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自分のトピックを作る
21:
スカイ [×]
ID:e40849fee 2016-11-27 12:38:04
>倉
面白いですね。倉さんの小説見ました。今更ですみませんが見て面白いと思いました。倉さんが思う小説を別の作品も見てみたいですね。もし書ける機会があれば見てみたいです。応援してます
それと倉さん卒業するみたいですね時間を過ごしたいようで今までありがとうございました。後何か色々と教えたり話したりしてくれてありがとうございます
22:
枯れ草 [×]
ID:16e00feef 2017-02-12 14:21:20
拝読して着想が沸いたから、勝手な続編。題は思いつかなかったから無題で>>5の終わりより。
序
さて……、母とそんな話をしたのも数十年前のこととなり、当時、少年だった彼も今は立派な青年に成長していた。
彼ことシリウスは、担当している環境保全の仕事を自宅に持ち帰って、片付けている合間にぐんと背伸びをし、凝った肩をほぐす。
「あぁ疲れた。コーヒーが飲みたいな」
呟くとすぐに横から丸いトレイに乗り、カップに入れられたコーヒーが差し出される。シリウスはそれを手に取り、暫し、香りを楽しんだあとに口をつけ「うーん、美味い」と言って満足そうに微笑んだ。彼にコーヒーを差し出したのは、彼が産まれた時から彼の世話をしているロボット「Ss-07」であった。シリウスの好み、性格は勿論、行動パターンまで熟知しており、自分で予想も立てて常に彼が求めるサービスを提供してくれる、素晴らしい世話係兼秘書ロボットである。
「シリウス、可愛い…♪」
コーヒーを楽しんでいると、ふと、背後から声が注いだ。シリウスが振り返ると、そこに立っていたのは恋人のエウロパであった。
「可愛いって何だよ」
言われ慣れていない言葉にシリウスが怪訝な表情を見せると、エウロパは楽しそうに続けた。
「仕事の合間にさ、コーヒーを出されると、すごく満足そうに飲むじゃない。その様子がね、何だか可愛くて」
エウロパにはこういうところがある。女性とはそういうところがあるものなのかもと納得しようとしてきたが、はっきり言って、シリウスにとっては意味不明なのだ。
【良いものを嗜み、幸福を享受する。それを原動力にして、更なる発展を目指す】
クララを祖とする新人類は、そうして繁栄を継続してきた。褒められるべきは努力の末の成果である。それなのに、エウロパは『ただ、コーヒーを楽しむ』というそれだけのことに好感を持つらしいのだ。全くバカらしいと言ったらない。
「よく分からないな」
だから、それだけ答えた。すると、エウロパは更に意味不明なことを言い出した。
「貴方のそんな様子を見ているとね、私はSs-07になりたくなるわ。私にもあの子ぐらい美味しいコーヒーを煎れることができたら良いのに、とね」
シリウスは今度こそ、椅子からずり落ちそうになってしまった。
「君のそういうところは本当に分からないな!」
思わず感情が高ぶり、声を強めてしまった。
23:
枯れ草 [×]
2017-02-12 14:23:38
序‐続き
エウロパは決して、馬鹿者ではない。細かな担当分野は異なるが、元々、環境保全課の同僚であり、水資源の取り扱いに関してはエキスパートなのだ。明晰な頭脳と高度な専門知識、鋭敏な感性と鮮やかな表現力を持ち、ロボットが未だ追いつけていない最前線で、水質保全の為に日夜努力をしていて、成果も上げている。その彼女が『美味しいコーヒーを煎れられるロボットになりたい』だなんて。
「全く馬鹿げているよ!君はもっと価値のある仕事をしているじゃないか!」
シリウスは呆れと驚嘆が混ざった声色でそう言ったが、エウロパは「そうかな」と首を傾げ、「まぁ、貴方もあまり根を詰めすぎないようにね」と歌うように言って、部屋から出ていってしまった。理解不能である。
誰でも出来る仕事、そう、例えば『コーヒーを煎れる』という作業は機械化できる。機械化できることは機械にやらせれば良いのである。人間(間違っても無能な旧人類のことではなく、シリウスたち新人類のことだ)には他にもっとやることがある。当たり前じゃないか。それでこその発展、それでこその幸福。パターン化できることなんて、例え日々、必要なことでも、貴重な人生の時間を費やすには値しない。創造的でないからね。
