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白む空に燻る紫煙 ---〆/4187


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自分のトピックを作る
1430: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-22 20:33:08

 






( その日も昼の時間になると署を出て、真っ直ぐに向かう先はいつもの喫茶店。あまり見ては不躾だろうと働いている姿を遠巻きに眺めるくらいに留めて居たものの、いつもの様に奥の席に座ると水を持って来た彼女に声を掛けられ驚いて顔を上げる。初めて近くで顔を合わせた彼女はやはり妹が生きて居るのだと錯覚する程によく似ていて、相手を見つめる瞳に切なさと愛おしさが滲み。「___えぇ、此処のコーヒーが好きで。…軽食でおすすめはありますか、」彼女と談笑する姿を署員の誰かが目にしたとしたら、完全に彼女に惚れていると取られるだろう。自分では然程意識して居なくても、彼女を見上げる瞳は其れ程に優しく柔らかな表情を向けている。軽食のおすすめを聞いたのは、折角生まれた彼女との会話を少しでも長くと考えた反射の様な物で、窓から差し込む日差しを受けて煌めく薄緑色の瞳を見詰めて。 )





 

1431: ベル・ミラー [×]
2022-05-22 21:18:57




女性店員


( 此処の珈琲が好きだと言う言葉に女性は嬉しそうに笑うと『嬉しいです。実は最近バリスタの資格を取る事が出来て、此処の珈琲を任される様になったんです。』何処と無く気恥しそうにそう自身の話をした後に写真付きのメニューを広げて軽食のページを相手の前に置けば『__このローストビーフのサンドイッチは味が確りしていてオススメですよ。もう少しお腹に溜まる物が良ければこっちのキッシュも。』相手の真横で僅かに腰を折り一つ一つを指差しながら丁寧に説明していき。最後『甘い物の方がいいですか?』陽の光を蓄えて柔らかく煌めく緑の虹彩を向けては相手の嗜好をまだ知らぬ為に別のチョイスが良いかと問うて )





1432: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-22 21:56:05

 






( 此のコーヒーを淹れているのが相手だと知り「…とても美味しいです。」と少し微笑んで答え。続く問いには首を振り、相手が初めに勧めてくれたサンドイッチにしようと「___それじゃあ、此のサンドイッチとホットコーヒーを。」と答えて。酷く幸せな瞬間なのだ、彼女が妹本人では無いと分かっていても其れを忘れてしまう程に、彼女が生きて今も人生を刻み続けているのだと感じられる此の瞬間が。ずっと長い間胸に渦巻き続けている悲しみも喪失感も寂しさも、___其れが虚像だとしても、全てを埋めてくれる様で痛みを感じなくて済むのだから。注文を受けてキッチンの方へと戻っていく相手の背を見送り、穏やかな心持ちのまま水をひと口飲んで。 )






 

1433: ベル・ミラー [×]
2022-05-22 22:08:53




女性店員


( 相手からの注文を手元のオーダー用紙に書き記してからキッチンの奥へ其の姿を消して。__お客様に“美味しい”と言われるのは何より嬉しい事。其れが自分の煎れた珈琲ならば尚更の事で。口許に小さな笑みを携え丁寧に丁寧に煎れた珈琲とローストビーフのサンドイッチを両手に戻って来たのは注文を受けてから5分程が経った頃で。『お待たせしました。他にも用事がありましたら遠慮なく呼んで下さいね。』其れらを相手の目前に静かに置き再び緑の虹彩を細めて柔らかく微笑むと、店員呼び出し用のボタンも一緒に置いて一度席を離れて他のお客様への接客をして )





1434: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-22 23:12:59

 







( 彼女の淹れたコーヒーは矢張り香ばしく華やかな香りを漂わせ、シンプルなホットコーヒーだからこそ引き立つ旨味も存分に感じられる物で。礼を言いコーヒーをひと口飲んでからサンドイッチを食べると、勧められた通り確りとローストビーフの塩気や肉の旨味も感じられる其れは野菜やソースとの相性も良く美味しく食べる事が出来て。途中視線の重なった彼女に少しだけ目を細める様にして美味しいと伝えると確りとした昼食を楽しんで。---そろそろ署に戻らなければと思うと少し気持ちは落ちるのだが、此処に来れば彼女に会えると言う事が今の生きる糧になって居た。食事を終え、呼び出しボタンを使う事は無くレジに向かうと伝票を差し出して。「___どちらも凄く美味しかったです。」と告げて会計を済ませると「ご馳走様でした。…また、」と軽く会釈をして店を出て。誰かに対して此処まで友好的に、優しい気持ちで接する事が出来るのはあの事件以降初めての事だったかもしれない。店を出てしまうと途端に世界は色褪せてしまう、其れがこれまで過ごしていた普通の世界だとは思えずあの店の中だけが鮮やかな現実の様な、そんな感覚さえ胸に渦巻いて。 )






 

1435: ベル・ミラー [×]
2022-05-22 23:47:10




( 同僚に喫茶店の話を聞いてからと言うもの、頭の中の大半を其の事が占める様になっていた。毎日毎日通い詰めたくなる程に美味しい珈琲だったのか__否、勿論珈琲は美味しかったのだろうが其れが相手をそこまで突き動かす理由にはならない筈。こんなのはまるで捜査みたいだ、と後ろめたい気持ちを抱えつつも其処に一体何があるのか確かめないと永遠とモヤモヤが燻り続けると思えば、相手が署へと戻って来たタイミングでずらした昼休憩を取る為にフロアを後にして。__向かった先はあの日“気晴らし”の最後に相手と立ち寄ったシックな雰囲気漂う喫茶店。あの日と同じく一番奥の席へと座り傍らに立つ店員に相手が飲んだものと同じホットコーヒーを頼む為に顔を上げ__言葉が出なかった。此方の注文を待つ女性店員の姿が何時かの日に相手が見せてくれた写真に映る妹、【セシリア・エバンズ】と瓜二つだったからだ。似ているなんてものじゃない、髪型も瞳の色も柔らかく微笑んでいる表情も何もかも……。途端にくらりと眩暈を覚えて一度視線を下方に落とす。落ち着け、と自分に言い聞かせてから顔を上げれば互いの緑がぶつかり合った。何時までも何も頼まない己に不思議そうな顔をした彼女が『あの、ご注文はお決まりですか?』と控え目に尋ねてきた声で辛うじて頭を縦に動かす経路が繋がれば「_…ホットコーヒーを、」と絞り出す様に注文しキッチンへと戻る背中を見詰め。_ドクン、ドクン、と心臓が嫌な音を立て始めたのは相手が何故急に此処に来る様になったのか其の理由が嫌でも分かってしまったから。珈琲が美味しいから、なんて生温い理由では無く悪く言うならもっと歪んだ執着の末の現実逃避。今はまだ其処までじゃなくても何れそうなる可能性を秘めている気がして、少しの恐怖が落とされたインクが広がる時の様に心に色を付け。不穏な気配が漂い始めている現状、其れでも相手は此処に居る時幸せなのだろうか、悲しみを思い出さなくて済んでいるのだろうか、生きる希望を見出せて居るのだろうか__もしそうだとしたら相手を此処から遠ざける事は本当に正しい事なのだろうか。穏やかで優しい笑みを浮かべた相手の表情を一瞬鮮明に思い出した瞬間、思わず泣きそうになり顔を俯かせて 。運ばれて来た珈琲に口を付ける事が出来ない時間が少しの間続き )





