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1対1のなりきりチャット
自分のトピックを作る
41:
「囚人」 [×]
2020-11-09 00:06:03
違うんだ、謝らないでくれ。君を責めたいわけじゃない。今までに君をそう呼んだ相手すべてを忌々しく思うだけで…いや、結果としては君を非難しているのと同じか。君を正しく導きたいわけじゃないし、導けるとも思っちゃいない。ただ、自分が好ましく思うものを悪く言われて良い気はしないだろ。私自身の為に言ったんだ。要するにエゴだな。
( 可惜一度口に出した言葉が再び胸奥に還ることはない。狼狽に揺れる声音と表情とを目にすれば、咄嗟に否定の言葉を口にして。事実上、彼の言動を批判したことに変わりは無いのだが。考えた末の発言はその実軽々しいものであったのかも知れない、などと悔いても遅い。夜間は月光を照り返すプラチナブロンドが好きだ。眩しすぎる日光に細められる淡紅色が好きだ。畢竟、誤謬を正す助言を装いながら、相手に対する自身の感性を肯定する為の言葉でしかなった。居た堪れなさと責任を感じ、自ら合わせた視線を逸らして )
……。有難い話だ。我ながら、何度呼んでも無駄な時は無駄だけどな。そういう時はちょっと小突けば気が付く。何、君と私の仲だろ?遠慮は要らない。
( 裏表のない言葉から逃れるようにチーズを口内に詰め込む。世辞にも行儀が良いとは言い難い様子を晒しながら、口いっぱいに広がる塩気には無視を貫き。咀嚼したそれを無理やり喉の奥に押し込むと、幾らか平静を取り戻した。作業に没頭した自身が周囲の変化に鈍いことは承知の上、外界への感受性を数値化したならマイナスを記録するに違いない。強制的な過集中の解除法を簡潔に授け、友人の良心が咎めることの無いよう直々の許可を下して )
ああ、分かるさ。寧ろ見て欲しいんだ。ほかの参加者にも使えなくちゃ意味が無いからな!ありがとう、クレス君。
42:
「墓守」 [×]
2020-11-09 22:13:55
ちょっと待て、ルカが落ち込む必要は無いじゃないか。だからあんたのそういう所が…繊細過ぎるんだ。僕を世間から庇ってくれるのがエゴなら、あんたを牢屋にぶち込んだ世間を憎む僕はどうなる?苛々する余り目の前に居たら今直ぐにでも殴ってやりそうだ!こんな青タンまで残して…クソッタレ!罰当たりめ!
( 大変な思い違いをしてしまった、急いで是正しなくては友人ばかりが悪となってしまう。顔を勢いよく上げ、泣き始める寸前の幼子のように表情を歪め、比例して声もが震え出し。今まで言うのが憚れていたのに、到頭腹から出ずる汚物を吐瀉してしまうなんて。机を強く叩いた拳に痺れが走る、だがこんな細やかな痛みは彼の受けた痛みに比べれば軽過ぎる程に軽い。隣人を愛さぬ己をどうか赦すな。結局目には目を、歯には歯をもって償わせたいと願ってしまう被創造物こそ、謹んで罰されるべきなのだ )
小突いても構わないと言われたとして、僕はあんたを実際に小突き回すんだろうが…それだけじゃあんたの意思を無視し過ぎてやしないか?拷問じゃないんだぞ。どうせなら少しくらい楽しみになるようにしたい。例えば好物を用意するとかな。
( しまった、流石に一方的が過ぎた。突如食べ物を一気食いした様子からして、決して良い印象を与えたとは思えない。飄々としながらも繊細微妙な発明家は今の今まで散々不自由を強いられて過ごしてきたというのに全く同じ状況を作っては困る。空になった皿の上の食べ滓を指で傍に寄せつつ思い遣りと思しき発言、少し考え込んで浮かんだ案は果たして当人に受け入れていただけるのだろうか )
ありがとうって、それは僕の台詞だ。使い易く作ってくれるお陰で何回か触れば慣れる。この僕でさえ使える発明品を用意してくれるルカは正真正銘の天才だな。
43:
「囚人」 [×]
2020-11-10 03:50:26
君は…優しいな、元死刑囚には勿体無いくらいの友人だ。だが、私の為にそんな悲しい顔をしないでくれ。君は私が不当な扱いを受けたことに憤っているんだろう。けどな、私が無実であるという保証は何処にもないんだ。私の頭の中にさえ、ない。もし私が罪を犯しているなら、君の怒りまで不当なものになってしまうんじゃないか。そしてそれを、君の神は許してくれるだろうか?
