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✡。:*物書き修行*:。✡/52


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28: 枯れ草 [×]
2017-02-12 14:38:30

三‐続き

「僕もいつか、死ぬんだよね」

サンドウィッチを食べ終えてから、デインはふいにそんなことを呟いた。

「そうだな」

父親は否定しなかった。サンドウィッチに挟まっていた魚も、父親に捕われるまでは生きていたのだ。それを殺して、今食べ終えてしまった。

「僕は死んだら海に帰りたいな。今度は魚たちに、僕の身体を食べて貰いたいんだ」

父親はそれを聞くと「おいおい」と言って笑い、デインの頭を抱いて自分のほうに引き寄せた。デインは父親の腕から、顔を覗かせて、父親の顔を仰ぐように見る。

「良いでしょう?僕は魚が好きだから」

「簡単には死ぬなよ。まだリールも小さいんだからな」

リールは妹の名前である。最近ようやく、畑に出られるようになったぐらいの歳だ。

「父さんに何かあったら、頼れるのはお前なんだから」

「何かあったら嫌だよ。僕は父さんが大好きなんだから」

「父さんもお前が大好きなんだよ。親より先には死ぬな」

父親は終始穏やかな調子だった。父子はそこから少し戯れ合って、暫く経ったらまた畑に戻った。帰り道で「お前にはまだ教えていないことが沢山あるな。次の満月の日の昼間には、東の釣り場を教えてやるよ」と父親が言ったので、デインはぱっと顔を輝かせ、瞳をキラキラさせて「本当!?楽しみだなぁ!」とはしゃぎ、危うく背中に籠を背負ったまま、小石に躓いて転びそうになって、父親に支えられて助けられた。

この島では、こんな光景が日常だった。皆、一様に働き者で、周りの者を大切にしていた。特に変化のない暮らしであったが、皆、幸せだった。たまに、嵐や地震等の災難が襲いかかってくることもあったが、その度に力を合わせて、乗り越えてきた。

文化が全くないわけではなく、楽器や物語を楽しむ者もいた。デインが背負っていた籠も祖父様が編んだものだ。しかし、どれにしたって、もしも、遠い地にいる新人類が触れようものなら鼻で笑って馬鹿にしたことだろう。それらは人類の英知や知の結晶といった類の言葉が似合うものではないのだから。

島の旧人たちは身近な者の職人芸や特技、性格等に敬意を払って生きてきたが、恐らく新人類にはどれもまやかし扱いされてしまうだろう。そもそも、人が死んで失われる財産・芸等は積み重ねられないし、積み重ねられないものは発展的ではない。同じことを繰り返すだけなら、人が人として生きる意味はどういったものになると言うのだろうか。


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