エウロパの去った部屋で、何だか脱力してしまったシリウスは、そんなことを思いながら残りのコーヒーを啜った。
一
シリウスの元にその連絡が入ったのは、午前中の仕事はすっかり終わり、昼食も済ませたあとのけだるい午後だった。
「旧人類が生きているだって!?」
部長から告げられた驚くべき話に、部署内は騒然となった。
「そんな、百年以上も前に滅んだはずだろう?」
「考えるのも嫌だ…。伝え聞くに…あんなに悍ましい生き物がまだ生きていただなんて!」
「どこで資源を貪り続けていたんだ?すぐに滅ぼしに行こう。この星の為にならないよ!」
部署には様々な言葉が飛び交った。部長はそれを手で制するような仕種をし、苦虫を潰したような表情のまま、少し首を振ってから、厳かに続けた。
「静かに。君たちの言いたいことはよく分かる。私もまだぞっとしているところなんだ…。しかし、どうにもこれは事実らしい」
部署の皆の視線が部長に集まる。勿論、シリウスも言い知れない不安を胸にしたまま、部長を見た。室内にいる新人類たちの美しい瞳には、今、一様に不安の色が灯っていた。
24:
枯れ草 [×]
2017-02-12 14:27:03
一‐続き
部長は隣にいる自分の世話係兼秘書ロボットに向かって頷いた。すると、ロボットは目を光らせ、その光が当たったモニターには衛星写真が浮かび上がった。
そこからは思い出すのもうんざりする話が続いた。すなわち、旧人類が生きているという話が事実だということを裏付ける講義が続いたのだ。
何でも今回、衛星を通して発見された旧人類は、何百年も前に堕落の道を辿った旧人類の主文明から決別し、そこから逃れに逃れ続けて、南東にある幾つもの島の一つで隠れるように暮らしを続けていたらしいとのこと。まさに取り逃がされたゴキブリである。
発展と幸福に基づいた世界を守る為の環境保全課として、彼等の扱いについては、勿論、滅ぼす方向で考えられているようだが、如何にして滅殺すべきか、というのが持ち込まれた課題というわけだ。
「まぁ、こんな話を急にされても困るだろう。一週間後に会議を開くから、それまでに各自、企画を固めてきてくれ。なお、この話は機密事項だからな。絶対に外部に漏らさないように」
部長が眉間に皺を寄せたまま言った一言で、その恐怖の報告は終わりを告げた。
二
「会議は一週間後だって。そんな悠長なことを言っていて良いのかな」
自宅に帰り着いたシリウスは、食卓の席で、また遊びに来ていたエウロパに言った。エウロパは細かく言えば他部署だが、環境保全課に属している点は同じなので、職場で話は聞いている様子であった。
「何の役にも立っていない連中が、今も同じ星の上にいて、のうのうと資源を貪り続けているだなんて、考えるのも悍ましいよ」
シリウスはSs-07が作った究極のオムライスを頬張りながら続けた。対して、エウロパは暗い面持ちでシチューに入れたままのスプーンを持っていた。彼女がこんなに暗いのは珍しい。シリウスは心配になって少し慌てたように言葉を繋げた。
「あ、でも、でも安心してね。そんなに時間を貰えたんだから、僕も良い掃討計画を考えるよ。一ヶ月も経たないうちに、旧人は今度こそ、この星からいなくなるさ」
ところがエウロパは思い詰めたような暗い顔のままだった。しかし、ここに来てようやく口を開いてくれた。
「ねぇ、前から思っていることを言ってもいいかな」
25:
枯れ草 [×]
2017-02-12 14:28:55
二‐続き
「ん?どうしたんだい?」
シリウスが言うと、エウロパはその美しく大きな瞳で真っ直ぐにシリウスを見ながら、真面目な表情で続けた。
「私たちは何の為に生きていると思う?」
拍子抜けだった。そんなことは、シリウスにとっては分かりきったことだったし、エウロパを含め、全ての新人類にとってもそうだろうと思っていた。
「この星の為だろう?未来の発展と幸福のためさ」
しかし、エウロパの表情は曇ったままだ。
「この星の為って…誰かが頼まれたの?この地球という星から」
シリウスのほうも段々と怪訝な顔になってきた。なんだ、子供みたいなことを言い出したな、と思ってしまった。
「それでも貪るだけの一生に意味や価値があると思うのかい?」
「そういうことじゃないわ」
エウロパはそこで一呼吸を置いたが、すぐにまた続けた。