1436: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-23 10:16:46

 





( 相手があの店に行っている事など露知らず、いつもと同じ様にデスクに戻りパソコンに向かう。昼の時間が過ぎて仕舞えば後は翌日の昼に再び訪れる“夢の時間”を迎える為に仕事に打ち込むだけ、虚像であっても彼女が近くに居る事が心の平穏を助長し体調が落ち着いているお陰で一時的に薬を少し手放す事も出来て居て。一方で熱量が全て其方に向いている為、矢張り仕事中にぼんやりする事も多く以前までの様に大きな捜査が出来る状況では無い。其の変化を穏やかになったと表現すれば確かにそうなのだが、虚像に取り憑かれて現実を生きるだけの生気が無くなったと言えば其れも正しいのだろう。心の痛みを和らげる為にアルコールを流し込んでいた様に、“生きているセシリア”に目を向ける事で痛みを和らげると言うのは歪んだやり方でしか無く。 )





 

1437: ベル・ミラー [×]
2022-05-23 16:11:46




( 『警部補最近丸くなったよな』と嬉々として話す同僚達の言葉。果たして其の表現は本当に正しいのだろうか。まるで夢現な意識の中でゆうらり、ゆうらり、と漂う様は現実に生きとし生けるもの全てを寄せ付けず、都合の良い箇所に落とし所を見付け其れが“現実”だと錯覚し、酷く危なげな虚像に取り憑かれ取り返しが付かない様な結果を招く気がしてならないのだ。けれども此処最近相手の表情が心做しか柔らかくなった事も、目の下の隈が遥かに薄くなった事も、薬を飲む回数が減った事も、言い訳の出来ない紛れも無い事実だ。だからこそ“相手が幸せならば”と思った事も一度や二度じゃない。夜中に酷い発作で目を覚まし、何もかも忘れたいと涙を流す相手の苦しみを間近で見て来たからこそ__何もかもに蓋をして知らない振りをすれば、相手は今度こそ幸せになれるのではないのか。刑事を辞めて静かな場所で相手が望む人と共に過ごせる人生もあるのではないのか。どうするのが最も最善なのかが分からずに溜め息の数ばかりが増えていく中、無情にも日にちだけは其の歩みを止める事は無く。__明日は己も相手も休みの日、勿論相手はお昼に喫茶店へと行く予定だろう。分かって居ながら「エバンズさん、今日泊まりに行っちゃ駄目ですか?」署員達の帰宅したフロア内で相手にそう問い掛けて )





1438: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-23 17:50:46

 






( 相手に声を掛けられ顔を上げると、泊まりに来たいと言う突然の申し出には相手を見上げたまま数回瞬いて。しかし、最近は眠れていない訳でも無く明日も出掛ける用事がある。「…悪いが、明日は用事がある。それに、最近は幾らか眠れるようになった___心配要らない。」と答えて。最近は“セシリア”の影響か、あれ程頻繁に見ていた夢を見ない日も増え不眠に悩まされる事も無くなっていた。妹が生きていると思い込む事で抱え続けて居た罪悪感から逃れる一方で、ずっと意識に靄が掛かったような感覚なのだ。夢から覚めてはいけないと自分で過去に蓋をして居る様な、辛く苦しい記憶を見ないフリをしている様な。相手からパソコンへと視線を戻すと再び資料を纏め始めて。 )






 

1439: ベル・ミラー [×]
2022-05-23 18:59:42




( 此処で“YES”と答えてくれたらどれ程救われたか。相手はまだきっと大丈夫だと思えたのに。己と視線を合わせる時間もそこそこにパソコンの画面へと視線を移した相手を酷く悲しげな表情で見詰める。__相手の言う通り眠れている事は薄くなった隈を見ても、少しばかり威厳の無くなった様な表情を見ても分かるのだが其れがどうしても“本物”じゃない気がしてしまうのだ。大人しくデスクに戻る事無く暫し其の場に立ち尽くした儘頭を垂れ沈黙を落とす事数秒、意を決した様に頭を持ち上げて再び相手を真っ直ぐに見詰めては「__だったら来週の何時でもいいです、お昼一緒に食べて下さい。…モールの帰りに寄った喫茶店で。」緑の虹彩に真剣な色を携えて次なる要望を口にする。“セシリア”が居る喫茶店に行けば自ずと己に其の存在を知られる事になり、此処数日の変化を勘繰られると相手ならば分かるだろう。其れに疚しい気持ちが生まれるのか…。一種の賭けの様な要望に相手は何と答えるか、身体の横に下ろした両の手をギュッと握り締めて )





1440: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-23 19:44:27

 







( 相手は引き下がる事無く、次の要望を口にした。あの喫茶店で昼食を食べたいと言われると一瞬動きが止まる。妹の写真を見せた事のある相手ならあの店員が妹と瓜二つな事に直ぐに気付くだろう。既に店員とは顔見知りになっている為、いつもの様に会話をすれば通い詰めている事にも気付かれる筈だ。彼女の存在を相手に知られる事に、既に何度もあの店に通っている事に何処か疾しい気持ちを抱えるのは何故だろうか、何にせよあの時間は誰かと共有したい物では無く一人で過ごしたい物なのだ。「____食事をするなら夜にしてくれ。」再び相手に視線を向けると、暗に昼食は駄目だと言う意味を込めて返事をして。 )





 

1441: ベル・ミラー [×]
2022-05-23 20:23:25




( 返す言葉が無いとはこういう時に使うのだろう。夜ならば良いだなんてあの店員の勤務時間をある程度把握しているからこそ出る言葉ではないのか。此の儘では相手は自分の時間を生きる事が出来なくなってしまう。どんなに辛く苦しくても現実から目を逸らしてしまったら、妹を誰かに重ねて執着してしまったら、相手の抱える絶望を傍で見てほんの僅かであっても触れたからこそ虚像に囚われてしまう可能性がある事をひしひしと感じて居て。掌に爪が食い込むくらいに拳を握り締めればそんな言葉は聞きたく無いとばかりに数回首を左右に振り。「……エバンズさん、今幸せですか…?」目の奥が熱を持ち鼻の奥がツンとした痛みを帯びた。気を抜けば泣き出してしまいそうな気持ちを懸命に奮い立たせ紡ぐ問いは自分でも驚く程に小さく不安定に揺れて )





1442: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-23 21:41:30

 





( 今にも泣き出しそうに揺らいだ小さな問い掛けに暫しの間を空けた後に「____辛くは無い、」と静かに答えて。幸せだと言い切る事は出来なかった、確かに彼女の居るあの空間で過ごす時間は幸せで穏やかな時間なのだが何処かで彼女は妹では無いと分かって居るからその事に目を向けると空虚感を感じもするのだ。彼女は自分との思い出は何も持っていない、セシリアと呼んでも振り向かない___其処から目を逸らしてさえいれば確かに“幸せ”なのだろう。彼女に出会って絶望的な気持ちは払拭された、生きている妹の姿を目にする事で罪悪感や喪失感が薄れ身体も楽になり、事件以降ずっと感じていた辛さは感じない。彼女が居るのだから、生きてあの喫茶店で働いているのだから、其れで良いじゃないかと自分の中の悪魔が囁く。もう十分苦しんだ、妹が生きていた事にして仕舞えば良い、事件の事など記憶から消し去って仕舞えば良いと、何処となく虚げな瞳は自ら虚像に囚われる事を望んでいる様な色を浮かべて。 )





