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ラノベ書いてます。※ただし初心者/15


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自分のトピックを作る
■: 宇治抹 [×]
2015-11-01 19:02:42 

暇を潰せたらと思い、小説を書いております。いずれは小説家になろうの方へ投稿しようかなぁ、なんて考えてます。
ここに投稿する小説は執筆途中だったり、文が滅茶苦茶だったりします。もし良ければ読んでやってください。そして感想や指摘など頂ければ幸いです。

魅力的なキャラに序盤から読書を引き込む展開。そんなものが書けるようになりたいと思うこの頃。


1: 宇治抹 [×]
2015-11-01 19:12:12

まず最初はEXTRA/BLADEという作品。

内容
剣×高校生×スポーツ×異能

あらすじ
世界中で人気を誇るスポーツ、ブレード。それは剣と異能の力を用いて戦う、全く新しいスポーツである。そんなブレードの名選手である父親の背中を見て、主人公・一宮直太郎は育った。あの強くて逞しい父親のような存在になろうと剣を握った直太郎は小学校、中学校と破格の強さで大会を勝ち続けた。しかし、中学三年の大会の日。直太郎は出血沙汰の事件を引き起こしてしまう。人を傷つけたことに罪悪感を感じた直太郎はブレードを止めようと考えるが──。高校生達による熱き剣異バトル!


──ていう内容です。修正が必要な箇所が多分に含まれておりますが、早速投稿しようと思います。

2: 宇治抹 [×]
2015-11-01 19:17:35

【プロローグ】

 カンッ、カンッ、と甲高い金属音が鳴り響く。音の正体は剣と剣とのぶつかり合いだった。今この場では、剣士同士による激しい戦いが繰り広げられている。
「──やってますな。どうですか、今年の選手は」
「面白いですよ。中学生といっても、予選を通過してきただけはある。実力派揃いですね」
「ほほう。それは楽しみだ」
 スーツを着込んだ中年の男性らが、目の前の試合を見物しながら楽しそうに言葉を交わす。
 彼らはとことん好きなんだろう。ブレードというスポーツが。
 ブレード──簡単に言ってしまえば剣と剣とのぶつかり合い。先に敵を倒した方が勝者という単純明快なルールで試合は行われる。
 ブレードには個人戦、団体戦とあるが今こちらで行われている試合は団体戦。4対4の白熱した戦いが繰り広げられていた。
 中学最強の座を求めて、選手たちは己の剣を手に戦いへ挑む。予選を通過しただけあって、どの選手も強者揃いだ。
「特に彼、一宮(いちみや)直太郎(なおたろう)君は素晴らしいですよ。もはや中学生のレベルを超えている」
 そんな強者揃いの中で一際異彩を放つ存在がいた。
 一宮直太郎。優勝候補と名高い彼は、ブレード界で最強の選手と謳われる父を持ち、高校生にして大人顔負けの実力を兼ね備えた兄を持つ。そんな二人の血を色濃く受け継いだ直太郎もまた、天才と言うべき人物の一人だった。
 大会に出向いたお偉いさんとでも言うべき面々も、直太郎の試合が目的だと言っても過言ではないだろう。
 そんな直太郎と運悪く対戦することになった選手たちは口を揃えてこう言う。「勝てるわけがない」と。
 実際、直太郎の動きは中学生のそれをゆうに越えていた。ズバ抜けて高い身体能力に優れた動体視力。だが、彼を最強と言わしめた理由は他にある。
 あれは一回戦での出来事だった。
「要注意人物は一宮だ。一宮さえ倒せば後はどうとでもなる」
 直太郎の対戦相手だった小久保中学所属、ブレード部主将が試合方針を定めた。まずは4人で直太郎を強襲する、と。
 試合開始とともに作戦を実行した小久保中学の選手ら4人は、同時に直太郎へ襲いかかった。避けようがない強烈な一撃ととともに。
「……甘いな」
 直太郎はボソッと一言呟く。その言葉は誰も聞き取れなかっただろう。だからこそ、誰も気がつかなかった。直太郎の周囲がパチパチと雷を帯びていることに。
「──なんだ、と!?」
 気づいたときにはもう遅かった。
 直太郎は自身を中心に、膨大な量の雷を周囲に放出する。それは今まさに直太郎へ襲いかからんとしていた敵選手ら全員を巻き込み、4人まとめて撃破した。
「あれが一宮君の剣異──雷鳴(いかづち)……」
 大会に参加する選手らは皆一様にその脅威を目の当たりにしていた。
 剣異とは、剣に埋め込まれた回路を通じて、己の内に眠る異能の力を引き出すもの。それによって迫力ある試合を楽しめるのも、ブレードの醍醐味の一つだろう。
 そんな剣異の力を存分に振るう直太郎の能力名は、雷鳴(いかづち)。
 自身を中心とした雷の放出や空から降り注ぐ雷撃の槍など、その様はまさに天変地異そのもの。
 恐らくこの大会で直太郎に勝てる者は存在しないだろうと思わせるほど、その力は圧倒的だった。
 だがそれは直太郎を慢心させることへと繋がった。
 それは2戦目に起こった出来事だ。直太郎はチームメイトの一人と広大なフィールドを駆け回っていた。
「ナオちゃん!独断専行はダメだ!ちゃんと皆を待たないと!」
「必要ねぇよ。この程度の連中なら俺一人でも勝てる」
 その言葉通り、直太郎の活躍はめざましいものだった。たった一人で敵チームの2人を撃破し、数的に有利な状況を作り出していたのだ。この時点で、直太郎達の勝利は揺るがないものとなっただろう。
「ナオちゃん!向こうも一人倒したって!敵チームは残り一人なんだし、そんなに慌てる必要はないよ!」
 必死に直太郎の後を追う彼は大きな声を上げて制止を乞う。離れた場所で戦っていたチームメイトの活躍によって敵の一人を倒したというのに、それでも直太郎が止まることはなかった。
 直太郎は敵を倒すことしか考えていない。彼の声が直太郎の耳に届くことはなかった。
「──見つけた。手こずらせやがって」
 ようやくのことで敵の姿を捉えた。
 直太郎は一目散に駆け出す。しかしそれは、手を出してはいけない相手だった。
「ナオちゃんッ!駄目だ、その人は──!」
 友の声は届かず、直太郎の剣は容赦なく敵の体を斬り裂いた。

