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自分のトピックを作る
31: ギデオン・ノース [×]
2022-06-10 03:04:00




(こぼれ落ちそうなほど見開かれた瞳が次第にきらめきを取り戻し、お抑えきれぬ喜びがまるで無垢な子どものように小さな足先に現れるのを見て、こちらもふっと表情が和らぐ。昨夜から今さっきまでの妙な様子を忘れてしまえば、新進気鋭の冒険者としてヴィヴィアンは好ましい。今この瞬間感じた誇らしい熱が、将来遭遇する苦境において支えになればいいと願った──かつて師匠が自分に与えてくれたように。それからの数十分は、意欲満々な彼女と昨夜の作戦の感想戦を行う、即興の講義めいた帰路となり。無事帰り着いた先、市長から預かった依頼完了書をギルドに提出しに行けば、何やら自分を探していたらしい仲間に呼ばれ、すぐ次のクエストに駆り出されることとなる。報酬の折半は自動で行われるので、ヴィヴィアンと顔を合わせたのはしばらくの間それが最後で。──大型クエストの前衛、若手の指導、査問協力、と慌ただしく過ごすことひと月。数週間ぶりの休日を経てギルドに顔を出したのは、再び指名が入ったとの呼び出しがあったからだ。大抵の仕事は互いに関連する性質上ある程度予測できるが、今回はまるで心当たりがない。固定の仕事もひと段落ついているのでブッキングは免れたものの、はてどこからの依頼だ、と怪訝に思うばかり。戦闘時よりいくらかラフな格好で、顔馴染みと軽く挨拶しながらエントランスを潜り抜け。)



(/今回のビビもすこぶる可愛くてたまらないです……(深夜の挨拶)
市民からのクチコミや紹介、最高の理由ですね!?前回イベントが活かされるメタ的な合理性もありますし、何よりギデオンとビビのラブコメっぷりを見た彼ら全員とも、ふたりのその後が大いに気になってそうで……!(実は例の市民たちに、個人的にも深い愛着がわいております。もし良ければ、街に名前を付けてほしいという我儘をお願いしてもよろしいでしょうか……!)
再会まで1ヶ月ほどですね、かしこまりました!先の展開が楽しみなので、その辺りまで早速サクッとダイジェストさせていただきました。
主様が具体的に書いてくださったギデオンの豹変・油断していたビビという案も最高で、イメージだけで今からわくわくしております。そこに至るまでの過程は、テンポを重視し、後者の程よい飛ばし飛ばしでお願いしたいです。
ビビの恋愛感情の深化は、主様ご提案の複合型のようなものを希望させていただきたく……!ビビの猛アタックの結果、(応えるかは別として)緩やかに負けるように絆されたギデオンが男の顔を見せ始め、それにどぎまぎするのが恋愛感情の中段階、その後だんだんと双方を見るようになることでギデオンの過去を知り、「幸せになっていいんだよ」と言葉や行動で伝えるようになる辺りでギデオンへの本物の愛情が芽生えだす……というのが非常に美味しかったりします。この案はガッツリ私得を込めさせていただきましたので、主様にとって美味しくてたまらないものとも上手く混ぜ合わせ変えていきたいなと。
また、こういった段階を踏まえる場合、ギデオンが墜ちるまでの間ふたりで重ねるクエストごとに、到達目標や進展のための布石などを緩―く設定してもいいかなと考えております。目先の次イベントに関しては、①「酔った勢いではなく本心から猛アタックするビビ」と、「あれこれ言って応えようとしないギデオン(※まだクソデカ感情は抱いていない状態)」の基本構図の完成、②最後の辺りで、ほんのちょっとだけ進展して終わる(ビビの小さな勝利)というような感じでしょうか?②で言う進展は、例えば「この賭けに私が勝ったら一緒にディナーを食べてください」などと吹っ掛けたビビが、無事ディナーデートにこぎつける、なといったイメージです。
最後なのですが、ギデオンがビビから狡く逃げ回る理由について、年齢差にももうひとつ別の柱があれば、いたちごっこを長く楽しめそうかなと考えております。ビビの父母か祖父母を大変尊敬していて、そんな人の孫娘に(よりによって自分が)手を出すことはできない……だとか、あるいは過去関係で何かの期限を抱えており、いずれ彼女とはいられなくるとわかっているため深い関係にならぬよう気をつけている……だとか。おそらく絡んでくるギデオンの過去関係含め、何か希望はありますでしょうか。
毎度毎度長文乱文になってしまいすみません、諸々ご検討お願いします……!)





32: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-10 16:40:07




( それは二日酔いの体調不良を差し引いても、夢のような数十分だった。此方が1つ疑問を投げかければ、豊富な実践経験に裏打ちされた多彩な答えが10も20も返ってくる。夢中になってあれやこれやと話込めば、あんなに長く感じた往路に対して、復路はあまりにも一瞬で。忙しそうなギデオンの背中を少し寂しそうに見送ってから、じっとしている時間はないと弾む足取りで掲示板まで向かった背後に、あの不快な粘ついた視線が張り付かないことをついに思い出すことはなかった。 )

ギデオンさーん!!お久しぶりです!
もうお話聞かれました?

( そうして迎えた1ヶ月後。ギデオンと別れてから、作戦指揮を実践できるような依頼を積極的に受けていたから、最近の活動は歳若いヒーラーにそれが許されるような低ランク依頼が中心となっていた。そのお陰で街の周囲の雑草は一掃され、低ランクモンスターから採取する"麦もどき"が原材料である来年のお酒は大豊作となり、ギルド外にも少しばかりビビのファンが増える結果となった。そんな街の近郊とギルドを往来する毎日に、その依頼がまいこんだのは数日前のこと。忙しいギデオンより先に、ギルドから呼び出しのかかったビビは、エントランスを抜けた先のロビーにて、ぴこぴこと飛び跳ねながらやっと現れたギデオンに満面の笑みで手を振って。
今回の依頼は、遠方の港町で夜な夜な老若男女が失踪している事件の解決とのことで、一か月前にワーウルフに悩まされていたシルクタウンからの紹介らしい。紹介状に2人の関係が夫婦かの如く書かれているのを見た時は、流石のビビも自身のやらかしを棚に上げて苦笑せざるを得なかったが、都合の良い勘違いを態々訂正する必要性も感じずに、怪訝な顔をしている看板娘にウインクして、依頼状だけを受け取るとこの場でギデオンを待っていた次第。「またご一緒できて嬉しいです」と微笑んで、もし求められれば依頼の内容をかいつまんで説明するだろう。そして両手を胸の前で握って大きな目をこれでもかと輝かせると、年齢不詳の魔法使いであるアリスの助言を思い出して、ぽっと頬を染め、先程からチラチラ此方を伺っていた男どもを大いにざわつかせて。 )

仕事なのは分かってますけど、私海初めてなんです!
あっあの、ギデオンさんはどんな水着がお好きですか……?


( / お褒めの言葉ありがとうございます!かなり好き勝手に振舞っているビビですが、そう仰っていただけて安心すると共に非常に嬉しいです。ギデオン様もとても格好よく頼もしくて、昼夜問わず毎度背後までドキドキさせられております。
紹介やクチコミについてご賛同いただけて良かったです。ビビの奇行を表現するための市民の勘違いだったのですが。背後様の描写によって非常に陽気で可愛らしい国民性(市民性?)に生まれ変わった彼らに、此方も愛着が湧いておりました。今回の依頼を表現するにあたって名前をつけさせていただきましたが、当方ネーミングセンスに激しく自信がなく、ごくシンプルになってしまったため、もっと素敵な案があれば教えていただきたいです……!
場面転換も感謝致します。進行の過程、飛ばし方について把握致しました。背後様の複合案も非常に素敵でとっても美味しく、ぜひそのような流れで進行出来ればと考えております。
到達目標や進行の布石の設定大賛成です。①②共に非常に魅力的で完璧な流れですので、是非そちらでお願い致します。③で当初にお話したダブルベッド事件と、④でギデオン様がビビから逃げるもう1つの理由が分かり、⑤でギデオン様の過去に関わる依頼、という流れも考えたのですが、①②の流れ次第で変更しても良いですし、ダブルベッドは⑤の展開後がいい、もう少し⑤の展開を遅らせたい、もっと根本的に違う展開をご希望などあれば是非お申し付けくださいませ!
こちらこそ毎度読み辛い文章ばかりで申し訳ございません。背後様には毎度丁寧なご配慮を頂き、乱文ところか非常に読みやすいのでお気になさらず……! )




33: ギデオン・ノース [×]
2022-06-10 19:07:18




((嘘だろ)というように片手で顔を覆う仕草を、隠す気にもなれなかった。瑞々しい全身を元気に跳ねさせ挨拶する若手のヒーラー娘、ヴィヴィアンと、一瞬彼女に見惚れ、次いでこちらに注目し、好奇と嫉妬に危うく色めき立つ周囲のむさくるしい野郎ども……という構図には、非常に嫌な既視感がある。まあ、きっと大丈夫、だろう。あれからだいぶ経っているし、相手があちこちで忙しく頑張っていた噂も小耳に挟んでいる。純粋な良き後輩としての方向へ成長しているに違いない、はずだ。そう願いながら歩いて行き、「しばらくぶりだな。まだだから、とりあえず一通り聞かせてくれ」と、周囲の視線に気づかぬふりを貫きながら相手の隣に陣取って。──ヴィヴィアンの説明によると、何でも今回は、先月訪れたシルクタウンの口利きによる依頼らしい。港町の失踪事件ということで、普通ならまず人為的な事件を疑い警察が対応すべきもの。ところが、田舎町の一部にはよくある話で、汚職にまみれた現地警察は日々怠慢の極み。現地ギルドまで彼らとの癒着が酷く、まともな捜査がまったくもって期待できない。とはいえ、外部の公的権力による介入を要請するのでは時間がかかり、次の犠牲者を出してしまう。そこで、“信頼できる”“よその町の”“民間のプロ”を探していた矢先、交易で縁のあるシルクタウンから、自分とヴィヴィアンの噂を聞き付けたとのことだった。なるほどな、とため息をつく──最近のスケジュールが妙に一気に片付いたわけだ。ギルマスも紹介状と依頼状に目を通しているはずで、これはつまり、よそのギルドの腐れっぷりを視察して来いという指令も含まれているのだろう。
きな臭い気配、そこに純真無垢な若手のヴィヴィアンを連れて行かねばならないことに頭が痛くなりそうだが、断る選択肢はもちろんない。現地にどのルートで向かうべきか、顎に手を当て考えて込んでいたところ、不意にかかった声にぴたと視線を中空にやってからそちら振り返る。そこには……非常にあざとい、としか男の目線では言いようのない有様の相手。おずおず尋ねる声に何も返せぬまま、大きな瞳や林檎色の頬、豊かな胸元で合わせられた手──決して胸を見たわけではない──に目をやり、真顔の状態で彫像よろしく凍り付くこと5秒ほど。やがてどこからか、クックックと笑いながら近づき、「嬢ちゃん、こいつぁなぁ、水着よりむしろすっぱd……」と口走ろうとした古馴染みの口を咄嗟に後ろ手に塞いだのは褒めてもらいたい。奴に雑な雷魔法を放って沈めると、やけに不器用な早口で返事と必要事項を告げながら、せっかくの再会にもかかわらず逃げるように抜け出してしまって。)

水着は好かん、海も行かん、3時間後に出発だ、東広場で。



(/諸々ご丁寧なお返事、ありがとうございました!
シルクタウン、シンプルながら響きも文化性もとても好みで素敵です……!実際、このくらいシンプルな方が覚えやすいですし、絹織物が特産品なのかなあ、蚕の使い魔が多かったりするのかなあ、などと想像して早速楽しみまくっております。本当にありがとうございました……!
主様ご提案の①②③④⑤の流れに、まったく異存ありません。強いて言えば付け加える程度の要望がありまして、⑤以降のどこかで、二回目のダブルベッドイベントがあっても美味しいかなと考えております。というのも、ギデオンがビビにデレるようになる前となった後とで、同じイベントのはずなのにまるきり違う展開を見せる、という対比モノも楽しそうだという煩悩が……!とはいえこれはだいぶ先のことですので、今はアイディアの共有程度のつもりでお出しさせていただきました。ひとまず①②に向かってロルを進めてまいりますね!)





34: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-11 00:27:50




ええーっ!!海っ……はぁーい……

( これで喜ばない男はいないわよ──って嘘じゃん!!と、まさか寄りによってギデオンに使うとは夢にも思っていなかっただろうアリスに、不当な憤りを感じながら肩を落とすと、しょんぼりと逃げるギデオンの背中を見送って。世の中には腐敗したギルドがあることも、雷で沈んだ隣の男が言わんとした意味もわかる程度には、ギデオンが思うほど初とも言えないヴィヴィアンだが、今回は純粋に海を見てみたい気持ちも大きかったようで。つまらなそうに男のそばにしゃがみ込めば、焦げた頭髪に手をかざし治療してやってから、依頼の準備に取り掛かろう。 )

──今度のギルドは行かれたことあるんですか?

( あれから3時間と30分後、依頼主の住む港町に向けて川を下る中型の旅客船にて。欄干に乗り出してポニーテールを風に靡かせながらギデオンを振り返ったのは、ビビにとっては冒険者になってから初めて訪れる他ギルドになるためで。建前上は2人の所属するギルドからの応援という形で街を訪れる以上、最低限のマナーは守るべきだろうと、各地のギルドを訪れたことがあるだろう相手にお伺いをたててみる。依頼書の写しを読み返しながら、珍しく小さな溜息をつくと、ローブの上からぎゅっと自分を抱きしめるようにして。 )

幽霊船って噂もあるみたいですよ。ゴーストって殴れるんですかね……。


( / 早速ロルにも登場させていただいて光栄です。仰る通りで、珍しい特産物で潤う小さく豊かな街を想像して名前をつけさせていただきました。蚕の使い魔さん……想像が広がりますね!
進行について、そう仰っていただけて良かったです。2回目のダブルベッドイベント最高に楽しそうですね……!!1回目との対比なんて聞くだけでワクワクしてまいりました!是非其方でお願い致します!
④について前回お返事しそびれてしまったのですが、ビビの縁者をギデオン様が尊敬しているという展開がよろしいかと考えております。父親については魔法使いと描写してしまったため、祖父母でもよろしいのですが、年齢的にもビビの母親が師匠だと自然かと思うのですが如何でしょう?その場合、ビビの物心着く前に既に亡くなっているか、冒険者としては引退しているイメージです。 )




35: ギデオン・ノース [×]
2022-06-11 12:10:10




二十年ほど前だったか……一度だけな。出来立てのその頃は、まだまともに運営してたよ。

(船の舳先が水面を割る爽やかな水音が、耳を心地良く擽る。そのさなか、こちらは甲板に誂えられたベンチに腰を下ろした状態で返事をし。掌を翳して影を作り、真剣に読み込んでいるのは、先方のギルド──トリアイナに関する資料だ。記録を見るに、ここ三、四年で主力の総入れ替えのようなものがあったらしく、当時知り合った冒険者の名はひとつも見当たらない。これでは自分も、ヴィヴィアン同様まったくの新顔として扱われるだろう。ギルドの雰囲気がおそらくがらりと変わっている以上、相手に失礼のないようにというのはもちろん、自衛のため慎重に振る舞うのも忘れないようにとアドバイスして。相手が呟いた最後の一言には、そのヒーラーらしからぬ物騒な物言いに可笑しさを含んだ声を返す。一通り目を通し終えた資料の羊皮紙を胸元に仕舞い込めば、そういえば聞いたことがなかったな、と目を細めながら尋ね。)

聖魔法を纏えば、まあいけるだろう。その辺りの覚えは……そもそも、おまえは何種類の属性を扱えるんだ?



(/お返事ありがとうございます!ビビの母親と縁がある、というのはこちら側でもこっそり考えていた案のひとつでしたので、是非それでお願いしたいと思います。亡くなっている場合は故人への思慕を突き詰めているせいで……となるでしょうし、あくまで冒険者として引退しているだけの場合も、敬愛する彼女本人の目がちゃんとある以上、愛娘のビビに手を出したくない……という葛藤がありそうです。この辺りは主様の好みに適うほうをお選びいただければ。また師事の詳細について、14歳のころ一年ほど、彼女がビビを身籠るまでの間みっちり鍛えられていた(若さゆえ本気ではなかったが、うっすらと憧れに近い恋慕もあった)、という設定をぼんやり考えておりますが、如何でしょうか。母親の名前や容姿、性格、ビビとどの程度似ているかなどについて、後々でも構いませんのでざっくり設定していただけますと幸いです。)





36: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-12 09:58:19




……なんだか嫌な感じだね。

( 物心着く前に母が亡くなり、父はギルドマスターとして多忙を極めていた幼少期、冒険者たちに見守られ、ギルドを遊び場にして育った元少女としては、古参の冒険者達がギルドを見放す様な事情など、考えたくもないことの一つで。自然と刻まれる眉間の皺を隠すように、キラキラと輝く水面に視線を投げ出せば一言だけ、しっとりと私情の滲んだ声をぽつりと漏らして。勝手に落ち込む権利も時間も自分にはないと、意識して冷静な表情を作って振り返ると、欄干から甲板に飛び降りるように体重を移す。長い歩幅を活かして数歩で甲板を横切って、アドバイスを聞きながらギデオンの隣にぽすっとベンチを軋ませると、距離感に怯まずトリアイナの資料を覗き込み。相手の返答に表情こそ凛々しいままに、安心した様に小さく息を吐くと、何かを覚悟するかのように拳をぐっぱしていて。 )

聖魔法か……ヨシ、
使い物になるのは──火、風は当てるだけなら何とか。土は、調子次第といいますか……今後に期待といいますか……

( この世界の魔法は、火、風、水、土の四元素と、闇、聖、それらのどこにも当てはまらない無属性から成り立つ。複数の属性を使いこなす魔法使いもいれば、特定の属性にのみ高い適性を発揮する者もおり、大魔法使いともなれば全属性を使いこなすが、魔法の能力は個々の生まれ持った感覚と、想像力に左右されがちで、魔法使い同士には誰かに師事するなどの関係性が希薄な面がある。ヒーラーは聖魔法のうちでも、主に回復魔法に高い適性を持つ者達だが、同時に土や無属性など防御に徹する魔法に適性が高いものが多く、己のピーキーさについては思うところがあるようで。気まずそうに自身の後れ毛を指で弄りながら、赤い唇を尖らせると、ぐっと両手を握って至近距離でギデオンを見上げ、キラキラと好意を隠しもしない真っ直ぐな視線で見つめて。 )

でも聖魔法なら自信ありますよ!
ギデオンさんの為ならどこでも駆けつけるので、いつでも呼んでくださいね。


( / 幼い頃からの憧れの冒険者と、若い恋慕のあった今は亡き師匠の娘……!非常に切なく王道で好みの設定ですので、ベタではございますが其方の方向で是非お願いしたく思います!
ビビの母親については、今度時間のある際に簡易PFをまとめさせていただきますので、取り急ぎお返事まで。現時点で目の色、真っ直ぐな性格はヴィヴィアンが似ていると良いなと考えております。 )




37: ギデオン・ノース [×]
2022-06-12 12:25:07



(触れ合うほどの近さで座ったうえ、香油の匂いがふわりと漂う栗色の頭をさらに寄せてくるヴィヴィアン。対するこちらは屈めていた上体を起こすことで距離を取りながら、流石に何か言おうとするが、相手の目的が同じ資料に目を落とすためとあっては無碍にするわけもいかず。結局は軽く目を閉じ、無音のため息ひとつで許すことにして。頼もしい──と思いきやだんだんすぼんでいく返事には、「……なるほどな」と感心半ば、やり返すように揶揄半ばの声を。相手の役職はヒーラー、主にパーティ-メンバーの回復支援やバフがけを担うポジションである。本来ならば、ヒーラー自身の口から攻撃を当てる当てないなんて言葉が飛び出すのはかなりおかしい。が、襲い来るモンスターを高火力の攻撃魔法で吹っ飛ばし、それで稼げた隙を使って治療にあたる、なんて力業が噂になるような娘だ。加えて父親が大魔法使いともなれば、三属性目の攻撃魔法を覚えようとしていても驚くことではないだろう。……が、次いで向けられた好意全開の言葉に、やや顔をしかめながらそちらを見たせいで。優しい形に笑むエメラルドの瞳に捉えられ、一瞬だけ静止した。──あのひとも、同じような初夏の陽ざしの中で、似たような目の細めかたをしていた。過去に引き戻される感覚、仕事に差し障るであろうそれを早いうちに断ち切るべく、虚空を見つつ即座にこれまでどおり記憶に蓋を。傍らに置いていた別資料、トリアイナのある港町の地図や海辺のモンスターに関するそれを徐に片手で取り上げると、その眩しさをいなすように相手の顔にぽんと乗せ。)

馬鹿言え、まだそこまで耄碌しちゃいない。




(/良かったです……!情報ありがとうございます、早速使わせていただきました。今でも充分材料になっていますし、本当に簡易で構いませんので!また裏設定として、幼いビビがギルドで遊んでいた当時のギデオンは年単位のクエストに出ていたことにしますね。ビビに対する一線は敬愛する師の娘であること、またおそらく一度か二度くらいは幼いビビを見たことがあるからだと思っておりますが、あまり成長前の面識がありすぎない方が恋愛要素も盛り上がると思うので……!諸々大丈夫そうでしたら、お返事には及びません。いつも詳細に打ち合わせしてくださりありがとうございます!)