 

1443: ベル・ミラー [×]
2022-05-23 22:25:12




( “辛くは無い”なんてあの店員に出会って居なかったら出て来ない言葉だっただろう。妹が死んだ現実に蓋をして目を背け、虚像で作り上げた生温い世界の中で今迄の痛みや苦しみや罪悪感、その他全ての負の感情を余す事無く無かった事へと塗り替える。仮初の幸せだとしても其れで“生きていける”なら何の問題があると言うのか。現に相手は大きな捜査に関わってこそ居ないものの、署に来て仕事をしてご飯だってきちんと食べているのだから、“幸せ”に生きたいと言葉以上に正直な瞳が物語って居るのだから。__それでも、「……セシリアさんは…もう亡くなってます…っ、」空虚な褪せた蒼眼を真っ直ぐに見詰めて震える唇で紡いだ言葉は相手が最も目を背けたいであろう現実。棘を大量に纏った茨の蔦が加減を知らぬ力で胸を締め付ける様な痛みと共に込み上げる吐き気を覚えれば、続けて止めどない大粒の涙が頬を伝ってフロアの床へと落ちた。此の言葉が相手を再び残酷な現実に連れ戻す事を知っているからこそ、其の後は涙と嗚咽に邪魔され言葉を音として紡ぐ事が出来ず、崩れ落ちる様にして其の場に蹲ったまま心の中で何度も何度も相手に謝罪をし続けて )





1444: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-23 22:58:49

 






____やめてくれ。
( 相手から向けられた言葉は、今何よりも聞きたく無い物。相手からその言葉が出ると言う事は彼女を既に知っていると言う事だが、今はそんな事はどうでも良かった。相手の言葉を遮る様にはっきりと言葉を紡ぐ。「聞きたく無い。どう思おうと俺の勝手だろう。」必死に蓋をしようとしている辛い過去をどうして相手は掘り返そうとするのだろうか、どうして泣くのだろうか。「___それとも、未だ絶望が足りないとでも言うのか?」相手が自分を必死に掬い上げようとして居る事には気付けない。自分を更に絶望の底に叩き落とそうとしているのかと冷たい視線を向ける、あれほど苦しんでも尚絶望を見る必要があるのかと事件後からずっと抱え続けていたやり場のない感情を相手に向けて。 )






 

1445: ベル・ミラー [×]
2022-05-23 23:26:24




( 相手の言う通りだ。あの店員に妹の姿を重ねるのも自由、お昼休憩に毎日通い詰める事も、あの喫茶店の中だけが憩いの場所だと感じる事も、現実から目を背け新たな“今”の中で生きる事も何もかもが紛れも無く相手の自由なのだ。あまりに冷たく落とされた言葉にハッとして顔を上げれば声色と同じ冷淡さを纏った瞳と視線がぶつかり思わず息を飲む。そうじゃない、相手はもう十分過ぎるくらいに苦しんで自分を責めた。出来る事なら絶望と呼ぶ何もかも忘れて幸せになって欲しいと心の底から思う。けれど__店員に妹を重ねて今を生きられなくなるのは違うと思ってしまうものだから流れ続ける涙を其の儘にゆっくりと立ち上がり。「_…何度だって言います。彼女はセシリアさんじゃない。エバンズさんの中にあるセシリアさんとの思い出に、彼女は居なかった筈です。」どんな酷い言葉で罵倒されても、二度と顔を見たくないと言われても、今迄の全てが音を立てて崩れても構わないと思った。どれ程嫌われたとしても、例え必死にもがきながらだとしても相手が“今”を生きる事が出来るのなら。__其れでも涙が止まらないのはどの感情から来るものなのだろうか )





1446: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-24 00:07:08

 






っ、セシリアじゃない事くらい分かってる!
( 相手から突き付けられる言葉の数々は紛れも無く正しい物で其れが現実だと頭では理解している。其れでも此の痛みから逃げ出して、楽になりたいのだ。彼女を妹だと思い込んでその姿を見守る事が出来るあの店の中の様に、穏やかな気持ちで痛みなど感じずに。彼女は妹では無い____それでも幻想に包まれて居れば、幸せではなくとも辛くは無いのだ。その束の間の安寧を求めて何が悪いのだろう。「……帰ってくれ。」相手から視線を逸らしパソコンに目を向けると完成した資料をファイルに保存し冷たく言い放ち。「正論は聞きたくない。」相手の言っている事が正しいのは分かる、しかし其れを受け入れて現実に目を戻すだけの余裕が既に無かった。もう痛みを感じたく無いと心は殻に閉じこもろうとして居て。 )





 

1447: ベル・ミラー [×]
2022-05-24 00:22:14




( 店員に妹の姿を重ねただけ。たった其れだけ。相手が荒らげた声に釣られる様にして双眸から溢れ落ちる涙の量が増せば後はもう何も言う事が出来ずに肩を震わせ嗚咽を漏らして。何時かの日、相手の全てを肯定すると断言したあの言葉に嘘偽りは無かった筈なのに、今は相手を肯定する所か自分自身の手で再び絶望に突き落とそうとしている。優しく抱き締めて相手の虚像全てに頭を縦に動かすのが正解だったのか、何も知らぬ振りをして今迄通りの日常を過ごすのが正解だったのか。__余りに冷たく刺々しい拒絶の言葉に「失礼します…」とだけ辛うじて返せば踵を返して自身のデスクへと戻り鞄を引っ掴み逃げる様にして署を出て行き。__涙で歪んだ視界の中無事に家まで辿り着けた事を褒めて貰いたいくらいだった。寂寞とした真っ暗のリビングに入るや否や、感情の抑えは少しも効かずその場に座り込み子供の様に声を上げて泣き崩れて )





1448: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-24 02:25:15

 




( もうこれ以上痛みを感じたく無かった。喪失感と罪悪感に押し潰されそうな苦しみも、誰かが自分の元を去り遠くに行ってしまう事に対する無力感と絶望も、何も感じたくない。相手が泣きながら去った1人のフロアでやり切れない感情を胸に手で顔を覆い。---酷い発作を起こしたのは家に戻り日付を跨いだ頃。事件の記憶、遺族の顔、血溜まりに倒れた妹、亡くなった2人の姿___そうした記憶が流れ込んできて、もう駄目だと何処かで感じた。浅く、酸素を肺に届ける事など到底出来ない呼吸を繰り返しながら視界が滲む。苦しさのあまりスマートフォンを手にした時には相手の姿は既に薄れて居て、登録されている番号を押す事は無く911に発信していて。どれほど経ってからか、身体が持ち上げられる感覚と共に自分を呼ぶ声がして口元に酸素を供給する為のマスクが宛てがわれるのを感じたもののそれ以降の記憶は途絶え。---目を覚ましたのは病室で、外は既に明るい。鎮静剤の影響か意識はぼんやりしていたものの、呼吸は何にも阻害される事なく楽になっていた。昨日の夜、自ら救急車を呼んだ事も呼吸が酷く苦しかった事も覚えていた。その前に署で作業をしていた事も。その為特定の記憶が抜け落ちている感覚は無く、窓から見える青空から病室内に視線を移動させて。 )





 