3: しゅん [×]
2015-11-01 21:16:05

面白いです!続き気になります!

4: 宇治抹 [×]
2015-11-02 00:35:26

ありがとうございます。励みになります!

5: 宇治抹 [×]
2015-11-02 00:36:25

第1話-1

「───っ!」
 直太郎は飛び上がるように目を覚ました。嫌な夢を見たとでも言うように、彼の体は汗で濡れていた。直太郎は高まる動悸を抑えるように、ゆっくりと息を吐いた。
「また……あの時の夢か」
 それは1年前、まだ直太郎が中学三年生だった頃だ。直太郎は撃破されて退場途中だった敵の一人を容赦なく斬りつけ、流血沙汰の事故を招いたことがある。
 直太郎の手にはまだ、斬りつけた時の生々しい感触が残っていた。
「……はは……我ながら、本当に不注意だったよな……」
 言葉通り、敵を倒すことばかりを考えていた直太郎の不注意であることは確かだ。そもそも普通に試合をしている分には流血沙汰など起きようもない。
 選手たちは試合中、プロテクトコートと呼ばれる特殊な衣服を身に纏っており、そのコートのおかげであらゆる攻撃から身を守ることが可能となっていた。刃だろうが剣異だろうが、そのコートは完全に防御してくれる。
 ただ一点。そんなコートに弱点があるとすれば、耐久面だろう。
 プロテクトコートには耐久値というものが設定されており、それが0になると防御能力が著しく低下する。従って選手達は耐久値を気にしながら戦うことを余儀なくされるのだ。
 もしも耐久値が0になった場合、戦闘不可能と判断されフィールドから退場しなければいけない。
 直太郎は恐らく退場中の敵選手を誤って攻撃してしまったのだろう。別の場所でチームメイトの手によって倒され、フィールド外へ出ようとしていた敵選手の背中に向かって。
「…………っ」
 なんて間抜けなことをしてしまったのだろう。退場中の選手を攻撃するなど、あってはならない行為だ。敗北を意味する赤い帯も出ていただろうに。
 プロテクトコートは耐久値が0になると選手の周りに赤い帯が現れる。それはもう目立って目立って仕方がないほど過剰に。だから普通、あんな目立つものを見落とすことはない。
 なのに、直太郎にはそれが見えなかった。勝利ばかりを求め続けた結果、赤い帯の意味が頭から消え失せていたのだ。
 敵を倒す。それだけを考えて剣を振るっていた過去の自分に恐れを抱く。それでは殺人鬼と何ら変わらないではないか。
 不幸中の幸いとでも言うべきか、相手の選手は軽傷で済んだ。耐久値を0にされたプロテクトコートでも万が一のことを考え余力を残している。おかげで直太郎の刃は深く突き刺さることはなかった。
 だが──問題は敗北の選手に追い打ちをかけるような真似をしたことにあった。
 わざとじゃないにしても、みすみす許されるような行為ではないだろう。
 当然、直太郎のチームはルール違反による敗北を下され、二回戦目で大会を去った。
『お前のせいだ……っ!』
 そんなチームメイトの悲痛な叫びは、今でもハッキリ思い出せるほど心の奥底まで突き刺さっていた。まるで、罪を犯した直太郎への戒めのように。
