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  _ 偏 食 家 の 優 雅 な 晩 餐 /247


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158: はく [×]
2017-05-05 01:47:15





水面に浮上する様に深い微睡みから覚醒する。次期に末端や至る場所から訪れる、痛みと言う名の神経の訴えを可能な限り知らない振りをして樹は静かに瞼を開けた。色彩すら捉える事も困難になった眼を僅かに動かした先に、映るものは緑に蝕まれた右腕。実際に在る筈の手首から先は、以前より大分落ちてしまった視力では認識が出来なかった。
鈍い感覚と苛む痛みの中、眼中に手繰り寄せる様に関節を稼働させ一分近く。額には脂汗が滲み、呼吸が浅くなる。

「 …、は……ぁ、 」

掠れた吐息を漏らしつつ、漸く視界に収まった右手を樹は愛おしげに見詰める。注視する場所───薬指には玩具の指輪。いつの日か、特別な相手に貰った大切な宝物だ。指輪を起点とし右手全体にじわりと暖かな温度が広がり、まるで掌で包容されている様な感覚を愚鈍になった脳味噌が身勝手に知覚する。…そんな訳ないのに。既に感温する能力を削がれた事も忘却の果てに、樹は幸福感に包まれた侭双眸を閉じた。同時に、真白なベッドシーツの上、どさりと音を立て力無く右腕が落ちた事を樹は知らない。






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