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1対1のなりきりチャット
自分のトピックを作る
21:
宇都木 密 [×]
2016-10-06 07:26:15
(次第に明かりは一つ二つと減っていき、角を曲がる度に墨色の薄絹をこれまた一つ二つ被せるが如く濃く深くなっていく暗がりの中へぼうっと家の瓦屋根が見える頃合いになっても抱いた子供はまだ眠らず、とろとろと声ばかり眠たげに詰まらせながらそうだ俺は我が儘なんだと大きな事を言うばかり。我が儘もピーチクパーチク喧しいのも、嗚呼、とっくに全部知っているつもりだと胸の辺りでひっそり呟き、帽子を介さず燦燦降り注ぐ瓦斯灯の火に目を細めれば微かな皺が目元に生じて夜より黒い彼女の瞳に苦笑めいて侘しく映る。そうすると何やらこの根暗の男と五月蝿い少女は互いの酸いも甘いもすっかり知ってしまったような、陳腐な喩えに頼って良いなら親子か兄妹か何かのような、か細いけれども決して切れぬ糸で結ばれてしまって早数年という関係に思えて仕方がなくなった。そうしてその糸は小指に結ぶ赤い糸ほど美しくはなく、腐れ縁と呼ぶほど汚れてはいない。臍の緒。きっとそれだと、それこそ赤子みたくひしとしがみついている手足の思いの外強い力加減にとんと腑に落ちた心地で納得するが、それにしちゃあ衣食も玩具も別段要らぬとてんで子供らしくない事を言う様子に僅かばかり眉根を寄せ。この四刻半ほど、目も口も手足も一杯に広げてあれもこれもぜーんぶおくれと言ってのけそうな彼女の奔放ばかり目に焼き付けていたせいでその一言はどうにも不自然な遠慮に聞こえ、今は遠い見世物小屋の安っぽい極彩や、連中の人を人とも思わぬ下卑た商売根性を思うと少しでも食い扶持を減らすべく芸同様覚えんでも良い我慢をそうと知らずに仕込まれていたのでは、などと憎らしく疑わずにはおれず。子供が金の心配なんぞするもんじゃない、どうせ放っておけば薄汚い酒と煙草に消えるだけの金なのだから。重怠い舌に鞭打ってそれだけ教えてやるべく口を開けばくっついて乾いた唇の剥げる音だけか細く響いて、それっきり。垣間見せたまどろみはどこへやら、着物を掴んでいたはずの小さな手がまたペタンと頬に触れたのを合図と歯を見せてわあわあ声を発する勢いに圧されれば何か言ってやる所の騒ぎではなく、喉がギュウと声なき声を上げて締め上げられる。離さぬ逃がさぬと、現にどんな魔術を操ったのか視線を左右に逸らすお得意の自己防衛さえ封じられ真黒の瞳に映る己と対峙させられながら言い聞かせられるのは呪いめいて強く色濃い言葉。考えてみれば御伽話も怪談も、人を捕らえる恐ろしい化け物は皆、美しい姿形をしているものだ。ここへ来てようやくふっくらと柔い輪郭の上へ綺麗に並べられた猫に似る大きな目と小さな鼻の形良さ、血色良く艶やかな肌が織り成す彼女の子供らしい美貌というものを真正面から確り映してまず生じずる感想がそれというのも可笑しな話と承知はしているが、今度ばかりは怯えでなく賛辞のつもりでそんな事を考えつつ、いつの間にやら憑かれたように語られる一言に結んで開いて形を変える赤い唇に魅入られており。あまりに魅入られたものだから、不穏な呟きを虚空に残して彼女の言葉も就寝の挨拶も済んだ事に気づいたのは唇に何か柔らかく熱いものが触れた後。「……あぁ」と、まずは喉につかえていた声を吐き出して一つ相槌とし「お休み」次に力の抜けた鸚鵡返しを改めて返事として丸まっていく背中に送って、そのうちすうすう風に混じって聞こえ出す寝息を乱さぬようコトリ。また、コトリ。ゆっくり下駄を引きずりとうとう夜道を歩き抜き、闇の吹き溜まる玄関潜って障子戸開いて畳の上に敷きっぱなしの布団へゆっくり子供を寝かしつけ、それから、己一人静かに廊下へと戻り、何だかもう立っていられないくらいの気持ちで壁に背中を預けてそのままズルリズルリと滑り落ちる。ほとんどうずくまっているのにどうにも足元が覚束ないと思えば俯いた拍子に脱ぐのを忘れて履きっぱなしの下駄に気付き、途方に暮れた。確かに物書きの端くれとして空想し、さも見知った事のように綴った経験はあるけれども、しかし、接吻だなんて。瞬き一つの合間に起こった出来事に得意の思考も何もかも目茶苦茶に引っ掻き回され、ただ白痴みたく薄ボンヤリと板張りの床に散らばる砂粒など見下ろしていても体の中の腸から何からぐらぐら揺れる心許ない気分は一向に収まらず、一先ず下駄をたたきに戻してからも眠る彼女の側には何故だか戻れぬまま台所へ向かうと乱された内部をキチッと整えるべくなるたけ静かに顔を洗い。そうすると落ち着くには落ち着いたものの冷水は顔面を覆う熱をより際立たせるばかりであり、ふと見上げた窓に映る己の目の辺りが薄く赤らんでいるのがまた酷く嫌らしく感ぜられ、きつく睨んでやろうとするがどうも表情を形作る筋肉に力が入らず諦めて今度こそ部屋へ戻らねばときびすを返す。少し、驚いただけだ。照れや羞恥こそあれ幼子の口づけを喜んだ訳では決して、ない。そう誰に聞かせるでもなく必死に言い聞かせながら。再び障子戸を開けば相変わらずスヤスヤ眠る子供の姿がそこにあり、こちらも履かせっぱなしの草履を脱がせて脇に寄せ、いくら血まみれであろうと着物には手を出せず仕方なしにそのまま掛け布団を首辺りまで被せてやって「……艶」挨拶の代わりに今一度名を呼べばまだ右往左往する心境にはあんまりに刺激が強く、そのうち熟れたような色合いの豆電球が悪いのか、ピンと長い睫毛を呼吸に震わせて眠る顔がどうにも子供らしさとはかけ離れて妖艶に見えて来たもので慌てて枕元から立ち去るとひしゃげた座布団二枚を少し離れた場所に並べて寝床を作りさっさと背を向けて寝転んでしまい。目まぐるしい表情に些か掻き消されがちだった艶やかさというものをまざまざ見せつけられたせいか、もしくはただ家に他人がいるという不慣れ故の緊張か、なかなか寝付かれずに溜息吐いたり布団代わりの半纏を被ったりしばらくはあれこれしていたものの体の方はさながら地獄巡りを終えてきたばかりのようにくたびれていた為じっと身を丸めているその内にいつしか眠りへ沈み込んで行き。)
22:
艶 [×]
2016-10-06 17:29:06
(太陽が昇り、切らした電池を満たしたかのように瞼が開けば今まで経験したことの無い静かな、静か過ぎるそんな目覚めで。布団の柔らかさも暖かさも、見慣れぬ天井さえもが記憶を辿るのに足りない情報であり寝起きに愚図るそんな性質では無いらしく布団から少しだけ体を出せば窓越しに見えた空の色が深く蒼く、そうだ、と思う。自分は秋の始まりのような陽の光が翳める温かさを持ったあの蒼に焦がれて此処に来たのだ、昨日の事は余りに現実味が無い夢のような話だから今日もまた愉しい楽しい夜を迎えるぞと目を覚ますのがそもそもの間違いだと思い知る。とは言え、_彼は?布団は自分にはてんで大きさが合わない大きすぎる物、ガバッと布団を捲ってみても隣にはその姿が見当たらずに布団を持ち上げたその腕から力を抜いて。固まっていた体を解す様にぐぐぐ、と両腕両足を伸ばし簡易なストレッチを行ってから初めて目にするこの部屋をグルリ、目玉を回す様に眺めて。そこで離れたその場所に横たわる男の姿を見つければ、彼もまた体の大きさに合わない寝床なもので思わず笑い声が零れそうになり片手を慌てて口塞ぎと宛がって。布団から出ると鮮明に感じるのが肌にさらりとする澄み切った空気の心地よさであり、眩しい程に冷たさを孕み澄み切る初秋の日差しは自分のこれからを祝福しているのか将又最後の優しさか、むつかしい事は解からないがただ綺麗な朝だなぁで片づけるには勿体ないそんな秋の入り口に"ぶる!"と体を震わせて。生理現象として寒さにやられてか、それとも昨夜しないで寝てしまったからか膀胱が膨れ上がる様な尿意を覚えては顔を引き攣らせて部屋の中を今一度グルリと見回し。ペタペタと裸足の足で徘徊するも初めての家の中では何処に何が有るなんて見当付かず、これは不味いと意識したことで一層と増す尿意に腹部を抱えつつ扉の開け閉めが多いより確実な場所が有ると土壇場にて閃きを一つ。部屋に繫がる扉は他と同じだが、外に繫がる扉と言うのは他と違うのだ。