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平行世界の整備兵/2


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■: ジュダイクス [×]
2016-12-02 19:13:31 

あらすじ。

都内の高校に通う日向光昭(ヒュウガミツアキ)は林間学校で向かった湖のほとりで足を滑らせ、湖に転落してしまう。運良く湖の畔へと流れ着いた光昭が目を覚ますと周囲にはあまりにも巨大な植物と、その影から除く巨大な生物の姿を目にする。そのうちの一体が光昭に襲いかかり、死を覚悟したがその瞬間はこなかった。恐る恐る目を開けた光昭の瞳に飛び込んできたのは一刀両断にされた化物と血濡れの長剣を持つ巨大人形兵器の姿だった。


1: ジュダイクス [×]
2016-12-02 19:28:21

プロローグ

 都内の高校に通う高校一年生、日向光昭は池の畔で糸を垂らしていた。彼の通う高校では夏季に林間学校が存在しており、生徒の自主性を尊重する校風のその高校では主食以外の食料は現地調達とされていた。その為、夕食のおかずを確保するために魚を釣っているというわけだ。

「ふぁ……ぁ、かからねぇなぁ。っと」

 光昭は釣りは素人である。水面下の釣り針についた餌だけ食われて魚に逃げられているなど気づいた様子もない。長時間座り続けてこった体をほぐそうと立ち上がると、凝り固まった体が動き出した筋肉に順応できず、バランスを崩すのは至極当然のことだろう。加えて光昭は自然に対しても素人であった、周囲は草むらであり、足元は見えづらい、にも関わらず見当ハズレに動いたために隠れていた草の根に足を引っ掛けさらにバランスを崩し、落ちた。

 バシャン。という水音に周囲の生徒は反応する。大きな石でも落としたような水音だ、誰かが落ちたと察するには自然に疎い彼らとて容易いことだった。光昭は水中で上下がわからぬままもがいている。誰かが大声で教師を呼んでいるのがかろうじて分かる程度だ。先刻湖で悪友と遊んでいた時にはこれまでの深さではなかったと脳の片隅で考えるも、ついに閉じていた口が力を失い、空気がハイから漏れ出し……気を失った。

2: ジュダイクス [×]
2016-12-02 20:07:16

プロローグ2

「ッ!ッゲッホゲホッ……ゲホッ……」


 光昭が気がつくと、そこは湖の畔だった。当たりは日が陰ってきており、木々が作り出す影が周囲に闇を作り出していた。器官に入り込んだ水を吐き出そうと、肺が咳き込んでいる。と同時に光昭は疑問を覚えた。昼間見た光景に比べ、明らかに木々が大きすぎた。太ももほどの太さしかなかった木々が今や人間の胴体なぞゆうに上回るほどの巨木となっていた。未だ途絶える様子のない咳に難儀しながら立ち上がると、周囲を見渡す。

 池の畔の輪郭は見覚えのあるような形状をしているが、周囲の木々や草むらは圧倒的に巨大であった。林間学校に使われている宿舎の当たりは鬱蒼とした森となっており、テントが張ってあった場所は腰ほどもある草むらであり、一切人間による手入れが行われている様子はない。

「おーい!草加ー!しゅうへー!ゲホッゲホッ……」

 友人の名を呼ぶも、周囲の木々にこだまする自分の声が響くのみで、返事はない。逆にむせ返って辛いだけだ。光昭の心を不安が包み込む。周囲の山野からは獣らしき鳴き声が響いている。日はさらに傾き、湖畔を夜が支配し始めていた。

「草加、修平、みんなどこ言ったんだよ……」

 不安に押しつぶされるように膝を抱え蹲る。夏場であるにも関わらず、濡れた服から蒸発する水分が容赦なく光昭の体温を奪っていく。肉体と精神の疲労が睡眠欲という形で光昭を襲う。ウトウトとし始めたその時、唸り声が聞こえた。

グルルルル…………

 一つや2つではない。周囲の森に「何か」がいる。事前の教師の話ではこの周辺に熊は出ないと言っていた。しかしその唸り声は確実に自分より「上」から聞こえてくるのだ。必然的に自分よりも巨大な生物=熊を連想した光昭は咄嗟に腰に下げている鈴に手をかけた。しかし鈴の音など意に介した様子もなく。周囲から巨大な生物の気配は消えない。

「ヒッ……」

 情けない声を上げる光昭。その声に反応したのか森の中から巨大な影が躍り出てきた。暗くてよくわからないが、それは自分より遥かに大きいことだけはわかった。光昭はその光景がスローモーションのように感じた。走馬灯が脳内を駆け巡る。家族のこと、友人のこと、彼女のこと、次々と浮かんでは消えていく。叶うことなら夢であってくれ、夢であるなら覚めてくれ。そう希う光昭の耳に、凄まじい爆音が響き、次に地震、そして熱。

 脳の処理限界を超えた感覚が光昭の体を包んだ。恐る恐る目を開けた光昭はその光景に目を疑った。当たりは高校とした光に照らされており、上空には巨大なヘリが音もなく浮かんでいる。そして目の前に横たわる巨大な犬のような生物と、それを切ったと思われる剣を手にした、全高17mはあろうかという巨人の姿だった。

「なんだよ……これ……」

「おい!そこの君!大丈夫か!エーテルを消耗しきったのか?野犬相手に無防備なんて危険だろう!」

 光昭の耳に声が響く。聞き慣れた日本語。いつの間にか周囲には軍服を着た兵士が周囲を警戒した様子で立っている。それを見た瞬間に、光昭は人間に会えたことの安心感と積み重なった疲労が重なり合い、気を失うように眠りについた。

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