「この星の為だなんて、結局人間のエゴじゃない。この星が何かを感じているか、考えているかなんて誰にも分からないわ」
シリウスは少し苛立ちを感じた。そこでぶっきらぼうに「どうしたんだよ」と言ってしまった。
「僕らは生まれてきた以上、何かの役に立たないといけないよ。そういう精神を失った人間はゴミだ。そんなの、何の意味もないどころか、有害以外の何物でもない一生じゃないか」
子供に諭すように言ったつもりだが、実際はむしろ子供っぽい言い方になってしまっていたかもしれない。だが、間違ったことを言ったとは全く思えなかった。
「努力は崇高なものだ。それをしないで、頑張っている人の足を引っ張り、貪るだけなんて最低だよ。それでこそ命は輝くし、僕等が生まれてきた意味だって、重たいものとなるんだ」
だから、はっきりと続けた。だけれど、エウロパも引かなかった。
「そういうことじゃないのよ」
スプーンを持つ手に、何となく力が入っているような気がした。
「貴方の言うことも分かるし、私もそう習ってきたよ。でも、私は私たちが傲慢になっているような気がしてならない」
そう言って、エウロパはどこか悔しそうに下唇を噛んだ。
26:
枯れ草 [×]
2017-02-12 14:31:26
二‐続き
「何故、皆、感謝しないのかしら」
シリウスには何のことだか分からなかったが、エウロパは深刻そうだ。
「遠い昔、この地球には何の生命もいなかったのに、どこかで奇跡的に命が芽生えて、ずっと懸命に生きてきたんだよ」
「ああ、発展をしながらな」
「そうだよ。そうして、最後は私たち、新しい人類が生まれたの」
「前の人類は腐ったからね」
「私は畏怖を持ちたいのよ」
「何のこと?」
「敬意も持ちたいわ」
「愚かな旧人類にか?」
「そうだよ」
シリウスは目を丸くした。正直に言って、この女、キチガイかと思ってしまった。
「世の中にはまだ分からないことが沢山ある。宇宙の真理どころか、地球上のことでさえも。私はそれを解いていくのを楽しいと思っているけれど、その中で自分達の存在の小ささを感じるんだよ。旧人類を滅ぼしたのは間違いじゃなかったと思いたいけれど、私たちが今ここにいるのは、旧人類の存在があってだし、過去からの系譜なんだよ。祖先への感謝を失い、侮蔑ばかりが先走る…、今の新人類は、発展、発展そればかり、目に見えるものばかりを追って、精神的なものを失っていっているんじゃないかって…、私はたまに怖くなるのよ」
シリウスの心には特に何も響かなかった。こんなに子供っぽいことを言う女だったんだな、と思っただけである。彼女は何も分かっていないのだ。
「精神的にも今の人類のほうが優れているよ」
当たり前じゃないか。シリウスはオムライスを食べ終えると、皿をテーブルの中央にある穴に落とした。そうすれば、食器は自動的に洗浄され、またロボットが必要とした時には使える状態となって出てくる。
分からず屋が分かっている人間を分かっていないと決め付け、稚拙な論理を以って勝手なことを喚いている―。それはなかなか不快なものだった。どうして、今の時代にこんな人間が出来てしまうのだろう。シリウスは恋人に対して、そんなことまで思ってしまった。馬鹿は要らない、滅ぼすべきだ。今まで有ったはずの愛情すら薄れるような感覚を覚えた。
エウロパはシリウスがそんなことを考えているのを察すこともできていないのだろうか。まだ食べ終えていないシチューに目を落としながら、最後には言ったのはこういう一言だった。
「ああ、会ってみたいな。小さな島で静かに暮らしていた旧人類」
恐らく、あのニュースに対してそんな感想を抱いた者は他にいないだろう。
27:
枯れ草 [×]
2017-02-12 14:34:54
三
一方、ここはとある南東の小島であった。ボサボサの黒髪に鳶色の目、どことなく黄色っぽいような肌、新人類とは今一つ似つかない外見の少年、デインは父親の畑仕事を手伝っていた。
「父さん、こっちのほうは終わったよ!」
籠一杯にオレンジを摘み終えると、木の影から顔を出し、遠くにいる父親に呼び掛ける。それに気付いた父親は暖かな笑顔を浮かべて、手を上げた。
「おー、早くなったな。こっちも終わったところだから、一つ休憩しようか」
父親のオレンジ畑は海岸沿いに広がっていた。だから、父子はよく、作業の途中で休憩をする際には崖のふちのあたりまで出て行き、海を眺めながら、弁当と摘みたてのオレンジを食べることにしていた。目の前に広がる水平線は美しく、デインの大好きな景色だった。