 それからというもの、直太郎は周囲の目を気にするようになった。
「冷酷にも敗北した選手に攻撃を加える」
 その話題が大きく広まり、どこに行っても付きまとう。それもそのはず、優勝候補と目されていた直太郎がそんな事故を引き起こしたのだ。注目度が他の選手と比べ物にならない。
『二度とブレードに関わるな』
『その血まみれの手で、また誰かを傷つけるのか』
 そんな言葉の数々が無情にも直太郎に降り注ぐ。耳を塞いでも、目を閉じでも、その言動が脳裏から離れない。
 いつしか直太郎は、剣が握れなくなっていた──。
「はぁ……」
 ぽすんっ──と、直太郎は再びベッドの上で横になる。視線の先には今まで苦楽を共にしてきた己の相棒の姿があった。銀色に光り輝くそれは、まだ戦い足りないとでも語っているようだ。
 父親に憧れ、興味を持ったブレード。だが、始めたきっかけはある人を守るためだった。かつて、虐められていた自分を救ってくれたあの子の為に──。
 剣を見ているうちに深い眠りに誘われて、直太郎はゆっくりと瞼を閉じる。
 その寸前。家のチャイム音が部屋まで届き、直太郎は現実に引き戻された。
 危うく落ちかけたが、そろそろ起きなくてはいけない時間だ。直太郎は重たい瞼のまま洗面台へと向かう。気は進まないが、今日も学校がある。いつまでも寝ていられない。
 母親が玄関口で誰かと話している声が聞こえた。恐らく相手は直太郎の友人、花崎(はなさき)梨穂子(りほこ)だろう。このぐらいの時間になると、決まって直太郎の迎えに来る。
 わざわざ来る必要はないと直太郎は何度も言っているが、梨穂子はそれを聞き入れるつもりはないようだ。
 玄関の方へ視線を向けると母が梨穂子と楽しそうに話している様子が伺えた。「相変わらず美人さんねー」などという言葉を重ねて、梨穂子を困らせているようにも見えるが。
 確かに梨穂子は幼馴染の目から見ても美人だと思う。艶やかで真っ直ぐに流れ落ちる黒髪。梨穂子の父親が厳格な人だからだろうか、育ちの良さが滲み出ているかのように整った容姿。
 まるでお人形みたいとよく言われているそうだが、なるほど確かに的を射ていると直太郎も共感したぐらいだ。まさに大和撫子といった感じの女の子だろう。
「あ、ナオ君。お迎えが来たわよ」
 直太郎の存在に気づいたらしい母が声をかけてきた。
「分かってるよ、声が聞こえたから。おはよう、梨穂子」
「あっ、はい。おはようございます、直太郎君」
 梨穂子は畏まった口調で挨拶を返す。
 直太郎と梨穂子は同い年だ。昔はもっと砕けた口調で話してくれていた梨穂子だが、いつからか直太郎に対して敬語を使うようになった。
 お互いを『リホ』『ナオ君』と呼ぶこともなくなり、まるで二人の間に大きな壁でも生まれてしまったように思える。
「早めに支度を済ませるから、少しだけ待っててくれ」
「はい。お言葉に甘えて」
 直太郎はそれだけを伝えると、部屋の中へと姿を消した。
 今の会話の中で、二人は一度も目を合わせなかった。──というよりも、目を合わせようとしなかったのは直太郎の方だったかもしれない。