38: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-13 02:40:37




耄碌って!!

( 相手の言葉に含む揶揄の色にむう、と益々唇を尖らせれば、私だってヒーラーとして使い辛いことは分かってますよ、と口には出さないものの、居心地悪そうに背中を丸めて不機嫌を隠すように足を前に伸ばす。至近距離で真っ直ぐ相手の顔を捉えれば───今、一瞬別のこと考えたな、なんて。余計なことに気づける程度には相手のことが大好きで、その目に滲む懐古的な光の意味を尋ねられない程度に臆病だった。資料を額に甘んじて受ければ、「そこまで言います!?」と、ポップコーンが弾ける様に立ち上がり、腰に手を当てあざとく頬を膨らませて見せ。ふーんだ、と態とらしく拗ねた振りをしてギデオンから離れると、青空と水面から逆光を受けて振り返り、恋の熱に浮かされた瞳を悪戯っぽく細める。そして己で拗ねた振りの可笑しさに耐えかねたように、この空にも負けず劣らず明るい笑い声を上げて。 )

んーっ!なんだか暑く感じますね、不思議!

( 翌朝、もう殆ど海に近い河口の停留所で、他の客に混じってタラップを降りれば、半日とはいえ久方ぶりの揺れない足元を確認するように飛び跳ねてみる。仮にも仕事中であるから多少は自制しているものの、初めての遠征に何処かふわふわした様子も見受けられたが、更にここから馬車で数時間という出張の中休みに伸びをしつつ周りを見回し、人が掃けたのを確認すれば、スッと表情を曇らせてギデオンを振り返り。昨晩船上で聞いた怪談話、最近トリアイナのある街の港では、幽霊船が度々目撃されているという。その船が目撃された次の日には、必ず誰か行方不明になるというではないか。それだけであれば、すわ誘拐かと人間を殴るつもりで乗り込めば良いが、船を見慣れているはずの市民が皆、口を揃えて幽霊船はあのエウボイア号だと証言しているという。4年前、出航して依頼行方がわからなくなっている豪華客船エウボイア号。当時トリアイナはギルドマスターの代替わり直前、古参冒険者達と、現ギルドマスター派の新参冒険者で、ギルドは真っ二つに別れていたらしい。そんな中、トリアイナ創設にも関わった古参冒険者が複数名、このエウボイア号に乗船し行方不明となると、それを皮切りに残った古参冒険者達も、1人また1人とトリアイナを去っている。これをただの偶然と捉えられるほど、呑気な性格では冒険者はやっていけないだろう。 )

ギデオンさん、あの、エウボイア号って……関係なく、ないですよね。


( / お返事ありがとうございます。少ない情報をこれ以上なく素敵に活かして下さり感動しております!
幼少期の面識についてもご配慮頂き感謝の気持ちでいっぱいです。2人の所属するギルドの規模は数百人単位の巨大なもので、幼いビビと関わりがあったのはごく一部の冒険者というイメージでしたが、此方の説明不足でご迷惑をおかけして申し訳ございません。勿論長期不在の設定も非常に魅力的なのですが、もし此方へのご配慮で無理に設定されているのであれば、その必要は無いということをお伝えしたく、返信させて頂きました……!
今回の依頼の真相としては、ギルドぐるみの人身売買を突き止め一件落着と思われたところで、再び犯人のうち1名が行方不明者に。他の犯人たちも幽霊船には心当たりがないと主張→当時の犯人達が剣士ごとエウボイア沈めるために船に細工をしたのを、恨みに思って幽霊船と成り果てたエウボイア号が、犯人を海に引きずりこみハッピーエンド()という展開をイメージしたのですが、世界観等のご都合如何でしょうか?背後はファンタジー世界でのホラーはかなり好きなのですが、好き嫌い別れるところだとは思いますので、少しでもご不安があれば御遠慮なく仰ってください。また、背後様には相手方ギルドの情報などかなり細かく描写していただいてるので、もしご検討されている展開が既にあれば教えていただきたいです。 )




39: ギデオン・ノース [×]
2022-06-13 11:30:48




((単なる照れ隠しだな)と、口にこそ出さぬもののまたからかうようなまなざしを投げようとして。しかし実際に向けていたのは、何かまばゆいものを見やるようなそれだった。晴れ渡った青空も、きらきら輝く水面も、彼女の背にあるものは確かに光にあふれているし、こちらを振り向くヴィヴィアン自身はいっそ陰になっているのだが。幼い少女のような素振りも、大人の女性としてのほんのりした恥じらいも、年頃の娘ならではの若さ溢れる弾けるような笑顔も、そのすべてを煌めかせる生来の底抜けの明るさも、何もかもがあたたかに眩しくて。ああ、と納得してしまう──これは、ギルドの男どもが彼女の虜になるわけだ。今はそうして客観的に捉えられていたものの、やがてそうも立ちいかなくなってくることなど、まだこの時は知る由もなく。)

ああ、間違いなくこの件に絡んでるだろうな。だからさしあたり、船の目撃者に地道に聞き込みをするのが足掛かりになるだろう。出没する時間帯や海域に規則性があるようなら、そこを狙って構えれば、何かしら掴めるはずだ。が……

(そんな一幕から数時間が経った頃。船旅を終えてようやく下船し、一息つく目的もあって入った乗合馬車の待合室にて。相手の言葉に頷き、胸元からメモ帳を取り出すと、相手にも見えるように傾ける。そこには、昨晩ふたりで整理したありとあらゆる情報が記載されていた──港町で多発する失踪事件、幽霊船の目撃情報、何故か一向に機能しない警察。そして4年前に起きたトリアイナ内の新旧対立と、その後忽然と消えてしまったエウボイア号……今噂になっている幽霊船の、以前の姿。やはりこの事件は、よくある魔物騒ぎではない。何らかの利害関係が絡んだ、人の手による異変説が濃厚だ。……しかし、どうにも拭えぬ疑問も多い。この件の背景に、仮に人攫いが潜んでいるとして、男なら炭鉱労働者、女なら性奴隷にしてしまうのが常である。そしてそれは当然、若年から壮年の人間に限られ、子どもはまだしも、年老いた老人を誘拐するメリットなどない。ところが信頼できる筋からの記録を読む限り、老若男女が本当に満遍なく姿を消しているようだ。幽霊船の噂についても、実際に被害に遭っている市民たちすら真剣に口を揃える辺り、単に黒幕が流したブラフであるとも言い切れない。人間の手が入っているのは確実な一方で、魔物や怪異が絡む線も捨てずにおくのが堅実だろう。眉根を寄せながらそれらについて相手と共有すると、「厄介だな」とため息をつき。ちょうど港町行きの馬車が到着したらしい、ぱたりとメモ帳を閉じて仕舞い込めば、乗り場の方へ歩きながら。)

……警察とギルドがどういうラインで繋がっているのかも気になる。未解決事件の記録は当然教えてくれやしないだろうし、そもそも署内で揉み消されている可能性もあるな。地元に長く住んでいる人間に、何か不自然に放置された事案がないかも尋ねることにしよう。



(/イメージの共有ありがとうございます!これまでも含め、設定について全く無理はしていないのでご安心ください。当時のギデオンの動きについては、主様のイメージに合わせたい&今後の展開に沿って自由に作り込めるようにしておきたい意図から、空白部分にしておきますね!

ファンタジーホラー要素についてですが、まずは丁寧にご配慮いただきありがとうございます……!寧ろ大好物ですのでこちらもご安心ください。当方のほうでも、モブとはいえこの先死者が出るとして、主様的にそれはどうだろうかと懸念しておりましたので、とても安心いたしました。また現在、このトピックならではのファンタジー要素を大いに楽しみまくっている(シルクタウンに始まり、今も船旅の雰囲気をたっぷり味わっておりました……!)のですが、逆に主様の好きな・本来の趣旨である「逃げ回るくせにたまにデレるクソデカ感情持ちのオジサン×猛アタックする女の子」要素が薄まっているように感じさせてしまっていないか?と心配しております。この辺り大丈夫でしょうか……?塩梅の変更は随時対応可能ですので、主様にとって本来通りの楽しみが得られるようにできればと思います。

事件の詳細についてもお尋ねくださりありがとうございます!込み入ったものになってしまいましたが、以下のようなものを考えておりました↓

・4年前、港町の警察署に新署長(黒幕)が就任。この港町に赴任したのは、魔法により普通の船には認知されない小さな島が近くにあり、そこには「人の魂を捧げると、代わりに金を生み出す魔物」が潜んでいると知ったため
・署長の手引きにより、まともな警察とギルドのある街に立ち入れないような犯罪歴のある、無法者の冒険者たちがトリアイナに流れ込む
・署内とトリアイナ内の顔ぶれをじわじわと入れ替えて支配下に
・トリアイナが人攫いを担当し、警察がそれを揉み消すという体制が整うと、三か月に一度、小島に生贄を送って魔物に金を生み出させ、それで儲けを得るように
・しかし最近、警察側とトリアイナ側で金の取り分に関し揉めるように。警察が把握している分は獣害や魔物による被害などの偽装を施せていたが、欲張ったトリアイナが余分な生贄を島に送るようになり、それが最近謎の失踪事件として人々の噂にのぼりはじめた

主様ご提案の内容とも齟齬なく組み合わせられそうなので(それぞれ奇跡的に、事件のあらまし・事件のその後という分担になっているかと)、良ければざっくりとこの方向で行ければと思います……!ようやく解決したはずが犯人側から失踪者が出るホラー展開、そこにはエウボイア号自身の怨念・あるいはともに沈められた真のトリアナ冒険者たちの復讐心があった展開、本当に最高過ぎて!是非この事件を、ギデオンとビビの進展を支えるしっかりした下地として追わせていただければと思います……!
また、ワーウルフ編に比べ複雑な内容になってきたかと思うので、実際の聞き込みなりは程よくダイジェストしてしまってもいいかなと。)





40: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-13 15:18:55




( 私が近づくと迷惑そうに身構える大人の顔も、私を通して他の誰かを思っている時の少年のような目の揺れも、彼を好きにならなければ見られなかっただろう。 それだけで幸せ──なんて、謙虚で殊勝な意識はさらさらなくて、いつかはヴィヴィアン自身に目を向けさせてやらんという、若々しい不遜な野望に浮かべた笑顔を更に深めるも、今この依頼の間は彼の隣で戦わせてもらえる幸せな時間に甘んじることにして。そのためにもまずは、冒険者としてこの依頼に真剣に向き合おうと心に決め直した。 )

──承知しました……警察と、ギルドと市民……うああっ、やっぱり一筋縄じゃ行きませんよね。

( そうして始まった馬車内での作戦会議は、シルクタウンからの帰り道とはまた違った温度を持って白熱した。聞き込みから現場を抑えるという基本はビビでも思いついたが、人攫いが狙う年齢層などの裏事情や、警察とギルドに関する細かい法律関係などは、ビビ1人では絶対に思い至れない 経験の差をありありと感じさせられて。うめき声と共に頭を抱え、元々繊細な配慮などは得意分野ではないとはいえ「全部魔物の仕業なら殴れば済むのに」という暴言からは、街に着く前に既に気疲れの色が見てとられ。そうこうしている間に、馬車に伝わる揺れは舗装されていない土の上を走るものから、規則的に揺れる硬い石畳のものに変わり、周囲の音も活気溢れる港町らしいものが飛びこんでくる。そんな町で夜な夜な起こる事件のことを考えれば、幌の外を覗くのも躊躇われているうちに馬車が停車し、年老いた御者の到着を伝える声が聞こえて来て。最初の目的地は疑惑のギルド・トリアイナ。2人のギルドとも同じ、役所の認証である公認ギルドの意匠の下に、小さな三叉槍のデザインがクロスされる鉄看板が壁からはえる立派な門構え。元は美しく輝いていただろう看板は、潮風に晒されて今や見る影もなく赤錆に覆われている。ギルドの精神ともいえそうなそれを磨く者すらいない現状に、戸を叩く前から既に心が重くなり、大きなため息をひとつ漏らすと、少しでも気を紛らわせようと、断られる前提の軽口を叩いてみて。 )

……やる気出すために、関係聞かれたら夫婦だって答えていいですか?


( / イメージの把握と、お気遣いありがとうございます!以後、説明不足には気をつけて参りますが、また背後様の方でもイメージの相違などありました場合は、お気軽にご相談いただければ幸いです。大変失礼致しました。

ホラー要素について、そう仰っていただけて非常に楽しみです!!死者の扱いについては軽くなりすぎないよう気をつけつつ、背後様が苦手でなければ、世界観上 物語の陰影のために登場させることも想定しておりますが如何でしょうか。世界観は此方こそ素敵なロルでたっぷりと楽しませて頂いており、背後様には本当になんとお礼を申し上げれば良いか……!「逃げ回るくせにたまにデレるクソデカ感情持ちのオジサン×猛アタックする女の子」要素については、以降の目処は着いていますし、背後様がギデオン様の内心をとても素敵に描写してくださるので、此方は現時点で大満足ではございますが、この口上で募集をかけている以上、背後様に物足りなさを感じさせてしまっていないか心配しております。恋に盲目すぎる子は苦手とのことですので、真面目なシーンでは少しセーブしていたのですが、今回少し押し強めに調整致しましたので、苦手であれば仰ってください。

事件のあらましも本当に詳細にありがとうございます!世界観にピッタリで、海賊の宝探し的なロマンも感じられて非常に興奮しております……!! 背後様のよくねられた展開と比べると非常に稚拙でお恥ずかしい限りですが、仰る通りの合体案が大変魅力的ですので、是非そちらでお願い致します!確かに聞き込みはダイジェストの方がダレずによろしいと思いますので、前回にもましてサクサク進行で参りましょう。

毎回細やかなご配慮と丁寧な相談をありがとうございます。長乱文でご迷惑をおかけし申し訳ございませんが、背後様のお陰で非常に楽しく2人の顛末を見ることができております。以上の内容で問題がなさそうであれば、お返事は省略して頂いて結構ですので、今後ともよろしくお願いします。)




41: ギデオン・ノース [×]
2022-06-14 10:03:22



……場合によっちゃ、ギルド協会への通報までが俺たちの仕事だ。

(相手の思想のバーサーカーぶりにも、今回は同意せざるを得ない。この込み入った事件を四、五人ならまだしも、たったふたりで解かなければならないのだ。依頼者から名指しされた事情に加え、非公式の抜き打ち監査をトリアイナ側に勘づかれないため、という意図もあるのだろうが……。荷馬車の揺れが変わったのに気付き、今一度地図を見直しながら、今回の引き際の一案を予め伝えておく。万が一存在する組織犯罪というものは、それほどまでに厄介な敵であると知っていて。──御者に礼を告げ、少し生温かさを感じる潮風を頬に受けながら歩くこと数分。以前の記憶は朧気ながらも、そこが変わり果ててしまっているのは明らかだった。建物を見れば、そこを利用する人々の性格や思想が読める、とは他でもない師匠の教えだが、果たしてこれは……と真剣に考え込んでいた折。隣から上がった声にもの言いたげな目を向けようとして、はたと中空を見つめ静止する。夫婦漫才を演じるというのは、特に傲慢な相手の油断を誘うのに意外と有効な手段だ。後で本人にしこたま引っかかれる羽目になるものの、スヴェトラーナとも時々使ったことがある。あの成功率を思えば意外にありかもしれない、と一瞬本気で傾きかけたものの、そこで名目上であれ相手のことを「妻だ」と言わねばならないと思い出せば、もう一度相手に目を向けて。男ならほとんどだれもが振り返るであろう、しなやかで豊満なスタイルと、何よりこの、ようやく少女を脱したばかりの溌溂とした若さ。……だめだ、犯罪だ。犯罪にしかならない。)

……偽装手段としてはありだが、あと10年は必要だな。

(顔を逸らしてぼそりと呟けば、紋章をあんな様にする連中には普通の礼を尽くしたところで無意味だろう、とノックすることもなく木製の戸を押し開けて。途端にむわんと漂ったのは、数種類の強い酒気。ロビーは薄暗く、長椅子やテーブルの上にすら寝そべる手前の男たちがこちらを胡乱気に振り返り。賭博の跡が伺える大テーブルの奥の方では、まだ昼前にもかかわらず、娼婦の姿がちらほら見える。男たちと軽くじゃれ合う程度で”本番”は始まっていないようだが、それでもあまりの堕落ぶりに言葉を失していると、「なんだ、だれか追加を呼んだのか?」と、すぐ側にやってきた大男が相手をずんと見下ろして。)



(/死者の取り扱いについて把握しました、大丈夫です!こちらも社会的にダークな部分に折々触れると思いますが、苦手なもの、もう少し控えめな方が好みなものなどございましたらお気軽にご相談ください。

また物足りなさ、については全くご心配なさらず。この物語の世界観も、ギデオンとビビの関係も、双方ともに毎回大満足させていただいております。今回の踏み込みも全然ウェルカムですのでご安心ください……!恋に盲目的なのは、という以前挙げた要素ですが、こちらの心配は背後様と複数回やり取りした中で完全に払拭されておりすということもここにお伝えいたします。世界観なり人間関係の変化なり、複雑に重なり合う構造が好みというのを背後は拗らせておりまして……その辺りの相性がどうか見るために挙げてさせていただいた、という事情が恥ずかしながら……!シリアス要素を引き立てるためにも、ギデオンが好きで仕方がないビビというラブコメ要素も、主様の心のまま楽しく投入していただければと思います。
あとこれは個人的に。トリアイナの意匠に元ネタを取り入れてくださったこと、大変嬉しかったです。ありがとうございました……!

お気遣いいただいた中心苦しいですが、最後に少しだけ必要なお願いが。トリアイナのある街の名前、ギデオンとビビの所属するギルドの名前、そして今回の依頼者はどんな立場の人物か、の3点について、これから便宜上必要になってくると思うので、主様の中でお決まりでしたら是非ご共有ください……!)




42: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-14 22:09:58



えー、バルガスには上手だって褒められましたよ!

( 元々にべもなく断られるつもりではいたが、作戦として考慮された上で具体的に不可と評価されれば、冒険者としてのプライドが刺激されてムッと頬を膨らませ。以前ほかの依頼で夫婦もとい、正確には恋人を装った際のことを思い出すと、既に扉を押し入っているギデオンに小走りでついて行きながら抗議して。ちなみに筋肉自慢の可哀想なバルガス君は、それでビビに本気で惚れ、白昼のギルド内で正々堂々告白してキッパリ振られている。そんな不満げながら元気な抗議も、ギルド内の惨状を見ればピタリと口を噤んでしまい。先程のギデオンの視線とは比べ物にならない、失礼で不躾な視線がジロジロと主に上半身に集まるのを感じれば、あまりの不快さに相手の後ろに隠れたくなるが、こんな連中に負けてたまるかと1歩進み出て。 )

キングストンのカレトヴルッフから応援に参りました。
"ヒーラーの!"ヴィヴィアンと申します。先に手紙を送ったのですが、届いていらっしゃいませんか?