( 記憶に残る限り、己に繊細と銘打ったのは友人が初めてだ。敢えて述べるなら、他ならぬ彼こそ感じやすく繊細な人物なのだが。強く机を打ち据えて赤みを帯びる拳が痛々しく映る。世間が相手を爪弾きにした事実は許されざる悪である一方、自身の受けた扱いが必ずしも不正であるとは限らない。殺人を犯しておきながら、その事実を忘却という大罪で上塗りしていたのだとしたら?懺悔も告解も叶わぬ以上、天に御座す我らが父とやらに許しを請うことも能わず。願わくは、いたいけな墓所の番人がこれ以上心を痛めることのないよう。それが事実にせよ誤謬にせよ、不確かな罪状と共に生きる覚悟はとうに出来ているのだから )
難問だな、私は食事に…というより、衣食住のどれにもいまいち惹かれないんだ。好物らしい好物もない。必要最低限の栄養素が摂取出来れば良いと思っていたし、食事の最中も大抵は考え事をしているから…ああでも、強いて挙げるなら一つあるぞ!君の淹れたコーヒーは好きだ。角砂糖は三つ、ミルクは抜きの。
( 味の良し悪しはある程度理解していたつもりだが、個人的な好みとなると話は別だ。糖分の為に角砂糖や蜂蜜を、ナトリウムの為に食塩を、カリウムの為にバターを。覚醒にはカフェイン入りのコーヒーを、そして強制的な入眠にはアルコールを。思い当たるのは特定の成分を含有する調味料やら飲料やら、これらを列挙することが相手の望む返答になるとは考え辛い。悩んだ末に導き出した結論はというと、つい先刻口にしたばかりのひと品。単純に好ましいと感じるのは、無論含まれる栄養素云々を差し引いた上で )
褒めるのが早すぎるんじゃないか?拍手は実物を目にした時まで取っておいてくれよ。でも、天才の称号は悪くないな。発明品の使用に際した前金として有難く頂戴しよう。
44:
「墓守」 [×]
2020-11-10 22:11:21
煩い……他の奴の都合なんか知ったことか…あんな、間抜けで、意気がっているだけの、何奴も此奴も嘘ばかりの世の中にあんたまで負けるなよ…クソッ。主は僕のような塵屑でさえ愛して下さるんだ、だったらルカを愛さなければ主じゃない。
( 行き場を失くした敗者の魂の雄叫びが全身で渦巻くばかりでどうにも出来ず、途切れ途切れに悪態を吐き再び机を叩こうとした拳を力無くだらりと垂らし。何もかも全て滅びてしまえば良いのに。そう願ったのは一度や二度ではなかった。唯一の友人を得た今でさえ現実は哀れな存在に微笑みかけてはくれぬ、己が現実に微笑まない所為で。それでも事実がどうであれ彼に一切の救いなしとは信じたくない。熱りが冷めるまで続いた木目との睨み合いの末、噛み締めた奥歯同士を漸く離し神の名を借りた己が渇求を言霊に託して )
強いて挙げた好物があの物体か、他に何かあるだろ…。何処までも変わった奴だな。あんな物で本当に良いっていうなら幾らでも応えるが少しくらいは味の楽しみがあったって罰は当たらないじゃないか。どうせならあんたが唸る位の料理を作ってやりたい。
( あの胃が靠れるだけの失敗作が選ばれたのも大いなる謎ではあるが、改めて友人の形振り構わぬ生き様に驚くと共に或る一種の感銘を受け。ただ、ほんのりと何処からか芽を出した喜びまでは否定出来ない。口に出すと捻くれるのに胸がこそばゆくて、それが落ち着きを奪い視線を定める位置を迷わせ。料理人を職業としない男が好き好んで台所に立つのは却って白い目で見られる以前に誰も思い付きもしない時代だ、コーヒーの出来栄えに対する遺憾かもしれないし友人への対抗心かもしれないが、兎にも角にも一度はあっと言わせてみたいと確かに思った。理想とする料理の心象はかなり朧げで危ういものでありながらも意外とそう遠くもない気がする。急な思い立ちに独りでに意気込み )
おい、本心で言っているんだぞ。僕がキャーキャー言う方が気味悪い。片付けて来る、少しは体力を取り戻せたか。
45:
「囚人」 [×]
2020-11-11 08:02:17
屈した訳じゃないさ、境遇を受け入れただけだ。君が神を信じるように、私は私自身を信じている。さらに言えば、私自身の夢を。この心臓が動き続ける限り、私は夢を追うことを止めない。死後の救いなんか求めちゃいないんだ、地獄に堕ちたって構いやしない!こんな涜神者の救済を求めてくれる君は優しすぎる。だからな、つまり…神に救われたと思ったことはないが…少なくとも、君の言葉には救われた。
( 信仰に等しいほど熱狂的な大願成就への切望は、冷たい墓の下に眠ろうと消え失せる気がしない。受刑者として殊勝な改悛に信心を捧げていたなら話は別だが、この身も心も見果てぬ夢に奪われている。己は間違いなく敬虔さと真逆に位置する男だろう。友人の抱え込んだ感情が遣る瀬無さに変わる様は目に明らかで、半端な理神論者の為に彼の信仰が費されることそれ自体が神への冒涜のように思えた。不可知の存在よりも何よりも、確かな存在として知覚できる友人の言葉に希望を見出している。努めて慎重に言葉を選ぶものの、口にしたのは紛れもない事実で )
君がわざわざ料理を?それならリクエストの権限を放り出すわけにはいかないな、何でもいいだなんてのは逆に失礼だ。しかし…ううん。それなら、笑わないで聞いてくれ。君の作ったケーキが食べたい。いや、そういうのじゃないんだろ、分かってるけどさ。
( 自ら台所に立つという宣言に些か目を剥くのは、同性の友人が炊事を行うという発想がまるで存在しなかった為。女性が家庭外で労働を始め、彼女らが医師や学者として活躍する時代において、男は厨房に出入りしないという先入観そのものが偏見なのかも知れない。瞬時に旧体制的な考えを改めると、残る課題は具体的な注文の決定。"コーヒーに合う料理"という問いを自ら立てた結果、極めて短い連想ゲームはものの数十秒で終了した。食に頓着しない頭が最終答案として提示したのは、主食の大枠を外れた甘味。素っ頓狂で的外れな要望が友人を悩ませることは承知の上、予防線を張りつつ眉を下げ )
ああ、お陰様で。食事を取ったら頭もすっきりした!君と顔を合わせる前にも眠っていたし、さっきも少し意識を飛ばしていたから…あと二日は保ちそうだな。
46:
「墓守」 [×]
2020-11-12 23:44:02
( 元より鬱々としていて、痩けた頬が余計に見窄らしい印象を与える顔立ちに影が落ちる。その側で語る友は聖人と同じ名を与えられていながらも信ずる先は神ではない、成し遂げんとする科学力の集大成だ。それこそが彼を至高天へと至らしめる徳となる、断じて金貨等といった俗物ではなく。理解しているからこそ友人の進む道を羨み、また同時に、いずれ訪れる袂を分かつ日を寂しく思わずにはいられない。彼は情け容赦なき現実を見据え歩まんとしているのに、取り乱して醜態を晒すしか能のない己の情けなさといったら。この悲劇ごっこが何になるというのだろう、意を決して顔を上げ )
折角の食事の時間に水を差してすまなかった。あんたがいつか最高の発明を完成させるのを楽しみにしているぞ。その時僕が近くに居なくたって別にいい、多分…理由はよく分からんが…あんたの夢が成就すると僕の望みも叶う気がする。これは信仰がどうのじゃない、僕自身が見つけたものだ。男なら黙ってさっさと進むのが一番、だろ?
