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個人用・練習用
自分のトピックを作る
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物草 惣兵衛 [×]
ID:c196a580b 2017-12-01 14:09:04
少女の声はどこか焦燥していて、切羽詰まった様子で見上げるように嗄れた老人を見つめる。
「猫…?」
二人の老人はまた顔を見合わせた。
すがるように訊いてくるいたいけな女の子の悲しげな面持ちに、ジョセフはなんだか胸が締め付けられる思いがした。
「猫を探しているのかい?」
女の子は視線を落としてコクリと頷く。
ダッフルコートの胸の前で組まれた小さな両手は、自分の指を抓るようなせわしない仕草を繰り返していて、それだけでも彼女の心配げな気持ちが伝わってくる。
「飼ってるわけではないけれど、おうちに毎日遊びにくる猫が昨日から見当たらないの」
少女はジョセフに向き直り、小さく息を吸い込んで捲し立てるように言葉を続ける。
「黒猫のほうはジル。虎猫のほうはマーロ。名前を呼べば尻尾を立てて近寄ってくるわ。ほんとはおうちで飼ってあげたいんだけど、ママがアレルギーだからダメって…」
それからまた首をもたげて、泣きそうなくらいか細い声で呟く。
「きっと、どこかでおなかを空かせてると思うの…」
あ、そういえば…、と、赤い顔をした白髭の老人がポンと手を打つ。
「黒猫っていやあ、今朝こいつが工場で見たぞ。シャツに絡み付いてて…」
慌ててジョセフは白髭の歯抜けた口を手で塞いだ。
一瞬、廃工場で見た黒猫の凄惨な姿が頭を過る。
そんな話を子供に聞かせていいわけがない。ましてこの子は、大好きな猫を心から心配して、こんな路地裏にまで探しに来ているのだから。
「じ、ジルとマーロだね。わかった、探しておくよ」
白髭の口を押さえながら、老人は目尻に皺を作って女の子に応えた。
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