無駄に動いて漏らしてしまう事を恐れつつ玄関へ足を向ければそこに転がる自身の履きなれた草履を見つけ雑な動きで足に纏うと一目散と外へ出て、一層冷える早朝の風に表情を苦いものにして家の影へ体を隠して男らしくも堂々と用を足し。買われたその日にお漏らしなんて恥ずかしいと間一髪だった事に安堵の息を小さく漏らしてから再び玄関の元へ足を向け、そこで初めて対面したのはこの家の圧倒するような立派さで。夢でも見ているような眼差しで捉えると大きな家を手を伸ばせばすぐ触れられるその場所に迎えているのに先ほど自分を温めていた布団だってそうだが全てが全て自分にとっては身に余る、全てが嘘幻とでもあるような感覚に至り「――でっけー」出る言葉はなんとも率直で蔓延る有触れた感想、出る時は必死だったが部屋の外と中をつなぐこの扉とてなんと大きい事か。今度は少しばかりドキドキと興奮を含みながらその扉に手を掛けて「――ただいまぁ」と此処が自分の家なのだと噛み締めるように、きっと彼を目の前にしてはまた余計な事ばかり止まらなくなってその一言を素直に言えやしないだろうから。と、言霊に思いを託すように呟いてはじわじわと込み上げる嬉しさに針で突いたような笑窪を作りながらニィと口角を吊り上げて。扉を確りと閉じれば今度は行儀悪く草履を右へ左へあっちらこっちらと脱ぎ散らかし宙を躍らせて、先ほど通ってきたその道筋のままに部屋へと戻り。スーと肺の中へ早朝、澄み切った綺麗な酸素を溜め込んでから頼りない座布団の上に横になる彼へ遠慮なく圧し掛かり「寝坊助みぃっけ!おはようヒソカ、朝だぞ!」早朝に外へ出た事で冷え切りひんやりと冷たい体で彼に体をくっ付ければ朝っぱらから黙ることの無い、寧ろ睡眠を取った事で目一杯に蓄えられた元気でハリの有る、言葉を変えるなら喧しい声でオハヨーオハヨーと繰り返し「綿を撒いたみたいな綺麗な雲の空なんだ!眠りこくって終わらせるんじゃぁ勿体ない」圧し掛かったまま覗き込むその顔は、眠る最中に夢から無理矢理引きづり出したそのせいか心穏やかなその面構えとは言い難くアハハとそれさえも面白いと笑い声を楽しげに上げて、猫がスルリと足元に入り込んでくるように彼の腹部側に体を滑り込ませれば「__ちゃっちゃと起きないと喰ってしまうぞ」鋭い犬歯をぽってり肉厚の舌で舐めればその行動に伴って唾液が口の中に作られて、冗談交じりの驚かしと見せかけて偽りない本心であるそれを投げかけると表情だけはあどけない悪戯っ子か、悪さを働いてはカラカラと笑って楽しんでいる悪餓鬼宛らと懐の中で寝転がったまま首を伸ばしてあんぐりと大きく口を開き、鶏宜しくと細いが確りとしたスラリとした体形に見合うような長めの美しいその首へ近づけて、ぽっこりと何かを埋め込んだような日に焼けない白い喉に印象を残すような喉仏をやれ目印、そう言わんとべろり、先ずは味見のように舌を這わせて真白な筒のようなその首に自身の顔の向きを調節しては自身が舐めた事で濡れ光るその首元へ歯型を付ける程度の力で歯を立てて)
23:
宇都木 密 [×]
2016-10-07 19:39:35
(寝覚めが悪いのは子供の頃から変わらぬたちで、いつだって重く纏わり付く泥の海からずる、ずる、とえらく時間をかけて引き上げられるような手間をかけてようやく目覚めるものだから、コケッコッコーとばかりに突然押し付けられた喧騒なんぞに反応できるはずもなく。鉛弾がこちらの耳から脳味噌えぐってあちらの耳まで突き抜けた。そう感じざるを得ぬ程痛い喧しさにようやっと両の瞼を開けばニコニコ笑う猫の瞳がそこにあり、はて、猫なんていつ拾ってきたのやら。未だ寝惚けて顔をしかめるが、そのうち何だって良いからもう少し眠りこけていたいと目を閉じては腹をくすぐるこそばゆい温ささえ手伝ってまどろみの海に今一度引き返す。しかし喉笛をきつく噛み締められてなお眠っていられる程鈍くはなれず、触れた舌の生温さは冷えた体に心地良いくらいだったのに、ゴリッという骨の軋む感触に総毛立って蚯蚓の如く身をよじっては息苦しさを吐き出すべく汚い咳を二度三度と繰り返し。それでようやく眠気も失せて、ついでに拾ったのは猫ではなく人の子一人であったと昨晩の事も何から何まで思い出し「――……お前、まだ昼にもなっていないじゃないか。」呆然と天井を仰ぐと冴々差し込む朝の日差しが目に刺さったものだから、あんまり久しぶりに見る午前の眩しさというものに思わず叱りつけるのも忘れて心底うんざり呻きを上げる。己はこの清楚な朝の空気や光が酷く心身に堪えるので、普段は日の光の弱まる午後になるまで布団に篭っているのだが今日ばかりは幾ら二度寝しようとまたガブリとやられて叩き起こされるのが目に見えており。しばらく半纏被ったまんまで鬱々悶えていたけれど、この子供を健全に育てるにはまず己が健全の手本と成らねばならぬという志。そして追撃を恐れる気持ちも僅かばかり胸に抱いてはのろのろ鈍臭く起き上がり「……まあ、朝が早いのは良い事だ。」今まで寝覚めにやあお早う!なんて言う相手は居なかったものだから、朝の挨拶はボソリと呟く一言で片付けてしまうとゼンマイの切れかけた玩具みたくのろまな動きで半纏に袖を通し。全く秋という奴は毎年毎年、足元へ雨水が染み入るみたいにひっそりやって来るからいけ好かない。お陰で気付いた時にはこんな風に手指がかじかんでいると、袖口に両手を突っ込んで窓越しのうろこ雲を恨めしく仰ぎつつも今日は物言わぬ万物へ悪態を吐いている暇など無く「艶」とまだころころ座布団の上を転がっている彼女が秋晴れにつられて何処かへ駆けて行ってしまわぬよう、名を呼んで関心を引き付けておきながら膝立ちのまま側の箪笥をゴチャゴチャひっくり返し始め。早起きしてなお今日中に片付くとは言い切れぬくらいに用件は山積みなのだ。西洋のナントカという哲学者共だってそうですけどね、あんたは兎に角やる事が無いから、脳ミソが暇潰しにとあれこれ悩んじまっていかんのです。脳へ思考する猶予を与えるべからず、用事でも何でも、何かあくせくやっていれば憂鬱なんざ生じません。いつか己の神経症を一蹴した誰かの言葉がうつらうつらする頭にぼうっと浮かび上がってくると、言われてみればその通り、今朝はまだ長い一日が始まる肺の潰れそうな絶望も何も生じてはいないと早くも子供の効能に感心しつつ衣類に手を突っ込んでまさにあくせく引っかき回す。シャツ。洋袴。くたびれた着物。どいつもこいつも双子がすっぽり収まるくらいに大きすぎる。欠伸混じりに手当たり次第に掴んでは放り、皆一様に暗色ばかりのそれらが畳へ一足早い枯れ葉模様を作り上げた頃ようやくめぼしい服を一つ引っ張り出して「まずはお前の着物を洗ってくるから、代わりにこれを着ていなさい。……男装なんざ気に入らんだろうが」我ながらよくもまあ取っておいたものだと、呆れと共に投げて寄越すは今や羽織る事さえ叶わないであろう薄紫の小さな着物とやはり小さな男児用の袴。確か高等、いや尋常小学校に通っていた遠い時代のその代物は一丁前に質が良く、たとえ親であれ他人の金が掛かった物は吝嗇でなく苦々しい後ろめたさから捨てられぬ性分故に箪笥の隅へと押し込んでいたのだが再び日の目を見る時が来ようとは。少々の埃っぽさに再び汚い咳が出るのと、女心を満たすはっとする鮮やかな色もリュウキンを思わせるビラビラした帯も無いのが些か気掛かりではあるが素っ裸で放っておくよりはマシというものだ。箪笥の方へ体を向けたまま、黒くなった血の張り付く着物を脱ぐように、脱いだら渡すようにとだけ手短に言うとどうもムズムズ落ち着かない心地で背後の彼女が着替え終えるのを待つ事にして。無論何か邪な想いがあって落ち着かないという訳では神や仏に誓って無いけれども、昨夜食らった接吻が心に妙な引っ掛かりをつくってしまったらしく「便所へ行きたければ先に連れて行くが、平気か。」咳ばらい一つして、不慣れであろう袴の事を考え平然と気遣いをしてみるだけでもいやに居心地悪く、固くなった喉からは寝起きの掠れ声と片付けるにはどうも不機嫌な声が出て。昨日、夜中に便所へ行きたいと叩き起こされても良いようにわざわざ隣で眠ったというのに結局彼女からは何の訴えも無いまま今に至る為、己の心配は至極当然のものと分かってはいても女児相手に下の話などする自分が酷く下卑た存在に思える眉間の皺はいよいよ深まっていき)