( 続く想定外の言葉に意表を突かれて口が半開きのまま停止。薄汚い墓守にケーキをリクエストするとはどういった風の吹き回しなのだろう、正直"片手間で食べられるから簡単なサンドイッチが良い"程度の返答が来るものと勝手にたかを括っていたのはどうやら不正解だったらしい。サンドイッチよりケーキの方が難易度が桁外れに高過ぎる、あれらは甘くて贅沢でスポンジと濃厚なクリームが乗っていて等々色々と連想される形容詞が過るが、さて間違いなく提供出来るものだろうか?然し友人が珍しく食に対する意欲らしきものを示しているのに、安易にかき消してしまうような真似があってはなるまい。自信ありげな笑みをと踏ん張った顔が不気味な微笑を湛え )
そうか、そんな物で良いなら任せろ。ドライフルーツが入ったやつから誕生日に出てくるようなデカいやつまでお茶の子さいさいだ。飽きるまで食わせてやるから期待してくれていい。ぼ、僕の料理の腕前に驚くなよ?
( そうは言っても当然の事ながら料理のリの字も知らない。となると、誰かに教えを乞う必要があるわけで。誰か確かな腕前を持ちながらも、余計な詮索はしない淡白な人間は居ないものだろうか。食器を重ね盆の上へ載せる間も適任者を脳内データベースの乏しい記録から引っ張り出そうとしていて )
なら次回は2日後だな。今夜ルカの部屋で発明品を見るとして、またその進捗でも教えてくれ。───楽しみに、しているかどうかは、勝手に解釈してくれていいさ。
47:
「囚人」 [×]
2020-11-13 03:56:36
ああ、必ず成し遂げる。君の望みも背負ってるなら尚のことさ。だから、あの発明が実現したら…一緒に祝杯を挙げよう!君が世界じゅうの何処に居たって容赦なく呼び付けるぞ、なんなら迎えに行く。覚悟しておけよ。
( 再び交わった視線から憤りや悲哀は感じられない。先刻とは打って変わって清々しさを胸に抱き、明るい語調と共に首肯。無二の理解者に希望を託された今、完全に退路は断たれた。辺獄への片道切符を握ることになろうと構わないのだ、思い描いた発明を完遂出来さえすれば。徐に立ち上がり、明日には全てを忘却するとも知れない頭で無責任な未来を放言する。友人の肩に気安く腕を回したかと思えば、その手で二、三度背を叩き )
いやあ…君がそれだけ料理に対して興味を持ってるなんて知らなかったな!シェフかパティシエにでもなれそうな勢いじゃないか。何はともあれ、期待してるよ。私からあれこれ指定はしないから、君の考えるケーキを作ってくれたらいい。
( 流石に無理難題を押し付け過ぎたかと反省しかけたのも束の間、自信に溢れた快諾とぎこちない微笑ににんまりと笑みを敷く。もし済まなそうに断られていたのなら、恐らく此方が罪悪感に駆られていたことだろう。率直に述べると、この献身的な友人が料理に精通しているとは考え難い。簡単な軽食であれば一人でも拵えてしまえる筈だ。無論、ケーキなどという多少なりとも技術が必要な品なら話は別だが。他者に頼らざるを得ない状況を作り出した事実が吉と出るか凶と出るか、預言者のような天眼を持たない以上は神のみぞ知る。理想的な帰結といえば、彼が仲間の為と洋菓子作りに挑むような情の厚さを持った人物であると伝わること。秘めた計画の成功を祈りつつ、無情にも課題の自由度と難易度を同時に吊り上げ )
勿論、構わないとも。発明は常に己と時間との戦いだ、一時とはいえそこに第三者が介在することによって張り合いも出る。──私"は"楽しみにしてるぞ、クレス君。自分の研究に関心を寄せる相手がいるのは、結構気分がいいものだからな。
48:
「墓守」 [×]
2020-11-14 10:29:23
デカい拡声器を態々作って呼びそうだよな、あんたの場合。他の連中も呼ぼう。皆口々にあんたを褒め称えるさ。そうなれば良いっていう願望じゃない、そうなるに決まってるんだ。僕の友人の晴れ舞台は新しい時代の幕開けの象徴になるんだから。
( 一週間もしない内に例の頭痛を起こして忘れてしまうかもしれない。そんな話をしたかな、そう言って首を捻る彼の様子は思っている以上に現実味を帯びて想像される。否、忘却は成功の栄誉の陰に隠れてしまう程度の話だ。或る地域では彼の名は" 光を齎す者 "を意味するらしい、教えてくれたのは冒険家を名乗る男だった。名の通りに彼の発明によって、狭く苦しい時代を生きる我々は一縷の光に触れる事が叶うだろう。叩かれた背中にじんわりと広がる熱を心地良いものとして捉え、僅かに目元に潤みを持たせて確言すれば友人のシルバーグレイの瞳を見上げ )
何なら転職してやろうか?これで稼いだって良いかもな。は、何だって?僕の考えるケーキ…ケーキ。はっははは!挑戦なら受けて立つ。一口食べるだけで速攻昇天するようなヤツを絶対に作ってみせるぞ。
( 首枷の友人にのみ舌は回る、冗談だって自然に出て来てくれる。裏に隠された優しい意図を知らないまま、何としてでも天才を一度でも構わないから平伏させてみたいという野心のみが膨れ上がり。自由形式という無理難題に苦しめられる間思い出した、これは確かマズローが唱えた法則だったか。以前勉強の為にと医師から借りた本に書いてあった筈。当初は内容なんてさっぱり理解しかねたのに今は解る。自己実現だ!ルカに承認された上での!急に水を得た魚の表情へと変わり、ご丁寧に人間の欲求を解明して名付けた心理学者への親近感を抱いて意気揚々に誓いを立て )
張り合いか…一生かけてもあんたのその熱情を本当に理解する事は出来ないんだろうな。それくらいあんたは誰よりも前を歩いてるって意味で。はは、僕も楽しみだよルカ。ありがとう。
49:
「囚人」 [×]
2020-11-14 15:07:27
…ふ、ふふっ、ははは!うん、直に招待状を読み上げるつもりだ。それこそ、街全体に響くくらいの声で!──そうだな、大規模な祝賀会を開きたい。そうすれば皆思えるだろ、あの狂ったゲームへの参加は決して無意味じゃなかったってさ。だから、クレス君……アンドルー。荘園での出来事が若かりし日の思い出になる頃、君に新たな時代を見せてあげよう。他でもない私が!