( "追加"という表現に思わず、名乗る口調が強くなったのは許されたいところ。ビビの言葉を受けて「そりゃいいな!こっちで俺の"息子"の応援もしてくれや!」という野次にワッと上がった笑い声に、肩を震わせて唇を引き結ぶ。正面の連中から見れば、恐怖で涙を堪えているようにでも見えるかもしれないが、ローブの背中側の裾へ爪を立て、ギリギリと捻りあげている様を見れば、怒りに打ち震え今にも手が出そうなのを我慢しているのは明白で。ビビの言葉を聞いて、「ああ手紙ね……態々キングストンからご苦労なことで。」と、明らかに面倒そうな雰囲気を隠しもせずに長椅子から起き上がり、近づいてきた細身で黒髪の胡散臭い男は、書類上で見たトリアイナのギルドマスターの名を名乗って。「俺はジェフリー・カーン。俺もこの失踪事件には非常に心を痛めていてね。アンタたちが力を貸してくれると心強いよ。」年の頃はギデオンより10程上か、目元の皺を軽薄に深めると、白々しく2人の間に手を差し出して。 )


( / 諸々の確認とご相談ありがとうございます!
丁寧な説明もいただき、心から納得致しました。此方も募集でチラッと書いた通り、世界観を必要以上に著しく棄損するラブコメが苦手でして、世界観や様々な事情の上で折り重なる人間模様がツボな面倒なオタクのため、非常によく分かります!
これからもちょくちょく、雰囲気を壊さない程度にギデオン様に迫る描写を入れられるように致しますね。

地名について、今回も非常に薄くてお恥ずかしい限りですが、トリアイナのある街の名前はグランポート、2人のギルド名をカレトヴルッフ、またカレトヴルッフのある街の名前はキングストンと名付けさせていただきました……!依頼人はエウボイア号で師匠を失った、元トリアイナの見習いである青年を想定しております。治安維持組織が軒並み腐敗している中で、カレトヴルッフに依頼したことがバレると危険なため、大々的に協力はできないという設定を考えております。 )




43: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-14 22:17:46




( / 連続投稿失礼致します。以前お約束したヴィヴィアンの母親のPFが出来ましたので、上記と併せて確認お願い致します。)

姓名 / シェリー・グラハム(パチオ)

享年 / 28歳 (生きていれば51歳)

容姿 / 暗い焦げ茶色のカールしたショートカット。切れ長の睫毛の長い目は、ビビと同じ鮮やかなグリーン。身長155cm、小柄、細身。

人物 / ヴィヴィアンの母親、先代ギルドマスター、ギルバート・パチオの妻。非常に優れた剣士で才能だけは夫にも引けをとらなかったが、地位などには興味0の元祖脳筋。面倒見の良い姉御肌な性格で、娘にも増して真っ直ぐ。豪快で強い人。

備考 / ギルバートとはおめでた婚。ヴィヴィアンの出産で命を落とす。




44: ギデオン・ノース [×]
2022-06-15 00:56:54




(いつぞやの朝の中年どもなどまだ大人しいほうだった、そう思えてしまうほどにトリアイナの連中の反応は悪辣極まりない。男の自分でさえこの不快感、果たして直接ぶつけられたヴィヴィアン本人は如何ほどか。そつなく無表情を装うことは忘れないものの、内心は心配に思い横目で相手を確認すれば、力みすぎてさらに白くなる指関節を一瞬眺めることになり。──彼女が、あの猛る猪のような気性を持つヴィヴィアンが、それでもきちんと弁えて耐えている。ならば今この瞬間ではなく、のちの適切なタイミングで、ヴィヴィアン自身が思いきり鉄槌を下す機会を与えてやってこそ、彼女を預かる責任者たりえよう。こちらもそう腹を括れば、再び正面に視線を戻し、煩わしそうな顔の先方と形ばかりの挨拶を。差し出された掌に嫌な魔力が纏わりついていることは、相手の目をまっすぐ見据えたままでも、剣士の自分ですら感じ取れた。「失礼。こちらの”風習”には、あまり詳しくないもので……」困惑に微笑むふりをすれば、ジェフリー・カーンはにやりと笑い、馬鹿にしたような目を仲間と交わしながら奥の方へ戻っていく。「資料はそこの棚にある、それを好きに持っていけ。宿は自分たちで手ごろなのを見つけろよな。ま、そこの女を混ぜてくれんならうちでもいいんだが」……相変わらずの調子で、本来必須である情報共有や作戦相談の場を設ける気などさらさらないのが見て取れるこの態度である。かと思えば振り返り、「それと、警察の邪魔だけはすんな」と突然凄みのある顔を。「ここのは冒険者ってのにいやに冷たくてね。おまえらがあいつらの機嫌を損ねりゃ、俺たちが締め上げられんだ。……そうなりゃ、いくら応援だろうと俺たちも黙っちゃいない。いいな?」先ほどより数段冷えた声、周りの男どもも体を起こして威嚇するような雰囲気を放つ。再びヴィヴィアンにちらと目をやり、先ほどの彼女が防衛のため強気な態度に出たことを思い出せば、ここは自分が情けない役を印象付けておこうか、と判断。途端に気圧されたような表情をして両手を上げながら後ずさり、「わかった、そう脅さないでくれ……あんたたちと事を荒立てる気はない」少し震える声を吐き出す。さざめく笑い声、顔を寄せ合い囁きあう姿がいくつか。そこの棚に一冊だけ立てかけられている資料冊子を取ってくれ、と相手に目で合図すると、彼女を先に外に出す素振りは見せつつも、ここを一刻も離れたいというように、恐れの浮かぶ双眸をトリアイナの面々に向けながら出口の方へ体を向け。)



(/性癖ならではの関係性は大好きだけど、あまりリアルに考えるとまともな倫理観が発動してしまう……という募集板に記載されていたあれを当方も元々根深く患っておりましたので、オタクとして共通点が多々あることに大きな喜びを感じております……!こちらも同じく、雰囲気を壊さない程度に逃げ回ったり陥落したりをしていきたい所存です。
名前や依頼人の設定もありがとうございました!キングストンにカレトヴルッフ、主人公たちの本拠地にふさわしく王道感あふれる響きや由来を秘めていてとても好きです。依頼人に関しまして、一歩間違えれば命を狙われる立場だろうと当方も考えておりましたので、設定に大賛成です。また触れておりませんでしたが、トリアイナギルマスのキャラクター設定もありがとうございました、この先のロルで非常に助かります……!バルガスも非常にいいキャラをしているので、いつか息抜きのような小話でまた名脇役になってくれたりしないだろうかと密かに楽しみです……笑笑
他に相談事項等なければこちらは蹴り可です、引き続きよろしくお願いいたします!)





45: ギデオン・ノース [×]
2022-06-15 01:19:07




(/更新前のページを参照してロルを書いていたため確認が遅くなりました、シェリーPFありがとうございます……!元祖脳筋、しかもビビ以上に豪快、それでいてすらりと長身なビビとは反対に小柄な女性であるということ、解釈ド一致で拳を突き上げております本当に好きです……もはやカレトヴルッフ内で伝説の女性だろうな……そして14歳にして年上の彼女に淡い初恋をしていたギデオンも、見る目は間違いなくあるもののやはりかなりませた少年だった説が美味しく確定し、ひとりニヤニヤしております。何かの折にギデオンがビビをおませ扱いしようものなら、当時を知る人間から「おまえが言うか」「むしろお似合い同士」「割れ鍋に綴じ蓋」と総ツッコミを食らう展開があったりしても楽しそうです。彼女とギルバートの恋路も、女傑の心を手に入れたギルバート自身の人物像も気になりますし、ビビの出産で命を落としたのはあまりにも切なすぎるし、でも既に親馬鹿と記載のあるギルバートはきっと忘れ形見であるビビをそれはもう大事に育ててきたんだろうなあとか、妄想が尽きないやらあちこち萌えてたまらないやら……!きっと主様のご想像以上に一字一句残らず美味しく噛みしめております、とだけ、改めてお伝えさせていただきます。こちらもお返事には及びません、本当にありがとうございました……!)





46: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-15 11:25:17




( 差し出された掌の嫌な魔力は、隠せていないと言うよりは隠す気のない悪意に満ち溢れたもの。船上からわかりきっていたことだが、実際にここを訪れたことで、目の前の連中にグランポートを任せるわけにはいかないという気持ちは一層強くなっていた。その為に先程からの侮辱にも必死に耐えているにも関わらず、ここで握手を拒否していいものか、どうにか魔力を相殺できないか、手の中で魔法式を捏ねくり回して逡巡してしまい。その場はギデオンが笑われ役を買って出てくれたお陰で、なんとか捜査の権利は守れたものの、魔法から仲間を守る術もないくせに何がヒーラーだと、連中への怒りと同時に、自分の不甲斐なさに自分のつま先を睨みながら、トリアイナの戸をくぐった。 )

──なんっなの!アイツら!!!
特にジェフリー!!本当に信じられないわ!!生え際から残りの毛全部毟りとってやりたい……

( そうして立地だけは恵まれたトリアイナから、まずは拠点を決めようと大通りを歩きながら宿を探すことにして。あまりの衝撃や不快さ、仮にもギルドがあそこまで荒れているやるせなさに、暫くは口数も少なく心做しか足取りも元気がなかったが、ギルドの看板が見えなくなった瞬間、1歩強く踏み出したかと思えば一気に沸騰して。若い頃はそれなりの容姿らしかった名残が感じられ、今も明らかに気にしているであろうジェフリーの妙に広い額と、長い前髪に容赦なく言及すれば、胸の前でワナワナと何かを掴むように手を握り。そうして怒りに震えていたのもつかの間、ゆるゆると両手を下ろせば、しょんぼりと肩を落として立ち止まり。私がもっと我慢出来れば、悪意から仲間を守る術があれば、ギデオンさんを馬鹿にされることは無かった──!状況が悪かったのはその通りだが、自分のことより何より、怒りを感じていたのはその事で。目と鼻の奥がツンとするのを誤魔化すように、手の甲で鼻を擦り細い喉を上下させると、堪えるような細い声で、連中の前で主張してやりたかったことを漏らして。 )

ギデオンさんの方が強くて、ずっっっと格好いいのに……




47: ギデオン・ノース [×]
2022-06-15 14:42:29




まあ、男として少なくとも一箇所は勝ってたな。

(しばらくは見たことのない気落ちぶりだった相手から、やがて猛烈な勢いで怒りの声が噴き出しはじめれば、喉を鳴らして相槌を打つ。よりによって文句の付け所がそこなのだから、彼女の善良さが窺い知れるというものだ。話しながらも巡らせていた視線はひっそり佇む安宿に止まり、開放された扉に近寄ってその奥を覗き込む。まるで両脇の店に潰されるようにして縮小してきた店のようだが、古くとも中は小奇麗に整えられ、カウンターにいる店員も真面目に記帳に勤しんでいた。宿によっては地元ギルドとの結びつきが強いものだが、ここなら大丈夫だろう。声をかけるべく相手の方を振り返り、そこで初めてしょんぼりしていたことに気づくと、ふっと表情を和らげて。)

……心配するな。そのうち嫌でも思い知らせてやるさ。

(手を伸ばし、栗色の髪をくしゃりと一度だけ撫でる。そこには少なからず、連中の下卑た手出しを耐えきったことへの労いと、自分以上に、ギデオンのために怒ってくれたことへの感謝の気持ちが含まれていて。)





48: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-16 00:51:34




……!は、わ、……。っ頑張りましょうね!

( 形の良い唇が甘く弧を描き、大好きなペールブルーの眼が優しく細められる、そこに透き通ったものが混ざりつつある綺麗な前髪がかかって揺れて……どんな表情も格好いいなあ、とギデオンの笑顔を元気なくぼんやりと見つめていれば、頭に硬く暖かい思わぬ感触を覚えフリーズ。相手が許すのをいいことに、本人の前で好きだ好きだと騒いでいるが、まさかギデオンから触れられるとは思っておらず、優しい好き、格好良すぎ、なんて反応すれば、好き、もっと撫でて欲しい、今絶対変な顔してる、大好き、などと次々噴出する感情に処理落ちした形となって。顔どころか耳の先まで火照って熱いし、目は先程まで堪えていた残骸が無意味に零れ落ち、ニヤつかないよう意識して、逆に不格好に歪んだ口からは意味にならない音が零れる。依頼中だと思い出して、ハッと両手で頭を抑えると、なんとか絞り出した声はいつもと比べ物にならないほど小さかった。 )

これはもう……真っ黒ですね。

( 何処か夢見心地で踏み込んだ宿屋は、小さいながらも手入れの行き届いて暖かな印象で。親切な主人に、密談のできる信用出来る店を聞くと、態々掃除してまでもう一部屋貸してくれた。金を支払おうとすれば、この宿屋も4年前以降の警察署やギルドの横暴に煽りを受けているらしく、なんのこれくらいと太っ腹に微笑まれてしまって。兎に角、トリアイナから持ち出した資料を広げ、いざ作戦会議となったところで、控えめなノックに扉を開けてみれば、主人の背後から気まずそうな表情をした青年が現れる。青年は自らを今回の依頼者だと名乗り、他所のギルドの冒険者である2人に助けを求めることしかできなかったことを謝罪して、トリアイナのそれとは比べ物にならないほど分厚く、質の良い資料を差し出すと、師弟程の年の差である2人を見て複雑そうな表情をして帰っていった。それから数日、宿を拠点に青年の資料も活用して、トリアイナやグランポートの警察署を調べれば、出るわ出るわ呆れる程の悪事の証拠。エウボイア号の噂の謎はともかく、今回の事件のあらましも何となく見えてくれば、作戦会議用の部屋で今まで調べた情報を並べて、いっそ見事なほどの悪事に溜息をつき。 )

もう現場抑えなくても、余罪ありすぎて逮捕できちゃいそうですね……警察署がマトモならですけど。




49: ギデオン・ノース [×]
2022-06-16 02:59:30




(ただ真っ赤になるだけならば、流石に気づくはずだった。しかし、小さな涙がぽろっと零れ落ちたり、蚊の鳴くような小声で返されたり、普段は勝気に笑む唇がくしゃりと歪んだりするものだから、まさかそれらすら薔薇色の恋情の発露であるとは夢にも思わず。……普段はどんなに猛々しくても、ヴィヴィアンとてうら若い娘。先ほどまで立派に振る舞っていた反動で、安心した今、トリアイナに味わわされた恐怖や惨めさがあとから蘇ったのかもしれない。あの悪漢たちに彼女が再び立ち向かえるよう、こうして要所要所で労わるのも肝要だろう、と。相手のことをあくまで守り育てるべき後輩として認識したまま、ぽん、と幼子をあやすような手つきまで最後に残せば、砂利を踏み宿の受付へ。ひとまずは一週間の宿泊を決め込むことにして。──はたして、そこはたまたま選んだ宿であったが、店の主人は意外な人脈の持ち主だったらしい。ギデオンたちが身を落ち着けたころに主人の案内でやってきた客人は、他でもない本件の依頼者だった。帰り際の妙な顔の意味はいまいち掴み損ねたものの、旧トリアイナ一員の青年が掻き集めた情報は非常に有益であり、同時に、ギデオンたち自身の足で拾い集めた情報同様、呻きたくなるほど酷いもので。トリアイナとグランポート警察は険悪な関係だというジェフリーの話は、やはり真っ赤な嘘だったのだ……トリアイナの繰り返す喧嘩騒ぎや密漁、またよりによって警察官による市民への恐喝や理不尽すぎる制圧、そして4年前から不自然に潤いだした双方の資金状況。一見別々に発生して見える数々の事実の記録を、日付や位置関係もしっかり頭に入れたうえでじっと俯瞰してみれば、陰湿な協力関係が嫌でも克明に浮かび上がる。要は、トリアイナが何か犯すたびに警察が恐ろしい口封じに回り、それがどういうわけか両者の懐を膨らませてきたらしい。座り込んだ椅子の背を斜め後ろに傾けると、しかめた目頭を揉みほぐす。あまりの腐れぶりに、ヴィヴィアン同様深い深いため息を落とし。)

ああ、立件すれば主犯でなくても十年はぶちこまれるだろうな。だが……警察ぐるみの隠蔽ってのが本当に厄介だ、こいつのせいでそう簡単には動けない。半端な追い詰め方じゃ本命の尻尾を捕まえ損ねて、依頼者の願いを果たせない羽目になりかねん。

(そう、今回の依頼はあくまでも、連続失踪事件を解決することである。トリアイナとグランポート警察の悪事を明るみに出したいのは山々だが、目的のためには慎重に立ち回らねばならない。こめかみに骨張った手を添えながら未読の資料を新たにめくり、ふとある情報に目を眇めて、相手も読めるよう冊子を横向きに滑らせて。沿岸部の貧しい漁師たちの証言、なんでも2週間に一度、トリアイナの連中が北端の波止場から小舟を出しているという。そして時には、そこに驚くべき人物が乗っている──グランポート警察署長、ヘルハルト・レイケル。赤インクで丸が付けられている辺り、この情報を拾ってきた依頼者の青年自身も、彼が何か関わっているのではないかと睨んでいる様子だ。記録の周期通りなら、次に小舟が出るのは明後日。もしそこで失踪者が出るとすれば、その前日、つまり明日、噂のエウボイア号が沖に姿を現すことになる。トリアイナ=グランポート警察の癒着問題とは別の、そちらの怪談じみた話も捨ておくわけにはいかないだろう。気分転換も兼ねてしまおうかと、調査先の選択を相手に委ねてみて。)

レイケルとトリアイナの関係で不明なのは、後は金の出どころくらいだな。それは一旦後回しにして、エウボイア号についても調べを進めようと思うんだが……行方不明になる前は普通の豪華客船だったんだ、何かしら記録はあるはず。造船所と歴史資料館、おまえならどっちに可能性を感じる?






50: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-16 10:08:11





順当にいくなら造船所……ですよね、でも……

( 4年前に失踪したはずのエウボイア号の噂。ヴィヴィアンはこれでかなり現実的であるから、幽霊など存在しないと思っている──いやもう本当に、絶対に、いないに決まっている、あれから拳に聖魔法を纏わせる練習なんて決してしていないし、慣れない宿で夜御手洗を我慢する羽目になったこともない、神には誓えないけど。ということで、本当に夜な夜なエウボイア号が現れると言うならば、それは実は密かに帰ってきていたエウボイア号そのものか、はたまたよく似た別の船に違いないのだ。どちらにせよ、前者であれば巨大な豪華客船を昼間は気付かれないためのカムフラージュが必要だし、後者ならば言わずもがな、必ずどこかの造船所が関わっているはずだ。しかしそうもハッキリと言いきれないのは、態々失踪事件の起こる"前夜"にエウボイア号が現れるという違和感で。これだけ失踪事件に街全体が震え上がっている中、噂と言えど誰かが消え去ると分かっている夜に、特に用事もないのに出かける人間は少ない。まるで市民に忠告し守るかのように現れるエウボイア号と、連中の関わりを測りかね、ギデオンがあえて歴史資料館をあげていることを考えても、安直に造船所を選んで良いものか逡巡し。これだけエウボイア号の噂が広がっている以上、先程の仕事をしたと名乗り出る造船所が現時点でいないのであれば、その造船所もグルの可能性は高い。それならば明日1日で突き止めるのは難しいだろう、と悩ましそうに伏せていた目をパチッと開ければ、消去法&冒険者のカンというあまり頼りにならない宣言を。 )

ヨシ、歴史資料館に行きましょう!