24:
艶 [×]
2016-10-08 01:27:32
――へへ。オハヨウ(三つ子の魂百までとは良く言ったもの、何かに歯を立てる事に喜びも安心感も全てひっくるめて得ていれば白筒のような喉に歯を立てる事で彼の命を自分の手に握り締めたような、規則正しく脈打ち音を鳴らす心臓をこの手でギュウと握り締めているような無邪気な愉悦を手に入れて。酸素を吸い込み肺が膨れる、この瞬間を彼が生きている事実が一層と自分の力加減一つで変わるのだと教えてしまい危い綱渡りに興奮を持ち。首に食らい付き伸ばした舌に触れるのは生きてる温みで甘みを一匙と加えたはんなりと塩辛い物、それを堪能するのは瞬き程の短い時間。猫の尻尾でも悪戯に引っ張った時のようだと、ぼんやりしていた彼が意識を鮮明にさせるのに合わせて身を捩り直ぐに逃げてしまい。まるで昼まで寝る事を当然と言う様な言い方にやんややんや文句を付けろと呻く彼に対して唇を開き、その文句は続く誉め言葉によってあっさり行き場を失えば起き上がる彼を視線のその先に追いかけながらバタバタと座布団の上で忙しなく足を動かし得意げなそんな表情で呟くほど小さいその挨拶に今一度ハキハキと返事をし。その後の動きもやれ一つと見逃すな、そう言う様に追いかけてポンポンと多くの衣類が宙を舞い放り出されるそれらを興味深く見やりつつ地図宛らと広がるそれらの傍にしゃがみ込み似たような色彩の着物をあっちもこっちもと指先で摘まみつつ「ヒソカは衣装持ちだなぁ。似たのばっかしだケド」これとそれの違いは何だ?右手と左手に似た着物を掴めばキョロキョロと顔を動かして、見れども見れども色の違いすら見分ける事が出来ずに手にした着物を再び床へ卸し。ガサゴソと何かを探していた彼が箪笥の中身を引っ搔き回すのを止めた頃、差し出されたのは彼が決して着る事の出来ない小さい物。まさに御誂えたような自分サイズの物、袴のそれは彼が着用している物と似た格好になることだろう。お揃い、そう気づくと爛々と瞳を輝かせてパアと歯を見せるように喜んだ表情を浮かべて「チビっちぇヒソカになれる!」其方に関心を引かれてしまえば続く男装と言う言葉を聞き零してしまって、着替えをと彼が言うのと粗同じタイミングにてバッバッと脱ぎ捨てるように来ていた着物を脱ぎ棄てて。初めて着用する衣類に腕を通せば新鮮な気持ちになり、その中で便所と言われれば"あぁ"と思い出したように短い声を上げ"これで合っているのか"と疑問を持ちながらキュと袴の腰で紐を結び「大丈夫!さっき外でしてきた」何時もの事と思っている為あっけらかんと答えて、今まで自分の来ていた着物や帯を一纏めにぐちゃぐちゃと団子を作るように固めて「便所の場所わかんなかったから外でして来たンだけど、ウチってすげーでっかいのな!」背中を向けていた彼の隣に並べば今此処に当たり前と立っているがこの家はなんと立派なことか!驚いたそれを素直に身を乗り出し言葉にして「…はい!」と持っていたその塊を差し出し押し付けるようにグイグイと手渡して、ジャンと披露するように貰った着物を見せれば「ヒソカみたいだろ。俺は可愛いからサ何でも似合っちまうんだ」ちょん、と袴の布が足首を擦ると丈の長い袴も、普段は捲り上げて手首に掛かる事のない布の感触もなんだか擽ったくて面白く。じゃんじゃん!、見てくれ見ておくれ!そう言わんばかりにクルリクルリとその場で数回まわって見せて、落ち着きなく動いていたかと思えば両腕を広げてマネキン人形のように身動き一つせずジと止まり、その姿を見せつけるだけの為に口を閉じて確りと立つこと数秒と姿勢を崩さずに保っていては、その表情は満足そうに抑えても抑えても笑みが口角に浮かび、だんまりをした為くっついた唇を舐めて覗かせる真っ赤な舌を其の儘大きくぺろりと出して。高い位置で髪を括るリボンを外せばハラハラと長い髪が肩に掛かり胸元に触れ、興奮する一時の感情を抑える事も無ければ長く喋る為と酸素を溜め込み「ほら、ほら。さぁさ!俺が満足する褒め言葉を一つで良いんだ、物書き旦那の脳味噌の、言葉の海からひとつ掬ってくだしゃんせ。有り触れた言葉なんかじゃ物足りない!可愛いフタナリ、初めて性に見合ったぞ」綺麗な衣類と言うよりも何よりと、初めて与えられた男児のそれが今までにないと気分を高めて睫毛を逆立てる程大きく瞼を持ち上げて恍惚とした目付きで彼を見上げ、こなれた口上は慣れ親しんだもの。此処を安い裸電球のその下と錯覚させるほど弾む声色で自身の胸元でパチンパチンと拍手を繰り返し。うつろ眼の帰り道、彼が喋る事を不得意としていると語ったその時に文字で表すことは出来ると言ったその一言を思い出して、合っているかどうか分からないが彼が物書きだと勝手に推測をした言葉を述べて。高い高いその鼻から切り込みを入れたような鋭く研ぎ澄まされたその目を見つめ、そこには糊付けでもされたのかと重たそうに閉ざされる冷やかなほど薄い唇が開いて自分にどんな言葉が送られるのだろうと今か今かと、犬畜生ならば涎塗れの口元で尻尾を千切れと振り回す、そんな期待を隠すことなく返事を待って。)
(密さんの持つ色味の男児袴を想像するとなんと可愛いことかと!着る艶をラフですが描いたので晒します…!落書きの勿体無い病ですので返信不要です…!https://pbs.twimg.com/media/CuLY5UNUAAEHyl_.jpg)
25:
宇都木 密 [×]
2016-10-09 08:07:22
(慣れぬ着替えに手間取っていやしないか。そんな純粋かつ健全な配慮により衣擦れの音に耳を立てれば視線はゆらりふらりと畳の上から箪笥の木目をさ迷い歩き、わざわざ背を向けているというのに何処を見ていれば良いのやら皆目見当付かない始末。そうやって妙にドギマギしている所へ"外で用を足してきた!"なんて屈託無く言うものだから己は内心吃驚仰天、仏頂面はそのままとはいえ心臓がひっくり返るくらいの気持ちで、決して見るまい覗くまいと前へ向けていた首さえ動かしてしまいながら「お前、外だなんて、今時はしたない、……」此処は内も外も無く皆半脱ぎの、それこそ人も家畜も違いは無しと泥に塗れて垂れ流す片田舎でなく、文化にハイカラモダンと品良く取り澄ます大正の街である。それでも如何にも阿呆の鼻垂れ小僧が学校帰りにそこいらの塀へ小便を引っ掛けていく事はあるけれど、しかし女の子供は……そもそも何処に悪漢が潜んでいるとも知れぬというのに……。そんな風に何から説教したものかと開けた口をむやみに引き結んだり、また開いたりやっている内にこれまた呆れざるを得ないクルリと丸まった着物を押し付けられるといよいよ言葉が喉仏の辺りでつかえてしまい仕様がなくなって。まあ、良い。一先ずは彼女が腰を据えられる十分な衣食住を与え、それから小学校の時間割のように本日は常識について、明日は世間が女に求むる作法についてとおいおい教育を施せば良い。困惑故に眩暈さえ覚えかける己にそう言い聞かせ、ようやっと振り返るがそこに居たのもまた己の心を悩ませる子供の姿であった。物を美しいと感ずる気持ちは決まってどこか霞のように淡く、或いは日差しのように眩いが柔らかく、確りとした感触も無く心に届くものである。けれどもお揃いだろう可愛いだろうと己のお古を翻しながら活発な独楽のようにくるくる回る姿を目にした途端、その美しさは確かな実感を伴って己の心へストンと落ちてきた。いっそ小気味良い程の美麗。本来少女には似つかわしくない退屈な無地が、地味な袴がゴチャゴチャと華やかな着物よりもかえって彼女の姿形の良さを浮き彫りにしている――否。それだけでなく、男の装いならではのカッチリとした仕立てや静かな色味が柔さの中にも真白な骨の硬さが透けるすらりとした首や手首の艶めかしい曲線を、ただくりくりして愛らしいばかりではない瞳の明るい強さを際立たせ、男装姿に妙な華と説得力を添えていた。今までの装いのほうが嘘でこちらの格好が正装であると言われれば躊躇わず成る程と頷いてしまうくらいに。と、こんな調子で胸中延々と書き綴っていてもいざハイ、ご感想は?