( 決して高くはない勝率を鑑みずとも、自陣営の参加者全員が生き残れる可能性はほぼ皆無。そんな中、思い描いた祝いの席では全ての仲間と再会を果たせるという奇妙な確信があった。過ぎた絵空事として空虚に響いても構うものか。誰より己を高評する男から湯水と浴びせられた賛嘆に浸り、希望に満ちた未来に耽溺することを許されたい。それが泡沫の夢であることには目を瞑って、せめて今だけは!微かに滲んだ淡い紅が溶け落ちる前に、謝意と親愛を込めて抱擁を送る。視線が無いことを良しとして、期待と興奮に彩られた朗笑を満面に広げ )
いや、それは良策かも知れない。少なくとも、ほんの冗談で終わらせるには惜しい!ここを出たら菓子職人を目指すのも一つの手だと思うぞ、案外コックシャツが似合ったりしてな。
( 相手の意図は作為的に敷かれたレールを外れ、此方の思惑を突き抜けた。これだから友人との会話には飽きが来ないのだ。元より彼には高いポテンシャルを感じていたものの、図らずも新たな分野に可能性を見出してしまったかも知れない。体質から日の下を歩き辛い墓守に夜色の外套がしっくりくるのは言うまでも無いとして、真っ白な制服を纏った想像上のパティシエ姿はなかなか様になって見える。無数の選択肢を包摂する彼の将来に想いを馳せ、茶化すような調子でその道の一つを提案し )
分からなくたっていいんだ。第一、君はもう理解してるんじゃないか?発明家としての私ではなく、ただひとりの人間としてのルカ・バルサーを。──さて、片付けくらいは引き受けよう。朝のゲームで疲れてるだろ、早く部屋に戻って休むといい。付き合わせたのは私だけどな。
( 理論の構築にも実験の反復にも、一個人としての記憶や感情は不要だ。頭では理解しつつ、この極めて個人的なやり取りを慈しまずにいられないのは何故だろう。今なら『地下生活者の手記』を綴った小官吏の主張を容れられるかも知れない、人間は非合理に基づく存在であると。再び開いた口から押し付けるのは一方的な勧め、先刻まで彼の背に回していた手で机上の盆をひょいと持ち上げ )
50:
「墓守」 [×]
2020-11-14 19:31:45
そうなると僕の名前が世間に公表されるわけか。クソ、恥ずかしい…あんたならやりかねなくて尚更。凄いな、そんな大掛かりな催しなんて呼ばれた事も参加した事もないぞ。皆の視線の先はあんたとあんたの発明品で、あんたはスピーチをして拍手を浴びて、胴上げまでされて其処ら中が花束だらけになるんだな。まるで祝福そのものだ。おい、ルルルカ!?…ああ、期待してる──生きてその瞬間をきっと迎えてみせる。
( 勝手な願いが届くのならば最初に招待を受けたい。真っ先に祝いの席へと駆け付けたい。拡声器から響く名前を耳にするのは居た堪れないだろう、だが友人の偉業を称える場では老いも若きも等しく在れる。誰もが人類の先駆者を愛し、敬い、喜びに咽び、互いを抱き合う素晴らしい時よ来たれ!その夢を精々一隅に過ぎない荘園如きに潰されてなるものか。胸一杯に広がるビジョンに酔い痴れ自ずと口調にも熱がこもり。ファーストネームで呼ばれたと気付いた時には身体的な距離はゼロに、ハンターの気配は無いにも関わらず騒ぎ出した心臓がばれてしまいやしないかなんて今は考えまい。同じ力をもって腕を背中へ回し、徹夜で染みた独特の匂いに己が香を重ね合わせて双眸を閉じ )
食べもしない内から買い被られるとは思わなかった。でももしかすると成功するかもしれないよな。店を開いたら絶対にやりたい事がある。僕の店はどんな奴も差別したりなんかしない。その格好で来ても喜んで迎えてやる、常連になってくれれば万々歳だ。
( 実現するか否かは問わずに、可能性として留めても誰も責めはしない筈。友人の口車に乗せられているのだと指摘されればそれはそれ、否定もしないし寧ろ笑ってみせよう。彼の左瞼の腫れと己の左頬の傷痕を御覧じろ。外見的要素等というものが人生に何ら支障を来さないと証明するには充分ではないか。賞金の使い道は神殿への旅費だ、信仰を捨て切れはしないけれども、転職するなら其方に費やしてみても良いかもしれない。頬杖つき友人の方に視線を投げ、最優先で店に招き入れるべき相手は既に決まっている事実を知らせ )
発明家じゃなくて人間として…?そうなのか、僕はルカを理解出来ているのか。人間として、ふふっ、ん、んんっ。休むべきなのはそっちだろ、片付けも僕がやる。それくらいしないと気が済まん。
( 思いがけない言葉に瞬きすること数回。発明ありきの友人として接するならば志を応援して然りだと思っていた。今、浮かれているかもしれないという可能性を踏まえて言わせて貰えるならば、世間一般に向けた肩書きよりも更に内側に存在する特別な領域に触れるのを許されたのか。この高揚感は一体全体何と呼ばれるものなのだろう。勝手に緩んだ頬が勘違いから生じた結果ではないのを祈りつつ誤魔化しの咳払い。持ち上げられた盆を追うようにして慌てて異議を唱え、取り返そうと腕を伸ばし )
51:
「囚人」 [×]
2020-11-14 23:17:35
君には最前席を用意するつもりだ、私の話が長いからって居眠りするんじゃないぞ。スピーチ中に名前を呼ばれたくなければな!……ともあれ、君の中で私の株価がこれ以上ないくらい高騰しているのは分かった。握った証券をうっかり手離すなよ?生きてゲームに勝利して、停滞した人生の続きを始めようじゃないか。
( 研究の完遂は疎か、荘園からの脱出を果たすことさえ未だ成っていない現状を想像力で塗り替える。世界に誇る発明の公表を控え、無二の友人をどう迎えようかと頭を悩ませる稀代の技術者こそ現下の自分なのだ。馬鹿馬鹿しいと笑う余人には笑わせておけ、夢を夢で終わらせないのが真の天才だということを証明しよう。微かに香る湿った土壌の匂いに目を伏せ、程よい温もりに身を任せてしまいそうになる。再び瞼が開かれた時、そこは熱気に満ちた式典会場ではなく、ひと気のない食堂だった。相手を戒めていた腕をするりと解けば、彼の胸元を拳でトントンと軽く叩き。友がそこに"バルサーへの信頼"という銘柄を保有する限り、願望の成就を確約するのは己でありたい )
許されるのか?目元に隈を拵えた徹夜明けの前科者が、しかも首枷をジャラジャラいわせながら入っていったって?…冗談はさておき、そいつは先進的だ。でも、初めて君の店に向かう時くらいは正装させてくれ。第一号のお客として、少しは格好つけたい。