6: しゅん [×]
2015-11-04 00:58:17

いえいえ!
これからも読むので更新楽しみにしてます!

7: レイ [×]
2015-11-04 01:11:22

意見言います

主人公の名前と競技めいがが少しダサいかなと思います
読み方がわかってないだけかもですが、直太郎はダサい気がします
読者を惹きつけれる名前ではないです

会話の部分や地の分についてですが、説明口調が多く感じます
チャットへの投下なので短くなるのはわかりますが、ラノベ感が減ってしまってるきがします

会話が少なめだと思います


話は面白いし、まだまだ広げれそうなので頑張ってください

8: 宇治抹 [×]
2015-11-04 02:39:32

感想、意見ありがとうございます!

早速主人公の名前を変更してみました。これでも惹きつける名前ではないかもですが、前よりはマシになったかなぁと。←

9: 宇治抹 [×]
2015-11-04 02:40:43

【第1話-2】

 朝食を早々に平らげ、支度を済ませた直葉(なおは)は鞄を手に玄関へと向かう。
 適当な場所に腰掛ける梨穂子に一言謝罪してから一緒に家を出た。
「あの……直葉君」
 道すがら、梨穂子が声を上げた。恐る恐るといった様子で声量が小さい。
「どうした?」
「優也(ゆうや)君がブレード部を立ち上げたって話、知ってますか?」
 優也というのは1年前、直葉が事件を起こした際に一緒に行動を共にしていたチームメイトだ。フルネームは二刃(ふたば)優也。
 直葉の親友でもあり、また、唯一チームメイトの中で直葉を責めなかった人物でもある。
 そんな優也がブレード部を立ち上げたと聞いて、直葉は驚きを隠せなかった。
「なんでまた。ブレードがやりたいなら他の学校へ行けば良かったのに」
 直葉が進学した高校にはブレード部がない。というのも、直葉はわざわざブレード部がない高校を選んで進学したからだ。剣を握れなくなった以上、ブレードをやるつもりはなかった。
 平穏に過ごすためには直葉の悪名が知れ渡っていない学校が良い。となればブレード部がない学校が適任だろうと考え、ここ信修(しんしゅう)高校を選んだ。
 男女比2:8という、男にとっては肩身が狭い高校だが、逆に言えばそれだけブレードに詳しい人物が少ないということ。というのも、ブレードは女性の参加は許可されていないからだ。
 つまり、限られた生徒数の中で部員を集める必要がある。
「こんな学校じゃろくに部員だって集まらないだろ。一体何がしたいんだよ、あいつは」
 直葉は馬鹿にするような口調で、優也のことを嘲笑ったつもりだった。だが、梨穂子にはそう見えていなかったかもしれない。
 梨穂子は何かを堪えるような、とても辛そうな表情を浮かべていた。
「本気で──言ってるんですか?」
「…………」
 直葉は表情を曇らせた。もしかしたら、まだ直葉とブレードをやりたいと思ってくれているのでは。そんな予感が脳裏をよぎる。
 優也をブレードに誘ったのは直葉だ。幼い頃からお互い切磋琢磨しつつ、共に努力を重ねてきた。いつか、大きな舞台で勝負しようと約束もした。
 もしも、まだ優也がそれを覚えているとしたら──。
 直葉は首を振った。一体何年前の約束だ、と。覚えているはずがない。
「俺が知るかよ。あいつが何を考えてるかなんて」
 直葉はそれだけを告げると、梨穂子を置いて先に学校へ向かった。何も聞きたくないとでも言うように。
「直葉君……」
 置いていかれた梨穂子は、その場に立ち止まって空を仰ぎ見た。今日は快晴だ。ブレードをやるにはもってこいの天気だろうに。直葉にはもう、ブレードをやるという選択肢は残されていないのだろうか。
 梨穂子は先ほど直葉の母と話した会話の内容を思い出す。
『ナオ君のこと?』
『はい……。何だか前よりも素っ気ないような気がして』
『うーん、そうねぇ……。あの子はたぶん、意地を張ってるだけなのよ』
『意地……ですか?』
『ほら、リホちゃん昔あの子と約束したでしょ?覚えてる?』
『はい』
『その約束を果たせそうにないから、ムキになってるのかも』
『でも、私はもう気にしなくていいと』
『あの子も一応男の子だから。気にしなくてもいい、なんて言葉は逆効果かもしれないわね』
『で、ではどうすれば』
『ごめんなさい。それは私もよく分からないわねぇ』
『う、うぅん……。面倒、ですね。男の子って』
『ふふ……そうね』
 直葉の母は言っていた。意地を張ってるだけだと。
 恐らく直葉はブレードへの興味を完全に失ったわけではない。だが、1年前の出来事から剣が握れなくなってしまった事と、そのせいで約束を果たせそうにない事からブレードを再び始めようという結論には至らないのだろう。
 だったら背中を後押しするような何かがあれば──と、ブレード部が出来たことを伝えてみたが逆効果だったかもしれない。
 やはり根本から変えてみないといけないのかもしれない。再び剣を握れるように直葉の悪名を消し去るとか。
「……どれだけ時間をかけるつもりですか」
 梨穂子は首を振る。一度広まってしまった事柄は簡単には消えてくれない。得策とは言えないだろう。
(約束……か。あの時の約束を果たそうとしてくれているなら、やっぱりブレードを続けた方が良いですよね)
 梨穂子は消えてしまった直葉の背中を追うように足を動かした。今度は別の路線でアプローチをしてみよう。
(ふぅ……。それにしても)
 何故、自分がこんなことをしなければいけないのか──。そう考えることはあっても、梨穂子は止めるつもりはなかった。
(ふふっ。一体、何故でしょうかね)
 責任感だからとかではなく、もっと別の気持ち。それが何なのか、理解するのは先のことになりそうだけれど。