なんて催促されては途端に溢るる語彙の水源も臆して枯れ果ててしまい、更に悪い夢と頭の隅へ押し込んでいた例の見世物舞台と全く変わらぬ調子でパッチンパッチン爆ぜる手拍子にせがまれたのでは不器用な舌も萎縮するばかりであり「――髪は、束ねていたほうがこざっぱりしていて良いんじゃないか。」いつもの逃げ癖で帽子など被っていないというのに頭に手をやってしまい、仕方無しにくしゃりと髪を握り潰すように弄って顔のほうへ寄せる事で美辞麗句を切望する子犬めいた眼差しから逃げおおせると何とも素っ気ない言葉を一つだけ。流石にこれでは可哀相だとすぐに思い直して、そっぽを向いたまま「……そいつはお前の服だ。家の中では、好きに着ていて構わないから」どうせ譲るあても捨てる勇気もない服だ。気に入ったんならくれてやろうと、男装少女を外へ出すのはまずいが部屋着ならばと取って付けてそう言えば耳にした言葉もろくすっぽ咀嚼しないうちに立ち上がってさっさと庭へ向かい、黙って洗い物の支度を始め。部屋の中でさえ寒い寒いとぶつくさ言っていたはずが庭先へ緩やかに届く秋風は寝起きで青白い肌に心地好く、いつの間にやら己の身に得体の知れない熱が篭っていた事にふっと気づかされ、それが単純に美しいものへ見惚れた為かそれとも不潔な感情故か分からずに悶々とするその想いさえ洗い流すべく桶に張った冷水へ手と着物を突っ込んで洗濯板に一心不乱ゴシゴシとやっていき。この着物が綺麗になったらキチンと女物の服を買いに連れて行こう。美少女の男装なんぞに妙な嗜好を見出だしてしまう前に。薄氷へ手を入れているような冷たさに唇を噛み締めつつ洗濯と同時に本日の予定計画を進め、ワンピィスでも着せてやったらまたくるくる回ってはしゃぐのだろうか、それでさっきの見世物口上のように――先ほどの出来事を振り返り、そこまで考えた所でやっと彼女が口にしたとんでもない言葉に気づいてゴトンと洗濯板を落とし「艶……おい、艶、お前は何て言ったんだ」石鹸のあぶくがつくのも構わず口元を手で覆い、まずは回想の中の彼女へ問いかけるかの如き独り言を。それから今度は素早く振り返って「お前、何に見合うと言った?私の服が、何の性に見合うと言ったんだ?」嗚呼、その口ぶりはもう全て知っている者の口ぶりじゃないか。己の内のまだ冷ややかな部分はそう溜め息吐くけれども、にわかには信じがたいと馬鹿のように同じ問いを二度も三度も繰り返し泡ぶくのついた間抜けな姿で彼女(どうやらその呼称は正しくないようだけれど)が答える様をじっと凝視して。)
(/返信不要と仰っているのにすみません、あまりに愛らしい坊ちゃん姿の艶様に反応せずにはいられませんでした…!!こっそり髪やリボンに似合う色をと考え薄紫を選んだのですが、こうして実際に着てみた姿を拝見するとやっぱり可愛くて可愛くて…!
この後の展開では艶様を連れて服などの買い物に行きたいと思っていますので、お気に召した服がありましたらまた是非描いていただきたいです!長々と失礼致しました!)
26:
艶 [×]
2016-10-09 16:10:08
(そら褒めろと言い付けた所で口下手と申した男がツラツラと賛辞の文を言葉にしたのならそれは驚き物だと分かってはいたが、分かっちゃいても期待するのが人の心と言う物か。何処かで自分だけに送られる素敵な言葉を待ち望んでおり、それが髪は括れと褒め言葉とは遠退いた提案として戻ってくるのだからブーと唇を不満げに尖らせて、男物の袴なのに女物のリボンとはチグハグも良い所だ!そう文句を告げようと頬袋に不満と共に溜め込んだ酸素をぷひゅるると尖らせる唇のその先から吐き出して、そっぽを向いた彼が慰め誤魔化しどちらの意味合いかは分からずともこの袴を自分の物だと告げた為、秋の空宛ら文句にブツクサ言いかけた言葉は一転しコロリと手の平を反して「ヒソカがそう言うならきっと、今の俺はたんと底なしに可愛いな。世辞の言えないその口が似合わないモンをくれるだなんて思えやしないもん」その自信は何処からか、やんちゃな目付きで片目を細め腕を温める袖口を意味も無くヒラヒラと揺らめかし。外へ出る彼を雛鳥のようにその後ろを付いて回り、水に浸され染み付いた赤が水に溶けてくその様子をぼんやり眺めつつ、先ほど言われた通りに手櫛を使って髪を慣れたように高い位置で括りあげ。リボンが安定のその位置を陣取ったその時に、この世の心理でも悟ったような男の面にやれどうした、パンドラの箱を覗いたかと何を驚いているか理解している癖に悪趣味と白々しく"ヘェ??"なんて素っ頓狂な声を上げて、タンと草履のつま先を地面を蹴る様に滑らせてから何の事無いそんな口振りで「此処にゃ俺とヒソカしか登場しないと思っていたョ。やんや、驚いた。ヒソカにゃもう一人名も無き誰かが見えてんのかぁ?」何とも業とらしい言葉選び、遠回りをするような文章を脳裏に描いては自分と彼と順番に指をさして。次第にそんな訳ないと冗談だから怒らないでくれ、そう言う様にけらけら笑い声を交えて「なんて、冗談は終いにしてサ。もう一度先の言葉を繰り返して見せようか」如何にも底意地の悪そうな眼差しで珍しくも自分に真直ぐ向けられるその眼に視線を重ねて。「なーんて。ヒソカには全部教えるよう、何から聞きたい?最初から話そうか?……なんもむつかしくネんだ、男と女の姉弟が見せる演目よりも姉妹の魅せる演目の方が見目麗しい華やかさを簡単に表現できる、それだけのことだもん。地獄を見に来る客人が性別一つでより楽しむんなら可愛いフタナリ上等だ」ピーチクパーチク止まる事無く口を動かせば別に押し付けられてこの姿をしている訳じゃない事を淡々と、性別一つが彼を此処まで驚かせるなんてと逆に驚くほどアッサリと拙い物言いで説明し「だってホラ、俺はその辺の誰よりも一等に可愛いから。可愛けりゃ可愛いだけ飴を貰えんのに、自分の長所を殺しなんて阿呆な事俺にゃあ出来ない」続けるのは自分に対する底抜けの自惚れ、逆らう事無く客受けの良い何とも小屋にとって都合の良い駒だったことか。それでも悪意を持たないのは歪められている自覚症状が希薄のせいであり自分の事を小匙一掬い程も哀れとも不幸とも思っていない、それ所か実力一つでやれ可愛いと褒められ続けて甘やかされるその空間こそ全てと囲われていた事実を表して。にも拘らず、そんな自分を信じられないとでも言う様に歪む当たり前を信じられないと物語る彼の表情には疑問しか持てず「ヒソカ、ヒソカ。石鹸の泡なんか食い物じゃないぞ」口回りにぶくぶくと存在を示すその泡に視線の先を移動させれば楽しそうに軽快な笑い声を交え。一方的にでも語り終えれば区切り良くこの話題はハイ御終い、と関心は何処かへ消えて。桶の傍まで歩み寄りその場にしゃがめば冷たい水へ片手を伸ばして、もう片方の手で着物の裾が水に浸かってしまわないよう気を付ければパシャンと指先で水を叩き「冷て」と当たり前の事、当然のそれをじゃれるように呟いて「__男だったからがっかりした?」水に反射する自身の顔を覗き込んでからパシャパシャと波を立て掻き消して見上げるように顔を上げれば「残念でした。どんなに悔いても、俺の居場所は此処しかねんだもん。ヒソカから絶対に離れやしない」からっ、と明るい笑みはお天道様が顔を出す様に華やかで、彼が女児を欲しくて身請けしたのだとしても自分はもう誰にも彼を渡すつもりが無いし離れる気だってサラサラなのだと水から手を離してしゃがむ膝に肘を置き頬杖をついた体制で、そりゃ面と面向かって女じゃないならもう要らないと言われりゃ傷ついてしまうと彼に言葉を喋るその隙を与えまいと息継ぎもなあなあに言葉を続けて、それでも一人で延々喋りとおしていれば自然と言葉は打ち止まり。「はらへった。朝飯食おうよ」頬杖付く腕を一度伸ばしてから立ち上がり、彼が今何を思っているのかその言葉を避けるように堂々たる話題のずらしを一つ、彼の羽織る半纏をクイクイと引っ張り駄々を捏ねるように自身の意見を押し切る様なそんな勢い任せの雰囲気を纏い)
(/何が可愛らしいって幼い頃の密さんが同じこれを纏っていたのかと思えばまた一層に可愛らしさが募ってしまって…!是非是非描かせて頂きますし、密さんの事も一緒に書かせて頂きますと先に伝えさせて下さい…!)