( 友人に対する強欲と傲慢とを繋ぎ合わせた思考回路は、己が初の来店者となることを信じて疑わない。万人に開かれた店を構えるというのなら、店主が困り果てるくらい大々的に宣伝を打とう。それとも、小さな町の片隅に佇む可愛らしい店舗を望むだろうか。何方にせよ、幸福を形にする為の投資は惜しまない所存。開店を果たした暁には真っ先に顔を出したい。皺一つないモーニングコートを羽織り、首元にはクラバットを締めて!星の数ほど存在する可能性の一つ、まだ見ぬ将来を愛でる声音は上機嫌に弾み )
そうとも。私の体質や習慣、個人的な嗜好を理解しているのは、君が私の友人だからだ。発明の成果にしか興味を示さないパトロンじゃこうはいかない。…ふむ、そこまで言うなら仕方ないな!じゃ、片付けは頼んだぞ。今晩、部屋で待ってる。
( 言葉にするごと強まるのは、彼のような理解者は得難い存在であるという確信。財産も地位も名声も失い、唯一残った頭脳も碌々使いものにならない。常について回る殺人者のレッテルが、栄光の残滓すら塵に変えた。出獄後、あるがままの自分を受け入れてくれた初めての相手を恩人と呼ばずして何と呼ぶのか。彼との邂逅を果たさなければ、個としてのルカは摩耗し、今以上に研究一辺倒な発明家のなり損ないが生まれていたに違いない。やがて友人のお人好しに根負け、此方に伸べられ宙を彷徨った手に盆を受け渡す。元死刑囚にさえ忌憚なく意見を述べ、他意無く世話を焼こうとする純真さを持てばこそ我が救い主たりえたのだろう。既にして研究成果への反応に期待を寄せつつ、ひらりと片手を振って足取りも軽く歩み出し )
52:
「墓守」 [×]
2020-11-15 01:29:12
はは…自信が無い……それもまた恥ずかし過ぎる!その頃には一般市民並みの常識は身に付いている予定だ、た、多分。あんたの重荷にはなりたくない、ただあんたには僕の行く先を預けても不安にならないんだ。妙…だよな。
( 居眠りしないとは約束いたしかねる、相済まないが日常会話においてでさえ友人の言葉選びには全力を傾けずには理解へと至らないから。これでも初対面のあの頃に比べれば言わんとしているものが拾えるようにはなったが。ところが効果覿面な脅し文句を耳にするや否や再び羞恥心に着火。最前列ならば尚更他の参列者にも恥じない振る舞いをすべきか、せめて如何に彼が発明において多大なる誇りと信念をもって挑んだかについて語る際には、頷きながら拝聴出来る程度になろうと口籠もりはしても約束は交わし。本心が語るところによれば実に残念だったようだ、体温が離れていってしまったのは。小突かれた胸は未だに急いているというのに。此方を見ている友人の輪郭が謎の閃光を繰り返し、眩しくて細めた目では余計見えるものも見えないにも関わらず、夢の実現者の背後にはいつの間にやら歓喜と称賛で賑わう人集りが出来ていて、各々が理想とする明日の方角を見据えている景色が広がる幻想に暫し浸り。現実の彼に伝えたかどうか自分でも判別出来なかった、唇は確かに動かしたけれども届いたのかどうかさえ曖昧なのは目覚めていながら夢でも見ていたのだろうか )
ああ、服装なんか構うものか。人間だって本来は皆素っ裸だろ。正装してくれるなら止めはしない、紳士が来店してくれたら見かけた誰かが続いて入ってくれるかもしれないしな。まさに生きた広告になってくれると思うぞ。
( 信仰の次か信仰と同等に大切な友人が悪人だろうが聖人君子だろうが、そんなものは大した問題にはなりはしまい。通りすがりの阿呆面が後ろ指をさそうがさすまいが、最初に踏み入れる権利は友人にもう渡してしまった以上、余所者のつまらない思考など気にしてやる必要も無い。極端な発言に込めた彼への信頼感を察して貰えるなら本当に有り難いのだが。今こそ囚人服を纏ってはいるが、育ちが良い男だとは能無しにも分かるところ。背筋を伸ばして闊歩する発明家が店を訪れる名誉も、この紳士は我が友人だと誇れるのも、何もかもが愉快で軽やかに笑い声を立て )
…そうか、友人ってのはこんなにも恵まれた役割なんだな。ルカのパトロンじゃなくて、友人になれて良かった。取り掛かる前にもう少しは休めよ。母さん、僕には凄い友達が出来たんだ。其処から見えるかい、石を投げない人が居たんだよ、僕は母さんと同じ人間だったんだ!彼奴が嫌がるから言わない…神からの賜物なんて表現したら絶対否定するもんな。
( 機械的に付いて回るだけの関係であったとしたら、少なくとも彼が非常に大事にしている神聖な領域に近付かせては貰えなかったことは明確。人好きのする性質を持ちながらも他人に関心の無い天才肌、無理に踏み込もうとしても綺麗に躱してしまえる天涯孤独の偉人。感謝するなんて屹度変だと言われてしまうのだろう。君は面白いね、とも。踵を返した背中に念を押して見送り、廊下に消えるまで黙って眺め。丁度独り言が聞こえなくなる距離を隔てた瞬間、頬が輝き始めた後に永遠の楽園におわすと信じて疑わない母の面影に語りかけ )
──覚えているのか何とも分からないな。おい、ルカ。居るのか?今朝の約束で邪魔しに来たぞ。
( 時は夕餉の時間も越えて、空から星々と月の女神が微笑みを投げかける夜に差し掛かり。可能性として忘れている事も念頭に置いておき部屋の扉をノック。床に部品や紙屑や、若しかすると当人が倒れて呻いているかもしれない為にいきなり入室することはせずに、慎重にドアノブを回し少しずつ扉を押し開け中を確認しようと )
53:
「囚人」 [×]
2020-11-15 03:43:53
( 正午以降は実験に肝胆を砕き、夜の帳が下りる頃に漸く頷けるだけの精度を備えた試作品が完成。夕餉の席には顔を出さずに二日振りの入浴を済ませ、鼻唄混じりに自室へ引き返して現在に至る。未だ湿り気を帯びる髪を適当に結い上げ、横目に約束の時刻が迫っていることを確認し。其処らじゅうに散らばる紙屑を拾っては屑籠に放り、拾っては放りを繰り返す。やがて屑籠が溢れ返っても意に介した様子は無く、未完の没作をぎゅうと押し込んで。この部屋を自ら訪れる者は殆ど無く、また滅多に人様を招き入れることもない為に、部屋全体が雑然としていることは否めない。久方ぶりに友人を招くのだから、せめて足の踏み場は作ってやらなければ。一人意気込み、有体に言えば散らかり放題の空間を適当に片付ける。電子管、抵抗器、インダクタにトランス、電子部品は種類毎に小箱に収納。物覚えが悪い為に擦り切れるほど読み込んだ論文集は、枕元から本棚へ )
共振とパルスはこっち、電磁波はそっちで…電界?電離層の隣でいいか。これで粗方の整頓は済んだな、あと、は──…っ?…、……!