1449: ベル・ミラー [×]
2022-05-24 09:55:55




( 相手が救急車で運ばれた事など知る由も無ければ、朝方重たい身体を引き摺る様にシャワーを浴びて窓から暖かな陽が射し込むリビングの中、ソファに腰を下ろした儘暫し立てた膝を抱く様に顔を埋めて居て。__一方相手が運ばれた病院では相手が目を覚ました事で病室には医師と看護師が集まって居た。倒れた際に何処かを強打した形跡も見られない為に、過度なストレスや疲労が原因による以前同様の発作だと診断した医師は暫くゆっくり休む様にと釘を刺した後に『不本意かとは思いますがミラーさんにお電話させてもらいますね。』と、告げた。【アルバート・エバンズ】と言う患者は己の身を省みず何かと無理をして放って置くと病院にすら来ないのだが、度々姿を見る部下【ベル・ミラー】ならばほんの僅かでも何かを変える事が出来るというのは医師の間では皆が周知している事で、今回もまた症状について伝えておくべきだろうとの判断で )





1450: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-24 11:27:01

 






( ベッドに横になったままぼんやりしていると、病室にやって来た医者や看護師によって過度のストレスが原因だと告げられる。体調を崩す程の負担が心身に掛かって居ただろうかと曖昧な表情を浮かべたものの次いで医者の口から出た名前は聞き覚えの無い____音としては聞いた事があったかもしれないが、一切誰とも結び付かない物で「___誰ですか?」と思わず怪訝そうに聞き返して。誰に連絡が行っても特段構わなかったが、体調を崩した事を伝える相手としては自分が認知していない人間では意味を成さない。職場に行く事が叶わないのなら署の人間、或いは“妹”を経由してでも休む旨を伝えなければならないが、電話も出来ない程に憔悴している訳でも無い。「署に連絡をする必要があれば自分で掛けます、」と答えて。 )






 

1451: ベル・ミラー [×]
2022-05-24 12:09:27




医師


( 何事も無く終わると思って居た軽い会話は相手の思わぬ発言によって其の空気をガラリと変えた。医師も看護師も目を丸くした儘相手を見詰め立ち尽くす事数秒、『__ベル・ミラーという女性が貴方の部下に居ますよね?私達も一緒に居る姿を度々目撃しています。』医師から目配せをされた看護師は足早に病室を出て行き、一方医師は真っ直ぐに相手を見遣った儘近くにある背凭れ付きのパイプ椅子に静かに腰を下ろす。そうして至極真剣な表情と声色で以て聞き取りやすい様にゆっくりと“ベル・ミラー”のフルネームを紡ぎ。一度病室を出て行った看護師が再び戻って来た時、其の手には記録用紙と分厚い一冊の本が抱えられていて )





1452: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-24 12:51:10

 






___部下に?
( 自分の言った事が何か可笑しかったのか、医師と看護師は困惑した表情を浮かべて動きを止めた。ゆっくりと告げられた名前は先程と変わらない“ベル・ミラー”と言う物だったが、一緒に行動する程親しい部下でその名前を認識して居ない事など有り得るだろうか。医師の言葉を繰り返して尋ねたものの、全く心当たりが無い。相手の姿は元から無かったかの様に記憶から抜け落ちていた。「…誰かと間違えていませんか。そんな名前の部下が居た記憶は無い、」と答えて。自分がまるで記憶喪失にでもなっているかの様な対応だと思いつつも、彼女を知らないだけでその他の記憶は確り存在しているのだから自分が可笑しいなどとは思いもしない。ベッド脇の椅子に腰掛けた医師に視線を向けて。 )





 

1453: ベル・ミラー [×]
2022-05-24 13:25:48




医師


( “記憶喪失”にでもならない限り相手が多くの時間を共に過ごしたのだろう部下の事を忘れる筈が無い。頭部に外傷も無い事から倒れた際に頭を打った事による記憶の抜け落ちは考えられず、だとしたら強いストレスや不安など心に何か大きな負荷が掛かった事で一時的に起きた突発性の記憶障害の可能性が高く。椅子に腰掛け怪訝そうな表情を浮かべる相手を真っ直ぐに見詰め『エバンズさん』と名前を前置きした後に『_どうやら記憶に少しの混乱が生じているようです。幾つか質問をするので余り深く考えずに答えて下さいね。』今一度看護師へと目配せをすれば彼女は持っていた世界地図の本を相手に見える様に広げ『この国の名前が分かりますか?』“カナダ”を指差し質問する。続いて医師が『病室で目を覚ます前の記憶で、一番新しいものと、貴方が働いている場所が何処にあるのかを教えて下さい。』あくまでも穏やかな口調で相手を混乱させない様にと質問を重ねていき )





1454: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-24 13:50:17

 





( どうやら本当に自分には記憶喪失の疑いが掛けられているらしいと医者の言葉で理解するものの、其れは到底信じられる物では無かった。開かれた地図を見て直ぐにカナダだと答えると、続いた問いには「職場で資料を纏めてから退勤して家に居ました、少し休んでいる内に体調が悪くなったので911に電話を。搬送されている時の記憶も薄らとですがあります。」と淡々と告げて。職場に居た事も、家で体調を崩した事も全て鮮明に覚えているのにどうしてそんな深刻な顔をするのかと不審に思わずには居られない。「FBIのレイクウッド署です。赴任して1年弱になる。」勤務している場所についても淀みなく答えて。赴任してから担当した事件の事も覚えている___が、誰と担当したのか、何故レイクウッドに赴任したのかと問われるとその記憶は曖昧で、心身に不調をきたして通院していた記憶も無いのだが、その事には未だ気付かずに。 )






 

1455: ベル・ミラー [×]
2022-05-24 14:22:21




医師


( 国の名前も迷う事なくすんなり答える事が出来た為に学習障害の可能性は恐らく0だろう。“エバンズ”と呼び掛けた事にもあっさり受け入れ、加えて運ばれる直前迄の記憶もあり職場諸々を答える事が出来ている為に自分が何者なのかも確りと理解していると見える。では__“ベル・ミラー”の存在だけを忘れて居るのだろうかと医師は眉を寄せ厳しい表情を浮かべた。もしそうだとしたら2人の間に何かがあったと考えるのが妥当でミラーに連絡は避けられない。『…身体的外傷は見られない事から、今起きてる記憶障害は心に強いストレスが掛かった事による一時的なものと思われます。何か思い当たる節はありますか?』過去の記憶の何処から何処までを覚えて居て、忘れているのかは会話の中で探っていくのが本来一番なのだ。此れ迄の会話のやり取りを記録用紙に書き記した看護師は『エバンズさん、職場への連絡はご自身で行って構いませんが、ミラーさんには此方から連絡させてもらいますね。』と、今一度相手の知らぬ名前の主に連絡はする事を柔らかな口調で告げて )





1456: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-24 16:10:35

 






( 記憶障害を引き起こす程の強いストレスを感じる、その要因になる様な事柄は思い当たらず首を振り。果たして本当に自分の記憶には障害が生じているのだろうか。釈然としないまま、その人物に連絡をすると言うのなら其れは止めはしないが意味がある事なのかは良く分からずに。職場に連絡をし、体調を崩し医者から休養を勧められて居る事を告げ、少し休みを貰う事を打診する。応援を呼ぶ為此方の事は気にせず身体を休める様にと言った上司は、此の所の重なる不調を心配しているとも言った。しかし直近で体調を崩した記憶は無く、其処に来てようやく何かが可笑しいと気付く事となり。自分の置かれている状況が掴めない中、医師からのきちんとした診断が出たら再度連絡すると告げて電話を切り、無人になり静かになった部屋で変わらず薬剤を流し続けている点滴の袋に視線を向けて。 )