27:
宇都木 密 [×]
2016-10-09 23:08:14
(この己、宇都木密という男がお道化た煙に巻かれるくらいの馬鹿者でなく、また物事を追従笑いのオブラートに包んで心身に優しく受け止められるくらいの器用者でもなかったのがいけなかった。底意地悪い眼差しにひしと捕われれば嗚呼嫌だ嫌だと胃の底が軋んでも眼を逸らすことさえ叶わず、真正面から真実を告げられ、それがまた聞くも涙語るも涙という訳でもなくやれ家が大きいヒソカは大きいなどとピーチクパーチク楽しく騒いでいる時と何ら変わらぬ声色なものだから余計に己の苦痛を誘って目元をヒクと引き攣らせる。跳ねっ返りのおきゃんについたあだ名が男勝りのフタナリさ!そんな風に何処かでいつものひょうきんなお返事を期待していたのか、語られる愉快も糞もあったもんじゃない事情について行けない振りをしてボーッとする頭には頭上の秋空がそのまま流れ込んだような青々と冷えた虚脱ばかりが広がっていき、その感覚があまりにゾッとするほど冷たいものだから白い顔を更に白く、仏頂面を更にしかめるのも仕方の無い事。とどのつまり、時既に遅かったのだ。昨晩己は人の子一人救ってやったぞと得意になっていたけれども、夜道を抱えて帰ってやったあの時にはもう、それより遥か以前、己が見世物地獄に比べれば子供騙しの恐怖憂鬱へ浸って怠惰な日々を食い潰していた時分にはとっくにその子は姿形を歪めた見世物へと仕立て上げられていたというのに。力の抜けた手から離れてたゆたう着物がぬるりと手首へ絡みついたのをきっかけにようやく衝撃の金縛りから解放され、脳へ刻み込まれた事実の重みにうなだれるように彼女改めて彼から視線を逸らすがそれで何が見えなくなる訳でもない。せめて一つ、せめてもの慈悲に彼が怒鳴り散らすなり泣きわめくなりしてくれれば良い。俺は男でいたかったと、食っていく為には仕方が無かったのだと叫んでさえくれれば己の心もいくらかは和らぎ、共にかの悪徳小屋を罵り呪ってそれでお終い、今度こそ確り手を引き真っ当な男の道を歩んで行かせられるかも知れぬというのに。誇るべき事のように捩曲げられた可愛気を掲げる様子をいっそ恨めしく思ったって何がどうなる訳でなし、笑われるままに口元の泡を拭えば唇へ染み入る苦味も今日ばかりは甘く感ぜられるもので。途方に暮れていると表現したほうが良いくらいにぼうっと水面へ手を突っ込んだまましゃがんでいれば寄ってきた彼を水面越しに見つめ、成る程見れば見るほどこの面差しは男児かも知れぬと弾けた水に揺らぐ輪郭へ諦観めいて感じてみるがその面がバシャリと乱されそれこそ冷水をぶっかけられたくらいにヒヤリとする一言に顔を上げると、そこに在るのはやはりどう見たって愛らしい少女の花の面である。不幸の香りさえ嗅ぎ取れぬ、清々しい笑みを見開いた目にズイと押し付けられてはもう何を言える訳でも無く。いよいよ迷子になった想いで濡れた着物片手に立ち上がり、半纏引く手など気付かぬ素振りでふらりふらりと庭の隅まで歩いて行けば華やいだ着物も帯も物干しへきちっとかけてやり。ただし、再び着せる機会が巡って来るかは別として。それから洗濯桶もそのままにやはりふらりと家の中へ引っ込み、昨夜酷く煩悶した廊下を通り過ぎ、黴臭い台所の戸棚からパンと熟れすぎてどす黒い林檎を取り出すと皿の上へと切り分けて朝食の支度とする。最後に鉄瓶で湯を沸かし、シュウシュウと立ち上る湯気を棒立ちで眺めているうちにふっと先ほどのたった一言が突如脳裏に冴々とした悲しみを供なって舞い戻り「艶」と後ろへ着いて回っている彼を呼べばなおの事、悲しみはその色味を深め。一人前に無力に打ちひしがれていやがるのか、そう己を嘲る意欲さえ今は無く。「がっかりしたかなんて、二度と聞くんじゃない。」打ちひしがれてはいるけれども、落胆する理由など無い。第一己の存在価値など意識する必要さえ無い子供という生き物が、性差における価値さえ理解してそんな風な口を聞くのが悲しく恐ろしいと振り絞るようにたったそれだけ呟いてはもう何やら分からない感情に震える手で珈琲を入れ、皿と共に彼に手渡し。己を落ち着かせんとその場で半分ほどぐいと飲み干して苦い溜め息一つ。「……食べ終えたら外へ出るぞ。服は、そのままで良い。お前の着る物や食べる物を買いに行くんだ。」平常、平常。己へ言い聞かせるべく、当初の予定通り――着物が乾くまで待つ手間が無くなったので、厳密には予定通りではないけれども――一日を過ごそうと、流しにぐったりもたれかかったブツブツとくたびれた調子で告げて。)
28:
艶 [×]
2016-10-10 02:14:37
(手を伸ばせば触れられる距離、呼吸の一つすら耳に届くほど傍に居る筈なのに、表情を失い能面を被る彼の顔から感情を読み取る事が出来なければ出口がない迷路に迷い込み堂々巡りと思考の海に溺れている様で。自分の事のように青白い顔色が、明日をも見れぬ人同様と気の毒なまでに思い詰めた表情をするものですから。ひとり言の延長戦、壁打ちばかりの言葉に返事は何一つと戻って来ずに過ぎる時間が延々と感じ、悪い事はしていないと思うのに、この線の先で叱られる事を待っているだけの様に思えてしまって。空はこんなにも澄んでいて、秋風冷たく鼻奥を突く素敵な朝の筈だったのになぁとお喋りな口が思わず糊付けされてしまう重苦しい空気にやり場のない遣る瀬無さがハラハラと募り。部屋に戻れど何が変わると言う訳じゃない、かと言って何が彼にとっての地雷だったのかが分からなければ対処のしようも無くパチンパチンと手持無沙汰の指先を遊ばせるように爪を弾いて音を鳴らすばかり。聞かれたから、答えるだけじゃなくてもう一つオマケと自分の事をペチャクチャ語ったまでなのにと、語ったことで目線一つ向けられなくなった事で注目されないことを恐れるように何とも言えない寂しさが心の中にふつふつと苦い灰汁のように湧き出して、それでも彼の傍を離れられないのは文字通り言葉通り、彼が女児が良いと悔やんで男児は不要と思われた所でしがみ付くしか生き抜く術を知らないからで。ヒソカが望むならその辺の女より女らしく出来るぞと、自信満々に出かかる言葉が喉に釣り針が突っ掛かるようにスルリと通らないのは言えば一層見放されるそんな気がしたからか、それとも女になりたい訳じゃ無いのに女の自分しか彼に好かれないと言うのが許せないからなのか。あんぐり開かれる時間の方が多い口を頑なと一の字に閉じて朝食の支度を進めるその動きを目の動きだけで追いかけて。漸く、作業の音と爪を弾く音以外の音が、それも自分の名を呼ぶ声が届くとその声色に何が含まれているか等二の次と。まずは自分の名を未だ彼が呼んでくれたと言う事実に名も呼びたくない程見放された訳じゃ無いのだと手遊びの動きを止めて「ン」と口は変わらず閉じたまま、少し籠る音で返事をし。続けて先程告げた言葉を咎めるものだから、差し出された皿を受け取ってから「はぁい」と閉じていた唇を開いて返事を行って。本当は、でもがっかりしたんだろうと目を向けてくれなくなった彼に追及してやろうと思ったのに。ようやっと覗き見た彼の顔が余りにも、あんまりにも悲しんでいたものだからポリポリと人差し指の腹で頬を掻くだけ。感情が顔に出やすいとは言い難い彼なのに、自分の話を聞いて萎んだ風船みたいに哀れに思えて胸が締め付けられ。渡された皿に乗るパンを一口噛んではボロボロとパン屑を零し、気の持ちようだと分かっているがパンがどうにもパサパサで味気ない物に思えてしまい。数回モゴモゴと租借をすれば一口分のそれを飲み込んで、今日の予定を淡々と感情の見えない声で教えられれば一口しか食べていないパンを皿に戻しコトンと傍に置いてから流しに凭れる彼の傍に立ち竦み「ヒソカ。