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新撰組〜壬生狼と呼ばれた者〜【NL/戦闘/ほのぼの日常】/587


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517: 水上 五郎 [×]
2018-03-20 00:14:32

>大河さん

『ひ、ひ』
(固く目を閉じ、着物が汚れるのも構うことなくしゃがみ込む。数えようとして声が詰まって震える。数えなければ殺される。心臓が早鐘を打ち
「ひい・・ふう・・・みい・・・よお」近付いて、復唱を促すように数を数え始める。打って変わって子供を宥めるように穏やかな声であった。
『ひぃ・・・・ふぅ・・・みぃ・・・・よぉ』どこか安心して女は声を連ねる。数えを止めることのない女から離れて気配を消し。脱走した隊士を追い掛けて水車小屋の畦道までたどりついた。二人が追いかけている限り逃げることは出来ない。
『たっ助けてくれ!』血を吐くように隊士は叫ぶ『俺にはっ、母がいる・・・!俺は孝行すらできてないんだ!せめてっ、顔だけは!
頼むっ・・・!見逃してくれ・・・・!』絞り出した声からは故郷の母への想いは真であろう。親への情を訴え、追っ手が心を動かしてくれないかと助かる糸口を探したのであった。
それは、水上五郎にとって無意味なことだった。
親の尊さも温もりも知らぬ身にとっては。
刀をすらりと弧を描くように抜けば、説得は通用しなかったことが目に見えて、隊士も刀を抜く
二人は交差した。ひざを着いたのは逃げた隊士たった。覚悟を決めた隊士は刀をおのが腹に向け『じ、ごくで・・待つ』敗者は腹を横に切り、追っ手は介錯する「ああ」首の皮一枚とは言えなんだが失敗しなかった。刀の血を懐紙で拭い、水車が流す水に捨てる。懐紙はどろりと溶けこんだ。柳の木の下はあまりにも生暖かい風かふいていたのだった)

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