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◆ 飢えたけだもの ◆ /23


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21: アダム・ブレイク [×]
2022-05-20 15:21:53




(どうやら微笑むことまでは奪われていなかったらしい。少女が初めて見せた口元の変化は、ふつうに較べればささやかではあるが、それでもこの部屋では小花の綻びのように鮮やかに映えた。偽りの両親が彼女を安心させたのだろう。一瞬だけ見せた外界への躊躇もすぐに踏み越えてくれた様子から、掴んだ、という確かな手ごたえを得た此方も、満足げに目を細め。
冷えた薄い手をとり、歩き慣れていないだろう足取りに合わせながら部屋の外へ。背後に置いてきた『引き裂かれたもの』たちと少女の繋がりは、ドアを後ろ手に閉めることでさりげなく断ち切ってしまった。生かそうが殺そうが、もうこの場所には二度と戻らせないと決めている。
階段を上がったそこは、先刻よりも闇の深まったリビングルーム。懐中電灯で見出したローテーブルのランプを点ければ、窓の外に漏れない程度のオレンジ色の明かりがぼうと広がり。少女にはソファーに座るようすすめ、ついでに籠に乗ったスコーンも軽く押し出して食べるように促す。一方の自分はそのままカウンター越しにキッチンへと回り。照明をつけ、薬缶で湯を沸かすついでに油をひいたフライパンまで熱しはじめた。少女の口を割らせる目的抜きに、きちんとした腹ごしらえをしたい気分になっていたからだ。少量の水を入れたポットを電子レンジで温めるのも、探し出した茶葉の缶をカウンターに並べるのも、まるで以前からそうしているかのように当然の雰囲気が纏う所作。冷蔵庫を開けて中の品揃えの物色さえ始めながら、背中越しに語りかけ。)

良い時間だから、君に紅茶を淹れるついでに軽く夕食でも作ろうかと思うんだけど。フレデリカは、何か食べられないものは? 俺の知り合いは昔エビアレルギーで死にかけたことがあってね……そんな目に遭わせたら大変だ。




22: フレデリカ・ローレンス [×]
2022-05-24 19:50:59



( 無機質さが全面に剥き出しにされていた地下室とは打って変わって、闇が降りていながらもずっと暖かさを感じさせるような、人間らしい生活圏をきょろりと見渡して。それは光が灯されればより一層強まり、両親が暮らしている空間と同じ場所に居るというだけで、彼への親近感を生じさせた。彼の言葉を素直に聞き入れて大人しくソファに腰かければ、そっと手を伸ばしてスコーンを一つ齧り。サクリとした食感、口内に広がる甘さがもの珍しくて、咀嚼し飲み込めば「 美味しい 」と口元を手で隠しながらぽつりと洩らして。)

いいえ、なにも。食べ物だったらなんでもうれしいわ。アレルギー…、わたしにはきっとないわ。だいじょうぶ。

( 果たして、客人が家主不在の家で料理など始めるものだろうか。違和感こそ抱いたものの、躊躇いなく他人の家の調理器具を扱う姿が絵に描いたように綺麗だったから、数年前に父がエッグベネディクトを振舞ってくれたあの日の幻影と彼が重なり。きっと彼の言うご褒美の一環なのだろうと、腹が減っていたこともあって半ば無理矢理納得すれば、宙ぶらりんになっていた違和を飲み込んで。対人関係における常識など身に付いていないながらも、彼に全てを任せて黙って見ているのは些か礼儀に欠けると僅かな呵責に苛まれ、ローテーブルに無造作に置かれているボックスからペーパーナプキンを取り出せばその上に食べかけのスコーンを置いて、キッチンへと歩み寄り。コンロの暖かい火に、誘蛾灯に誘われる蛾のようにふらりと惹かれると、パチパチと油の弾ける音がするフライパンには触れない位置で手を翳し、ほうっと息を吐いて。 )

あたたかい……。ねぇアダム、わたしにもなにかお手伝いをさせてちょうだい。お料理を作ったりしてもてなすのは、本来は家主の役目のはずだもの。嗜んだことはないけれど、取ったり運んだりするぐらいならわたしにもできるわ。




23: アダム・ブレイク [×]
2022-05-29 17:04:24



助かるよ。それじゃ、そこにあるパンをナイフで半分に。どこかにしまってある平皿も適当に出して、ここに置いといてくれ。

(ゆらりと傍らにやってきた少女の、まるで焚火で暖を取るような仕草。あの地下室で果たしてどれだけ『寒い』思いをしてきたのか。不要なはずの想像力を無言で押し流すように、彼女から視線を外し提案を受け入れる。よほど力加減を間違えなければ不慣れでも怪我はしないだろうと、渡したのはパン切りナイフ。彼女にそれを任せる間に茶葉を蒸らし、熱したフライパンの上で厚切りの肉も焼いていく。
やがて出来上がった料理は、脇にちぎった葉野菜を添えただけの実にシンプルなベーコンサンドイッチだ。合わせて淹れるのは、それに見合わぬ高級のキームン茶。花のような香しい匂いが漂うあたり市販のそれではないはずで、これはいい思いをしたなと薄く笑みながら、室温に戻したポット入りのミルクを向かいのソファーに腰かけるフレデリカの方に押しやり。「好きなぶんだけ先入れしてごらん」と、今まであまり与えられてこなかったであろう嗜好の上での『選択肢』を委ねながら、先に温かな夕食にかぶりついて。)




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