俺を持ち上げておくれ」強請るのは初めてじゃない申し出。両腕を掲げ万歳と伸ばし、それでも持ち上げられるまでの時間すら惜しいと掲げた手でギュウと彼の着物にしがみ付けばそのまま抱き着くようにグリグリと顔を其の儘彼の腹部に押し当てて。額を擦れる布の感触を目一杯に感じてから「外さみーから今度でも良いョ。ビュウと風吹いたらヒソカ飛ばされちまう!」疑ってはいないのだ。未だ短い時間しか一緒にいないが、彼が勘違いだったとはいえ男児の自分を何処かへ捨てに行くとは思っていない。ただ、気の迷いだったと我に返って小屋に残る姉と入れ替えられる事は予想できてしまうじゃないかとブツブツと語る彼の言葉尻からも嫌な予感ばかりが脳裏を過り。ぱくぱく、と何かを言おうと口を動かすもどの言葉なら彼の気を引けるだろうと考えては音にならずに間抜けな鯉かと。それでも繰り返し言葉に詰まったまま唇を動かして。やれ腹を括ったか、にっこりと笑みを浮かべては「俺はヒソカじゃないなら二度と身請け話に乗らない。昨日だって間違わないでおくれよ、ヒソカが俺を選んだんじゃなくて俺がヒソカを選んだんだ」どうすればあの蒼が再び自分の事を確りと見てくれるのか、無い脳味噌を一生懸命に働かせ。結局は気を引くと言うよりも脅しか脅迫か、「――ヒソカの傍でただの子供にさせてよ」初めて彼から送られたその言葉を引用するのが精一杯、それでも自己推薦できる事はこれが限界でもあり、ただの子供と言うのがどう言う物なのかなんて明確な想像は付きやしないのが本音だがすん、と鼻で息を吸い込めば再びむぎゅうと顔を擦るように離さないと目一杯に抱きしめて。もしも、此れでも尚この蒼が自分の物にならないならばと悪い事を想像すると嗚呼歯が痒い。むずむずと羽で擽られる気色の悪さが背筋に伝う、と体を一度ぶるり
と震わせて)
29:
艶 [×]
2016-10-11 01:32:37
(/連投を失礼致します…!イラストばかり高頻度で上げて申し訳ないと思いつつ、十月と言う事でハロウィンに因み、百々目鬼な密さんと子鬼な艶を描いたので和製ハロウィンと言うよりもひっそり回る百鬼夜行の様に晒させて頂きます…!
https://pbs.twimg.com/media/Cua3xpOVYAAvL3N.jpg)
30:
宇都木 密 [×]
2016-10-13 16:58:58
(人に物を食わす時などはパンが石みたくカチコチに冷えていやしないか、林檎が腐って酸っぱくなっていやしないかとまるで己そのものを食わすように様々神経を張り巡らせるものであるが今朝ばかりはそんな真似をする余力も無く、猛毒めいて苦い珈琲を映る己の仏頂面ごと飲み下すのみ。黒々した色味に酷薄な空の青色と混じって浮かぶその顔はいっそ死人めいて暗い。事実死んだのだ。一人の子を救いささやかな善人と化すはずであった己は昨夜生まれて今朝死んだ、そのくらいの絶望を以って鬱々と不味い汁を啜っていたものだから、側へやって来た彼の呼びかけに首を傾げてやる事もなくただ半分も飲み残した珈琲を茶碗ごと流しに捨て置いただけで。それからやっと何か返事をせねばと重い唇を持ち上げるが、足元の子供が頼んだ癖に自ずから抱えられるのを拒むかの如く皺まみれの着物を更にグシャリと乱してしがみつき、それに飽き足らず顔を擦りつけてくるとこそばゆいせいだけでなく臍の辺りから首の裏側までゾクリと冷たい鳥肌が立ち耐え切れずに唇を噛み。どうやら己の頭は、一度は引き剥がした得体の知れぬ子供というレッテルをこの男とも女ともつかぬ顔にまたすっかり貼り直してしまったらしい。今や鬼の子狐の子と奇怪至極の存在として映る彼が、まさか正体を知られたからにゃあ生かしちゃおけねえなんて突如己の腹を腸を食い破るとは流石の怪奇小説家も思っちゃいないが生来の小心故に息を潜めて様子をじっと伺い、やがて発せられた何てことは無い平々凡々な言葉に"何だ、秋風で顔が冷えただけか"と些か拍子抜けさえする思いで溜まった息をじっくりと吐き。許されるのならばその言葉に小さく頷きさっさと寝床へ引き返したい。そうして重く湿った布団に篭って見世物?知らぬ、子供?存ぜぬと目も耳も塞ぎ胎児のように惰眠の膜にて苦界の一切から身を守るのだ。そんな調子ですっかり心は逃げ腰になりつつもひとかけらの良心あるいは体裁からその場に棒立ちになったまま、肯定も否定も与えずどうせまたすぐ口を開くであろう彼の二の句を待つがどういう訳かそんな時に限ってばかり人を食ったみたいに赤くぷくぷくとした唇は結んで開いてを繰り返すばかりでちっとも物を言う気配は無く、こればかりは怯えも忘れて困惑していたところに一層混乱を招くような事を言うものだから「……私が言ったのは昨日の話じゃない、今日これからの話だ」相変わらずの破顔へトンチンカンな指摘を一つ投ずるも何か思案しているらしい彼には己の声は届かなかった様子。ほとほと困り果てて窓の外の蒼穹へと視線を逃がし、けれども、続くたった一言にはっとしてすぐさま再び真下の彼を見下ろせばその表情はすっかり隠れて伺えないがもはや顔など見るまでも無く。初めて彼に出くわした際の脳髄をひっ叩かれる感覚とも違う、今の今まで立ち込めていた思慮憂鬱の暗雲が跡形残さず打ち払われる様はまどろみからふと覚醒するあれに似て、まさしく目の覚めたようなその心地がスウと指先まで染み入るとあれこれ胸中呟く間もなく寒がってか震える肩を掴んでおり。「――お前をただの子供にしてやる。そうだ、それが約束だったじゃないか。」その通り、己は一体全体何をうなだれていたのか!普通でないのなんてとうに承知で、だからこそ彼を買ったのではないか。健全なる普通の子供にする為に!今一度思い出した志を胸にフタナリの見世物ではなく齢十かそこらのありふれた男児を確と見下ろし、己と彼、どちらに言っているのやらわからぬままポツリ繰り返せばしょげていた心までピンと背筋を伸ばし始めたらしく。しゃがんでやるという気遣いをしてやれぬから、覆い被さるように身を曲げて彼を包む形になりながら「……嗚呼、そうだ。私は余所から後ろ指をさされっぱなしのろくでなしだが、嘘吐きじゃあ無いんだ。お前にだって嘘は一つも言っちゃいない。約束通り、お前を何処にでもありふれた、真っ当な子供にしてやる。望みだって叶えてやる。お前が私を選んだと言うんならそれを真実としよう。お前は自分の意志で此処へ来たんだ、私が何を言おうがこの家へ居座る権利がお前にはある。この家は、お前の家だ」展開する思考をそのまま口に出した程にめまぐるしく語る最中に先刻の彼の言葉をようやっと理解するに至り、己の身勝手な憂鬱が彼に見世物小屋へ逆戻りという空想を抱かせてしまった事への罪悪に一層静かな声音に強い響きを含ませては膨れ上がる心の勢いのままに言い切って。罪悪と同時に少なくともこの子供が見世物小屋へ戻りたいと願うほどあの場所に毒されてはいないこと、そして幼子の刹那的な興味でなく傍にいたいと訴えるほどには己を気に入りの存在と認めていることを知らしめられた分落ち込んだ情緒はそれを取り戻すくらいに勇ましく立ち上がり「お前が男だろうが女だろうが、どうだって良い事なんだよ。私は、お前を引き取れればそれで良かった」己の葛藤絶望全て蹴飛ばすように付けたして、自分自身でも笑っていないのが不思議な程に柔らかな顔を彼に向けたまま言葉は伝わらずとも伝われと願う。全く秋空より容易く移ろう情緒だと呆れる気持ちも何処かにあるものの今度ばかりはこれで良いのだ。この子との行く末を遮る憂鬱など蹴飛ばしてしまえ。「――寒ければ襟巻きを貸してやる。