51: ギデオン・ノース [×]
2022-06-16 11:32:14




(きっぱり告げられた答えに頷き、上着を掴んで立ち上がりながら薄い袖を通す。バディを組んでの初めての仕事だったシルクタウンの事件では、相手のヒーラーとしての能力や、最適な作戦を導き出す思考力と行動力、何より一般人を必ず守らんというプロ意識の高さを垣間見た。そしてここ数日の資料精読や地道な聞き込み作業でも、天性の気づきの良さを何度か発揮するのを見ている。このため、相手のそういった判断には信頼を置くようになっていて。物わかりの良い店主の許可のもと、資料を残した部屋にきっちり魔法封印を施し終えれば、裏口から宿の外へ。空は快晴、太陽は天頂に届く手前といったところで、これから暑さが増す頃合いだろう。この港町特有の砂利道を歩きながら、表向きはあくまでもちょっとした観光。大通りの隣、海辺に続く商店街を資料館の方へ抜けながら、甍を連ねる店々の装いを相手とそれとなく眺めていく。海産物をふんだんに使った磯料理屋、釣り道具屋、水着屋、流木や海の生き物の骨を使った民芸品店、珊瑚や真珠のアクセサリーショップ。ほとんどの店の軒先には、潮風を受けてカラカラと回る魚の意匠の骨飾りが吊るされている。ふと目をやった先には老舗の酒店があり、店頭の樽の上には貝ひもや、『人魚の鱗』と題された鮭とば、レモラのからすみ、蓑亀の肝の天日干しが。いずれも酒飲みにはたまらない肴である、珍しく物欲しそうな声音でぼんやりと呟いて。)

美味そうだな……この件が落ち着いたら、つまみでも買い込みたいもんだ。





52: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-17 00:56:22




わあっ、いいですね……お土産にしたら皆喜びそう!
ふふ、この仕事が終わったら買いに来ましょう──

( トリアイナや宿周辺の中心部は、まだキングストンにも近い街並みだったから、海辺の風情溢れる商店街に目を輝かせ、上がる気温に怯むどころか、あちこち覗いては元気な歓声をあげてみせる。昔の貝が入った魔法石や、メガロドンの体に生えた海藻を煎じた素材など、目に入るもの全てが魅力的で、自分に暇さえあればここだけで半日は潰せるだろう。──それに、それに周りからはデートに見えちゃうかも!なんて、内心幸せそうに1人はしゃいでいると、ギデオンの呟きにハッと其方を振り返り、滋味豊かな酒のあて達に楽しげな声をあげて。今回の依頼にあたり、仕事内容につき、余計な入れ知恵につき、ギルドの女性陣には大変お世話になっている。ビビはあまり強くないが、酒飲みの彼女達へのお土産にもピッタリだと両手を合わせる一方で、仕事中に珍しい反応を見せたギデオンに心配そうに目を丸くもして。慣れない地で人の悪意に晒され続け、流石の彼も疲れているのだろうと、何か元気づけられる様な言葉をと頭をフル回転させれば、"疲れた男にはこれよ!いいもの持ってるんだから活用しなさい!"とは誰のアドバイスだったか、徐にギデオンの腕をとってぎゅっと抱きつき、上目遣いで見つめれば、これまた誰かの入れ知恵をここぞと披露して。 )

──そ、そしたら、ギデオンさんのお部屋で飲みたいなあ、なんて、




53: ギデオン・ノース [×]
2022-06-17 17:27:30




……馬鹿を言うもんじゃない。だいたい、おまえはそんなに飲める方でもないだろう。

(呑気によそ見していたせいで、不覚にもそれを許してしまった。ふと気づいたときには、己の太い左腕に華奢な細腕が密に絡みつき、何ならふんわりと柔らかな──それでいて確かな質量のものすら押し当てられている有様で。ほんの一瞬、脳内に宇宙を広げながら無の一色に染まる横顔。しかし以前と違うのは、それでも歩みを止めはしなかったこと、そしてすぐに目を閉じて小さく息を吐く程度には、我に返るのが早かったことだ。……恐ろしいことに、相手のこういった積極的なアプローチに慣れ始めている自分がいた。流石に男として反射的な動揺はするものの、最早いなせないほどではない。どこか気遣いも交じって聞こえる、しかしちゃっかりと私欲いっぱいの声に対しては、呆れ顔で見下ろしながら無慈悲な却下を。ついでに空いているほうの手を裏返しに持ってきて、相手の額を手の甲の山でこんと、窘めるように小突く。瞬間、パチッと閃く雷魔法。それでもその威力は、古馴染みたちにぶち込む時の百分の一以下だろう──元々魔力の保有量がかなり少ないギデオンは、高火力の魔法を何発も撃ち込むような芸当が叶わぬ代わりに、繊細な微調整ならば比較的得意である。冬場の金属に触れて起こる静電気にすら劣るであろう、見かけ倒しのそれで相手の気を逸らす間に、不埒な事態になっていた腕をするりと振りほどいてしまい。そうこうするうちにも、付近の海岸線を一望できるであろう丘の上に建てられている、古めかしい資料館の屋根瓦が見えてきて。)





54: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-18 15:09:13





んっ……この前は一気飲みしたからで、少しなら飲めますもん。

( 一瞬白く飛んだ視界に思わずキュッと目を瞑ると、するりと抜けていく逞しい腕、明らかに手加減されつつも、彼と仲の良い冒険者たちがよく打ち込まれているそれを額に感じれば、他人行儀より少し距離が近づいた気がして、思わず額に手を当てたまま小さく笑い。形だけは不満げに唇を尖らせながらも、小走りでギデオンに追いつけば後ろで手を組み「それに酔ってもギデオンさんだけならいいじゃないですか」と無邪気に相手の顔を覗き混んで。勿論ヴィヴィアンにとっては、ただ単純に例の時とは違って、周りに勘違いされて迷惑を被ることは無いという意味なのだが。 )

──へえ、以外。この街の何処から金が出たんですかね。

( そうしてたどり着いた歴史資料館のエントランスにて。館内は展示品のために空調魔法でもかかっているのか、室外に比べサラリと涼しく湿度も低い。日々目まぐるしく躍動する貿易の街で、過去の遺産である歴史はあまり人々の関心を集めるものでは無いらしく、閑散として心地良い静寂に包まれた建物内に2人の足音が響く様は、この建物の広さを予感させる。目的のエウボイア号の資料の場所を探すべく、所蔵品の分類が示された何がしかを探して徐に周りを見回すと、エントランスでも1番目立つ中心部、天窓から差し込む日光を反射するガラスケース内の、人の腕を象った黄金の彫像に目を惹かれて。その指の皺さえ見て取れそうな精巧さに、ふと下の説明書きに目を落とせば、驚いたような感心したような声を上げてみせ。トリアイナのできる遥か昔、この入江に人々が移住する黎明期のグランポートは、金の輸出が盛んだったらしい。魔獣や妖精の悪戯、流行病に晒された厳しい開墾時代から、今の華やかなグランポートへの礎を築いたのは、この金から得た莫大な利潤だと、当時の彫刻と共に建都市秘話が記されている。この街で過ごした数日、金の出そうな山などは見当たらなかったが、なんせ魔法概論も成り立たぬ時代のこと、伝説の錬金術師や人智の及ばぬ魔物の存在を想像すれば、楽しそうに目を細めてギデオンを振り返り。 )




55: ギデオン・ノース [×]
2022-06-18 17:55:21




俺だけならって──おまえ、それはそれでなあ……

(ぱたぱたと軽い足音を立てて追いついた相手の無邪気な一言に、もはやお決まりになりつつある嘆息を。妙な真似を働いたりしないと信用されていることを、ここは有難がるべきか。だがしかし、酔った状態で男とふたりきりという状況を想定し、それで全く危機感を抱かれないというのも、いくら歳の差があるとはいえ、男の沽券的にはこう、アレではないだろうか。そんな至極平和な懊悩が脳内を占める日が来るなど、十数年前のギデオンを思えばまるであり得なかったはずだが、本人は気づくこともなく。「他所でもそうやって軽々しく煽るんじゃないぞ」と、ただでさえ数多の男に狙われている彼女の身を案じるように釘を刺すことにして。)

……普通の採掘方法じゃなかったのかもしれん。今の行方不明者も、それで鉱夫にされた可能性はあるが……地理的に、グランポート周辺に金鉱山なんてないはずだ。川から砂金をさらうにしても、ここいらじゃ下流すぎて大した量は採れないだろう。それならいったいどこから……?

(その十数分後、ひっそりと開館していたグランポート歴史資料館にて。自分の口から零れたのは、疑念あらわな声だった。館内の思わぬ涼をありがたく享受していた矢先、相手の感嘆に振り向いてみれば、そこには見事に輝く黄金の腕の像。自分もそこに足を向け、相手が視線を注ぐ先に、台に片手をつきながら一緒に覗き込み──ふと、怪訝に思ったのだ。ガラスケースにしっかりと守られて展示されている彫像は、美しいことには美しいが、言ってしまえば与太の類。こんな贅沢品を作る余裕があったということは、当時それほど大量の金が採れたということ、しかしそれはいったいどうやってもたらされたというのだろう。それに、相手と眺めた商店街には、金工芸の郷土品などひとつとて見当たらなかった、名残を受け継いでいそうなものすら。一般的な鉱業都市では冶金魔法が発達するものだが、グランポートにそういった評判があるわけでもない……街のあちこちに活かされている魔法文明は、水産業と観光業に相応したそればかりだったはずなのだ。それらを踏まえて考えれば妙に浮いている、この黄金の遺物とグランポートの古い歴史。それがどうにも引っかかる。だが、もう一度読み込もうと相手に寄せた頭には、現実的な経験と各地の風土に関する見聞がある程度蓄積されているからからこそ、いにしえの魔物の仕業という可能性がまるきり抜け落ちてしまっていて。記されている以上の情報はないと諦めをつけてしまえば、垂れた前髪を掻き上げつつ身を起こし。「……エウボイア号についての特集は、現代のコーナーにあるらしい。とりあえず、金の歴史も確かめがてら時系列順に観ていこう」と、ひとまずの提案をして。)




56: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-18 23:34:36




……!ごめんなさい、気をつけます───でも、本当にギデオンさんなら、いいんです、けど……ね。

( 相手の忠告にきょとん、とできるほど疎い年齢でも既になく、寸前の自分の誤謬を産む発言に気付き一瞬固まったかと思うと、すぐに火がついたようにかあっと赤くなり。本当に全くそんなつもりがなかったからこそ、いくら其方方面の経験値が少ないとはいえ、自分の迂闊さに反省し素直に頭を下げ。先程のビビにそんな気がなかったのは相手もわかっているだろうに、アタックに迷惑そうにしつつも、こうして気まずくなってでも忠告してくれるギデオンの誠実さに内心、超大人!!好き……とますます惚れ直すばかり。そんな相手に今度こそ自分の言葉で気持ちを告げようとするも、人の言葉を借りた時とは違う気恥しさから俯いていき、どんどん早歩きになってギデオンを追い抜かさん速度となって。最後は「あっ!資料館!!見えてきましたね!!」と先程から見えていた屋根瓦に今更気づいた振りを。 )

……はーい。

( 決して相手の真剣な横顔と博識さに見とれていた訳では無い……それも少しあるかもしれないが、自分が気づいている可能性に、経験のあるギデオンが気づいていないはずがないという先入観が邪魔をしたのだ。その場で"その可能性"を口にすることは無いまま、相手からの提案に素直に頷き、足を展示に向けかけ──ふと、どうせ作るならもっと美しい手でも良かったのではないだろうかと、もう一度金の手を振り返る。立場上見慣れてはいるが、剣ダコのある太ましい手は芸術的に美しいとはあまり思えない。その上何か助けを求めるように歪んでいるようなと、その疑問に答えを出すことも出来ないまま、パタパタと相手の背中を追って扉を潜り。ギデオンが知識として覚えた違和感は、ビビもまた言語化こそできないものの体感していた。グランポートは豊かな水のマナや魔法に満ち溢れているが、多くの鉱山で栄えた土地でみられる、暖かい土のマナや魔法の気配はあまり感じられずにいる。だからこそ金の出処を、移動可能な生物ではないかと疑う発想があった訳だが、時系列に沿って見始めた歴史の序盤、グランポートが当初は罪人の流刑地でもあったという展示の前で、やっとその発想の破片をポロリと漏らして。 )

流刑地かあ……そしたらその中に錬金術師がいたのかな。いにしえの──金を産む魔物とかもロマンありますよね。




57: ギデオン・ノース [×]
2022-06-19 12:22:17




(先ほどあんなに大胆な誘惑をけしかけてきた娘と、本当に同一人物なのだろうか。思わずそう首を傾げるほど純な赤面を見せた相手が、それでも言い募るように隣で絞り出した、小さな小さな声。本当にか細いものだから切れ切れにしか聞こえなかったが、刹那静止した視線を(……ん?)と向ける程度には、さしもの朴念仁でも、彼女の言わんとしたことがうっすらと感じ取れて。果たして当の相手はといえば、俯きながらも途端に足を速め、目的地を元気よく指し示す様子。その不自然さが余計に、己の胸中で声高に主張する聞き間違いの可能性を消し去り、確信をもたらすはずだったが。いや、もう資料館に着くのだ、今は依頼のためにこんな些事など忘れるべきだろう、と。「空いているといいな」だなんて、普通の応対に舵を切って無理やり押し流すことにした。……揺らぐことを、避けた。真剣さに本当に気がついてしまうのを、無意識に恐れていた。)

……金を、産む……。

(そんなさざ波から数分が経った頃。相手がふと口にした言葉を鸚鵡返しに繰り返しながら、頭の片隅で閃いたものにゆっくりと目を瞠り、思わず顔を見合わせる。消える人々、出どころの不明な金、この地に伝わる謎の黄金、まさか。先ほど手に取ったリーフレットの館内情報に目を走らせ、「悪い、エウボイア号は一旦後回しだ。一緒に来てくれ」そう頼むと、踵を返し資料館の入口へ。歯のないしわくちゃの老婆が受付を担うそこに着けば、彼女に一言、「地下の保存書庫を拝見させてほしい」と申し入れを。老婆は細めた目でギデオンを見、次いで(普段から胸元を軽くくつろげている)ヴィヴィアンを見。もう一度ギデオンを、今度は露骨に、ありありと、あからさまに、若干呆れすら感じさせる目で上から下まで眺め倒すという妙な一幕を経たものの、黙って記帳をすすめた。老衰ゆえかぷるぷる震えながらの歩行で通されたその地下の一室は、若干埃っぽいものの広々としており、上階以上にひんやりと冷え込んでいる。「グランポート民話で、蛇かドラゴンが出てくるものを探してほしい」相手にそう告げながら自分は書架の間を抜け、流刑地時代の記録を探し出そうと、油紙にくるまれて保管された古書の数々を調べはじめ。
──ファーヴニル、という大蛇、あるいはドラゴンの伝説がある。神話の時代、ある三兄弟のうちの次男が海鳥に化けて飛んでいたところ、神々に捕まり殺されてしまった。神々はそうとは知らずに、宿を経営していた三兄弟の父親にその日の宿を求めたため、怒った父親は神々に賠償金を請求する。困り果てた神々は、とあるドワーフから黄金を生む指輪を奪うことにするが、不当に感じたドワーフは、嵌めた主と同化して不幸に陥れる呪いを、盗み出されるときにかけた。やがて神々の手から父親のもとへ、黄金を生む指輪が差し出されることになるが、ここで三兄弟の長男、ファーヴニルが欲を出し、父親を殺してまで指輪を奪い取る。指輪を嵌めた瞬間、ファーヴニルは呪われ、大蛇あるいはドラゴンに変身してしまった。黄金を産み出せる代わりに人の理を外れた身の上を嘆くファーヴニルは、解呪して人に戻るべく、人を攫ってはその魂を貪り喰う怪物に成り下がる。しかし最後には、唯一人として生き残っていた末の弟に心臓を焼かれて弱まり、孤島に閉じ込められた……というのが、ファーヴニル伝説のあらましだ。
本来はグランポートに限らず各地に伝わる物語だが、次第に広まり派生していくのは、伝承の持つさがだろう。もしこれが、事実であったとしたら。流刑地として選ばれた島で、罪人たちがファーヴニルを見つけたのではないか。そのことに、現代になって気づいた者がいるのではないか。調べ始めて数時間、その見当は思わぬところで確かさを増すことになった。開拓時代、流刑者を島に送り届けていた最後の刑吏の名が──ファビアン・レイケルと記されていたのだ。)






58: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-20 10:21:26




( 羞恥で焼けるような思いで絞り出した言葉は、相手には届かず生温い空気に溶けて霧散したようだった。それに落胆する気持ちよりも、安心する気持ちが大きいことに我ながら失望しつつも、きっと届いていたら資料館にいる間マトモに相手の顔を見ることは叶わなかっただろう。一ヶ月前、あの揺れる馬車の中で素敵な女性になってから告白すると宣言した手前、それは不本意であるから、これで良かったのだと胸を撫で下ろせば、ギデオンとは対照的に清々しい気持ちで資料館の扉を潜った。だから己の発言に相手と顔を見合せた時、既に表情は真剣な冒険者そのもので、一緒に来てくれという言葉に浮かれるような色の入り込む余地もなく。まさか──まさか、まさか!と常識はその荒唐無稽な発想を否定し続けるも、冒険者としてのカンが完全それを許してくれない。そしてビビの浅い経験上このカンは割と当たる方だ。急いで老婆に許可をとってなだれ込む様に地下に──とはいかず、じっと意味深に見つめられるなんとも言えない時間のおかげで少し冷静さを取り戻した。ありがとうお婆ちゃん、次ここに来る時は第1ボタンまで閉まるヤツ着てくるね。ということで、ギデオンが歴史書を紐解いている間、ビビはグランポート周辺の海図と魔法史を片端からひっくり返していく。もしファーヴニルが実在するとして、マナの質や妖精達の様子を見れば入江内ではないだろう。神話を鑑みても入江外の孤島である可能性が高い。しかし栄えた港であるグランポート周辺の島は、どこも既に商人や市に買い占められ、魔物が住めるとは思えない。ならばと引っ張り出したのがグランポート魔法史で、このグランポートが水のマナ溢れる土地であるならば、絶対にあの手の魔法があるはずだ───見つけた。海図と併せかれこれ数時間続いていたページ捲る手を止めたのは、見えないはずの物を見せ、存在する物を隠す水属性の魔法でも高度な魔法のひとつ、蜃気楼を人工的に生み出す魔法のページ。何百年も島一つ隠し続ける程の規模になれば、もはや現代の人間には不可能だろうが、地上にマナの溢れていた古代・神代ならあるいは。あるものとして考えれば、海図の中に不自然に潮の流れの変わる点を見つけることも難しくはない。分厚い羊皮紙の冊子を持ってギデオンの元に小走りで近寄れば、どうやら向こうも同じタイミングで先日調査中に見かけたばかりの男の名前を見つけたところのようで。 )

あーっ!!レイケルってあの胡散くs……警察署長!!




59: 匿名さん [×]
2022-06-20 12:44:48




そいつだ──今のヘルハルトの方は、十中八九ファビアンの子孫なんだろう。

(普段ならば、相手の率直な人物評に口の端のひとつでも歪めるところ。だが、かれこれ数時間も缶詰になって調べた末の重大発見ともなれば、真摯な低い声で推測を述べるにとどまり。古文書の束を持ったまま、相手と顔を見合わせて事の真相に触れていく。──まず、刑吏ファビアンが流刑地の魔物ファーヴニルを発見し、その黄金をもって黎明期のグランポートを栄えさせた。それはいつしか、何らかの経緯で失われ、ファーヴニルの存在もただの伝承民話に成り下がってしまった。しかし現代になった今、おそらくは一族に伝わるファビアンの記録によって、ファーヴニル伝説がただのお伽話ではないと勘づいたヘルハルトがグランポートにやってきたのだ……先祖が発見した巨万の富をもたらす魔物を、先祖と違い独占的するために。その魔物は、人間の身に人に戻るべく他者の魂を欲している。行方不明者たちはきっと、黄金を与える代償として、ファーヴニルの生贄になるべく連れ去られてしまったのだろう。だから若くなくとも、どんな人間でもよかったのだ。数年前から前歴持ちの冒険者たちで塗り替えられてきたトリアイナは、ヘルハルトのために人攫いを実行している実働部隊に違いない。そう考えれば、ヘルハルトとトリアイナの双方が不明な資金で潤っていることの説明もつく。──たった一握りの人間が分不相応に富むために、無辜の民の命が次々奪われている事件。当然早急に解決しなければならない、だがどうやって切り込んでいくべきか、そう迷いかけたところで、今度は相手の調査の成果物が大きな進展をもたらしてくれた。偉大な魔法使いを父に持ち、自身も高い魔法力によってヒーラーを務めるヴィヴィアンは、マナの流れに敏感だ。若くも確かな勘を頼りに徹底的に調べたところ、グランポートからやや離れた沖にて、不自然な潮流がある場所を発見したらしい。そしてさらに、水属性からなる高度な魔法、蜃気楼魔法についての文献も発見していた。おそらくはファーヴニルを数百年隠し続けてきた魔法、だがこれは、もしかすれば──。暫しの黙考の後、思いついたのは大胆な案である。よそ者の自分たちふたりだけで解決にあたろうとすれば、地元警察と地元ギルドによる反発・封殺は免れず、事件を闇に葬り去られてしまう危険がああるだろう。だが、例えば地元のマスコミを同行させ、その目で現場を確かめさせるならどうだ。それには当然、相手にそうと気づかれずに尾行する必要がある。島の正確な場所を確かめるためにも、奴らが明日の夜か明後日に出すであろう小舟についていくことができたら。──こちらも、隠密に船を走らせることができれば。レイケル、トリアイナ、魔物ファーヴニル。すべての悪を一気に叩き伏せることができるかもしれないと、相手の鮮緑色の瞳を、いつになく熱のこもった真剣な目で見据え。)

ヴィヴィアン。あと24時間で、小舟ひとつを数時間隠せる程度の蜃気楼魔法を会得してほしいと言ったら……やって、くれるか。



(/いつもお世話になっております、じっくりと調査パートに取り組ませていただきありがとうございました!どうしても設定・推理描写に偏りがちになってしまい、少々ダレてしまっていないだろうか、返しにくい思いをさせてしまっていないだろうか……と懸念しておりますが、大丈夫でしたでしょうか。展開の運びなどに改善点がございましたら、長くお付き合いしたいので是非遠慮なくご相談ください……!
また今後、いよいよ実際的な救出・戦闘に奔走する解決パートに入っていくのが良いかなと考えております。この先、幽霊船エウボイア号によるオオトリ展開が待ち構えていますので、取り急ぎビビたちも島に向かう展開もご用意させていただきました。その先において、展開の順やイメージの方向性など、主様の方で何かアイディアはございますでしょうか?こういう美味しい思いがしたい、ギデオンとビビの絡みでこんなものを混ぜ込みたい!など、主様の心躍る要素をご共有いただければ幸いです……!)