( ぐらり、突如として視界が傾く。咄嗟に伸ばした手は書籍群の上部を掴み、今し方終えたばかりの分類はばさばさという耳障りな音と共に水泡に帰した。声を上げる間もなく全身を強かに打ち付け、瞬間、頭蓋を抜けた鋭い痛みに視界が歪む。非常に不味い。今日はまだ、日記を書いていないのに。ここ二週間近くは症状が出ていないからと油断していた。俄かに擦り減り始めた理性が叫ぶ、発作が悪化しない内に対処しなければ、と。耐え難い苦痛に抗いながら立ち上がる、つもりだった。全身を支えるだけの力を失った下肢は使い物にならず、情けなくもその場に蹲ったまま奥歯を噛み締めることしかできない。来客の声が耳朶を叩いたことにも気付けぬまま、三叉神経を焦がす電流の如き痛苦への怨嗟が胸中を占め )
…ッ、……どう、したって、こんな時に──ああ!最悪だ、こんな、最低の、ふざけるなよ、この、……!
54:
「墓守」 [×]
2020-11-15 10:27:23
うわっ!な、何だ今の音は…まさかルカがまた倒れて……?マズいぞ打ち所が悪いと大変な事になる!おい!しっかりしろ、大丈夫か!?
( 完全にドアを開く前の不穏な音。何かが床に転げ落ちた衝撃音と、紙屑の乾いた音と、薄くて脆いガラスのような物体が割れる音と。何れも緊急事態が発生しているのを本能に悟らせる警告そのもので。遠慮は瞬時に捨て勢いよくドアを開け放ち、靴が雑多を踏み付けるのにも構わず友人のもとへと駆け寄り。苦痛に歪む表情と不安定な呼吸はどう考えても例の頭痛に見舞われているからに他ならない。このまま行けば意識レベルの低下による二次の事態を招いてしまう、咄嗟に冷静な対象が出来れば多少は救われるものをパニックを起こし、慌てて周囲に鎮痛剤が残っていないか目視で確認。駄目だ、物が溢れ返り過ぎて探すにしても本人が危ない。これは自ら医師の元へ連れて行かなくてはどうもしようがないのでは。先ずは背中を摩り声をかけ続ける事で昏迷ないし昏睡には到達させまいとして )
おい、ルカ!無理するな力を抜け、クソッ退け邪魔だ、あっちへ行ってろ!あんたをダイアー先生の所へ連れて行く、触るが悪く思うなよ。
( 床に散らばる無機物を足で蹴飛ばし、最初に友人の身体を安全に預けられる場所を確保。次にすべきは患者の搬送だ、本来ならば転倒による強打が予測される場合は脳震盪の可能性を考慮して"素人が患者を動かす行為は禁止 "されるものだと知ってはいる、だが担保も手を貸してくれる人間が近くに存在しないのも理由で、職業柄決して萎びてはいない筋力をもって友人の位置を調整した後床からその身体を抱え上げようと身構え )
55:
「囚人」 [×]
2020-11-15 12:04:33
──っ、触るな!!…ア、ンドルー?す、すまない……そこの抽斗の三番目に、……鎮痛剤があるんだ、二つばかり飲ませちゃくれないか。
( 例えるなら、脳漿に無数の電極が犇いているような感覚。ぎりぎりと歯を食い縛り、僅かに残った冷静な判断力で呼吸を努めて落ち着ける。あまりの痛みにじっとしていられない。周囲に気を配る余裕も無いまま、背に何者かの手が触れるや否や本能的に声を張り上げ。直後、突如として視界に入った相手が友人であると辛うじて特定すれば、激痛の最中淡く滲んだ罪悪感に声が震えた。導火線の如く理性を焼かんとする火の手を、意志という名の精神力を以て無理矢理押さえつける。文字通り這い蹲って縋りつき、震える手を持ち上げて袖机を示して )
……駄目だ!医者の所は!ひ、抽斗の、三番目だから……ッ、ぐ、──あるんだ、机の……痛み止めがさ……大丈夫だから、た、頼むよ、なあ、連れて行かないでくれ……お願いだ!