 

1457: ベル・ミラー [×]
2022-05-24 16:57:07




( 無理矢理思い出そうとすれば心身にはまた新たなストレスが掛かる可能性がある為、不安なのは分かるが焦らない事が記憶障害には絶対的に必要な事だと告げて医師と看護師は病室を後にした。__雲一つ無い青空が広がるこんな日は外に出てピクニックでも楽しむのが休日の素敵な過ごし方なのかもしれないが、勿論の事そんな気になれる筈も無くソファの上で膝を抱えた儘何かを考える様にぼんやりと点いてもいないテレビを眺めて居たのが数十分前の話。スマートフォンの画面が光り着信を知らせた事で意識は自然とクリアなものになったが、電話の相手が看護師で彼女が告げた言葉に次は思わず耳に宛てていた其れを落としそうになり。__髪を梳く時間すらも惜しいと黒いゴムで暗いグレーの髪を後ろで一つに結び病院へと辿り着いた時、入院専用病棟のエレベーターの前で医師に掛けられた言葉は“相手が倒れた”と言った看護師の言葉以上に衝撃的なものだった。心臓に氷を押し付けられた様に身体から体温が失われた感覚に続いて音がぐん、と遠くなる。……相手が記憶喪失。其れも今の段階で自分の事だけが分からない。『落ち着いて下さい』なんて気休めにもならない医師の言葉に何て返したのか記憶は無い。気が付けば教えられた相手の病室の扉をノックしていて。返事が聞こえるや否や扉を開けて病室へと入るも対面した相手が自分の事を忘れている事が信じられず「あの…、」と小さく声を漏らしただけで其れ以上上手く言葉にする事が出来ずにいて )





1458: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-24 18:11:55

 





( 暫くして部屋をノックされ返事をすると、控えめに扉が開き。其処に立っていたのは見慣れない女性、暫し視線が重なったものの相手が部下だと認識する事は無く。様子から察するに見舞いに来たのだろうが、この部屋は相部屋では無い為自分以外の患者は居ない。部屋を間違えた素振りを見せる事も無い為、自分に会いに来たのだろうが相手に見覚えは無かった。医者が連絡をすると言っていた“ベル・ミラー”だろうかと思えば入り口に佇んだままの相手に「____レイクウッドの刑事か?」と尋ねて。部下だと言っていた為、相手が“ベル・ミラー”なら答えはYesになる筈だ。其処からの確認だったが、相手が来た所で既に署には連絡を入れて居る為伝える事も無い。知らない人間と2人で、其れも自分は横になった状態で対面すると言うのは何とも気不味い物で長く視線を合わせている事は無く。 )






 

1459: ベル・ミラー [×]
2022-05-24 18:43:30




( 視線が交わり開口一番の問い掛けが医師が言った事が紛れも無い事実である事を物語った。鞄を持つ指先にありったけの力を込めて嵐の如く荒ぶる感情を懸命に抑え付け頷けば「_ベル・ミラーです。私の初めての殺人事件を共に捜査してくれたのが、赴任して来て直ぐのエバンズさんでした。」数分と掛からずして外された視線に言い様のない悲しさを感じつつも己の名前は医師から聞いているだろう事を前提に“もう一度”自己紹介とどういった成り行きがあるのかの簡単な説明を加えて。後ろ手で扉を閉めたものの傍に近付く事が出来なかったのは、相手が“知らない人”を寄せ付けるのを良く思わないと知って居るから。ましてやこんな2人だけの病室で相手は入院着に身を包みベッドに横になって居るのだから。医療従事者の出入りの邪魔にならぬ様に扉から少しずれた位置で壁を背に佇めば、僅かに視線を下方に置いた儘「署にはエバンズさん自身で連絡したと聞きました。__あの!、何処まで覚えてますか?…アナンデール事件やセシリアさんの事、喫茶店の女性の事は分かりますか!?」医師からは相手がゆっくり思い出す迄下手に刺激しない様にと釘を刺されて居たのに…一度抑えが外れた感情は堰を切った様に溢れ出し気が付けば相手に詰め寄る様にして矢継ぎ早に質問を投げ掛けていて )





1460: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-24 19:07:25

 






( レイクウッドに赴任して直ぐに捜査を請け負った殺人事件の事は記憶していた。しかしそれを相手と共に捜査したと言われてもその記憶は無く「____殺人が初めての刑事と組んだ記憶は無いな、それじゃあ捜査が進まない。」と返事をして。当時も同じ様な反応をした事も当然覚えては居ない。相手が不用意に近づいて来なかった事には内心安堵したものの其方に視線を向ける事無く反対側の窓を見据えて居て。再び視線を重ねたのは相手の口から妹の名前が出たからだった。それ以外の部分は何の事を言っているのかよく分からず怪訝な表情を浮かべただけ。“アナンデール”と言う地名には何か嫌悪感を感じるのだが、その感覚も自分では気付かない程に些細な物で受け流してしまい。「…何でお前が妹を知ってる。知り合いか、?」部下であると主張する相手が妹の存在を知っていると言う状況が腑に落ちず、知り合いだろうかと尋ねる。“だった”と過去形の言葉を使う事の無いその口振りは当然の様に妹が生きていると思い込んでいる物で、妙に危機迫った様子の相手に眉を顰めて。 )





 

1461: ベル・ミラー [×]
2022-05-24 20:37:40




( 返って来たのがあの日に良く似た反応なれば、相手らしい皮肉を思わず懐かしいと感じてしまった事に思わず感情が込み上げ自身を落ち着かせる様に小さく息を吐き出して。視線が重なった理由は“セシリア”の名前が互いの鼓膜を揺らしたから。感情に任せて数分前の医師の注意を華麗に無視した結果に今更になって不味いと思えば一歩、二歩、と相手から距離を取る様に後退りをして先程の壁の位置からは近い所で一度立ち止まりつつ「…以前エバンズさんとの会話の中で、」と誤魔化すには煮え切らない返事をするも決して嘘では無いのだから疚しい事は無い。何はともあれ喫茶店の記憶が無い事、妹の記憶はある事が分かった。__のだが…。相手に関する事の直感は何時だって少しの違和感も取り零す事をしない。其れは今回も例外では無く此れと言った理由は説明出来ないものの、確かな疑念がふつふつと泡ぶくの様に湧き出て来れば「あの、エバンズさん__セシリアさんに記憶障害の事は知らせましたか?」ドクン、ドクン、と嫌な高鳴り方をする心臓の音が相手にも聞こえてしまうのではないかと思える程の緊張の中で、恐る恐ると言った口調で問い掛けて )





1462: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-24 22:39:57

 