やはり、買い物は今日行こう。ただの子供になるには早いに越した事は無い……不味いかも知れんが、帰りにジャムでも買ってやるから、今朝は我慢して片付けてくれ。」あらかた話し終えても高ぶった感情が落ち着く訳ではなく、いてもたってもいられぬと林檎ひとかけのみ口に押し込んでは虫食いみたくポツンと一口のみかじられたかれのパンを早く食すようにと諭して抱き着く体をゆっくりと引き離す。頭を撫でようかとふと考えて、それはどうも図々しい気持ちがして結局肩に置いた手をポンと弾ませるに留め一足先に自室へ戻れば帽子に襟巻きに外套に、いくらか新しく包み直した資金にと着々と外出の準備を進め、開けっ放しの箪笥へ再び手を突っ込みこれまた若い頃身につけていた毛糸の襟巻きを引きずり出して彼の準備も同時に整え。「食ったらすぐに出るぞ。昼になって混み合ってくるのはご免だ。」柔く脆い女児でなく確りと固い芯のある男児とわかったからか、己もどうやら幾許か気楽に声をかけることが出来るようになったらしい。思わぬ利点と前向きに捉えるのもまた己らしくは無いが、鬱々と打ちひしがれているよりかはずっと良い。早く、決意の鈍らぬ内にと急ぐ思いのまま荷物を抱えて先に玄関へ向かうとヒンヤリと寒気のする外気さえ清潔爽快と感じながら彼がやってくるのを待ち。)
(/お返事が遅れてすみません!ようやく顔を出せた所に何とも素敵なハロウィンイラストが…!!鬼の親子か兄弟のような二人が妖しく微笑ましく、気がついたら延々と眺めておりました…!笑 密が百々目鬼というチョイスもたまりませんし、何より可愛いだけでなく残虐性をも滲む艶様の笑顔に心臓を射抜かれました…早速勝手に保存し待受にさせていただいております!
毎度毎度興奮を抑えられず長々と感想を述べてしまい申し訳ありません、喧しいようでしたら口を噤みますのでお許しください…!)
31:
艶 [×]
2016-10-14 03:38:22
(目の前にしがみ付くのは果して本当に人間で間違いがないだろうか、気付かぬ内に化かされたか夢でも見たか蝋人形なりマネキン人形なりに変えられてるんじゃなかろうか。触れているのに冷え冷えと心臓をザラつかせるのは恐らく四方からジワジワと息の根でも止めるように圧迫し、縮こまってくるかのような息苦しさのせいなのだろう。何を相手取るにしたって、真正面から対抗するのに自分が使えるのは幼さの残る笑顔しかないのに。その笑顔すらグルリグルリと目を回しながら忙しなく、語彙の引き出しを引っ繰り返しては此れじゃない在れじゃないと慌てふためく脳味噌のせいで胡散臭い凝り固まった痙攣のような笑顔しか浮かべれやしないんじゃ、と唯一の武器でさえ錆びた鋏のように使い物にならない自覚が有って。こんな面では顔向けできぬと顔を下げて、貰ったばかりの着物を今すぐにでも脱いで心臓を我武者羅に掻き毟りたい歯痒さはお得意の口八丁で一時凌ぎは出来たとしてこの状況の打破には繋がらないと理解しているからか、貧相なおつむのせいで口の利けない口惜しさに苛立ちにも似た思いが腹の底で渦巻いて。そんな最中、肩を掴まれると力はさして痛い程じゃないにも関わらず触れられた箇所がカッと焼けるように熱を持ち。約束は守るのだ。その一言が男だと知った上で傍に居て良いのだと言う保証になり、今の今まで息苦しい程感じていた圧迫感が引き潮の如く薄れて行き。何よりも、男も女もどうだって良いのだと告げる言葉の重みは図り切れずにくっ付け隠していたその面を引っ張り戻し、二度ほど瞼を大きく瞬かせて目を見張り。瞳孔が開いているのでは、と鏡は見ていなくとも想像の付く阿呆面。それでも、それでもいいのだ。自分を映すその蒼が、何処までも美しくて優しかったのだから。むず痒い心地のまま堪えきれぬと表情をニヤけ面に変えて、ほんの数秒前まで首の皮一枚で彼と繋がっているような呼吸も儘成らない心境だったのに、今は初めて純粋な意味合いで自分の存在を認められたかのような。変な話だが、今、初めてオギャアと産声を上げたような何と表現すれば一番正しいのか皆目見当がつかないが、初めて耳が痛くなるほど万雷の拍手喝采を聴いたその瞬間よりも非にならないとヘヘヘと気恥ずかしさを押し殺した笑い声を少しばかり照れくさそうに上げて。今となっては手放される心配が無く、そうであれば外の空気や賑わいを元来好んでいる訳で当初の買い物は喜んでと瞳を爛々輝かし、肩を叩かれ先程途中で置きっぱなしにした食事の元に促されるまま喜々と戻って「不味くなんか無いよ。そりゃ、とびっきり美味いワケでもないけど、ああ!でもサ、うん。そうだ、今とびっきり美味いパンに変わったぞ」再びパンに手をかけるまでは本音を隠すが嘘も言わないあべこべ言葉を、再びパンに口を付けてからは先程と同じものなのかと疑いを持つほど感情一つで食事の楽しさとはこうも変化を遂げるのか!そんな驚きを持ちながら、先程のネズミの盗み食いを疑う小さい一口とは打って変わりパクンパクンと大口開いて貰ったパンをアア美味い美味いと一枚ペロリと食べ切って、食べるまでは濃い色のこの林檎は毒にでも漬かっていたのでは?なんて恨めしくすら思ったものだが、何てことは無い禍々しい程に強い色味も一転して色艶が美しく思えシャクリと前歯で食らい付いた先から滴る果汁も甘みと酸味が瑞々しく口いっぱいに広がって、指先までペロリと舐め取れば置いてかれちゃ溜まったもんじゃないと足取り軽くタンタカタンと弾むように追いかけて。「待てよう!置いてかないでったら」誰も置いてくなんて一言も言っていないのに、逸る気持ちのせいで引き留めるように言葉を告げつつバタバタと隣までやって来て、隣に並ぶや否や大きく開いた右手を伸ばして「はい、ヒソカ」はぐれぬ様に手を繋げ、言葉にするのは簡単だが磁石の様に引っ張り吸い寄せるように彼の左手を取って。「可愛い服売ってっかなぁ?どんなのが似合――ああ、いやいや。似合わない服なんて無いんだけどサ」すっかり気分はご機嫌だ、繋ぐ手の先をユラユラと前へ後ろへ揺らめかしコロコロと鈴を転がすみたいに話を続けて、話の終わりには長い睫毛を上下合わせるみたいに目を細めて小憎たらしくケラケラ笑い。少し歩いては近所の人か、"あら先生、お知り合いのお子さんですか"と挨拶交じりに声を掛けられ良くも悪くも社交性だけは花丸だった為繋いでいた手を離せば両手を揃え懐っこい笑顔を添えてお辞儀を一つ「オハヨウ御座います、オネィさん。そのトーリと先生のところでお世話になります、名前はエンと言いますが。顔だけでもどうぞ覚えてくださいな」顔を上げれば浮かべる表情は明るく、どうにも自己紹介と言えば散々と聞き続けた口上交じりになってしまうも、彼の面に泥は塗らぬ恥はかかせんぞと愛嬌のある雰囲気で出来る限りの敬語を交えて挨拶を、ハキハキとした挨拶は人情厚い町中に馴染みやすく、”挨拶出来て偉いわね”なんて褒め言葉を貰った時には得意げな目元で顔を上げどやどやと彼を見て。再び女性へ顔を戻すと「それじゃオネィさん、エンはこれから買い物に行ってきます」引き際上手に先程同様右手を彼の左手と繋ぎ合わせて、ちらり振り返れば左手でブンブンと手を振って。賑やかな挨拶を終えて「なー上手だったろ、ちゃんと出来てた?…あ!あ!ヒソカの隠し子だって挨拶すりゃ良かったかなぁ」最初はご近所さんなら初対面が大事だろうと褒められたのだからへまはしてないと思いつつ、それでも彼に褒められるのが一番だと期待する眼差しを向け、後者には失敗したなぁと言う様に冗談交じりの言葉を添えて)
(/いえいえ!全然大丈夫なのでお気になさらないでくださいね!お暇な時で大丈夫ですので…!