60: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-21 14:46:29




……こんなの断れるわけないじゃないですか。

( 相手の大胆な発想にはさしもの脳筋も驚き、大きな目を丸くして見せる。しかし多数の無辜の民のために、罪人の魂を売ったファビアンにさえ肯定的な感情を抱けないのに、ましてやヘルハルトやジェフリーに抱く憤怒は激しいもので、必ず彼らの悪事を白日の元に晒してやらんという気持ちは此方も同じ。増してや普段逃げるように視線を合わせないギデオンが、その静かな秋の空のような瞳を熱く揺らしてビビの顔だけを正面から映しているものだから「…狡い」と、此度は珍しくヴィヴィアンがため息をつく番で。この男はヴィヴィアンが冒険者として、人として、如何に相手のことを好きなのか知っているのだろうか。 )

───ふふん、どうです?凄いでしょう!
褒めてくれても良いんですよ、ビビちゃん天才って撫でてください。さあ!

( かくして、宿の主人の伝手で借りたボートと、港の中でも不便な位置にある小さく隠れた水路にて。あれから碌に寝ずに古い資料と睨めっこしていたビビは、24時間を待たずに、寝不足のテンションを隠しもしないままギデオンを引っ張り出した。撫でろもなにも、ビビの姿自体がギデオンには見えてすらいない訳だが、ボートの存在によって歪む波さえ見えない静かな海面から、普段の2割増で元気なビビの声が響く。そんなシュールな光景と高いテンションに誤魔化されそうだが、水の魔法を殆ど習得していなかったところから、一晩で成した内容としては本人の自己評価は過言どころか妥当なもので。まだ真上に近い太陽の位置を鑑みれば、仮眠にしろ作戦準備にしろ、決行までに使える時間を残してひとつ大きな課題を片付け、ぴょんこ、と姿を表しながらギデオンの脇に降り立つと、満足気に相手を見上げながら首を傾げて。 )


( / 此方こそ大変お世話になっております。ダイジェストでという事だったので、証拠集めの方はかなりすっとばさせて頂きましたが、調査パートはミステリアスな雰囲気を楽しむことが出来とても楽しかったです。毎回これ以上なく返事のしやすいパスをいただきありがとうございます。此方も背後様とは長くやり取りが続けられればと思っておりますので、気になる点などがあればぜひ仰っていただけると幸いです。
これからの解決パートに向けてお気遣いありがとうございます!ビビには蜃気楼魔法という見せ場を既にいただきましたので、個人的にはシルクタウンの様なギデオン様が戦うシーンが見られれば嬉しい限りです。展開としましては、最初に申し上げたのと少し変わりますが、
1.予定通り行方不明者発生
2.証拠を突きつけるために海へ
3.隠されていた島に上陸しようとしたトリアイナ・レイケル・行方不明者を見つけて捕まえる
4.行方不明者の数が合わない
5.エウボイア号が現れる
という順番がスムーズかなと考えておりますが、その都度やりやすいように進めて行ければと思います。よろしくお願いします。

以下はお時間ある時によんでいただければ幸いなのですが、前回の背後会話にて、PFや地名等へのお褒めの言葉大変ありがとうございました!返信不要とお気遣いいただいていたため遠慮致しましたが、おませなギデオン君を想像してにっこりしてしまいました!さぞ罪深い美少年だったのでしょう……。仲間からの総ツッコミや、ギデオン様がシェリーに淡い気持ちを抱いた経緯もいつか見ることが出来ればと、今後の展開を非常に楽しみにしております。ギデオン様のPFで拝見した昔の女性達の登場も待ち遠しく、まだまだ暫くお付き合いいただければ幸いです! )




61: ギデオン・ノース [×]
2022-06-23 15:58:49




……いや、想像以上だ。本当によくやった……!

(資料館を出た時にはとっぷり暮れていた太陽が再び東の空を明け染め、白い眩しさを増しながら天頂に差し掛かった頃。予想より随分と早く相手からの呼び出しを受け、例の水路へ足早に向かったはいいが、肝心の彼女の姿は見当たらない……それどころか、ここにあったはずの練習用のボートすら忽然と消えている有様だ。それでも、やけに元気なあの声だけが、いつものようにほんのすぐそばから親しみを込めて聞こえてくれば、瞬時にそのわけが理解でき。普段は滅多に見せない──気のせいか、ヴィヴィアン相手には何度目かになるようにも思うが──呆けた顔をしてしまって。数百年前の魔法を、あと一日かかったとて充分な偉業だろうに、こんなに早くものにしたというのか。それも、水魔法そのものについてはほとんど素人同然だったところから! 躍り出るようにして姿を現した相手に、その感心がありありと見て取れる眼差しを向けながら呟けば、彼女の頭を素直に二、三撫でてやり。彼女の求め方も自分の応じ方も、元気いっぱいな犬とその飼い主が行うそれに非常によく似てはいたが、これで労いになるのなら、いくらでもそうしてやろうというものだ。)

疲れてるだろ、宿に戻って一旦休め。夜になったら起こしてやる。……そこから先は、いよいよ今回の依頼の山場だ。

(道すがら買ってきた冷たい果実水の瓶を手渡すと、宿までの帰り道を念のため送り届けることにして。──うら若い後輩がここまで立派にやってくれたのだ、そこから先はギデオンが詰めを行う番である。昨夜から今朝にかけて交渉していた地元の小さな新聞社をもう一度訪ね、報復を恐れて渋る編集長を、ほかの記者とともに真剣に説き伏せにかかり。尾行の確実性が上がったという報告により、記事にする約束の取り付けにようやく成功すると、その先の準備は一気に進んだ。違法手段も含まれているのは皆承知のうえで、ある記者が盗聴魔法を、別の記者が暗視魔法を使い、ギデオンとともにトリアイナメンバーへの張り込みや、グランポート警察署の監視を。その間を縫い、いざという時のためカレトヴルッフに伝書鳩を飛ばし、夜にはヴィヴィアンを揺り起こして腹ごしらえ、それから北の波止場近くに移動して数時間の待機に徹し。敵が蠢きはじめたのは、真夜中も過ぎたころだった。まだ幼いひとり息子がどこにもいない、という漁師の通報が握りつぶされたようだという報告と同時に、波止場にトリアイナが現れた、あんたたちの言う通りレイケルまでいる、という知らせが。何やら集まるはずの人数が足りないらしく、なんだ、どういうことだと野太い声で揉めていたものの、程なくして、不審な袋を乗せた船で男たちが海へ漕ぎ出す。こちらもまた、若いライターと記録魔法の使い手、船を貸してくれた操舵手を伴い、魔法に身を隠して波止場を発ち。トリアイナの船の灯火を頼りとする尾行は、波に揺られながら数時間ほども続いただろうか。月明かりの眩い深夜であったが、それでも万全な蜃気楼魔法が功を奏し、気づかれることはなく。不意に前方で魔法火が打ちあがったかと思うと、ほど近い先に黒い島影が見え始めた。潮風に乗って漂ってくるのは、それとはっきりわかる魔獣の気配、苛立たしげな唸り声だ。どうやらファーヴニルは相当腹をすかせているらしい、生贄にしようとした瞬間を撮らせる余裕はないだろう。島にやっていた目を、緊張した様子の総舵手、連中への怒りに燃える目をした記者、杖の調子を念入りに確認している記録係へと移していった最後に、束ねた髪を夜風に揺らしている目の前の若いヒーラーに置き、暫しその横顔を見つめる。シルクタウンでも立派に仕事をしていたが、ここグランポートでともに調査にあたり、今も古代魔法を発動し続けているヴィヴィアンの横顔は、以前にもまして凛としているように感じられた。……ヴィヴィアンなら、大丈夫だろう。どんな事態が起ころうと、的確な判断を下すだけの賢さがこの娘にはあるはずだ。魔剣の柄に手をかけると、確かな信頼を置いた声で、今一度作戦の確認をして。)

打ち合わせ通り、トリアイナの連中は俺が全員行動不能にする……つもりだが、連中もそれなりの抵抗はするだろう。おまえは攫われた子どもと、こいつらの安全を第一に動いてくれ。



(/そう仰っていただけてほっとしました……!主様のロルや展開の運びにつきましては、お世辞や遠慮などではなく、本当に読みやすく返しやすいなといつも感嘆しております。自然とふんだんにちりばめられたビビの可愛らしさを目に浮かべるのが密かな楽しみです。今後も主様のお気に召すまま綴っていただければと思います……!
さしあたっての展開をわかりやすく項目化してくださりありがとうございます。ギデオンの戦闘シーンを楽しみにしてくださっているとのことでしたので、少々強引ではありますが、2に差し掛かるシーンまで移させていただきました。
また温かなお言葉までありがとうございます。痛み入ります……!ギデオンの昔の関係者ももちろんではありますが、主様の創作してくださったシェリー関連はふたりにそれ以上の深い変化をもたしてくれると思うので、今から非常に楽しみです。今後ともよろしくお願いいたします。)





62: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-25 10:47:16




ギデオンさんに頼まれましたからね!

( 今でこそ繊細さの欠片もない脳筋ヒーラーだが、元は魔導学院で研究を続けるか迷って冒険者になるのが遅れたほどの秀才である。滅多にお目にかかることの出来ない古代魔法を、合法的に習得して良いとなれば、文字通り寝食を忘れて没頭する姿は、どのジャンルにおいても水を得たオタクの目の色は似たようなものだと感じさせるもので。なんの色気も無い触れ合いに嬉しそうに笑い声をたてると、固く大きな手に形の良い頭を擦り付け、ふんす、と鼻息の聞こえそうな装いで胸を張り、一目で相手のことが好きでたまらないと伝わるような、熱く蕩けた視線を惜しげも無くギデオンに向ける。その感情が未だ、それこそ犬が飼い主に懐くようなそれに近く、近い将来、相手の子供を褒めるような仕草に満足どころか、焦燥感を感じるようになることは己もまだ知らず。グランポートの陽気に頬を上気させ「わあっ、ありがとうございます」と、汗をかいた果実水の瓶を両手で受け取れば、白く細い喉を晒して美味しそうに飲み干して。ギデオンのたてた計画では、まだグランポートのメディア達を説き伏せる大仕事が残っているが、相手なら問題なく成し遂げるだろう。そう確信に近い信頼をもって、ありがたく相手の労いに頷けば、夕刻ギデオンに直接揺り起こされることになるほど、深く気持ちの良い束の間の眠りに落ちていった。
──そうして迎えた夕刻、既に予想していたことだが、波止場からの報告に密かに下唇を噛む。願わくば自分達の勘違いであればいい、確実に捉えるつもりとはいえ、今袋に詰められている彼らの恐怖と心の傷は無くならないし、いなくなった者たちは帰らない。微かな落胆に杖を力強く握り締め舟に乗り込む寸前、ハッと気づいたように暗視魔法担当の若い記者と背中をつつけば、振り返った青年の耳元に唇を寄せる。艶のある唇で何かしらをそっと囁けば、不可解そうに、とはいえ満更でもなさそうに己の耳をさする青年の背中を押しながら、順に舟にのりこんで。数時間後の船上、静かな水路と違って波に揺れる船上での魔法の調整は難解を極めたが、何とか身を隠し続けられていることに安堵の息を漏らしながらも、本当に現れた島影に目を奪われていれば、かけられた大好きな声にそちらを振り返る。相手の声から確かな信頼を感じとれば、誇らしい気持ちになって晴れ晴れとした頼もしい笑みをにっこりと浮かべ── )

──絶対イ・ヤです!
もし予定通りに来なかったら、私上陸するので絶対帰ってきてください!

( 吹き荒ぶ風に舞う髪を抑えながら、元々豊かな胸を張り、ギデオンの発言を予想していたかのように、キッパリと相手の保険を切り捨てる。口ではそう言いながらも、いざとなればビビは冒険者として相手よりも記者たちを優先せざるを得ないし、迷わずそうするつもりでいる。相手もそう信頼してくれていることを知っているからこそ、これは万が一のお守りだ。連中と対峙したギデオンが、もし危機に陥り一瞬でもヴィヴィアンの冒険者としての覚悟を疑うほどに冷静さを失った時は、"私のために"逃げて来てという傲慢で、周りからの愛を疑わない彼女らしい発言で。この短い付き合いでギデオンがそういうことを言う男だと知っていたから、この発言で記者たちを不安にさせないよう、先程記者には『私が何を言っても、皆さんのことは絶対に守るので安心してくださいね』と強かに耳打ちしてある。記者たちに背を向けてギデオンを降ろす一瞬、縁起でもないことを口にする相手に怒ったような表情を浮かべれば、 「待ってますから」と今度こそ作戦通りギデオンとの合流地点の方へ帆先の向きを変え。)


( / お返事にお時間頂いてしまい申し訳ございません。ロルについてそう仰っていただけて非常に安心しております!此方こそ背後様の小説の一節のような描写を毎回楽しみにしており、以前のものも何度も何度も読み返しております。
此方の提案に沿ってのシーン進行もありがとうございました。毎回場面転換をおまかせしてしまい申し訳ございません、今回は背後様になさりたいことがなければ、戦闘描写までで投げていただければ3,4に転換させていただきますので、ご負担のないように御相手していただければ幸いです。
まだまだやりたいことが沢山で、これからの関係の変化も非常に楽しみにしております。それでは引き続きよろしくお願い致します!/蹴可 )




63: ギデオン・ノース [×]
2022-06-26 17:22:02




(すっきりした笑顔で告げられた明るい拒絶の力強さに、面食らった顔で相手を見つめ。「……いや、しかし」と往生際悪く呟きながら、彼女の背後で待機する記者たちに助け舟を求めようと目をやって。しかし、記録係は他所を見ながら肩を竦め、暗視担当のライターときたら意味ありげに片眉を上げる有様。先ほど何か耳打ちしていたなとは思っていたが、どうやらこれに関係する話だったらしい。つまりあの時から既にお見通し、その上周到な先回りもされていたというわけで。妙な決まり悪さを覚え、再び相手に何か言おうとするものの、彫りの深い目の上の眉をぎこちなくひそめるのみで、言葉は上手く出てこない。これがほかの年若い冒険者相手ならば、甘えたことを抜かすな、と即座に切り捨てていたはずなのだが。やたら自分に懐いてまわり、仕草一つで蕩けるように嬉しそうな顔をしてみせる……この妙な娘が相手だから、なのだろうか。淡い月明かりのなかでもそれと分かった、どこか親し気に叱るような表情や、「帰ってきてほしい」「待っている」という言葉。それらが妙に己の胸の内に入り込んだような気がして、はねのけるのは許されないような気がして。薄いブルーの目が、揺れる。結局、何も答えることを選ばないまま船を降り、別の合流地点へと漕ぎ出していく船の背を見送って。雑念を振り払おうと小さく息を吐くと、愛用の魔剣をすらりと引き抜く。鞘を撫でる金属音、それでようやく平常心を取り戻せば、三悪蠢く孤島の奥へ、今回の目的を今一度思い出しながら単身踏み込んでいき。
それから十数分後、それまで低く轟いていたファーヴニルの唸り声は、落雷のような激しいおののきとなって島じゅうにこだました。誰も来ないはずの場所に突然現れた戦装束のギデオンと、敵と断じて迎え撃ったトリアイナ、二者の間で激しい戦闘が幕を開け、いときわ強烈な流れ弾が哀れなファーヴニルの横っ腹に命中したせいだ。ぬらぬらと光る鱗を持った巨大なうわばみが死に者狂いでのたうちまわれば、木々がなぎ倒され、土が舞い上がり、哀れなトリアイナ戦士の何人かがあっけなくぐしゃぐしゃと潰される。その隙に乗じて生贄にされかけていた幼い子どもを抱え上げ、目眩ましの雷光を派手に一発──被害者確保の合図、逃亡に切り替えた知らせ。怒り狂ったジェフリー・カーンの罵声を背に、鬱蒼と茂る森を駆ける、駆ける。やがて辿り着いた東の砂浜、合流地点に仲間の船をみとめれば、「船を!」──出せ、と命じようとした瞬間だった。闇の中から一筋の紫電、咄嗟に子どもを船の方へ投げ出しながら転がるが、焼けるような痛みとともにぼたぼたと血が滴る音が。ミスリルの鎧も貫く魔法、そんなものを扱える人間がトリアイナにいるはずが……と思いながら振り返れば。黒い警察署長服に身を包んだ男、ヘルハルト・レイケルが、杖だけはギデオンに向けながら、氷のように冷たい声で「……予想外の客人だ。悪いが、その子どもを渡してくれるかね」と、ヴィヴィアンのほうに語りかけて。)



(/いえいえ、こちらもここ数回返信が遅めになってしまっているのでお気になさらず……!お互いに余裕のできた時間にてギデオンとビビの物語を一緒に楽しく遊べれば、と思っております。またお言葉に甘えて戦闘シーンに移させていただきました、レイケルやジェフリーなどはお好きに動かしてくださいませ。ご配慮いただきありがとうございました……!/蹴可)





64: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-27 02:20:22




( 仮に振り返ったとしてもギデオンの姿が見えなくなった頃合、海に出る前の囁きがやっと腑に落ちた顔のライターが「あーあ、帰ってきて怒られても知りませんよ」と、あえて場の士気を上げるために戯ければ、そんな理想的な明日を想像しては爽やかに微笑み「本望です」と、ギデオンなら絶対に実現させてくれると、祈るような気持ちで月光を反射する緑の目を細め、波の音に紛れて聞こえる嫌な唸り声に拳を強く握った。
島に近づき過ぎれば、より巨大な同質の魔法に吸収されて擬態が弱まる。とはいえ決定的な瞬間を捉えられなければ、危険を犯して記者たちについてきて貰った意味が無い。ギデオンにかけた盗聴魔法が届く絶妙な距離を操舵手に保たせながら、合流地点側の沖合でまんじりともせず波の音に息を潜めていれば、合図の雷光に小舟を東の砂浜へ寄せたのと、子供を抱えたギデオンが茂みから飛び出すのがほぼ同時。仮にも冒険者を務める身体能力、投げ出された子供は難なく受け止めるも、砂浜で繰り広げられた目の前の光景には「ギデオンさん!」と悲痛な声をあげて。今すぐ駆け寄って治療すれば"ギデオンは"助けられる──しかし、余所者に見られた時点で相手に自分達を逃がす気はないだろう。着岸してる今こそレイケルとビビの目はあっているが、離岸してしまえば広大な海で見えない小舟を見つけ出すのはほぼ不可能だ。ビビには……冒険者には、市民を守る誇りがある。幸い生贄になりかけた子供は魔法で眠らされているだけで、命に別状は無さそうだ。「私は贄となれば誰でも構わんのだぞ」と砂浜にビビ達を誘い込もうとするレイケルの言葉に一瞬、ギデオンに覚悟を決めた視線を向けてから、此度の諸悪の根源であるレイケルに向き治り「なんで私が仲間を見捨てないと思うの?貴方たちはクリスを見捨てたのに」と、蜃気楼魔法が強固になる沖合まで、苦手な防護魔法の術式を頭の中で組み立ながら、時間稼ぎで苦し紛れに今晩のもう1人の行方不明者の名を出して。そう、これだけ狼藉を繰り返していても、この事件においてトリアイナが疑われないのは、トリアイナからも少なからず行方不明者が出ているためだ。ならず者の寄せ集めと言えど、仲間まで差し出してよく疑心暗鬼で瓦解しないものだと関心さえ覚えたが、今晩も腕の中の子供以外にもう1人、ジェフリーの腹心クリスの行方不明報告が上がっている。市民からの疑いを逸らすためのデマかもしれないが、時間稼ぎになればなんでも良いと背中に汗を感じていると、ギデオンとレイケルの背後、茂みから脚を引きずったジェフリーが現れ「おい女!!どういうことだ!?クリスをどうしやがった!!」と怒鳴りながら此方に剣を向ける。その発言に此方がどういうことだ、とつるりとした眉間に皺を寄せた瞬間、背後で記者達の騒ぐ声が上がり、レイケルは冷酷そうな目を見開き、ジェフリーはバランスを崩して砂浜に倒れ伏した。その次の瞬間、足元がぐらりと大きく揺れたかと思えば、大きな波に煽られて小舟ごと勢いよく砂浜に乗り上げる。まるで、巨大な"なにか"に押された様な、と思わず振り返れば、そこには資料館で見た、かのガレオン船──エウボイア号がボロボロに破けた帆を、美しい月夜に揺らめかせていた。元は美しく輝いていた船首は折れて、赤黒い錆と黒い藻で覆われ、竜骨は水上からでも真っ二つに折れていることが分かる、真っ白だった帆は見るも無惨に汚れて裂け、船体はびっしりとフジツボで覆われて、中から禍々しく低い幾つもの声が重なり響いてくる。ほんの一瞬前までは姿形もなかった巨大ガレオン船の影に、ジェフリーはすっかり腰を抜かし、さしものレイケルもあっけに取られて硬直している。それを確認した瞬間、あれだけ恐れていた幽霊船を前にしても怯まずに脚が動いていた。月の光だけでもわかるほど広がった赤に抱きつく、または抱き上げるように手を伸ばせば、シルクタウンの時とは比べ物にならない程の白く温かな光が2人を包み込むだろう。 )

……っ!!ギデオンさん!!