「父さん、この海の向こうには神様がいるんでしょう?」
デインが尋ねると、父親は日焼けして、ゴツゴツとした手で彼の頭を優しく撫でながら答えた。
「そうさなぁ。神様がいると良いな。それでお天道様が明日も無事に上るようにと、見ていて下さっているんだったら良いもんだな」
「良いな、ということは本当はいないの?」
「分からないよ。いるかもしれないし、いないかもしれない」
「誰か確かめに行った人はいないのかな」
「聞かないねぇ。毎日毎日、こうして畑の世話をして、たまには海に行って魚や貝を採ってさ、あとは母ちゃんと仲良くしたり、皆と遊んだりするだろ。そうして生きてりゃ、人生なんてあっという間だからね」
父親は海を眺めながら、笑顔で言った。デインは、荷物の中から母親が作ってくれたサンドウィッチを取り出すと「食べよう」と言って父親にも差し出した。父親はそれを「おお、ありがとな」と言って受け取る。それから二人で「いただきます」を言ってから、海を眺めつつ、無言で食べた。
サンドウィッチに挟まっている葉物野菜は、先日、友達の家の畑仕事を手伝って分けて貰ったもので、魚はいつぞや父親が釣ってきたのを母が油漬けにしてくれたものであった。食物のルーツに思いを寄せながら、口に含んでいくと、身体に命が満ちていくような感覚があった。デインは心から、美味しいな、と思った。胸の中が幸福感でいっぱいになるようであった。
28:
枯れ草 [×]
2017-02-12 14:38:30
三‐続き
「僕もいつか、死ぬんだよね」
サンドウィッチを食べ終えてから、デインはふいにそんなことを呟いた。
「そうだな」
父親は否定しなかった。サンドウィッチに挟まっていた魚も、父親に捕われるまでは生きていたのだ。それを殺して、今食べ終えてしまった。
「僕は死んだら海に帰りたいな。今度は魚たちに、僕の身体を食べて貰いたいんだ」
父親はそれを聞くと「おいおい」と言って笑い、デインの頭を抱いて自分のほうに引き寄せた。デインは父親の腕から、顔を覗かせて、父親の顔を仰ぐように見る。
「良いでしょう?僕は魚が好きだから」
「簡単には死ぬなよ。まだリールも小さいんだからな」
リールは妹の名前である。最近ようやく、畑に出られるようになったぐらいの歳だ。
「父さんに何かあったら、頼れるのはお前なんだから」
「何かあったら嫌だよ。僕は父さんが大好きなんだから」
「父さんもお前が大好きなんだよ。親より先には死ぬな」
父親は終始穏やかな調子だった。父子はそこから少し戯れ合って、暫く経ったらまた畑に戻った。帰り道で「お前にはまだ教えていないことが沢山あるな。次の満月の日の昼間には、東の釣り場を教えてやるよ」と父親が言ったので、デインはぱっと顔を輝かせ、瞳をキラキラさせて「本当!?楽しみだなぁ!」とはしゃぎ、危うく背中に籠を背負ったまま、小石に躓いて転びそうになって、父親に支えられて助けられた。
この島では、こんな光景が日常だった。皆、一様に働き者で、周りの者を大切にしていた。特に変化のない暮らしであったが、皆、幸せだった。たまに、嵐や地震等の災難が襲いかかってくることもあったが、その度に力を合わせて、乗り越えてきた。
文化が全くないわけではなく、楽器や物語を楽しむ者もいた。デインが背負っていた籠も祖父様が編んだものだ。しかし、どれにしたって、もしも、遠い地にいる新人類が触れようものなら鼻で笑って馬鹿にしたことだろう。それらは人類の英知や知の結晶といった類の言葉が似合うものではないのだから。
島の旧人たちは身近な者の職人芸や特技、性格等に敬意を払って生きてきたが、恐らく新人類にはどれもまやかし扱いされてしまうだろう。そもそも、人が死んで失われる財産・芸等は積み重ねられないし、積み重ねられないものは発展的ではない。同じことを繰り返すだけなら、人が人として生きる意味はどういったものになると言うのだろうか。
29:
枯れ草 [×]
2017-02-12 14:57:28
このサイトで小説を書いて、読んで下さる方など、今時いらっしゃるのだろうか…。SSということもありまして次で終章ですが、それは勿体ぶって(^q^) 需要があったら投稿します。終始一貫してノットリアクションだと、虚しいじゃんかー!ということで(._.)