( 会話に出て来た事がきっかけで妹の存在を認知していると言う事は当然自分が話したと言う事になるが、ひとりの部下にそれ程事細かに妹の事を、名前まで出して話すだろうか。直接の知り合いでは無いらしいが随分と妹に拘ると若干不審さを滲ませた瞳を相手に向けると、いや、と首を振り「伝えてない。言う程の事でも無いだろう、生活に支障があるわけじゃない。」と答えて。後から知れば怒るかもしれないが、報告するほどの状況では無いと考えていた。ここまで話して、相手は医者から連絡を受けてわざわざ此処まで来たのかと思えば話を元に戻す事とし。話を聞く限り相手は一刑事と言う事で間違いは無さそうだが、医者はやけに“ベル・ミラー“に拘っていた。署内の産業医では無いのかと改めて確認しつつ、存在を認知していない部下を長く此処に留めておくのも憚られて「___お前は産業医でも無くて刑事なんだよな、?…手間を取らせた、戻って良い。」と告げて。 )





 

1463: ベル・ミラー [×]
2022-05-24 23:12:45




( 相手の瞳に少しの疑心の色が宿ったのに気が付くが其れもそうだろう。相手からすれば目の前の自分は全く記憶に無いにも関わらず捜査を共にした部下だと繰り返し、挙句世間話の中で出たと言う妹の話を掘り下げようとするのだから。其れでもこのたった一回の遣り取りで燻っていた違和感の正体が何なのか明確に分かって仕舞えば、思わず天を仰ぎたくなる気持ちをグッと堪え「確かにそうですね。」と一先ず同意を示して。__【セシリア・エバンズ】の事を確かに相手は覚えている。けれど其の記憶には誤りがあるのだ。彼女は今は亡き人、だが相手の記憶の中では今も尚生き続けている。“生きている事にしたい”では無く正真正銘生きている。もし電話を掛けようとして繋がらない事を不審に思ったら、セシリアの住んでいただろう家の扉をノックして違う人が出て来たら……彼女は既に亡くなっているなんて口が裂けても言えないのにどうやったって誤魔化す事も出来ない。まるで四面楚歌状態の今に眩暈がしそうになるも、相手からの問い掛けに「エバンズさんの部下です。」と漸く答える事に成功すれば、続けられた所謂“命令”に今の己が逆らえる筈も無く「何かあれば、…医師に伝えて下さいね。失礼します。」“何時でも連絡下さい”の言葉は言えなかった。深々と頭を下げて病室を出た瞬間に堪えていた涙があっという間に双眸に溜まり視界をぐにゃりと歪ませて。医師と話さなくちゃと思うのに揺らぐ感情は収まりを見せる事が無ければ、一度トイレへと駆け込み気持ちを落ち着かせる事に努め。其れから数十分後、僅かに赤くなった瞳を隠す事を諦めては、相手が忘れている記憶は自分についてだけでは無く、妹が今はもうこの世に居ないと言う事実もなのだと医師に伝え帰宅した後は再びソファに座った儘ぼんやりと一日を過ごして )





1464: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-24 23:54:38

 





( 相手が部屋を出て行くと、何やらどっと疲労感に苛まれ枕に深く頭を預けて。自分の記憶の中には存在していないのに向こうは自分をよく知っているという状況は本来の距離感が分からず気を遣う上、ひとつずつ確認していく作業ももどかしい。これ程記憶は確りしているのに自分は本当に何かを忘れて居るのだろうかと思いつつその日はベッドの上で過ごして。---レイクウッドから本部に応援の派遣要請が入り、既に経験があるからと声が掛かったのは正午過ぎの事。期間は未定、レイクウッドの警部補が体調を崩して入院している為、その穴埋めとして早速明日から行って欲しいと突然出張が組まれる事となり。午後は準備に充てる為後半休となり出張支度の為家に戻ったものの、体調を崩したのが“彼”である事に間違いは無いだろう。状況の確認と明日から行く事を伝えようと電話を掛けたのは、以前の応援で仲良くなった彼の後輩。数コールして相手が電話に出ると「___もしもし、私よ。クレア・ジョーンズ。覚えてる?」と変わらず明るい声色で告げて。「アルバートが入院したって聞いたわ、また無理したのね。…貴女も大丈夫?」彼はまた無理な働き方が祟って体調を崩したのだろう、その体調も心配だったが彼を慕っている相手のことも心配で相手の調子も尋ねて。 )






 

1465: ベル・ミラー [×]
2022-05-25 07:31:08




( 相手の記憶喪失は強いストレスや不安が心に大きな負荷を掛けた事によるものだろうと医師から聞いた。其の為記憶が何時戻るのかは分からず兎に角焦って無理に思い出させる様な事はしないようにと。__相手はずっとずっと妹の死の罪悪感と痛みに苦しみ続け、其の土台の上に今回アナンデール事件に関わった2人の死が重なり、挙句喫茶店での妹に瓜二つな店員の存在で心が揺らぎ……そうして自分が相手を再び現実の絶望に突き落とした。何故“セシリアじゃない”なんて言ってしまったのか、何故例えば其れが仮初でも相手の幸せを肯定出来なかったのか、あの時の発言への後悔が頭も心も支配し思わず項垂れた其の時、ふいにスマートフォンが着信を知らせれば耳に宛てた途端聞こえた声は明るさを含んだ懐かしい声で。忘れる筈が無い。「_っ、クレアさん!」思わず声が大きくなったのは救いの様に思えたからか。一度深く呼吸を整えた後に「私は大丈夫です…エバンズさんの事で話したい事が、…沢山あって、」自分は何も問題ない無いと伝えるも、上司の名前を出した途端に思わず声が震え喉に息が引っ掛かる感覚から一度言葉を止めて )





1466: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-25 12:37:33

 




クレア・ジョーンズ


( 電話に出た声こそ少し沈んだ様子だったものの、名前を告げるとパッと明るくなった事に思わず微笑む。彼の事で話したい事が沢山あると言った相手の声が涙ぐむ様に揺らいだ事で少し真剣な表情に戻ると「…そんなに容態が悪いの?」と尋ねて。普段の相手なら、また上司が無理をしたから入院させたのだと怒りと心配を含んだ声色で話す様な気がしたのだ。スーツケースに荷物を詰めながら「明日そっちに行くの、あの人の代わりに応援を頼まれて。勿論何でも聞くわ、抱え込まないで。」と彼が居ない事で心細さを感じているであろう相手に優しく語り掛けて。 )





 

1467: ベル・ミラー [×]
2022-05-25 13:26:12




( 容態自体は悪く無い。寧ろ此処最近は喫茶店の店員の存在のお陰か夜も比較的眠れているようで隈だって随分と薄くなって居た。身体の事だけを見るならば以前より良いと答えられるのに、其れ以上の大きな問題に直面して居れば少しの沈黙の後に「__記憶が無いんです。私と、…妹が死んだ事の。」スマートフォンを握る指先が震えた事で力を入れて握り直しつつ、アナンデール事件の事を知っている相手ならば勿論の事セシリアの事も知っている筈だと、特別説明をする事も無くざっくりとした今の上司の状態を告げて。相手が上司の代わりに応援に来てくれると言うのは天からの救いの様に感じられる程嬉しく、また気持ちが幾らも楽になるものだった。顔を合わせて話す事が出来るのならば詳しい話は其の時に出来るし、何よりも今一人で居る事が怖かったのだ。「クレアさん、ありがとうございます。」上司の記憶喪失を引き起こした原因が少なからず自分にある様な気がして罪悪感なんて言葉では片付けられない渦巻く感情を抱えた儘、電話をくれた事、明日来てくれる事、そうして相手の存在に小さなお礼の言葉を伝えて )





1468: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-25 14:28:32

 






