東はいかにももう早くしろよといいたげな雰囲気だ。少しウダウダしすぎたのかもしれない。
腹減ってるって言ってたし悪りいことしたな……。
俺はタッチパネルに東が入力した例のピザとドリンクバーが入っていることを再確認して確定ボタンを押下した。軽妙な音が注文の完了を告げる。画面に注文内容が表示されるが東が最初に食べたがっていたハンバーグと海老フライがない。東に声をかける間もなくタッチパネルはホーム画面へと推移してしまった。
まあいいか……俺も俺でピザ食い切れる気はしねーし東が足りなければ食ってもらえばいいだけの話。)

……とりあえず飲み物とってくるわ。なにがいい?

(空腹な顔を見られたくないのか、落ち着かなそうな東にそう声をかけて立ち上がる。別に気にしやしないのにな。
荷物はまあ置きっぱなしで大丈夫だろう。
飲み物が少しでも東の空腹を紛らわせられればいいのだが。)

140:  [×]
2024-09-02 22:49:39

……あー、私カルピス。

(立ち上がった平に声をかけられて、慌てて返答する。さっきからふわふわしすぎだってば私。とにかく落ち着く時間が欲しかったし、飲み物は平に任せて一旦深呼吸しよう。そうだ。まずは落ち着いて、ただ自然に。普通に振る舞えばいいだけ──普通って何だっけ。
飲み物を取りに行ってくれたであろう平を待ちながら、気を紛らわせようと改めて店内を見渡す。普通の……というか“ちゃんとした”感じのカップルが仲良く喋ってる。普通……勝手にソワソワしてる今の私も普通じゃないかもだけど、じゃあさっきの平のアレは普通なのか?恋人なら奢る側がいいとか何とか──唐突すぎるだろ。そもそも、そんな言葉がさらっと出てくるとかいい奴すぎないか?私の経験上そんなこと言う恋人は過去に一人もいなかったし、むしろこっちが払うよって言うの待ちみたいな人ばっかだったけどな──あれ?
元カレと付き合ってた時は、好きだったし何の疑問も持たなかったけど……そーいえば、デート代って毎回私持ちだったかも?いや、たまたまか?たまたま出せる方が出せばいいじゃん的な考えでいつも普通に払ってたし……まあ私が何も気にしてなかったんだから、べつに普通だったのか?わからん。元カレ達がクズなのか平がめっちゃいい奴すぎるだけなのか、いよいよわからんくなってきた。)

……まず私が“まともじゃない”……?

(“まともな人間好きになろうと思ったら本人にもまともさがいる”──いつか鈴木に告げた言葉が、ふと私自身を抉ってくる。やっぱ、私が知ってるこれまでの恋愛って普通じゃないんだろうなあ。この前サトと話してて告白とかしたこともされたこともないって言った時も、一瞬空気変わったってか変な間あったもんな……。
ついこの間まで、誠実な男からは旨味を感じられないなんて思ってたくせに……今はあーやって言い切れる平がやけにカッコよく見えて、ちょっとした一言でドキッとしてるし。なんだこれ。これがまともな感覚なのか。それとも、クズばっか好きになってた反動なのか……ダメだ、変に考え始めたら自分の感覚に自信なくなってきた。
落ち着くために気持ち整理したかったのに、余計に混乱してきてしまった。……だから、もう考えるのをやめよう。私はテーブルに向き直り、再び深呼吸しながら使い終わったメニューとタッチパネルを元の場所に仕舞おうとした。)

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