( 現環境では必然的に担当医となる参加者の名を耳にした刹那、偶発的な災害に見舞われた頭の奥に一片の記憶がちらつく。彼女が医師の責任において投与する薬剤は即効性で、地獄の苦しみからものの数分足らずで己を現実に引き戻す救済の具象だ。とはいえ、福音の先には大きな副作用が待っている。この身を蝕む痛みと一緒くたにして、前後数十時間の記憶までもすっかり取り上げてしまうのだ。様々な可能性を考慮した後、最終的に医師の元への搬送という結論を導き出した彼は正しいのだろう。床に倒れていたのが他者であったなら、自身も同じ判断をした筈だ。にも関わらず、死にも勝る忘却の恐怖に慄き、哀れっぽい眼差しで懇願する様は酷く惨めに違いない。極めて反知性的な判断な理由から合理的な処置を拒み、文字通り頭を抱えて嘆願を重ね )
56:
「墓守」 [×]
2020-11-15 13:35:25
気にするな、驚かせてすまなかった。抽斗だな、っで、でも耐えられるのか…?ま、まっ、また、分かった取りに行く。
( 努めて冷静に、感情は見せず穏やかに。声を張り上げて拒絶したくなるのも無理からぬ状況と知っていれば自ずとそうなるだけ。示された方角を目で追ってみたものの、鎮痛剤を服用する前に脳の血管が破裂してしまいかねない逼迫した状況下において、急患から目を離して良いものか迷い全身を竦ませ。主よ哀れな魂をどうかお救い下さい、癒しの天使を友人の元へとお遣わし下さい、私が彼の分まで信仰心を貴方に捧げます…必死に神に祈り片手は首元の十字架を強く握り締め、もう片手で背中に今一度触れることにより了承の意を表して )
分かった、分かった!止める、大丈夫だ手を離したぞ。馬鹿め、あんたが望まないことを僕が無理にすると思っているのか……少しくらい黙ってろ。薬を飲ませるには、あったこれだな。水なら洗面台に、待ってろよ直ぐに飲ませてやる。起きれるか、ゆっくり───慌てるな。ッすまん、ルカ。
( 本音を言えば酷く恐ろしい、何故なら一歩間違えれば彼の将来を台無しにする立場に置かれているから。死んだ者は黙していても生者は息絶えるまで苦悩を訴え続ける。友人は何度この悍しい発作に襲われなければならないのか、壮大な夢物語を容赦なく遮断されながら。嘆願に気圧され何度も頷き返し、殆ど気絶に近しい意識混濁を示す彼をそっと床へ戻してやり。さあ、ゆっくりはしていられない。指定の抽斗を乱雑に探り目的の錠剤を見つけ、次に水分となるものを求めて汚れたグラスを手に洗面所へ突入。そのまま丸ごと与えた場合、誤嚥による二次災害が見込まれるような。咄嗟の判断で錠剤を砕き友人の口に無理矢理押し込み、グラスから直接飲める状態ではないのを考慮した上で、加えて彼の男性としての尊厳を尊重した上で、己の口に水分を含めば間を置かず友人の口を塞ぎ液体を流し入れ )
57:
「囚人」 [×]
2020-11-15 17:34:45
……いッ、ウ、ぐ……もう、……ッうんざりだ!嫌なんだよ、嫌だ、思い出さなきゃいけないのは……早く薬を飲まないと……畜生、ああもう痛い、痛い!許し、──!
( 溶け出した正気は脂汗としてじっとりと額に滲み、血の気の引いた?を伝う。耐え切れなくなった皮膚がぶつりと音を立てるのも構わず、更に強く唇を噛み締めた。痛い、苦しい、耐えられない。見えない稲妻に中枢神経を切り裂かれながら尚も意識の手綱を握っていられるのは、暈けた視界に彷徨く人影が己に救いを齎す存在であると確信すればこそ。混濁する精神の奔流に翻弄されながら、"彼"に関する記憶を手繰る。彼は、君は私の…果たしてなんだったか。生まれてこの方敬虔な信仰心とは無縁だったが、常人ならざる姿を取った彼は天上に座す神の使いに違いない。この際神でも天使でも、それこそ悪魔だって構うものか!救済への激しい希求から遂に寛恕を乞う寸前、乾いて切れた唇を塞がれた。部屋に谺す患者の声はぱたりと止み、沈黙に見守られる中流し込まれた錠剤を素直に飲み下し )
……?……は、ははは!はは!元通りだ、全部!私も、ロレンツも!だって、天使に、キスされて──何を言ってるんだ?それより……どうにかしてくれよ、頭が割れそうなんだ、痛くて……。
( 体温が離れて尚も呆けた表情を晒して黙り込む。然しそれも束の間、今度は面白くも無いのに笑いが込み上げて止まらない。遂に救われたのだという奇妙な確信が膨らみ、弾けて消えていく。眼前の光景をはっきりと捉えられないのは、生理的に滲んだ涙の所為だろうか。一人騒ぎ立てていた狂人の喧しさは徐々に鳴りを潜め、後に憔悴しきった男が残された。虚ろな瞳を彷徨わせ、覚束ない目線の先にようやく捉えた"太陽"。赤い、美しい西日。この目に映るのが日没なのだとしたら、一体今は何時だろう。分からない。何も考えられないし、考えたくない。頭蓋の内側の駆け巡る痛みから逃れたい一心で、友人の瞳に恒星を重ねて手を伸ばし )
……助けてくれ、アンドルー……。
58:
「墓守」 [×]
2020-11-15 19:54:04
僕は天使にも悪魔にもなれる、あんたがそう思った通りに捉えてくれていい。───おいで、ルカ。貴方に投げられた石礫を私も共に身に受けましょう。流された血の分だけいつか貴方は誰かを救える時が来ます、今は辛抱なさい。神は貴方の苦しみを決して見捨てはしないのです。貴方が倒れた時、彼は貴方を背負ってくれるでしょう。側にある光を忘れては駄目、辛い時は私を思い出しなさい。可愛い子、私の宝物。誰よりも貴方を一番に愛しています。
( 地獄の業火に焼かれても尚、友人が口にした名は"アンドルー"だった。一旦記憶がリセットされてしまった際、確か必ず"クレス君"に戻っていたと思われる。嗚呼、死という救いにも縋れぬまま呪いを受けているにも関わらず、この名を手放そうとはしなかったのか。ひび割れて血が滲む唇を優しく拭い、髪に隠された右目は隙間から純粋無垢な魂を、左目は消えそうに燃え続ける命の燈を捉え。もしも天使になれるならば彼を守護し導く存在となろう。もしも悪魔になれるならば汚れた記憶を喰らい幸せな妄想のみ延々と与え続けてやろう。淡々とした口調で囁いた後伸ばされた手を取り、そのまま抱き寄せ背中を撫で続ける間、かつての母の記憶を辿りその無償の愛を模倣して。衰弱した発明家から垣間見る本質は普段の彼からは一切想像がつかないものだ、死期が近い者は丸くなるというが、生い立ちや故郷は問わずに人間の根本に在るエネルギー体は赤子の如く極めて無と等しいものだったとは知らなんだ )