( / 此方こそご理解とご配慮ありがとうございます。返信不要との事でしたが、非常に長文となってしまったことを謝罪させていただきたく、返信させていただきました。我ながら文章の圧におののいております……大変申し訳ございません。
3,4まで描写出来ればと申し上げましたが、ギデオン様のピンチという緊迫感溢れるシーンの勢いを是非活かしたく、捕まえるシーンを省略し一気に5まで進行させていただきましたが、返信し辛いなどございましたらご遠慮なく仰ってください……!
それではご指摘などございませんでしたら、今度こそ返信不要です。どうぞよろしくお願い致します。)




65: ギデオン・ノース [×]
2022-06-28 00:08:38




(うつ伏せに倒れた身を起こすべく、砂浜に剣を突き立てながら、獣じみた呼吸を荒々しく繰り返す。貫かれたのは右肩、三本の完全貫通した魔法創から激しい勢いで血が噴き出ていた。これが普通の傷だったなら、歴戦の戦士たるもの、まったく歯牙にもかけなかっただろう。しかしこの傷はそうもいかない。どうやらレイケルが足止めを目論んだらしく、紫電に纏わりついていた濃密な闇の魔素が、傷口からじかに生命力を蝕んでいくのだ。心臓が脈打つたび、じわりじわりと視界が赤黒く染まり、目が血走り、ただでさえない魔力が抜け落ち、全身を強烈な悪寒が襲う。普通の肉体の痛みには慣れきっていても、肉体を超越した部分に直接干渉する魔法攻撃にはまるでなす術がない。まずい、中和を、だがそれよりも周りで何か異状が、早く動かなければ、敵を倒さなければ、彼女らを守らなければ──どっと脂汗を浮かべながら必死に立ち上がろうとした、そのとき。ふわり、と何者かに抱きしめられたかと思うと、思いがけない温かな光に覆われ、ただ優しく満たされた。視界を染める眩しい白、一瞬だけ訪れたあり得ないはずの穏やかな静寂。目を見開き、それでも本能的にその祝福を、全身で貪るように取り込む。すると、熱く重くこわばっていた身体がほどけるように楽になり、表情からも死相がゆるやかにかき消えて。癒しの光が解けたころ、自分をかき抱く相手の顔をようやく確かめる。ありったけの治癒魔法を発動してくれていたのは、死の淵に降臨するという花の女神ではなかった。この数日ずっとともに過ごしてきた相手、「帰ってきて」と伝えてくれたあの彼女。ヒーラー娘、ヴィヴィアンの、月光に淡く浮かび上がる白い顔を、深い緑色の双眸を、ほんの数秒ただ見つめて──)

……ファーヴニルが追ってくる。船を出すぞ!

(──礼を言おうとしたその口から、代わりに鋭い声が飛び出す。ギデオンの目つきも表情も、既にはっきりしたそれらへと切り替わり、戦士としての冷静な判断力が一気に巻き戻っていた。想像以上に大きく醜く膨れ上がっていた大蛇のことは、単独撃破は難しいと判断し、あのまま森に置いてきている。だが今宵の奴はまだ、生者から魂を啜っていない。あの有様なら、おそらく人の気配が集まっているこの浜辺に錯乱しながらも突っ込んでくる、そう確信しての警告で。相手の治療魔法のおかげで活力を取り戻した全身を翻すようにして立ち上がり、相手を庇って剣を構えながら、周囲を油断なく一瞥する。自分が傷に囚われ、そして相手に救われた間に、辺りはさらにおぞましい事態へと変化していた。浜辺に乗り出した幻の幽霊船、エウボイア号の登場には、流石に愕然と見上げてしまい。資料館で確認したそれからあまりにも変わり果てた、禍々しい船体の割れ目から、どろどろと溶けかかった巨大なタコ足のようなものが幾筋も伸びだしている。メインマストの切っ先に串刺しになっていた死体を見て「クリス!」とだれかが叫んだそこに、エウボイア号の触手が食らいつくように伸び、男をぐるりと巻き取った。悲鳴、やけくその詠唱、骨の砕ける音、絶叫、握り潰される音、そして敢え無き断末魔。トリアイナの連中が狂ったように叫びながら魔法や剣戟を叩きこむが、それに反応してまた第二第三の触手が伸びては、連中を船の中へと引きずり込み、鋭いフジツボの覆う甲板にやするように擦りつけ、あるいは船体のフォアマストやミズンマストにこれ見よがしに突き刺して。汚れた帆に大量の血が華々しく散り、月光に煌めく海を背に、ある種の異様な美しさを放っていた。──予想だにしない、ファーヴニルなど霞むようなおぞましい怪物の登場だが、この機を逃がすわけにはいかない。ヴィヴィアンヴィを伴い、浜に打ち上げられた小舟のもとへ駆けつける。すっかり腰を抜かした総舵手に喝を入れ、ライターに助けた子どもを任せ、記録係に船の移動を手伝わせ、そうして脱出の手筈を進めていくが。「逃がすか──逃がすものか!」地の底に住まう怨霊じみた声に振り返れば、血だらけのレイケルがこちらに猛然と突き進んできた。その後ろには、何故かレイケルと同士討ちしていたらしい、鬼のような顔つきのジェフリー・カーン。そのあとを追うようにエウボイア号から触手が迫り、さらには森の方から、傷つき飢えたファーヴニルの這いずり回る音が地響きのように近づいてくる。後ろで上がる記者たちの悲鳴、まさに絶体絶命といえる事態だ。……しかし、先ほどのあの光は、癒し以外に闘気までもたらしたのだろうか。迫りくる事態を前に、不思議と落ち着き払ったまま、隣の彼女と目を合わせる。それは島に入る時と違い、この身を捨ててでも、という思いから発した言葉ではなかった。彼女となら。前に出て戦う己に、彼女の助けがあるのなら。自分も一緒に、生きてこの場を切り抜けられるはずだと、そう確信しきった声で、若いヒーラーに問いかけて。)

──ヴィヴィアン。シルクタウンの作戦で使った閃光弾を何発か打つだけの魔力は、まだ残っているな?



(/謝罪は全くご不要です、むしろ満を持して登場したエウボイア号の描写から背後様の筆がノリノリなのを感じとって大歓喜しておりました……!こちらもついつい楽しみまくって大きく進めてしまいましたが、瀕死状態のギデオンをもっと見たい!などありましたら、戦闘中でも無事離脱後でもまたその流れを持ち込みますので、お気兼ねなくお申し付けください。
※第三者が多数絡む事件が進行中である以上、展開をついつい強引に進めてしまっておりますが、この山場を越えた後は、もう少し(作中基準で)リアルタイムな感触のロルに戻せるようにしようとも考えております。今現在偏重している駆け足気味のロル構成について、もうしばらくの間だけ目をつぶっていただけますと幸いです……!

また、お気遣いいただいたにもかかわらず背後返信を続けてしまい恐縮ですが、上記の興奮や提案をお伝えしたかったという理由のほかに、一点ご相談が。主様の手により、「昔はいい男だったぶん、今は頭部の劣化を密かに気にしている」というキャラ付けがなされた時から、ジェフリーのことが実はひっそかに気に入ってしまいまして……。諸悪の根源レイケルはここで滅びるのが妥当だと考えているのですが、ジェフリーについては(今であれ、後で判明するのであれ)一旦生存、とさせていただくことは可能でしょうか……?
グランポートの失踪事件共謀者であり、トリアイナの旧メンバーを追い払ったうえ何なら沈めた可能性もある、これ以上れっきとした悪人ですから、のちのち悪事の報いを受けて哀れな最期を遂げるのももちろん大アリだと考えています。しかしいかんせん、この場限りにしてしまうのはなんだか惜しい、もうちょっとだけジェフリーを見てみたいというしょうもないファン心が……! キャラの扱いをどうするか、という単純な話ではありますが、主様ご考案のキャラクターであること、また主様・当方のどちらもが大事なものとして捉える「倫理」に抵触する人物であることから、事前に確認させていただきました。主様の考えをお聞かせいただければ幸いです……!)





66: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-29 22:10:57




( 夢中でかき抱いたギデオンの体は、不自然に熱を持っているにも関わらず、冷たく嫌な汗がじっとりと瀟洒な赤いシャツを濡らしていた。脈も弱いし、手足も氷みたい──半無意識に手首をとって脈を測ると、白くなった指先にゾッとしてギデオンの白茶けた顔をのぞき込む。こんなに冷たく重い彼の手は知らない。今まで触れた彼の手は、硬くも暖かくてふわりと優しくビビの頭を撫でてくれた。左手と太腿でギデオンの体を支え、右手を相手の左手に絡めて握りしめると、自身の熱を移すかのように聖の魔素を流し混み。止まらない血とどんどん浅くなる呼吸に、思わず強く抱き締めれば、周囲の目を気にする余裕もなく「……っ、ちゃんと、告白し直すから、待っててって約束したじゃないですかっ!」それが一方的な約束だったことも忘れて言い募り、その勢いで肩口に執拗く纏わりつく闇の魔素を勢いよく霧散させて。ビビの額にも冷や汗が滲むと同時に、その下の大きな目の縁に微かに水分が光ったのは、悪意に満ちた魔法に、瞬きも忘れて対抗したためだ。)

──っ!……ビビって呼んでくれたらメテオもいけちゃいます。

( 己に向けられた信頼、声に滲む前向きな確信、そして何より"ヴィヴィアン"と、相手の口から滅多に聞くことの無い名前に心が舞い上がるのを感じる。声にならない歓喜に表情を緩ませて、現状を思い出すように一呼吸置けば、杖を握り直しながら断られる前提の冗談を。悍ましい触手によって次々と人間が空を舞い、マストには死体(ならまだ救いもあるが)の串刺しが連なる。そんなこの世のものとは思えぬ光景を前にしても、ギデオンが隣に立っているだけで、怖いものなど何も無い気がした。杖を袈裟斬りの要領で振るえば、レイケルらに向けて魔法の炎と熱された砂が降りかかり、ついでに"偶然狙いすましたかのように"ジェフリーの前髪に引火する。「態とだろお前!!」と、ビビが言えた立場でもないが、こんな時でさえ逞しく一瞬前髪に気を取られたジェフリーに詰め寄り、両手で杖を振りかぶる「あんたの為に覚えたわけじゃないんだけど、」と、その杖に聖魔力を纏わせれば気持ちよくフルスイング。ホームラン、とは勿論行かずに、寧ろ無惨に地面に擦り付けられ動かなくなったジェフリーに、「言いがかりはよしてよね」と初日の恨みとばかりにべえっと舌を出し。そうしてジェフリーとビビがじゃれあっている間、レイケルとギデオンはどうしていたのだろうか。焼け付く砂に顔の皮膚の一部が剥がれ落ちても尚、執念深く小舟へ杖を向けるレイケルにハッとして、此方も杖を握り直した時には既に、半透明に濁った粘膜と腐臭を纏った触手がレイケルを絡め取らんとし、ファーヴニルの毒牙もまたその頭を噛み砕く瞬間であった。
かくして、レイケルは生きたままエウボイア号の怨霊に背骨を締め砕かれ、頭から黄金に変貌していく身体では痛みを紛らわすために身を捩ることもできずに、グランポートの港に届く断末魔と、哀れで醜い金塊だけが砂浜に残った。
レイケルを止めようと放った閃光弾が、砂浜の凄惨な状況を間抜けに照らしたかと思うと、杖を握った両手にボタボタッと生温い赤い液体が降り注ぐ。それが自分の鼻血だと気づけば、視界は明滅して酷い吐き気に嘔吐きが漏れる。戦闘スタイル上、何度も覚えのある感覚に、ギデオンの肩の治療、砂浜を抉った火災旋風、ジェフリーに叩き込んだ聖魔法と閃光弾……これくらいで魔力不足になる訳が──と記憶を辿れば「あ、しんきろ、うまほ……」と呂律の怪しい声を漏らして。元凶を討ち取って満足したのか、それともビビの視力がそれ程までに狂ったのか、エウボイア号の姿こそ見えないものの、ファーヴニルが閃光弾でのたうち回っている間に船を出さなければ、既に限界に近い身体に鞭打って1歩、砂を踏み締めた音がやけに大きく聞こえた。)


( / お優しいお言葉ありがとうございます!調子に乗ってまたしても長文となってしまいましたが、当方もかなりの駆け足のロルですのでお気になさらず。毎回しっかり進行していただき感謝しかございません!失踪事件を提案させていただいた当初、全く想定していなかったほどスケールの大きく魅力的な展開を楽しませていただき、なんとお礼を申し上げれば良いか……!
寧ろヒーラーとしてのキャラ特性上、背後様のなさりたい負傷描写を邪魔してはいないでしょうか。回復度合は背後様に匙加減で調整していただけるよう描写しないよう意識しておりますが、想定されている展開がある場合は仰ってください。

ジェフリーへのお褒めの言葉まで恐れ入ります。実は当方も展開の流れ上とはいえ、腹心のために怒ったりするような人間味のある彼に少し愛着が湧いておりました。彼がエウボイア号を沈めたとなると、幽霊船エウボイア号が逃がしてくれなさそうだったため、レイケルかその部下が行った事件ということで、ジェフリーは今後再登場も可能そうな形で決着させて頂きました。最終的に逃げ得になるような展開は看過できませんが、今後の展開次第で再登場させられることを楽しみにしております。ご丁寧に確認いただきありがとうございました。

また少し気は早いのですが、今回非常に規模の大きい事件の展開を楽しませていただいたので、次はキングストンのお祭りの警備の様な、軽めの仕事を想定しておりますが如何でしょうか?ビビの賭けの内容は『ギデオンさんと最後の花火を見たい』で、大きな事件の幕間として、テンポよく短めロルで進行出来ればと考えております。 )




67: ギデオン・ノース [×]
2022-06-30 03:13:24




(ギデオンを見つめ返す翠玉の瞳は、もう先ほどのように不安げに滲んでなどいなかった。代わりに今宿るのは、凛々たる強い光。それにふさわしい勇ましい冗句さえ緩んだ顔で返されれば、こちらもふっと微笑んで。──無言で前を向いたのが、ふたり同時。次いで、相手が鮮やかに捌いた杖から、凄まじい爆炎が薙ぐように放たれる。派手に巻き上がる熱砂、夜空をつんざくレイケルの悲鳴。それがこの禍々しい孤島での、最後の戦いの幕開けとなって。足を引きずっていたジェフリー・カーンは、支援職ながら腕の立つ相手を信頼して任せ、己は水魔法と風魔法を混ぜ合わせた冷風の鎧を纏い、灼熱の煙幕へと一直線に突っ込んでいく。「あああ……!」と顔を抑えながらのたうち回っていた警官服の男、その四肢に、自由を奪うべく魔剣を強振。しかしぎょろりと目を剥いたレイケルは、すんでのところで飛び退った。「この、忌々しい害虫どもが……!」と余裕のない声で罵りながら立ち上がる悪党、彼の整った顔の右半分は今やべろりと剥がれ落ち、赤黒く生々しい肉が、奴の本性そのもののようにおどろおどろしく露出している。醜い怪物になり果てた男がこちらに杖を構えれば、その切っ先より、闇の魔素からなる暗黒の刃が夜気を震わせて長く伸びた。二度同じ手を食らうものか、とギデオンも激しく睨みつけ、互いに間合いをはかりながら対峙すること数秒。次の瞬間飛び出して、火花と闇の魔素を散らす猛烈な剣戟を一閃、二閃、三閃。互いの執念を燃やし、吼えながら斬りつける。やがて力量の差に気づいたのか、自棄を起こしたらしいレイケルが、「貴様らだけは──絶対に──二度と大陸には戻さん!」そう言い放ち、背を向けてまで浜の小舟に魔法を撃ち込もうとしたのと、ギデオンが「それ」に気づいてはっと身を屈めたのが、ほとんど同時。月光を遮るほどの巨影がふたつ、ぶんと夜気を切って伸びた。エウボイア号の太い触手は、レイケルの胴体を横ざまにがっちりと捕らえ。ギデオンの背後の森から飛び出したファーヴニルの毒牙は、奴の頭をいともたやすく噛み砕いて。欲望に狂った悪漢の、あまりに無残で皮肉な最期。その全容が、不意の閃光弾によって明々と照らしだされたために、ギデオンの目にしかと焼き付けられることとなり。)

……っ、ヴィヴィアン!

(しかし、目を瞠っていたのも数秒。閃光弾の出どころを思ってはっと我に返れば、相手が向かったはずの地点へ大股で駆けていく。はたしてそこには、大の字になって気絶しているジェフリー・カーンと、顔の下半分を真っ赤に濡らしながらも両足で立つヴィヴィアンの姿が。どうやら奴との戦いには無事に勝った様子、しかしなんだか様子がおかしい、遠目ですら酷く危うげにふらついて見えるのは気のせいか。砂を蹴ってさらに駆け寄り、真正面から薄い両肩を掴むと、汚れてしまった顔を覗き込みながら「大丈夫か!」と声をかけて。)



(/シリアス面でもコメディ面でもビビのヒロイン力が相変わらず突き抜けててもう最高の回でした……(深夜の挨拶)
そう言っていただけて安堵の思いがひとしおです。せっかくの最後の山場だから、と今回もノリノリで戦闘シーンを堪能させていただきましたが、サスペンスもラブコメも冒険要素もたっぷりのグランポート編を主様と追いかけられたこと、心から楽しくてたまりませんでした。主様のアイディアや魅力的な描写、何よりこの素晴らしい怪談エンドがあってこそですので、こちらこそ本当にありがとうございました……!