( 相手から告げられたのは思い掛けない言葉。常に人と一定の距離を保ち誰も近付けなかった彼が、抵抗無く部下である相手を側に置き、同時に相手も彼を慕っている様子に安堵を感じていたと言うのに、その特別な存在とも言える相手の事を忘れてしまうなんて。妹が亡くなったあの事件に長年苦しみ続けていた、その事実さえ忘れてしまうなんて事が有り得るのだろうかと暫し言葉を失って。「……記憶喪失って事?一体どうして…」辛うじて紡いだ言葉は幾らかの困惑を含んだ物で、溜め息を吐いて。「何はともあれ、明日の朝にはそっちに着くわ。その時に状況を聞かせて。お昼はバタバタするかもしれないから…仕事おわりにアルバートに会いに行って、その後で夕食でも2人で食べましょ。」と、相手を元気付けるように明るい声色のままそう言うと、彼への見舞いと夕食の約束を取り付けて。 )






 

1469: ベル・ミラー [×]
2022-05-25 19:08:19




( 今の上司の状態を紛れも無い適切な言葉を用いた相手に蚊の鳴くような声で「はい…」とだけ返事をすれば電話越しから聞こえる溜め息に釣られる様に己もまた小さく息を吐き出して。明日職場に行けば既に相手は居る状態で顔を合わせる事が出来る。其れはとてつもなく素敵な話に思えて相手には見えない中で数回頷けば此方を気遣ってのものだろう、明るい声色のまま続けられた明日の予定に「だったら美味しそうなお店探しておきますね。」と小さくはにかみ電話を切って。__翌日、署にエバンズの姿は無いが代わりに相手の姿を見付けた事で気持ちが幾らも楽になったのを感じれば「お久し振りです、クレアさん。」あの日から少しも変わらない凛とした美しさの相手を前に唇に小さな笑みを乗せて挨拶をし )





1470: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-25 21:10:39

 




クレア・ジョーンズ



( 翌日ホテルにチェックインを済ませてから署に出向くと、急に駆け付けて貰った事への謝罪と礼を受け空いているデスクを宛てがわれる。休暇を取っている彼は此の所体調を崩して休みを取る事が多かったと聞き、ここ暫く心身の状態が良くなかったのだろうかと思いつつ代わりに当たる業務についての説明を受け。其の後出勤してきた相手と顔を合わせると『久しぶりね、元気そうで良かったわ。』とにこやかに微笑んで。以前会った時よりも少し元気は無さそうな様子だが、あまり心配して相手を更に気落ちさせてしまう事は避けたかった。きっと相手は不安だっただろうと思いつつ『…アルバートがそんな状態で不安だったでしょう。大きい事件がなければ今日は早く上がれそうね。6時くらいにあの人に会いに行きましょう、ベルちゃんの事を忘れちゃうなんてお説教物だわ。』と明るく告げてポンポンと肩を叩くと別の署員から呼び止められ仕事に向かい。 )





 

1471: ベル・ミラー [×]
2022-05-25 21:51:07




( 以前も応援に来た事のある相手は共に過ごした時間以上に其の穏やかで面倒見の良い性格から既に署員達に馴染んで居て、フロアの空気が変わった事に矢張りとても凄い人だと改めて実感する。努めて明るく振る舞う其の様子は、自然と此方も笑顔にさせる魔法の様な柔らかな温かさが滲んで居るものだから「クレアさんも元気そうで」と久し振りの再会を喜んだ後、此方を気遣ってかわざとらしく紡がれたエバンズへの小さな怒りに「物凄く悲しんでるって伝えて下さい。」と、己もまた軽い冗談として返事をして。実際悲しみの多くを占めているのは忘れられた事よりも別の事なのだが__。一先ず朝一の再会を互いに喜んだ後は各々の仕事をする。幸いな事に此処数日大きな事件も無く慌ただしい日々とは無縁の仕事の為、何事も無く過ぎてくれれば夜の6時くらいには上司のお見舞いに行けるだろう。自身のデスクでノートパソコンに資料の詳細を纏めながら時が経つのをひたすらに待ち続けて )





1472: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-25 22:24:28

 




クレア・ジョーンズ



( 相手も冗談めかした言葉を返して来た事に安心して悪戯っぽく笑うと相手と別れて。その後新たな事件が舞い込む事も無く、予定していた業務を終えて時刻はちょうど18時を少し過ぎた頃。デスクの片付けを終えてバックを持つと、同じく準備をしていた相手のデスクに向かい『お疲れ様。じゃあ行きましょうか、』と声を掛けて。相手と共にタクシーに乗り込み病院までの道中、『大変だったわね。さっき少し耳に挟んだんだけど、彼ちょっと前にも休みを取っていたの?』と尋ねる。自分の知る限り彼は仕事にのめり込むとなかなか休みを取りたがらない、その彼が纏めて休みを取るほどにこの所は体調が優れなかったのだろうかと。 )





 

1473: ベル・ミラー [×]
2022-05-25 23:22:32




( 病院までの道中、投げ掛けられた質問に一体何を何処から話せばいいのかと暫し思案するも結局起きた事全てを余す事無く伝えるのが今最も必要な事なのだろうという結論に至る。だからこそ運転席の背凭れをぼんやりと見詰めたままその通りだと頷き「__アナンデール幼稚園の事件に関わった人が2人亡くなりました。1人はセシリアさんが命を懸けて護った子供で恐らく自殺、もう1人は当時エバンズさんと一緒に事件に当たっただろう警察官…“ベン・ウィリアムズ”さんです。死因は分かりません。」感情を抑え付ける様な淡々とした声色で何があったのかを説明していき。一度深く息を吐き出してから頭をゆっくりと捻り隣に座る相手に視線を向けては「エバンズさん、限界だったんだと思います…。痛みを誤魔化す為に大量のお酒を飲んでました。辞表を出すかどうかも迷ってるって、」相手にとっては恐らく暴飲の事も辞表の事も驚かない筈が無いだろう。__けれどほんの僅かでも気持ちを掬い上げられた筈だったのだ、…あの喫茶店に行く迄は。再び視線を下方に落として本日何度目かの溜め息を吐き出せば店員の姿を思い出したのか一度きつく瞳を閉じて )





1474: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-26 00:51:20

 




クレア・ジョーンズ



( 相手の言葉を聞いて思わず息を飲むと視線を手元に落として。「____そう、ウィリアムズさん亡くなったのね…すごく面倒見の良い先輩だった、責任感も強くて。事件の後、そのまま退職してしまって…長くアルコール中毒に苦しんでいたみたい。妹さんが守った男の子の事も、聞いた事があるわ。アルバート、すごく気に掛けていたから…辛いに決まってるわよね。」刑事で在り続ける事に強く拘っていたかれが警察を辞めようと考える程の、そうした強いストレスや喪失感が彼の記憶を奪ったのだろうかと思いつつも、一度は職場に復帰している事も聞いていた。「…でも、一度は立て直したんでしょう?」そう尋ねつつも、苦しそうに俯いてしまった相手の背にそっと手を添えて。 )





 

