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自分のトピックを作る
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主 [×]
2016-01-14 00:10:06
6対6で行われる新スポーツ、アライヴァル。テクニカルツールと呼ばれる独自の技術を使用し、迫力ある試合展開を見せてくれるこのスポーツは多くの人間を魅了した。天成中学に通う篠宮秋も、その内の一人だった。しかし、高校生らとの練習試合で大敗を喫してから秋は少しずつアライヴァルから遠ざかっていく。高校に進学してからも秋はアライヴァルと向き合うことなく、平凡な日常へと戻りつつあった。だが、再び秋がランナーとして走る日が来ることを願う一人の少女は確かにいて──。
熱血スポ根もの目指して執筆します!感想や意見などありましたらどんどん仰ってください!
1:
主 [×]
2016-01-14 00:13:30
[小説]プロローグ1
遠い遥か向こうまで。荒い息を整える暇もなく、ただ一点に向かってひたすら走る。
ゴールまで、一心に。障害は全て仲間が取り除いてくれる。
そろそろ足も、心臓も限界だった。俺はラストスパートをかける。棒になった足を必死に動かして、今、ゴールを踏みしめる。
「ゴーーーールッ!!篠宮(しのみや)選手、今ゴールしました!」
その瞬間、周りから喝采が沸き起こる。今までの静寂は、それだけ俺が集中していたということか。本当はこんなにも騒がしかったんだな。
「3回戦を終えて只今の得点は3対2!この試合、天成学院の勝利です!」
勝利。その2文字を聞いた俺は今までの疲れが一気に押し寄せ、その場に倒れこむ。
「秋(しゅう)先輩っ!」
頭上から俺を呼ぶ声が聞こえる。多分、苺(まい)だな。
「大丈夫ですかっ!」
「あー。大丈夫……とは、言えないかも。もう歩けん」
「ええっ!?」
俺の言葉一つ一つに盛大なリアクションを返してくれる苺。うん、面白い。
「ま、無理もねぇさ。あんだけ身体を酷使したんだ。運んでやるから、ちょっと休んどけ」
そう言って俺の事を気遣ってくれる蓮(れん)。お前だって試合で疲れているだろうに。
「悪いな」
「気にすんな。この試合、お前のおかげで勝てたんだ。感謝してんだよ俺たちは」
そんなに褒められると背中がむず痒くなる。俺は、俺に出来ることをやっただけだ。
俺は空を仰ぎ見た。ああ……今日の空はこんなにも青かったのか。こうやって空を見上げることなんてなかったから、分からなかった。
「やったんだな……俺達」
この夏の全国大会。俺たちは、優勝の二文字を勝ち取った。中学最後の夏は、二度と忘れることが出来ない思い出となるだろう。
──だが、俺たちはもっと別の意味でこの夏のことを忘れることが出来なくなった。
2:
主 [×]
2016-01-14 00:17:57
[小説]プロローグ2
アライヴァル。それはここ最近になって人気に火が付いた新スポーツ。野球と同じで攻撃と守備に別れ、攻撃時にはランナーを敵のゴールへ、守備時には敵のランナーからゴールを守るという単純明快なルールだ。
そんなアライヴァルが人気の理由として、最新の科学の力を用いたテクニカルツールの存在がある。
テクニカルツールとは通常ありえない人間離れした技を繰り出すことが可能で、迫力ある試合展開を見せてくれる道具だ。
やる側も見る側も満足できる、それが人気の秘密だろう。
そんなアライヴァルの全国大会が終わり、しばらくして。
「高校生達との友好試合?」
「おうよ。俺達優勝者と手合わせしてくれんだとよ」
「ほ、本当ですか?でも勝てるかな……」
「まー無理だろーなー」
苺だけでなく、元気が取り柄の蓮も弱気な発言を口にする。
用紙には回名山学園との練習試合を行うとの旨が記載されている。回名山と言えば全国大会常連校の強敵だ。俺達も高校に上がったらいずれ戦うことになる。それが少し早まっただけだ。
「何弱気になってるんだよ。まだ戦ってもいないのに負けを認めていたら勝てるものも勝てないだろ」
「つってもなぁ」
「俺は勝つつもりでいく。勿論、このチームで」
「先輩……」
確かに相手は強敵だが、俺達だって負けてないはずだ。きっといい勝負が出来る。
「そう、ですね……。分かりました、先輩!私、勝ちます!」
「ええっ、苺ちゃんまで……!? はぁ、仕方ねぇ。俺もやってやるか」