馬鹿だな、僕は馬鹿だよな。あんたが死にそうな程苦しんでいるってのに呑気にあんたに名前を呼ばれて喜ぶなんてさ。忘れる事を当たり前にしようとして悪かった…あんたは僕を理解者だと言ってくれたのに、実は全然分かっちゃいなかったんだ。クソッタレは僕の方だよな。
( 聴こえていなくても構わない。寧ろ聞き流すべき内容だ、非常に下らない戯言なんてものは。どうやら入浴だけは済ませたらしい湿っぽい髪の香りに鼻腔を擽られ、己よりも幾分か小柄な体躯に収められた柔い部分を撫でるような調子で言葉を紡ぎ。今度こそ絶対に、何があろうが必ず、一番の友人に相応しい人間になりたい。此れ以上は望まないから友人が必要以上に苦痛を感じなくても生きていける時間を与えて欲しい。彼が削ぎ落とした箇所に己が肉付けして、また研究に試合にと全力を傾けられるようにしてやらねば。固い誓いを胸にそのまま動かず緩和を待ち続け )
59:
「囚人」 [×]
2020-11-15 22:02:02
( いつまでも沈まぬ太陽は揺れる灯火となり、やがてコーラルレッドの瞳として像を結んだ後、人ならざる存在であった筈の彼は見知った友人へと姿を変えた。否、彼は元々人間だ。その背後には後輪も翼も無い。塗炭の痛苦にとうとう耐え切れず、ひとでなしとして凄惨な差別を受けた彼をあろうことか人外に重ねてしまったのだ。脈打つような痛みの中で人非人の所業を悔い改める前に、柔くやさしい声に包まれて瞬きを繰り返す。子守唄の如き穏やかな調子で紡がれる言葉が何を意味しているのかは終ぞ理解出来なかったものの、自分は赦されたのだという確証を得た。大脳の内側に空気を震わせる程の雷鳴を轟かせていた激痛の波は徐々に引いて行き、今は遠雷のような疼痛が残るばかり。既に嵐は去った筈なのに、掴みどころのない感情が涙腺を刺激する。見据える先に愛すべき友の姿を捉えたまま、溢れ出る涙を流れるに任せて )
──もう、大丈夫だ。ありがとう、君が私を助けてくれたんだな。にしても、はは、私はどうして泣いているんだ?何も悲しくはないんだが……いや、違う。悲しいんだ。でも、何が悲しいのか分からない。
( 徐に身を起こし、紅潮する頬に幾筋か流れた悲哀の跡を乱雑に拭う。周囲の状況から鑑みるに、相当な醜態を晒してしまったのだろう。心優しい友人のこと、己の惨め極まりない姿を目にして大慌てで処置を行う彼の姿は想像に難くない。遣る瀬無く胸奥を支配する哀愁の影に戸惑いながら、未練がましく神経を刺激する鈍い痛みに米神を押さえ。何か、とても大事なことを忘れてしまった気がする。どんな方法論や計算式にも勝る大切なもの。失われた記憶の空白を引き摺り続けることはとうの昔に止めたつもりだったが、厭に引っ掛かる。若しかすると、現状の研究を飛躍的に進めるようなアイデアだったのかも知れない。持病に葬られた記憶を惜しんで嘆息を一つ、無念を断ち切ると改めて口火を切り )
にしても、何か用があって私を訪ねて来たんだろう?悪いな、介抱までさせて。大変だっただろ、ああいう時の私は手が付けられないから。アンドルーには改めて礼を、……"アンドルー"?なあ、私は君をそう呼んでいたよな?
60:
「墓守」 [×]
2020-11-15 23:12:34
いや、偶然居合わせただけだ。僕は何もしていない…泣いていい時は思いっきり泣くのもそんなに悪くはないぞ。まあそうだな、あまり泣き過ぎてもまた頭痛の種になるとは思うが。涙の理由に名前なんて本当は必要ないだろ、気持ちをすっきりさせる為にあんたの目が流し始めたんだろうさ。
( 恩着せがましい気持ちでやった事ではないのは紛れもない事実だ。そう、他者を慈しむ気になれる時は百回中一回訪れるか訪れないかの程度に過ぎない。元来己は利己主義且つ死者を冒涜する守銭奴なのだから。こうやって予防線を張っておかなくては友人はまた要らない気を揉む羽目になりかねないではないか。泣き腫らした瞳に映る男は情けなくも友人への情を引き摺っているらしく、肩を固く撫でると気休め程度の言葉を投げ掛け。涙に揺蕩う彼をもっと温かく、もっと愛を込めて慰められたらどんなにか良いだろう!そうしなかったのは偏に危うく貰い泣きをしそうで、先程まで頭痛に悩まされていた友人を前にして子供のようにわんわん喚く寸前だったからだ。感情を爆破させて、彼が彼自身を癒すのを邪魔したくなかったからだ )
謝るな。そんな事より完全に治まるまでは出来るだけ安静にしておいた方がずっと良い。……そうだよ、僕は"アンドルー"だ。良い名前だろ。用はこれから果たすつもりだ、見ろよこの汚い部屋を!何だこの豚小屋は、脱いだまま放置していたら虫が湧くぞ、もう湧いていても可笑しくないじゃないか。全く…仕方ないから片付けてやる。
( 誓いは貫き通す、晴れ晴れとした表情で祝賀会を思い描いた天才を本人が忘れようとも己は忘れまい。やや毅然とした態度にて謝罪も気遣いも遠慮したい意向を示し、さっさと切り替えていくつもりだったのに。確かめるように、探るように、恐る恐る名を呼ぶ口振りに再び感傷が込み上げ目に涙が盛り上がりそうな感覚をおぼえ。駄目だ、泣いては困惑させてしまう。ならば笑ってみせるが吉。したり顔を浮かべる裏では心がさめざめと泣いた、少年の姿のままで。約束とは敢えて違う用件をでっち上げ、我楽多と呼んでは失礼だが用途不明の物体を次々に拾い集め、序でに匂う布製品を籠に押し込め整理整頓に勤しみ )
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