1475: ベル・ミラー [×]
2022-05-26 07:38:44




( ウィリアムズがエバンズにとっての先輩だったと言う事は必然的に相手にとっても先輩だったと言う事になる。こうして相手の心にもまた一つ痛みを植え付けた結果と己の背中に添えられた掌の優しい温もりとに、感情が揺れるのが分かれば膝の上で両の手を強く握り締め。深く吸って、吐いて、の深呼吸を2、3繰り返してから再び静かに顔を上げた其の表情には悲しみ以上の後悔と罪悪感の色がひしめき合っていた。震える唇を僅かに開く。「__喫茶店でセシリアさんにそっくりな店員さんと会ったんです。…エバンズさん、彼女に会いに行く様になって、」あの日喫茶店で見た店員は一度写真を見せて貰っただけでも分かるくらいにセシリアに酷似していたのだ、長い年月妹に会いたいと渇望した上司の気持ちが抑えられる筈が無い。分かっては居たのに__「今幸せ?って聞いた時、エバンズさん“辛くはない”って答えたんです。エバンズさんが辛く無くて、夜も確り眠れて、体調も悪く無いなら何も知らない振りすれば良かったのに…っ…私、“セシリアさんはもう居ない”って……、」運転手が息を飲んだ気がしたがそんな事は些細な事。あの時のやり取りの後で上司は病院に運ばれたのだ、自分が再び絶望に突き落とした事が記憶喪失になる一つの原因になったのではないのか。緑の瞳からポタ、ポタ、と涙が落ち握り締めた拳の上に落ちて )





1476: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-26 12:43:46

 




クレア・ジョーンズ


( 相次いだ2人の死によって心を深く痛め、其処で偶然にも妹にそっくりの女性と出逢ってしまった___その偶然が残酷な物に思えてならないのは相手も同じだっただろう。確かに相手の言葉は彼にとって現実を突き付けられる辛いものだったかもしれない、それでも相手が其れを告げた思いも理解出来るのだ。涙を零す相手の背に手を添えたまま『………きっと、私でもそう言ってたわ。』と告げて。『アルバートは分かっていた筈よ、妹がもう居なくてその店員さんは別人だって。でも、分かっている事が尚更辛かったのかもしれない。…こんな考え方良くないかもしれないけど、あの人は11年もの間ずっと苦しんできた。今は、11年振りに苦しみから解放されている時間。記憶を失う事でしか得られない安らぎが、…今この瞬間だけ必要なのかもしれない。そう考えてみて、私は貴女が悪いなんて全く思わないわ。』自分の存在を忘れられていると言う状態は心細くて仕方がないだろう、こんな言葉は気休めにすらならないかもしれない。其れでも相手には罪悪感を感じて欲しく無いと考えて。タクシーは程なく病院の正面口に停まり。 )





 

1477: ベル・ミラー [×]
2022-05-26 13:29:32




( あの時何と言うのが正解だったのか未だに分からない中で彼は記憶喪失になってしまった。自らの発言が其の原因の一つなのだとしたら告げた言葉は自ずと間違っていたと言う事になる。其れだけが心の奥底にべったりと張り付き罪悪感として燻り続けたのだが、相手から返って来たのは此方を肯定する言葉で思わず涙で濡れる瞳を真ん丸に見開き顔を向けて。「…クレアさんも?」自分は間違って居なかったのか…今一度確認する様に言葉を落とした後静かに続けられた言葉に更に驚く事となる。記憶喪失=悪い事、と言う固定概念が180度覆されたのだ。其れは余りにもポジティブで尚且つ彼の気持ちにも己の気持ちにも寄り添ったものなれば受けた衝撃は計り知れない。「__私、今はエバンズさんの大切な安らぎの時間を守りたいです。」暫し息を飲み相手を見詰めて居たも、ややして静かに唇を開いた時、緑の虹彩には少し前までの罪悪感と悲しみに塗れた色は影を潜めており代わりに彼を思う強い意思の光がチカ、と瞬いて。_嗚呼、救われたと思った。あの時も、今も、相手の言葉は余りに真っ直ぐに心に届き確かな慈愛に溢れた優しさで闇の中から引き上げてくれる。其れは彼とはまた違った寄り添い方で己には其の何方も無くてはならないと。何時しかタクシーは病院の正面口に停まっていて、相手と共に降りれば彼の入院する病室まで向かい )





1478: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-26 20:53:46

 




クレア・ジョーンズ



( 驚きを浮かべて此方を見詰める相手に『…えぇ、私も。』と頷く。『彼が幸せなのは良い事かもしれない。でも、私はあの人に虚しい幻想の中で生きて欲しく無いの。あの事件を、幾つもの苦しみを乗り越えて此の場所に立っているなら、今を生きて欲しい。そうでしょ?』相手が、妹はもう居ないと言ったのは同じ気持ちを持っていたからだと確信していて、同意を仰ぐ様に首を傾げて。『今はアルバートにとって夢みたいな物。少しだけ心を休めたら、戻って来て貰いましょう。』言う程簡単に記憶の操作が出来るとは当然思っていないが、強いストレスが掛かって一時的に閉じてしまった記憶は、心の傷が癒やされたらきっと戻る筈なのだ。相手にとって、彼が自分を覚えて居ないと言う状況は辛い物だと理解しつつも希望を持たせる様にそう言うと微笑んで。---病室の扉が開き視線を向けると、其処には同僚と昨日も顔を出した“部下”の姿。彼女が居ると言うことは応援というのは此の同僚の事なのだろうと理解して「___クレア。お前が来てたのか、」と言葉を紡ぎ。 )






 

1479: ベル・ミラー [×]
2022-05-26 21:45:04




( 再度断言された肯定。其れから同意を仰ぐ様な言葉に力強い頷きを以て返せば、余りに真っ直ぐで凛とした言葉に再び息を飲む事となった。記憶の操作など簡単に出来る筈も無く“戻って来てもらう”なんて。其れでも何故だろうか、彼女の言葉は本当にそんな事が出来る様な不思議な力が宿って居る様な気がして口許には自然と笑みが浮かんで。__ベッドに居る相手は一晩寝て“何時も”の調子を取り戻した様に見えるが相変わらず記憶が無いのは言葉を交わさなくても分かった。彼女の一歩後ろで立ち止まれば小さく会釈をするだけで留め。確かに感じる寂しさや不安は消える事は無いが、相手が彼女の事を覚えていた事に安堵したのは何かあった時に頼れる人が傍に居ると分かったから。今の相手は間違い無く自分を頼りはしない、でも沢山の事を知っている同僚である彼女にならすんなりと頼めるだろう。“記憶を失う事で得られた安らぎ”と“戻って来てもらう”との彼女の言葉を胸に置いておけば自分はきっと大丈夫だと言う確信があって )





1480: アルバート・エバンズ [×]
2022-05-26 23:48:10

 





( 部下を名乗る相手は昨日の様に何処か取り乱した様子で幾つも質問を投げ掛けて来る事は無く、クレアの後ろで控えめに会釈をした。同時に彼女が『この子はベル・ミラー。貴方の部下に間違いないわ、私も前の応援の時に顔を合わせてる。』と言った事で、失って居る記憶が本当にある事を自覚して。同僚の事は覚えて居るのに何故部下だと言う相手の事だけを忘れているのだろうかと思いつつ相手に視線を向け「…昨日は悪かった。」と謝罪して。相手を罵ったり拒絶したりした訳では無かったが、昨日は相手が部下だと言う事を余り信用して居なかったのだ。失っている記憶を取り戻そうと言う気はある為「___お前とは捜査で何度か組んでるのか?」と尋ねて。プライベートでも付き合いがあるなどとは思いもせずに、捜査で何度か顔を合わせて居るのだろうかと。 )





 

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