10: 宇治抹 [×]
2015-11-04 02:43:20

次からは会話文も意識しつつ、作成してみます。

もし読んでくださっている方が他にもいらっしゃいましたら、どんどん意見をください!なんでも構いませんので!

11: 宇治抹 [×]
2015-11-09 16:20:24

【第1話-3】

 梨穂子よりも一足先に学校へ辿り着いた直葉は、自分の席に座り朝のHRを待った。
 落ち着く時間ができると、先ほどのやり取りを思い出して今更ながら恥ずかしさが込み上げてくる。
 子供じみた真似をしてしまった。梨穂子はきっと、気を遣って言ってくれたはずなのに。
 自分の席で頭を抱えていると、正面に誰かの気配を感じた。
「……優也か」
「優也か、とは失礼な。おはよう、ナオちゃん」
「おはよう。つーか、そのナオちゃんっての止めろよ。恥ずかしいだろ」
「いいのいいの。この呼び方が気に入ってるんだし」
「俺はちっとも良くないけど」
 いくら言っても改めるつもりのない優也の様子に、半ば諦めるように溜め息を吐いた。
 名前通り、優也はとても優しい性格で誰とでも分け隔てなく接することができる人物だ。たれ目気味な瞳に笑顔が絶えない口元、表情だけを見ても優しさが満ち溢れているよう。その優男っぷりに心を鷲掴みにされた女生徒は数知れず。
 そんな優也と共にいると、自然と直葉も視線を集めてしまうことになるが、気にしないように努める。
 それよりも、直葉は今朝方聞いたばかりのブレード部について優也に尋ねた。
「ブレード部を立ち上げたんだってな」
「そうだよ。僕はまだブレードをやりたいからね」
「だったら──」
「ブレード部がある高校へ行け?」
 直葉の言葉は遮られ、言いたいことを先に言われてしまう。それが面白くなかったのか、直葉は少しだけムッとした表情を見せる。
「……そうだ」
 優也は何故ブレード部がない高校へ来たのか。やはり直葉の存在が枷になっているのだろうか。
 しかし予想に反して、優也の答えは直葉の想像とは全く異なるものだった。
「チームで戦いたいと思ったからだよ」
 直葉はその言葉の意味を理解できず、ポカンと口を開けたままの間抜けな表情を見せる。
「もしかして、ナオちゃんがいるからこの高校に来たと思ってた?違うんだなぁ、それが」
 優也は直葉の考えを一蹴する。僕は僕の意思でこの高校を選んだ、と優也はハッキリと口にしたのだ。
「もちろんナオちゃんとまた一緒に戦えたら──ナオちゃんと勝負ができたら、って思う事はあるよ。でも僕がここを選んだ理由はさっき言った通り」
「チームで戦う……?」
「そう。──今やブレードは一番と言ってもいいくらい人気のスポーツだ。どの高校にも野球部やサッカー部があるように、ブレード部も当然のように存在することはナオちゃんも知ってるよね?」
「ああ」
「そんな中でブレード部がない高校はとっても珍しいわけだ。だからここを選んだ」
「……意味が分からない」
「つまり──0からスタートしたいんだよ。すでに完成されたチームの中で戦うよりも、1から作り上げたチームで戦いたいと思った」
 開いた口が塞がらない。0からスタート?
 何故わざわざハンデを背負って戦おうとするのか。何故わざわざ苦労するような道を選ぶのか。直葉には理解できなかった。