負傷描写については、今までの描写で全く問題ございません。むしろ、負傷しがちな戦士とそれを回復するヒーラーらしい描写を本格的に盛り込むことができ、こちらも心行くまで堪能しておりました。
今回の怪我の回復度合いについてですが、是非是非ご提案が。「レイケルの闇魔法はかなり特殊であり、本来ならば不治であるどころか、その場しのぎの治療を施すことすら不可能なはずだった」「しかし、ビビの治療魔法はギデオンの体質に奇跡的に噛み合うらしく(※魔法医療では稀にあること)、本来できないはずの一時治療がきちんと果たせている」「今後も定期的にビビに治療してもらい、残存性・復活性のある闇の魔素を、確実に完全に克服するように」……という診断が、カレトヴルッフへの帰還後、ギルド専属の専門医から命令として下される、というのは如何でしょうか?いつぞや募集板で記載した「戦士とヒーラーの契約要素」を、長期治療という形で是非持ち込みたいなと……!

ジェフリーの件も同じ思いだったようで、嬉しいやらほっとするやらでした。過去についても今度についても、是非その方向でお願いいたします。素晴らしいご対応をありがとうございました!
最後に次の展開についてですが、もちろん大賛成です。2件目のクエストにしてしっかりがっつり楽しんだ分、次はほどほどにゆるい仕事で息抜きしつつ、ギデオンとビビの水入らずの交流を楽しめればと思います。お祭りの警備は初日から数日間を担当し、シフト上最終日の夜は仕事から外れてフリーになる……ということであれば、ふたりでゆっくり花火を観られそうですね。その際ギデオン側で、実は古馴染みたちからも花火を見ながら飲もうと誘われていたものの、賭けの件があるので(という言い訳で)断る……という背景を盛り込むことにより、ギデオンの生活の中に「ヴィヴィアンのために」「ヴィヴィアンといる方を」、という選択肢が少しずつ入り込んでいくきっかけにしようかな、とも考えています。)






68: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-06-30 09:34:06



"ただの"、魔力、ぎれ……なんで、っ……

( 魔力はその保有量にこそ大きな差があれど、誰の体にも流れる生命力のようなものでもある。ギデオンの怪我とは違い、時間経過で回復するとはいえ一時的にでも切れれば、身体に不調をきたすのは当然のこと。ヴィヴィアンがその少ない魔力を使う術を持たぬ者達と違うのは、生まれながらに魔法の才能のあった彼女は、魔力を無意識に"使いきれてしまう"ということで。幼少期から幾度となく経験してきた目眩に出血、南の島にも関わらず奥歯は震えでガチガチと音をたてる。早く、早く逃げなくちゃ──白けていく視界の中、数m先の小舟がはるか遠くに感じて、瞼を閉じかけた瞬間、両肩に熱い感触と視界いっぱいに大好きな相手が映し出されれば、安心でふっと身体から力が抜ける。ああ、鼻血見られたくなかったな、なんて場違いに呑気なことを考えながらも、大丈夫かと問われれば真っ青な顔に気丈な笑みを浮かべて『だから、早く帰りましょう』という言葉は音にならなかった。 )


( / ギデオン様とレイケル様の迫力ある一戦、背後様の素晴らしい描写も相まって脳内再生余裕でした!まるで映画でも見ているような、手に汗握る展開を心から楽しませていただき、完っ全に痺れました!
此方も背後様のような読みやすく、素晴らしいロルを書けるよう精進して参る所存です。

負傷&回復描写へのご理解とご提案ありがとうございます。心躍る素敵な展開に、今後の二人の関係を想像するだけでワクワクして、不謹慎の極みですが、戦場での治療以外の、落ち着いた場所での定期的な手当ってなんか色っぽいなとテンションも上がっております……! これ以上なく魅力的な展開だと思いますので、是非そちらでよろしくお願い致します!
いつになるかは分かりませんが、完治するのにジェフリーが一役買うような展開になっても面白そうなんて考えてしまいました。

次の仕事の件もご賛成いただけて安心致しました。ギデオン様の内心の変化と共に、ヴィヴィアンも純粋な憧れから彼自身を見るような展開が入れられればと考えております。魔物や事件に対しては頼もしい2人が、子供や人出の多さにぐったりするようなコミカルなシーンもありそうで、非常に楽しみです。 )




69: ギデオン・ノース [×]
2022-06-30 12:21:35




!? おまえ、何を言って……

(相手の口からもたらされた言葉に、思わず唖然とした表情を向けて。無機物である魔道具ならいざ知らず、生きた人間が魔力をゼロまで使い切ることなど、通常はあり得ない。言わば「体中を流れる血が全部抜け落ちただけ」「心臓を止めただけ」と形容するようなものだからだ。とはいえ、本人の言が事実ならば、この見たこともない酷い容態に納得してしまうのも事実で。元々白いのを通り越して最早蒼白な顔、弧を描きながら震えて動くも言葉を紡ぐことすらできない紫色の唇に、今宵たくさんの働きをしてくれた彼女はもう限界も限界なのだ、と知って選ぶ行動はただ一つ。彼女の薄い背に左手を、細身のスキニーパンツの膝裏に右手をやり、ふわりと持ち上げ──優しく、横向きに抱きかかえた。痛々しい赤に染まった顔を労わるような視線で見下ろし、「大丈夫だ、もう休め。あとは俺と記者たちに……」任せろ、と言おうとした時だ。後ろで何やら勇ましい声が上がったので、ふと振り返ってみれば。なんとライターと記録係、ついでに眠らされていたはずの被害者たる子どもの3人が、身悶えるファーヴニルの周りで何故か威勢よく飛び跳ねていた。一気に冷える肝、「馬鹿野郎、何して……!」と大声で呼びかけるが。記者の青年がファーヴニルの気を引くように煽り立て、記録係が正体のわからぬ魔法を大蛇の両目に撃ち込み、そして少年がファーヴニルの尾にぴょんと飛び乗れば。鎌首をもたげた大蛇は、かっと口を開け、己を踏みつける少年を喰らうべくその頭を突進させた。しかしそこは、身軽な彼が既にひらりと飛び降りた後で。自慢の毒牙を、ほかならぬ己自身の尾に深々と突き立てたファーヴニルの眼が、大きく大きく、こぼれ落ちそうなほど見開かれる。石になったように動けぬまま、その巨体は尾の方から少しずつ、煌びやかに変貌していき。やがてウロボロスの紋章よろしく、円環を成す黄金の彫像へと変わり果てた不死の大蛇。傍らではライターと記録係が太い勝鬨の声を上げ、幼い少年はファーヴニルの頭の上によじ登り、その小さな拳を天に高々と突き上げて吠えた。……こちらはこちらで、別方面にあっけなく勝負が決まったらしい。激しく脱力しながら小舟のほうを振り返れば、操舵手ただひとりが、まともにぶるぶると震えながら「やだ、もうやだ、帰りたい、なんなんですかあいつら怖い」とギデオンに呟いて。思わず、安堵やら何やらが混ざった盛大なため息が漏れる。──長い長い夜が、終わった。)

……、目が覚めたか。

(それから数時間ののち。薄青く白む空の下、器用な操舵手の魔法により、広い海面を二艘の船が走っていた。一艘はギデオンたちの乗る小型の船、そしてその後ろに続くのは、トリアイナの連中が乗っていた中型の船である。後者にはジェフリーをはじめとするトリアイナの残党どものほか、今回の事件の物証として、黄金の像になり果てたレイケルと魔法で縮めたファーヴニルも、厳重な拘束を施したうえで載せている。それでも尚、一刻も早くそれらから離れたいらしい操舵手が、一心に船を駆り立てるなか。ふと隣で生じた身じろぎの気配に、水平線に目をやっていたギデオンが振り返り。先ほど顔の血は拭ってやったが、今の具合はどうだろうか。上体を傾けて少し顔を寄せると、相手の顔を覗き込みながら、そっと話しかけて。)



(/お褒めの言葉ありがとうございます……!
不謹慎どころか完全に同意です、約束された治療風景ってものすごくものすごくいいですよね……!? 何度でも堪能したいので、主様がお望みの際にも、診察の予定を遠慮なく盛り込んでいただければと思います。また、いわゆる腐れ縁ポジションに落ち着くであろうジェフリーが役立つのも、最高過ぎる案なので是非! 主様同様、今後どう活躍しようと過去の重い罪は消えないため、無罪放免じみた扱いにするのは違うと考えておりますが、ほんのちょっと取り返すような一面を見るのが今からとても楽しみです。
またこの長期治療に限らず、ギデオンが怪我をし、ビビがその手当てをする、といった要素を楽しみたい気持ちが盛りだくさんですので、今後のシリアスパートでも是非お約束にさせていただければ幸いです。逆に今回のように、ビビが魔力を使い果たし、ギデオンが彼女を守る、という立場の逆転も同時に楽しんでいけたらとも考えております!
お祭りの風景もさっそくわくわくが止まりません……!特にギデオンはどちらかと言えば人嫌いですから、「休みたい」という一心で、そうとは自覚しないまま二人きりになれる場所へ連れていったりしそうですね。警備中にビビの友人たちとすれ違い、同年代と接するときの、ギデオンの知らないビビの一面を垣間見る、なんていうのもありえるだろうかと妄想しております。今後グランポート編の事後処理を簡単に進めたのち、早速お祭り編に向かっていきたいと思います。
特に追加確認等なければ、お返事には及びません。引き続きよろしくお願いいたします……!)






70: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-07-01 10:49:03




( ふわりと身体が浮いた感覚に、吐き気が込み上げてうっと口を抑える。焦点の合わぬ目と限界を迎えた身体では、今自分がどのようにギデオンに抱えられているのかさえ分からない。魔力切れを起こした時は、決まって己の無力さだとか、嫌な思い出だとか、最悪なもの全てを詰め込んだような悪夢を見る。それが嫌で、普段であれば意識を保とうと悪足掻きをするのだが、ギデオンの『大丈夫だ』という言葉だけがやけにはっきりと聞こえた瞬間、糸が切れたかのように強ばっていた身体からふっと力が抜けた。ギデオンさんが言うなら本当に大丈夫なんだ、私が心配することなんて何もない──心から安堵して血色のない顔に薄く笑みを浮かべると、ギデオンへの揺るぎない信頼を表すように、その逞しい腕にかかる重さは意識がない人間特有のそれに変わった。)

ひっ……おは、おはようござい……ファーヴニルは!?

( 魔力駆動船特有の低く規則的な音の中に、水の魔素が弾けるキラキラした音が微かに混ざる心地よい音を感じて意識を浮上させれば、瞼から差し込む眩しい朝日に睫毛を震わせる。ゆっくりと開いた視界いっぱいに意中の相手の顔を捉えると、寝起きの顔を至近距離で見られた動揺に小さく声をあげたのは純粋な乙女心。パッと片方の手のひらで顔を隠しかけ、一瞬遅れて意識を失う直前のことを思い出せば、上半身を勢いよく起こそうとしてまだ残る疲労に顔を歪め「あ……逃げきれた、んですね。あんな時に意識を失うなんて、ご迷惑おかけしてごめんなさい」と、危険な場所で意識を失うという"冒険者として"有るまじき失態に、先程出しかけた片手の甲を悔しそうに己の目の上にあてて。 )




71: ギデオン・ノース [×]
2022-07-01 12:31:19




(ひどく動揺した様子で顔を隠す相手の切実な心情を、しかし男のギデオンは知る由もなく。血色はマシになったか、目の焦点はどうか、つぶさに目視で確認していき。まだ疲れが残ってはいるが、先ほどのような異常は見られなくなったとわかれば、相手の申し訳なさそうな顔に反し、こちらは安心したように表情を緩めて。「いや、ファーヴニルは……」と教えようとしたのを、「オレが倒したんだぞ! オレが!」と背後からのわんぱくな声が威勢よく引き継いだ。振り返れば、船の舳先で少年が仁王立ちである。「いや、オレ“たち”だろ」と記者の青年が不平そうに口を挟むも、「でけーねーちゃん起きたんか! なあ、オレんちに朝飯食べに来いよ!」、あっけらかんとナンパしにかかる笑顔の少年。その小さな頭を記録係が無言でバシッと叩き、記者の青年は(こちらにはお構いなく)というように愛想の良い笑みを浮かべ、ふたりと一緒に背を向けた。すっかり親しい3人におかしそうな目をやってから、「ま、そういうことだ。ファーヴニルだったものは今、後ろの船で運んでる」と、相手に視線を戻し。それから不意に真剣な表情へと切り替えたのは、自分の方こそ謝らねばならなかったからだ。小さく息を吐きながら、己の無茶な指示を悔いる思いを声に滲ませて。)

おまえが倒れるまで魔力を使い果たしたのは、俺のせいだ。特に蜃気楼魔法、あれひとつだけで思えば常人じゃありえないくらいに大量消費してくれていたのを……無尽蔵のように扱ってしまっていた。本当にすまない。体調はどうだ……?





72: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-07-02 12:31:10





( 夜とは言えど温暖なグランポートの海で数時間の潜伏後である。潮で髪バサバサだし、絶対メイクよれてるし最悪──1人の女性としてはあまり近距離で覗きこまないで欲しいところだが、ギデオンの心配そうな視線を前にして顔を逸らすこともできずに受け入れる。それでもひとしきりこちらを観察した後、安心した表情をうかべる相手の優しさを見れば、胸がきゅんと主張するのも事実で。そうこうしているうちに一気に賑やかになった周りを見回して、少年達の言っている意味がわからずギデオンに視線で助けを求めるも、あっけらかんと纏められてしまえば、説明を求めて不満げに口を尖らせかけたところで、相手の真剣な表情に此方も姿勢を正す。暫く殊勝な表情をして聞いていたものの、ギデオンの謝罪を聞けばムッと眉をひそめて上半身を乗り出し、顔が近づくのも厭わずに声をあげて。 )

──謝らないでください!
蜃気楼魔法を使うって決めたのも、自分の限界も忘れてバンバン魔法使ったのも私です。……それを、謝られるほど子供じゃありません。

( 確かにギデオンに頼られて嬉しかったし、調子に乗って魔法を使いすぎもした。しかしそれはビビの至らなさであって、ギデオンの責任では決してない。最後の問いには「ご心配はありがとうございます。体調は問題ありません。」と、心外そうに座り直しながらも律儀に答え。悔いに揺れる氷の瞳を正面から見つめれば、言外に侮ってくれるなと憤慨するも、そもそも己の失態が原因なのだから救えない。こちらもため息をつき、2人の間になんとも言えない気まずい空気が流れかけた瞬間「深夜の"げきとう"の裏、おもいしたう、冒険者2人の、かんけーにも、せまる……何だこれえ?」「いけないんだー!エロいやつ読んだら怒られるぞ!」と船頭の方であがった無邪気すぎる声が2人の間を横切って。片方の少年が纏められた資料を不思議そうに読み上げ、もう片方の少年が恥ずかしそうにギャーッと叫び声をあげれば、「バッ……」と言葉を失った記者の青年が、草案を取り返そうと慌てて立ち上がるも、鬼ごっこの気配に少年達のテンションはあ上がるばかり。どうやら記者達は、レイケルやジェフリーの決定的な証言やファーヴニルの咆哮の他に、ちゃっかり2人のやり取りも記録していたようだ。流石こんな危険な場所に乗り込むだけあって強かだなあと、ビビがどこか遠い目で感心さえ覚えかけ、船降りる前に取り上げればいいやと投げやりな視線を向けるも、既に情報移送魔法の準備を開始している記録係を見つれば、此方も慌てて立ち上がり。小回りのきく少年と、記者の青年、そしてビビが一気に立ち上がったものだから、船上は再び一気に賑やかになり、「勘弁してくださいよお、ひっくり返っちまう」という操舵手の声も加わる頃には、港も近づき他の船や炊事の煙が見え始めて。 )




73: ギデオン・ノース [×]
2022-07-02 14:21:26




(予想だにしない強い語気での反論、その真剣さに、最初こそ驚いた顔をしたものの。いわば一人前の冒険者としての彼女の責任能力を軽んじるような、お門違いの物言いをしてしまったのだと理解すれば、さっと顔色が悪くなり。反射的に喉元まで詫びが出かかるが、それでは同じ過ちを繰り返すような気もしてしまうものだから、間近に鉢合わせていた顔を逸らしての居たたまれぬ無言に陥る。……相手のことは、仕事仲間として好ましく思っているのだ、関係の悪化は避けたい。何と言って挽回すべきだろうか、そう思案しかけたところを、少年たちの無邪気な暴露がすべて吹っ飛ばし、こちらも「は?」と振り返って。もろに焦っている若い記者、キャッキャとはしゃぐ少年たち、こちらとチラッと交差させた目にありありとした(やっべ)を浮かべる記録係、その長身で慌てて立ち回るヴィヴィアン、危うげにオールを漕ぎながらもはや露骨に嘆く操舵手。にわかに騒然としはじめる船上の風景に、島での戦いとはまた別種の疲労感がどっと体を重くするのを感じ。背中を船に預けながら、少しだけ現実逃避しようと横に視線を投げかかて──それに、気がついた。「……おい、」と仲間たちに声をかけつつも逸らさない視線の先には、白く明け染めた東の水平線の上、一層の立派なガレオン船がいつのまにか浮かんでいる。まるで蜃気楼のように幻想的に揺らめきながらも、月光の中で観たあのおどろおどろしい異相ではなく、白く美しく輝いているのが遠目でもはっきりとわかって。潮風を受けてしっかりと張った帆も、進行先を突くまっすぐな船首も、まるで在りし日の華やかな、誉れに満ちた豪華客船のそれだ。朝日を背に受け影になった船は、ゆっくりとこちらを向き、一度だけさらに強く輝くと、空と海に溶けるようにしてその姿をかき消した。……あの船なりの、別れの挨拶なのだろうか。しばらく黙って青い波間を見つめていたが、そばに飛んできた海猫の鳴き声に我に返ると、ふとヴィヴィアンの方を見あげ。胸に落ちてきたその思いを、「……そういや、あの時に伝えられてなかった」と穏やかな声で告げて。)

……助けてくれて、ありがとうな。





74: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-07-03 23:29:58




( 当初は三つ巴だった船上の追いかけっこは、いつの間にか絆を深めていた記者と少年らが手を組み3:1となっていた。本調子ではない上に、狭い船上は小回りの効く少年が圧倒的に有利とはいえ、情報移送魔法にこそ触れさせないものの、ちょこまかと腕をすり抜けられれば、本職としてはそれなりにプライドが傷ついて、よく彼らを捉えられたものだと、ジェフリーに対し謎の感心さえ向け。ギデオンさんも見てないで助けてくださいよ──と振り返れば、何やら相手からも丁度声をかけられる。相手に習い水平線に目を滑らせれば、目を疑うような光景に一瞬立ちつくし )

……此方こそ。約束守ってくださってありがとうございました。

( "絶対に帰ってきてください" その単純にして、時に冒険者にとって何より難しい、エウボイア号の彼らには果たせなかった約束をギデオンは守ってくれた。細められた薄氷色の瞳と、朝日に煌めいて靡く金髪、相手の穏やかな笑顔に一瞬見とれてから、此方も蕩けるような笑顔で応えて、ずっと見てみたかった広い海と水平線を初めて、ゆっくりと眺めることが出来れば背後から、間の抜けたタイミングで響いた情報移送完了の音に深いため息を漏らすこととなった。
それから、一晩にして警察署長とギルドの冒険者達を失ったグランポートは大混乱を窮めた。彼らの悪事は逞しい記者たちにより、号外として瞬く間に周知され、伝説の魔物やエウボイア号の幻影に市民達は大いに湧き、ついでにギデオンとビビは少々居心地悪い思いをすることとなった。それでも、船上ではあれほど元気だった少年達が、両親を前にして糸が切れたように泣き出し抱き合っているのを見れば、心から良かったと此方もつられて少し目元が潤みもして。トリアイナは引退して難を逃れていた元冒険者たちを中心に立て直しが進むらしい。自分に冒険者の資格はないと依頼人の青年は固辞していたが、『人手が足りねえんだ、シカクもサンカクもあるか!』と宣うTHE海の男!という風貌の壮年の大男に引きずられていく表情は、今までで1番柔らかく見えた。暫くこの混乱は続くだろうが、この逞しく元気な港町のことだ、すぐにまた活気を取り戻しキングストンの川でもグランポートの船を見ることになるだろう。
さて、そんな事情で数日グランポートに足止めされる間、ギデオンの肩の傷を放置する訳にもいかず、宿の主人に良い病院を尋ねれば、わざわざ宿の部屋に医者を呼んでくれるという相変わらずの高待遇ぶり。現場の応急処置をしたヒーラーとして診察に立ち会えば、念入りな診察が済んだ後「やあ、なんで生きてるんでしょうねえ、普通死んでますよアナタ」という柔和な顔をした高齢の医者から飛び出した暴言に、ギデオンと顔を見合わせて。 )