俺は二人に対し頷く。苺や蓮もやる気なってくれた。恐らく他のメンバーもやる気になってくれるだろう。
「打倒、回名山学園!やるぞ!」
おー、と二人が拳を天に突き出す。この時の俺たちは、無敵だった。誰にも負けないと本気で信じていた。
──だが、現実は非常だった。
3:
主 [×]
2016-01-14 03:38:15
[小説]プロローグ3
「さてさて!天成学院超ピンチです!残っている選手は蓮選手に苺選手、そして秋選手のみ!これは……勝てる、のでしょうか」
頭上から聞こえる解説の言葉は何一つ頭に入ってこなかった。俺は込み上げる吐き気をグッと堪える。
試合にならない。勝てる気がしない。仲間が一人一人倒れていく。
「くそ、最初から連中は俺たちを弄ぶつもりだったんだ……!」
地獄のような攻撃が終了し、守備の順番が回ってきた時、蓮はそう口にした。
その言葉を聞いて、俺も強く歯を噛み締めた。
「なんでこんなことに……」
苺は俯きつつ、そう呟いた。
何故、こんなことに、か。俺は今までの出来事を振り返った。
試合開始直後。俺達はすぐにその場から駆け出して3km先のゴールを目指した。今回の試合会場、つまりフィールドは市街地。死角が多く、どこから敵が現れるか分からない為ランナーとしてはこれ以上ないくらい緊張感が高まるステージだろう。だが俺の後ろにはランナーを支援するアシスターの苺に、敵のディフェンスからランナーを守ってくれる蓮たちアタッカーが控えている。この上なく頼りになる面子だ。
「静かですね、先輩」
「ああ。走り出したばかりだし、まだ敵は遥か向こうだろうな」
「作戦はどうするよ」
蓮の言葉に俺は思案する。いつもならこのまま敵陣まで突っ込むところだが、今回の敵は高校生。ましてや強豪校だ。慎重に動いた方がいいだろう。
「俺と苺はしばらく進んだら一旦待機する。蓮は3人を引き連れて先行。何かあったら無線で報告することを忘れずに」
「慎重だな。時間内にゴール出来んのか?」
「お前らがディフェンスを食い止めてくれたら隙をついて突破するよ。任せてくれ」
「頼りになることこの上ないねぇ」
一回の攻撃には時間制限がある。20分以内に敵のゴールにたどり着けなければ攻撃終了。守備に回ることになる。
「んじゃ先行ってくるわ。──お前ら行くぞ」
おう、と返事をする仲間達を引き連れて蓮は先へ進む。
「秋先輩、今回はなんでここで待機なんですか?」
「敵のやり口が分からないからな。トラップを仕掛けられている可能性もあるし。ランナーである俺が倒されたらその時点で負けだ」
トラップ、なんて物騒な言葉を口にするが心配はない。俺たちは試合中プロテクトスーツと呼ばれる特殊な服を身にまとっている。どんな攻撃だろうと、このスーツを着用している間は無傷でやり過ごせる。
ただしこのスーツには耐久値が定められており、それが0になってしまうと強制的にベンチへ転送。そして二度とこの試合には出られなくなってしまう。
それがアタッカーやアシスターならまだ試合は続行できるが、ランナーだとその時点で負け。だから俺は被弾に十分気をつける必要があった。
別行動を開始してしばらく経った頃。不意に苺が声を上げた。
「あっ、蓮先輩から無線が入りました」
「……蓮か?どうした」
「仲間と分断された。今は2、2で行動中。指示を頼む」
分断か。確かに効率のいいやり方だ。回名山の選手なら一人でもウチのアタッカー二人を相手取ることも可能だろう。
「蓮は戻れ。他のアタッカーは敵のディフェンスを食い止めろ。ただし無理はするな。危険だと判断したらその場からすぐに退避」
アタッカー達の返事を聞き終えてから俺は無線から手を離した。
蓮を戻したのには理由がある。まず俺や苺には攻撃手段がない。俺のテクニカルツールは走ること特化だし、苺のそれも支援系だ。だから途中で敵と出くわしてしまえばそれまでということ。
「どうしましょうか、先輩」
「アタッカーが敵のディフェンス二人を食い止めてくれてる間にこちらも出る。蓮を途中で回収し、三人で敵陣を突破する」
ゴールが見えたらこっちのものだ。俺の相棒(テクニカルツール)を使って、得点を奪う。
と、そこで今まで無視していた解説の声が一際大きな声を上げる。
「あーーっと!ここで天成学院の生徒が一人ノックダウーン!!回名山、やはり強い!」
その言葉を聞いて俺は絶句した。今、あの解説者は何と言った? 倒された、のか? ウチのチームメイトが?