「ナオちゃんはさ、強さばかりを求めていたでしょ」
「ああ」
「でも、その結果があれだよね」
「…………」
 1年前の事故のことだろう。直葉は言葉を発することもなくなった。
「ナオちゃんには僕らが見えていなかった。チームのことを考えてくれていなかった。1人のほうが戦いやすいと思わせてしまった」
 直葉に対するダメ出しかと思ったが、違う。そういう環境を生み出してしまったことへの懺悔のようにも聞こえる。まるで悪いのは僕だと言うような口ぶり。
「だから僕は1からチームを作り上げたいと思った。チームワークこそが大事なんだってことを証明するためにも」
 優也は握りこぶしを作りながら熱く語る。
 そういえば、中学の頃のチームは確かに信頼関係なんて言葉とは無縁だった。
 直葉が中学のブレード部に入部した頃、すでにそこではチームワークみたいなものが確立されていて、その輪の中に入る余地は一寸たりともなかった。完成されたチームだったというわけだ。
 上級生が次々と引退し、直葉の世代が最上級生となった後も結果は散々だった。チームとしての戦いを教えてもらえなかった直葉達は連携なんて言葉を知らず、バラバラに行動するようになった。
 それに直葉は個人戦で名を大きく上げていたから、それを快く思わない同級生達から嫉妬の目を向けられていた。
 そんな信頼関係もへったくれもないチームで戦おうなど愚の骨頂だ。優也はずっとそう考えていた。
「ナオちゃんがいれば団体戦でも優勝できたかもしれない。でも、それはあまりにも面白くないだろう?僕はチームで戦いたいんだ。だから、確実に信頼関係を育める選択肢を取った」
「それがここってわけか」
 あの中学が特別なだけで、全ての高校が新参者に厳しいわけではないだろう。もっと楽な道があったはずだ。
 だが、優也はあえて一番厳しい道を選んだ。
「僕は逃げないよ。一度選んだ道から、逃げ出すことはしない。だから、ナオちゃんも」
 優也は、直葉が自己中な人間だったにも関わらずチームのことを考えていた。皆の事を考えられる人間が作るチームなら、さぞかし戦っていて気持ちが良いだろう。
 もしもやり直せるなら、優也が作ったチームで一緒に戦いたい。優也の申し出を受け入れてしまいたい。
 しかし、それは許されない行為だ。
「悪い、俺はもう剣を握らない。それが俺の罪滅ぼしだから」
 直葉は一寸の迷いなく剣を握らないと口にした。その決意は固いのだろう。直葉の瞳は真っ直ぐに優也へ向けられていた。
「待ってよ、ナオちゃん。罪滅ぼしって、そんなことを考えてたの?」
「ああ」
 昔から直葉は自分に厳しい人間だと思っていたが、そこまで責任を感じていたとは思いもしなかった。
 そんな性格の直葉が剣を握らないと断言したのなら──それはもう、ブレードを引退したと言ったも同然だ。
 優也がショックを受けている様子を見て居た堪れなくなった直葉は、突然その場を立ち上がった。
「……少し、外の空気を吸ってくる」
「あ、ナオちゃん!」
 背中から直葉を呼ぶ声が聞こえたが、立ち止まることもせず教室を後にした。
 強さばかりを追い求めた直葉が犯した罪。それは簡単に許されるものではない。
(だから──悪い。俺はもう、剣を握っちゃ駄目なんだよ)