需要がなければ永久封印。
30:
倉 [×]
2017-02-12 18:06:13
今から読む。
31:
倉 [×]
2017-02-12 18:19:17
続きを読みたい。
32:
枯れ草 [×]
2017-02-12 18:25:18
うわああああああああ/(^q^)\
ちょ、待って。卒業するとか>>21の方が書いていらっしゃったから、うっかり図に乗って超勝手な駄文を投稿しちゃったじゃなあああい\(^q^)/
33:
枯れ草 [×]
2017-02-12 18:28:36
読んで頂いて恐縮です。勝手なことをしてすみませんでした。気分を害されていないかと心配です。続きも大したものではないのですが、それで良ければ投稿させて頂きますつかまつる。あやや…。
34:
倉 [×]
2017-02-12 21:19:33
私の駄文は気にしなくて良いので
続きがあるならお願いします。
35:
倉 [×]
2017-02-12 21:25:22
『「妄想」は欲望が生み出すただの幻想であってはならない』らしいですが、貴方の書くソレがそうならない事だけを祈っております。
36:
枯れ草 [×]
2017-02-13 07:07:14
文法や単語等に誤りも見つけられませんでしたし、駄文なんてとんでもないですよ。
初音ミク\(^o^)/
ですよね。それは。ともかく、それでは大したものではありませんが、最終章を投稿させて頂きます。
37:
枯れ草 [×]
2017-02-13 07:10:33
四
大多数の一般人に、不要な不安や不快を抱かせないように、それは秘密裏に行われた。その島にいたらしい人々は、空が光る瞬間ぐらいは意識に留められただろうか。その島には、旧人の他には特に珍しい生き物がいたわけではない。鉱物資源もないことが見込まれ、何か取り柄や価値があるわけではなかった。小さな島だし、失ったところで、それはそれと済んでしまいそうであった。
だから、新型の滅却装置で粉も残さず消されてしまった。あっという間のことであった。
上空から島の消失を確認した偵察機のパイロットの補佐は、思わずガッツポーズをした。新たに見つかったゴキブリの巣窟は、クリーンな手段を以って見事に一掃されたのである。補佐は、操縦桿から手を離せないパイロットとも目配せし合い、笑い合った。報告が届いた環境保全課の一部署の職員たちの胸にも、善行を達成した爽快感と不浄なものが除かれた安堵が満ちた。
シリウスもその日はご機嫌で帰宅をした。自宅でスーツをSs-07に投げつけていると、電話が鳴った。出てみるとアンドルだった。
「ねぇ、噂に聞いたわよ。成功したそうじゃない。お祝いに行きましょうよ」
彼女は鉱物資源のエキスパートである。非常に仕事が出来るし、他の点も申し分ない。強いて言うなら、バストに少しボリュームがないのが気になるが、顔立ちもそうしてきたように、バストも近いうちに豊かにする手術を受けると言ってくれている。シリウスの今の恋人だ。
一方、エウロパはあれから精神疾患と認定されたらしい。つまり、人々の健康を管理するロボットによって、思考が異常だと認められたのだ。彼女はそう認定された時点で、速やかに施設に運ばれ、脳みその使える部分だけを取り出され、身体の残りの部分はエネルギーに転化されたらしい。まぁ、当然のことだろう。
シリウスはアンドルの提案を二つ返事で承諾した。それを横で聞いていたSs-07は素早く電子通信で交通センターにアクセスをして、オートコントロールカーの手配をした。オートコントロールカーはすぐに自宅の前に届くことだろうし、乗れば望んだ場所に即座に連れて行ってくれる優れものだ。アンドルとの電話を終えたシリウスは、爽快感のままに満面の笑みで一度ぐんと背伸びをし、少し身体をほぐしてから意気揚々と玄関へ向かった。素晴らしき日常、万事は順調に巡り、これからもこの素晴らしい毎日が続いていくことは、疑いようがなかった。
‐終‐
38:
枯れ草 [×]
2017-02-13 07:14:11
お粗末様でした。場を貸して下さったトピック主様、超勝手に書いた続編を怒らないで下さった倉様、双方の方に感謝を申し上げます。
39:
倉 [×]
2017-02-13 07:29:14
読んだ。
お疲れ様でした。こういう救いがないような終わり方で良かったと思います。
40:
枯れ草 [×]
2017-02-13 08:02:47
私はこの話を読んだ人がモヤモヤしてくれたら嬉しいと思って書き上げました。一方、登場人物は全員、愛を以って描写したつもりです。誰も悪者ではありません。
しかし、シリウスとデインの父親、エウロパとアンドルはそれぞれ対立する男性像・女性像として書きました。そして、私が「人間として」求めたいものは常に滅ぼされる側として描きました。平たく言って、アンドルよりエウロパのほうが可愛い!(魂の叫び)
他に読者に恵まれるかは分かりませんが、御一人にでも完読して頂けたのなら、少しは文に起こした意味がありました。>>38と合わせて、ご通読を感謝します。
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