「……さっき無線でやり取りしたばかりだぞ。この短時間で倒されたのか? いくらなんでもそれは……」
ウチのアタッカーは実力者揃いだと自負している。蓮を始め、他のアタッカー達も簡単にくたばる玉じゃない。出なければ中学の大会で優勝なんて出来やしない。
「秋!倒されたのは俺が置いてきたアタッカーだ!敵のディフェンスが一人、自由になるぞ!!」
無線から聞こえる蓮の声で我に帰る。
くそ、マズイな。その敵はどっちに来る? 俺のところか? それとも蓮を追う? いや、もしくは敵陣に残っているアタッカー達の方か?
「せ、先輩……」
苺が心配そうな声を上げる。
駄目だ、こんな時に混乱するんじゃない。俺は大きく深呼吸をした。
「蓮、悪いが陽動頼めるか。俺たちとは離れた場所で暴れて、敵を引きつけてくれ」
「……しゃあねぇ、やってやるか」
「数分でいい。危なくなったらすぐに逃げろ」
「了解」
蓮が敵を引きつけてくれている間が勝負だ。なんとしてでもゴールが見える位置まで辿り着いてみせる。
「行くぞ、苺!」
「はい!」
俺たちはその場から敵のゴールまで一目散に駆け出した。
4:
主 [×]
2016-01-14 04:29:58
[小説]プロローグ4
遠くの方で何かが爆発するような音が耳に届いた。蓮の奴、派手にやってるな。
「これで敵は蓮先輩の方へ行きますかね」
「行ってくれればいいんだけど」
もしも蓮の方へ敵が引き寄せられてくれれば、その間ゴールまでの道中は手薄になる。攻撃手段を持たない俺だが、敵のゴールさえ見えれば届く──いや、届かせてみせる。
「あっ!ゴールが見えました!──あれ?敵が、一人?」
苺の言う通り、ゴールは目の前で敵も一人だけ。陽動は上手くいったんだ。これなら俺のテクニカルツールで──!
「甘ェ……」
次の瞬間、隣にいたはずの苺の体が後方まで吹き飛ばされる。
「きゃ、あっ……!」
何があったのか、理解が追いつかない。一瞬でここまできたのか? そんなこと、俺のテクニカルツールでも出来ない──!
「はっ……お前が司令塔か? 駄目だなァ、てんでなっちゃいねェ……」
目の前の男は回し蹴りを繰り出し、俺の体を吹き飛ばす。
なんだ、それは。速度だけじゃなくて、攻撃も出来るのかよ……っ!
地面に倒れこむと同時、解説者の声が微かに耳に届いた。
「……そんな。蓮以外のアタッカーが全滅……?」
蓮の陽動は成功した。解説者の実況通りなら蓮の元へ敵が3人向かい、ウチのアタッカーが敵の1人を抑えていた。だと、言うのに。
俺が、ゴール出来なかったせいで──。いや、何を諦めてるんだ!せめて一点でも取って一矢報いるんだ!
俺はテクニカルツールを起動させ、一瞬の加速を利用してゴールまで突っ込んだ。スピードに乗らずとも一瞬で最高速度を叩き出せる加速力を持ってすれば──!
「──お前、向いてねェよ」
「え……?」
俺は、いつの間にか空を見上げていた。よくよく見てみれば、どうやら俺は地べたに倒れ込んでいるようだった。
「捻りのねェ一点突破。そんなもん、この世界じゃ通用しねェ」
こいつは、あの加速に追いついて、俺の足を刈り上げたのか? その行動を、俺は捉えられなかった。
「ましてや俺の動きに目が追いついてねェ。ランナーの癖になァ。──才能がねェ。司令塔としても、選手としても」
男は俺を見下し、吐き捨てるように言った。
「お前は弱ェ。今の力が、お前の限界だ」
「………………」
俺は、その言葉で完全に戦意を喪失した。ここから挽回できる手立てなんて、一切思い浮かばない。
ピー!と攻撃終了を知らせる笛が鳴った。
それから何が起こったのか、全く記憶にない。試合は当然3ー0で負け。勝負にすらならなかったようだ。
俺たちは試合会場を後にして、誰一人口を開くことなく自然と帰路について行った。一人、また一人と俺の元から離れていく。
その後俺はアライヴァルをやる気にもなれず、高校もアライヴァル部がない学校へ進学した。あいつのたった一言が俺の胸に強く突き刺さっていたからだ。
「才能がない」。きっとこれが、俺の全てなんだろう。だったらアンリヴァルなんて止めた方が、気が楽だった。
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