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37:
枯れ草 [×]
2017-02-13 07:10:33
四
大多数の一般人に、不要な不安や不快を抱かせないように、それは秘密裏に行われた。その島にいたらしい人々は、空が光る瞬間ぐらいは意識に留められただろうか。その島には、旧人の他には特に珍しい生き物がいたわけではない。鉱物資源もないことが見込まれ、何か取り柄や価値があるわけではなかった。小さな島だし、失ったところで、それはそれと済んでしまいそうであった。
だから、新型の滅却装置で粉も残さず消されてしまった。あっという間のことであった。
上空から島の消失を確認した偵察機のパイロットの補佐は、思わずガッツポーズをした。新たに見つかったゴキブリの巣窟は、クリーンな手段を以って見事に一掃されたのである。補佐は、操縦桿から手を離せないパイロットとも目配せし合い、笑い合った。報告が届いた環境保全課の一部署の職員たちの胸にも、善行を達成した爽快感と不浄なものが除かれた安堵が満ちた。
シリウスもその日はご機嫌で帰宅をした。自宅でスーツをSs-07に投げつけていると、電話が鳴った。出てみるとアンドルだった。
「ねぇ、噂に聞いたわよ。成功したそうじゃない。お祝いに行きましょうよ」
彼女は鉱物資源のエキスパートである。非常に仕事が出来るし、他の点も申し分ない。強いて言うなら、バストに少しボリュームがないのが気になるが、顔立ちもそうしてきたように、バストも近いうちに豊かにする手術を受けると言ってくれている。シリウスの今の恋人だ。
一方、エウロパはあれから精神疾患と認定されたらしい。つまり、人々の健康を管理するロボットによって、思考が異常だと認められたのだ。彼女はそう認定された時点で、速やかに施設に運ばれ、脳みその使える部分だけを取り出され、身体の残りの部分はエネルギーに転化されたらしい。まぁ、当然のことだろう。
シリウスはアンドルの提案を二つ返事で承諾した。それを横で聞いていたSs-07は素早く電子通信で交通センターにアクセスをして、オートコントロールカーの手配をした。オートコントロールカーはすぐに自宅の前に届くことだろうし、乗れば望んだ場所に即座に連れて行ってくれる優れものだ。アンドルとの電話を終えたシリウスは、爽快感のままに満面の笑みで一度ぐんと背伸びをし、少し身体をほぐしてから意気揚々と玄関へ向かった。素晴らしき日常、万事は順調に巡り、これからもこの素晴らしい毎日が続いていくことは、疑いようがなかった。
‐終‐
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