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久遠 一縷【秋】 [×]
ID:be70ee1d0 2024-03-20 04:05:54
(/絡み文を投下しておきます。よく知る幼馴染とお気に入りの後輩を募集しております!良縁をお祈りして…。改めて、皆様よろしくお願いします。)
ある水曜日の昼下がり。賑やかなる中庭を他所に、4階の文芸部室にて眠った女が1人。夢に揺蕩う狭間で潮風が?を掠めては、丸めた背中に暖かな斜陽が差す。静謐に閉じられたままの睫毛は安らかな寝息と共に息付き、軈て微風に遊んだベールの陰に覆われる。瞬間、震えた睫毛がゆっくりと開き、目を覚ました。
とっくに退部をしたというのに、すっかり馴染んでしまった部室のソファ。ブランケットも持ち込み、いよいよ私物化されつつあるこの部屋は、 女にとって唯一安らげる居場所。亜麻色の髪が、気まぐれで悪戯な風に靡くのと同時に、気怠げに状態を起こしては欠伸を一つ。緩やかな足取りで開き放した窓際へと歩み寄れば、我が校の昼食の情景を見下げた。
微かに香る潮の匂いが鼻腔を伝い、 安寧を産む。長閑な時を過ごす学徒等を見下げると、こちらの視線に気付いた数人。
「……。」
視線が合えば、嫋やかに。弧を引き、愛想の良い笑みを浮かべるも。慌てた様子で彼女等は会釈をし、そそくさと中庭を去って行ってしまう。そこで思い出す。
今の"噂"は何であるかと。
「…なんだったかしら…確か……"有名小説家との愛人契約"とか…だったかしらね。……ふふ。…面白いわ。…」
自らに関する噂話。風評被害にもなりかねぬそれを、こうも愉快に捉えられるのは女の性格故だろう。まるで他人事のように、クスクスと微笑んでは戯言を髄まで楽しむ。
昔から、誤解されやすい質であった。
それ等の誤解を解く事をやめてから、長く経つ。だが今となっては傷つく事もない。
たった1人。ただ1人だけが本当を知っていてくれればいいのだから。
「……今頃、何してるかしら……」
世界にただ1人の大切な幼馴染。想いを馳せては、唇から零れ落ちた。その人だけが本当を知ってさえいれば、その他が何を誤解しようと、女に何を見出そうと、どうだって良いのだ。窓を閉め、カーテンを閉める。薄暗い部室を後にすれば施錠し、徐に廊下を歩き出したのだった。
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