75: ギデオン・ノース [×]
2022-07-04 04:43:31




(田舎の港町で夜な夜な起こる、謎の連続失踪事件。それを解決してほしいという依頼者の悲願は、ギデオンとヴィヴィアンによる7日間の格闘の末、ようやく果たされることとなった。生贄にされかけた少年たちと夜も眠れずにいた家族の涙ながらの再会や、依頼者の青年も仲間入りした新トリアイナの輝かしい発足、ギデオンとビビの妙な噂を聞きつけた一般市民のシルクタウンさながらの興奮……と、新しい朝を迎えた港には平和な光景が訪れて。……しかし、グランポートにとって本当に大変なのは、むしろここから先である。ジェフリーらの帰還を待っていたトリアイナ残留組の逮捕、レイケルの息がかかった警察署員の炙り出し、これまでグランポート警察署が握り潰してきた数々の事件の再捜査、魔物ファーヴニルが喰らった行方不明者たちの遺骨の回収。卑劣な悪事が一気に明るみに出たからこそ、その余波はあまりに膨大だった。グランポート市長が出てくるのは当然として、グランポート議会、公認ギルド協会、地方警察本部、さらには魔導学院さえ調査に乗り出す事態に至り。一躍大人気となった地元新聞紙が市民の快哉を呼ぶ裏では、緻密な検証や地獄のような責任追及が幾多も繰り広げられていて。憔悴した様子のグランポート市長から、一連の事件は自分の招いた失態であると頭を下げられたうえで、「辞職前にせめてもの罪滅ぼしを果たさねば、亡くなった市民に顔向けができない」と事後協力を要請されれば、滞在を延長しないはずもなく。とはいえ、調査委員会からの事情聴取で何度も駆り出されるのには、流石に少々参ったのが本音。その際、自分はともかく、魔力切れで病み上がりに等しいヴィヴィアンを歩き回らせるのは……という考えが、一度は脳裏をよぎったものの。帰りの船でのやり取り、彼女のあの真剣な声を思い出せば、己の中でしっかり打ち消し、彼女本人にただ任せることにした。もう、二十年前に見かけたあの幼い少女ではないのだ。立派に身を立てているひとりの冒険者として、もっときちんと捉えなければ。──医者が往診にやってきたのは、ギデオンがそんな心境の変化を遂げたころのことで。)

……どういうことです?

(老爺から告げられた青天の霹靂に、ベッドの端に腰かけたまま、動揺と不可解の入り混じる顔をヴィヴィアンと見合わせる。わけわからんのはこっちなんですよねえ、と言いたげな溜息を漏らす医者が見せてきたのは、透過魔影と呼ばれる大きな白黒写真だった。魔法医学を修めた者のみが作り出せるそれは、灰色の肉や真っ白な骨格とともに、人体内部に宿る魔素を黒い粒子として写真に映し出せる代物。ギデオンの左肩には、まるで植物が根を張るような形の影が、確かに3つほど見て取れて。「これね、残留魔素。しかも、闇属性の中でも破壊作用に特化しまくったヤツなんですわ」そう説明する医者の顔は、悪意に満ちた魔法への嫌悪ゆえか、似合わぬ険しさをかすかに滲ませているようで。「術者の放った攻撃、非常に強力なんですよ。強力過ぎですね。仮に一度は取り払えても、体内にごくわずかに残った残り香レベルの魔素が、血の巡りによって少しずつ再生してしまう。そうしてある程度経った頃になって、もう一度ドカンです。しかも今度は心臓にも直通。つまり、次があればそこで間違いなく死にます。だけどこの魔素が、まああまりに特殊すぎてね。おそらく誰にも解析できない。唯一どうにかできる術者は死んでしまったとなると、こいつを完治させる術はこの世に皆無でしょう」……淡々と告げられた突然の余命先刻に、流石に一瞬呆然とする。しかし医者はふ、と目を和らげて、「本来ならば、ですけどねえ」と意地悪なタイミングの補足を。おもむろにヴィヴィアンの方に向き直ったかと思えば、「お嬢さん、アナタこの人にどんな治癒魔法を施したんです?」と、柔らかに相手に問いかけて。)






76: ギデオン・ノース [×]
2022-07-04 04:53:15




(/※文中に左肩とありますが、怪我をしたのは右肩でした……!些事とはいえ万が一、整合性を持たせるのにお手を煩わせたりしてしまわぬよう訂正いたします/蹴可)





77: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-07-04 09:23:12




どんな、ですか……?

( 歴戦の勇士であるギデオンが立ち上がるのも困難になる様な疵。島で治療した時もその魔素のしつこさには手を焼いたが、それ以降何度取り除いても再生し続ける闇の魔素に、薄々その手の悪意ある魔法だと勘づいてはいた。しかし医者の言葉にそこまで深刻なものだったとは初めて、いや、態と考えないようにしていたのかもしれない。兎に角、ギデオン同様唖然として、意地悪な医者の質問に怒るのも忘れて口元に手を当てれば、記憶をたどるように瞳を伏せる。あの時は必死だったから、ギデオンの心臓を食い破らんと入り込む闇の魔素を、自身の聖の魔素を流し込んで押し流したはずだ。形を取らないように見える魔素もとい魔力だが、精霊の加護や特殊な地形を除き、一定の空間に含まれる魔力量には限度がある。悪意のある魔素を取り除いた箇所を、自分の魔力で満たしてそれ以上入り込めないようにする。言葉にすれば至極単純だが、実際に行おうとすれば膨大な魔力を必要とする机上の空論に近い空言である。実際ビビの説明を聞いた医者も目を一瞬白黒させてから「そりゃ魔力不足でぶっ倒れもするでしょうねえ」この人が終わったらアナタの番ですから油断してるんじゃないよと、意地悪な物言いに似合わぬ心配を瞳に浮かべる様子は、やはり人の良い宿の主人が信頼する医者なのだろう。ギクリと縮こまるビビの説明を受け、医者はもう一度、今度は自身の治癒魔法をかけてみたりとギデオンの肩を診察し直せば──ははあ、と意味深に頷き。「これは珍しい。お嬢さんの治療魔法とアナタの体質が奇跡的にあってるんですわ。確率的には0じゃあないですけどね、長年こんな仕事してますが、ここまであってるのは初めて見ました。お嬢さんサラッと言ってましたがね、人の体に入り込んだ魔素を取り除くなんて簡単な事じゃないですよ。確かに残存性・復活性が厄介なヤツですが、これなら定期的にお嬢さんが治療すれば克服も目指せるでしょう。」と、2人を安心させるように優しく微笑み「"公私共に最愛のパートナー"で治療の相性も宜しいとは誠に結構ですね」と、何処ぞの地元新聞の内容を引用して揶揄ってくるのは、前言撤回。矢張り純粋に性格が悪いんじゃなかろうか。
ギデオンの診察が終われば、ビビの方にはあと数日は魔法の使用を控えて安静にしておくこと、と実に簡潔な診断を下して、救急な処置がメインとなりがちなヒーラーに、定期的な治療の方法を伝え「何かあればすぐ頼るように」言い残して医者は去っていくだろう。 )




78: ギデオン・ノース [×]
2022-07-04 13:16:49




(医療用具を黒鞄に詰め直した医者は、「カレトヴルッフにもカルテを送っておくので、一応三か月に一度、そこの魔法医にも診てもらうように。……ついでに、この魔素のこととアナタの怪我のこと。傷の進行以外でちょっと気にかかることもあるんで、魔導学院なんかにも共有させてもらいますからね。念のためね」と、とどめの台詞も残していった。そうして一連の診察が終わり、昼下がりの宿の部屋に二人きりになれば。後輩たるヴィヴィアンの前とは承知の上で、背面のベッドに身を倒し、片手で顔を覆いながら深い深い息を吐いた。奇跡的な治療法が見出されたとはいえ、まさかそこまで厄介な代物だったとは。しかし思えば、特に闇属性相手に高い防御力を発揮するはずのミスリルですら貫通した呪いだ、そこらの魔法では比べ物にならないレベルの高い致死性も当然である。……つくづく、他の誰でもないヴィヴィアンのおかげで、自分は今ここに生きていられるのだろう。それを再確認すれば、掌をどけて半身を起こし、両腿に肘を置く形で相手に向き直り。二度の依頼を共に乗り越えてきた彼女相手に改まるというほどはないが、それでも礼儀はきちんと尽くしたいと、軽く頭を下げ。)

……当面の間、世話になりそうだな。よろしく頼む。





79: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-07-06 10:50:44




( ぼんやりと頭を下げ医者が出ていくのを見送ると、ベッドが軽く軋む音に思わずぴく、と睫毛を震わせる。どこまでも紳士にビビとの距離感を保っているギデオンとは思えない行動に、一瞬大きな目を見開くも、それだけ状況が悪いということを再確認させられれば、かける言葉も見つけられずに此方もスツールに浅く腰掛け小さなため息を。生きているのも奇跡的な大怪我だったとはいえ、その確かな実力から年中仕事で各地を回っている相手からすれば、定期的にこんな小娘の診察を受けなければならないなど、煩わしさしかないだろう。それでもビビに向き直り、礼儀正しく頭を下げてくれるギデオンに、此方も向き直れば、負担をかけないよう相手の左手に己の両手を重ねて )

はいっ……絶対、絶対治しましょうね!

( あの時私が防御魔法のひとつでも使えれば、こんなことにならなかったのに──自分同様どころか、相手の方が余程冒険者としての覚悟も自負もあるだろう。そんな相手の負傷に己が泣くのはお門違いどころか烏滸がましいとさえわかっていても、安心も相まって、ついに堪えきれず零れた大粒の涙を手の甲で拭う動作ひとつとっても、どこまでも子供っぽく相手とは何一つ釣り合わない自分が嫌になった。 )

( ──それから凡そ一月後、キングストンにも夏の陽気が訪れる季節。今頃グランポートは2人が訪れた頃よりさらに暑く、海水浴客で溢れ帰っているのだろう。2人のいるキングストンも、来週の建国祭を前に、どこか街全体が浮かれた明るい空気を纏っている。毎年1週間かけて行われるこの祭りは、各地から人の集まる規模の大きなもので。本来、教会で執り行われる豊穣の祈りや、建国の英雄の戯曲の上演などがメインのはずなのだが、どこも市民というのは現金なもので、彼らの多くにとっては、夜通し輝く出店や最終日に上がる花火、毎夜広場で行われるダンスパーティーなどが、祭りの大きな目的となっている。あちこちで上がる祭りの準備の楽しげな喧騒から、少し離れたギルド内の医務室にて。ギデオンより一足先に依頼から戻り、何度目かになる相手の診察の準備をしながらも、油断して呑気に今年の流行歌の鼻歌まで口ずさんでいる彼女もそれは同様ようで。建国祭の花火を意中の相手と見れば結ばれる──どこにでもあるような可愛らしいおまじないに、誰がビビを誘うのかギラギラと牽制しあう、ここ3年恒例になりつつあるギルドの殺伐とした雰囲気の中、空調魔法の効いた静かな医務室で、花火か……正面から誘ったら断られそうだなあ、と今から会う約束の相手の顔を思い浮かべれば小さく微笑んで。 )




80: ギデオン・ノース [×]
2022-07-06 13:23:32




(ふわりと重ねられた両手は、人に寄り添い傷を癒す、ヒーラーらしい温もりが確かに感じられた。ああ、確かにこれがあれば、あの医者が言ったように心配は要らないだろうな──と、その白い掌に目を落としながら、ほんのわずかに目元を和らげて。ヴィヴィアンは年若いが、ヒーラーとしても一冒険者としても、非常に仕事熱心だ。そしてそれ以上に、温かく人を思いやる娘であることも知っている。彼女の助けがあるならば、自分の罹ったこの悪質な呪いとて、いつかは完全に消し去れるだろう。そんな確かな信頼を寄せていたものだから、ふとその顔を見上げたときに、相手の大きな目の淵から真珠のような涙がぽろっと零れ落ちたのを見れば、その予想外の光景にいささか動揺した面持ちとなって。言葉を失い、しばし行き場を失って彷徨う視線……相手が何を思ったのか、人の感情の機微に疎いギデオンでは正確に測れない。だが、単に安心しただけではないような様子が気にかかり、もう一度相手の顔を間近に見つめると。手を伸ばし、相手が拭った涙の痕を、親指の腹で重ねるように軽くなぞって。どうかこの真意が届いてくれれば、と祈りを込め、「……おまえを頼りにしてる、」と囁き。)

(──それからの日々は、瞬く間に過ぎていった。グランポートの宿で見た、いつも明るい彼女らしからぬ様子が、依然として気になってはいたものの。港町の事件の解決以外にトリアイナの非公式な偵察も託されていたギデオンは、今回の顛末を、カレトヴルッフと公認ギルド協会本部のそれぞれにも報告し直さねばならない。協会の連中相手に詳しい聴取を数日間ほど受けたのち、キングストンに舞い戻り、懐かしいエントランスをひとり潜り抜ければ。帰還早々、古馴染みの野郎どもにいきなりヤジを飛ばされ、若い青年たちにリヴァイアサンを見るかの如き絶望の表情を向けられ、杖や大槍を構える不穏な空気が勃発し、挙句には「ワシのビビに何をしたんじゃ……!?」と怒り狂うスヴェトラーナに召喚獣の群れをけしかけられたことで、“ギデオンとビビがクエストにかこつけてバカンスに出かけた”などという噂が出回っていたと判明すれば、大いに頭を抱えたが。「……おい、まだそういうわけじゃないらしいぞ!」「喜べ! 彼女は今もフリーだ!」ギデオンを尋問した男たちの伝令でどっと沸き立つ群衆からようやく解放されれば、ギルドの最奥部に赴き、魔法に護られた一室でギルドマスターと向かい合う。何度も交わしてきた事務的な報告や議論や相談、その末に。「何度もやめろと言ったのに、今回もまた無茶な真似をしましたね」と窘められ、心当たりに目を伏せたが。次に告げられたのは妙に柔らかな声。「とはいえ、以前より随分マシな顔をして帰ってきたので許しましょう。彼女もあなたも、互いに良い影響を与えあえる関係のようですね。……今の手持ちが片付いたら、これを彼女と引き受けるように」そうして差し出されたのは、毎年夏に開催される建国祭の華やかなビラである。カレトヴルッフはキングストン市と公式に契約し、様々な仕事を請け負っている。比較的に治安の良い街とはいえ、酒や賭博が絡めばトラブルもつきもの。いさかいをおさめるため多くの戦闘職が駆り出されるし、暑気あたりをはじめとした急病人に備えてヒーラーが、祭の仮面に身を隠しての犯罪を警戒すべく魔法使いが巡回するのもお約束。ギデオン自身もまた、今年も何かしら関わるつもりではいたが。ついにギルドマスターにまで彼女との繋がりを把握され、しかも後押しされるとなれば。自分はいったいどんな顔をしているのかと気まずく思いつつ、「了解」と返すにとどめて部屋を辞すほかなかった。)

(そんな会話から2週間後。「定期治療ってどういうことだよ!? なんでビビちゃんがおまえなんかに!?  ウチには魔法医のジジイがいるはずだろうが!?」「なんかよ、体の相性がすこぶるいいんだってよ」「ますますどういうことだよ!?」……と今朝もうるさく騒ぎ立てる、ギデオンと親しい年下の連中に雷魔法を数発撃ち込み。偶然居合わせて立ち聞きしてしまったらしく、完璧な肉体美の体を完璧に凍りつかせてこちらを見つめるバルガスのことは、目礼のみで避けながら。長い廊下の先にある医務室の扉をノックし、涼やかな室内に慣れた様子で立ち入ると、赤いシャツを早速くつろげながら丸椅子に腰かけて。)

悪い、少し遅くなった。……そういや、警備のシフトの件は聞いたか?





81: ヴィヴィアン・パチオ [×]
2022-07-07 09:39:40




( ああ、また迷惑かけちゃう──と、皮膚が擦れるのも厭わずに荒っぽく拭った目元に、暖かく遠慮がちな指を感じれば、一瞬驚き目を見開いて。身体の疲労に引きずられるように落ちていたメンタルが、ギデオンのその言葉だけで救われるようで、私はまだこの人の傍に居ていいんだと心の底から安心する。こちらから近付くとするりと逃げていく癖に、ビビが落ち込めば優しく触れてくる手に、いつもの温もりを感じることが出来れば、本当に帰って来れて良かったとますます涙腺は緩むばかりで。目元こそもう誤魔化しようもなく泣き濡らしながらも頭はどこか冷静に、こんな時ばかりビビの欲しい言葉を投げかけてくる狡さを持ち合わせているにも関わらず、ビビの涙なんかに動揺して揺れる瞳が可愛いなあなどと──可愛い?はたと自身の思考に気がつけば、今度は己が動揺する番で。ギデオンのことは憧れの冒険者で、強くて、格好良くて、間違っても可愛いだなんて感じる相手ではなかったはずだ。今日初めてしかと合った見慣れたはずのペールブルーの瞳に、顔に血が集まるのを感じれば、パッと後ずさるように立ち上がり「ありがとう、ございます……顔、顔洗って来ます!」と、己の五月蝿い鼓動から逃げるように部屋からも出ていこうとするだろう。 )

わっ、ギデオンさん……!
……シフトですね、聞きましたよ。ギデオンさんとご一緒できて嬉しいです。

( ──結局、グランポートといい、シルクタウンの時と言い、恥ずかしいところばかり見られているような、と診察の準備も終えて手持ち無沙汰になれば、思い出すだに恥ずかしい記憶が脳内を占めるのは誰もが経験あることだろう。そうして少し呆けていたから、ノックの音に気づかず現れた思考の主に思わず声をあげ。鼻歌、聞かれてたかな──と薄ら頬を染め、気を取り直して態とらしい咳払いをひとつ。ギデオンの目の前に、丸椅子を運んで自身も座りながら相手に向き直れば、相手の質問にいつも通りの様子でパッと顔を輝かせ。肩の診察の前に、雑談も交えながら自然な動作で相手を覗き込めば、悪くない顔色に密かに安心して。まさか今回のシフトにギルドマスターの意思が関わっているとは微塵も知らず、顔を覗き込んだ近距離のまま呑気に微笑めば、あざとく首を傾げて「これって運命だと思いません?」なんて、今日も今日とて好意を微塵も隠さぬ視線を惜しまず相手におくり。今回の2人は救護兼治警備部隊、というかビビは毎年そうである。平時であれば一般人相手であれば、怪我をさせないよう取り締まるのが定石だが、建国祭の間はあちこちでトラブルが起きるため、そうも言ってられない事態になることもままある。あけすけに言ってしまえば、いっそ怪我させてでも早く場を収めてしまえ、治療してやれば許されるだろう、という荒っぽい発想が透けている作戦だとビビは毎年思っているが、例年それでも大きな苦情が出ることはないのだから、祭りの雰囲気は偉大である。兎に角、その今年の警備のシフトを確認したところ、時間も担当区域もまるきりギデオンと被っていたというわけで。長時間かつ連日の警備とハードだが、1番休みの希望の倍率の高いであろう最終日の夜はシフトが入っておらず、それを見た時から心は既に決まっていた。ギデオンの右腕に指を滑らせて脈を取りながら、真っ直ぐに相手の目を見つめれば、あまりにも有名なおまじないに林檎のように頬を染め。ギデオンの手首を掴む細い指の震えが、初めてプライベートで誘う相手に、勇気を振り絞ったその真剣さをありありと物語っている。 )

……最終日、ご予定なければ一緒に花火見に行きませんか?




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