自分の世界が大事で宝物で人の事なんて見たくない密さんが目が沢山の百目鬼なんて想像するだけでも私得でしてつい我慢が出来ませんでした…!なのでそう言って貰えて嬉しいです!!待ち受けだなんて光栄すぎて…!寧ろ感想頂けるのが嬉しくて励みになりまくっているので有難いのです!ただ、感想も絡みの長文もご負担でしたら何時でも削って下さって大丈夫ですので!)
32:
艶 [×]
2016-10-19 01:50:00
(/何度も何度もイラストばかり本当に申し訳ないですorzorz頻度が多い事自覚しておりますので煩わしければ頻度をもちろん減らしますし、描いた都度ではなく溜まったらまとめて、等と対応いたしますので…!orzorz秋が深まりましたので、秋のご挨拶を一つさせてくださいませ。
https://pbs.twimg.com/media/CvEHh5QVIAE-Sip.jpg)
33:
宇都木 密 [×]
2016-10-20 00:17:15
(/一先ず背後のみ失礼させていただきます!長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。私用が片付きましたので早ければ明日、遅くとも明後日中にはお返事を書けるよう時間を作っておりますので、申し訳ありませんがもうしばらくお待ちいただけますでしょうか?
そして何とも可愛らしいご挨拶をありがとうございます!普段暗いアングラ感漂う二人ですが、こんな風に和やかな秋を過ごしているかと思うと胸がほっこり暖かくなります…!
煩わしいどころかもうすっかり主様のセンスに惚れてしまいまして、いつもお返事と同じくらいイラストを楽しみにさせていただいておりますので、ご迷惑でなければ是非とも一枚一枚堪能させていただきたいです!大変なようでしたらこちらから保存場所等を覗きにお邪魔致しますので、主様の負担にならない形で拝見させていただければと思います!)
34:
艶 [×]
2016-10-20 11:30:32
(/お忙しい中にお返事を有難う御座います!お返事に関しましては本当にお暇の時にで問題ありませんのでご負担になりませんよう、お気になさらないで下さいね…!PL様の文章が心から大好きなのでのんびりまったりと楽しみにしております!
そしてイラスト安心致しました…!!此方に上げるまでもない本当に落書きのような物も含めてURLを作るために上げている場所(本当に落書きの上、勝手ばかり申し訳ないのですが密さん巻き込んで二次創作的に私が妄想を残すだけの場所)ですが、下記イラストに青い鳥番号を載せておりますので宜しければ…!PL様の確認後ユーザー名を変更したいのでご連絡頂ければ幸いです…!
https://pbs.twimg.com/media/CvJlLGFUsAArax2.jpg:large)
35:
匿名さん [×]
2016-10-20 12:40:52
外部への誘導はセイチャットで禁止とされています。
36:
艶 [×]
2016-10-20 13:29:00
>匿名様
(/この度は誤解を招かせてしまい申し訳ございません。せいちゃっと管理人様のトピック(No.2247)にてございます通り、営利目的や宣伝目的でも無く、移動交流を行う為でもありません。勿論交流はこちらのみで行いますし、URL先は話題提供、イメージ参照の為になります。詳しくは管理人様トピックを参照願います。ご忠告ありがとうございました。)
37:
匿名さん [×]
2016-10-20 16:27:22
ツイッターの情報載せるのはダメなんじゃ…?管理人さんに聞いてからにした方がいいと思いますよ
38:
艶 [×]
2016-10-20 17:38:30
>匿名様
(/この度はご忠告有難うございます。個人で調べてみた所、まとめHPとは少し変わり個人情報の兼ね合いがグレーゾーンにあたりそうですのでツイッターの方は鍵を付けユーザー名の変更を行い閉鎖をさせて頂きました。至らない私にとても丁寧なご提案を有難う御座いました。)
>密PL様
(/私が至らないせいでこの様な事になってしまい誠に申し訳御座いません、顔向けできない次第です。保存場所の提示をさせて頂いたのですが私の使うアップローダーがイラストURLを取得する為にツイッター利用だった為、忠告を受けた後に調べてみた所個人情報に当たるかもしれず…このままではPL様にまでこれ以上のご迷惑を掛けてしまうかもしれないので今まで通り描いた都度、URLを此方に提示する形を取らせて頂ければ有難いです。私が至らず知識不足ばっかりに、今回はこの様な事になってしまい本当に申し訳無いです。
下記にもしも、だったら、のラフのような描いていたイラストを纏めて置かせて頂きます…!
(しょた子様の密さんと大人な艶)https://pbs.twimg.com/media/CvLU9zlVUAAa_9V.jpg
(十代半ば反抗期時期の躍起になる時分の艶の髪型)https://pbs.twimg.com/media/CvLV4hgVYAAQnNx.jpg
https://pbs.twimg.com/media/CvLV6v8UAAAnd2s.jpg
この度は知識不足、至らないばかりに本当に申し訳ありませんでした。
この様に至らない面が多々あり、綻びが目立つ本体なのですが…もしPL様のお許しが頂ければ今後もお付き合いして頂ければ嬉しいと、我儘も甚だしいと承知の上ですが思っております。もしも、付き合いきれないと有りましたら記号一つでも大丈夫ですので連絡を一つ頂ければ有難いです。図々しい事まで重ねて申し訳ございません。)
39:
宇都木 密 [×]
2016-10-21 14:20:03
>35、37様
(/ご指摘ありがとうございます。この度は私の認識不足によりご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。規約に違反し、お相手様との交流を続けられなくなってしまうような結果を未然に防いでくださった匿名様に心より感謝致します。本当にありがとうございました。)
>主様
(/背後のみ失礼致します。こちらこそ軽率な提案で主様にご迷惑をおかけしてしまい本当に申し訳ございません。私ばかり何もせず、主様にその都度イラストを載せていただく事が心苦しいという自分勝手な考えがこのような事態を招いてしまい本当に反省しております。
このように未熟な背後を主様が許してくださるのであれば、今後今回のような問題が起こらないよう努めますのでどうかこれからもお付き合いくださいませ。稚拙な上に遅筆な人間ですが、主様のセンスや、イラストの反抗期の青少年艶様や年齢逆転のような胸躍る"もしも"も含めて2人のことが大好きですのでスローペースながらお相手していただけると嬉しいです…!
長々と申し訳ありません、深夜までにはお返事を書いて参りますのでもう少しだけお待ちください!)
40:
艶 [×]
2016-10-21 21:47:09
(/イラストの頻度が高いのでスレを埋めてしまっては迷惑かと思って軽率な行動を取ってしまい…反省しているとは言え、今後もお相手して頂けること本当に嬉しいです。私は拙い文章でどう伝えればいい物か、背後様の綴られる文章の美しさに心を奪われて焦がれております。密さんの事は勿論、背後様の事も、引いては艶の事もこの世界観の事も愛して止まない為に交流を続けられる事が本当に嬉しくて仕方が無いです…!
お返事は本当に急かしておりませんので慌てなくて大丈夫です!私は何時までものんびりと待たせて頂く所存ですので、無理して時間を作りお身体を崩される事だけ無いようにして頂ければ嬉しいです…!)
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