12: 宇治抹 [×]
2015-11-17 01:40:14

【第2話-1】

 1日の授業が終わり生徒が続々と下校していく中、優也と梨穂子は自分たちの教室でしんみりと膝を付き合わせていた。
「まさか優也君がそんなつもりでこの高校を選んでいたなんて。私はてっきり……」
「それも嘘じゃないよ。やっぱりナオちゃんとはこの先も一緒に戦いたいと思うし」
「そうですか……。私の方でも続けてもらえないかと色々アプローチしてみたんですけど、徒労に終わりました」
「昔っから意地っ張りだからね、ナオちゃん。一度決めたことを簡単に覆すつもりはないのかも」
「そうですか……」
 やはりもっと別の角度から攻める必要があるのかもしれない。
 梨穂子が次の作戦を練っていると、優也が神妙な面持ちで梨穂子の名を呼ぶ。
「ん?どうしました」
「こう言っちゃなんだけど、難しいと思う……」
「難しい……?」
「ナオちゃんにブレードを続けてもらうこと」
 優也が珍しく弱気な発言を口にする。あんなに直葉と一緒にブレードをやりたいと言っていたのに。
「どうして、ですか」
「ナオちゃんがブレードをやらなくなったのは、過去に起こした事故の罪滅ぼしなんだって」
「罪滅ぼし、か。やはり責任を感じていたんですね……」
 梨穂子の顔が俯く。
「その罪が消えるまではブレードをやるつもりはないと?」
「うん。それに……」
「それに?」
「例えナオちゃんが再びブレードを始めたとしても、それを快く思わない人間もいる」
 優也の言葉には嫌になるぐらい、説得力がある。
 あんな事故を引き起こしたぐらいだ。また同じような事態を招く可能性だってある。確かに優也の言葉通り、それを危惧する人間がいても不思議ではない。
「では……もう、不可能ということですか?」
「それは分からない、けど」
 2人の表情に影がさす。先ほどまで新たな作戦を練っていた梨穂子だが、今の優也の言葉を聞いてから打開策が一向に思い浮かばない。
「……って、もうこんな時間か。ごめん、梨穂子ちゃん。僕はそろそろ行くよ」
 不意に優也が声を上げた。
「今日もですか?」
「うん。部員集めも重要だけど、まずは自分が強くならないと」
 優也は放課後、ほぼ毎日ブレードの練習を行っている。だがこの高校にはブレードの練習施設がないため、一般に開放されている有料の専用施設を借りて練習をする必要があった。
 そこまでは少し歩く必要があるから、そろそろ学校を出ないと暗くなってしまう。
「でしたら私も付き合いますよ」
「え、でもいいの?」
「はい。今の話を聞いて、全くもって策が思い浮かばなくなってしまったので……。それに私、仮にもブレード部のマネージャーですから」
 梨穂子はマネージャーとしてブレード部に所属していた。いつか直葉が戻ってくると信じて、彼のサポートを務めたいと考えてのことだった。
「そっか。じゃあ一緒に行こう」
「はい」
 二人は支度を済ませて学校を後にする。その道中、梨穂子は女子生徒達からの嫉妬の目を向けられて胃が痛かった。
「モテるんですね、優也君」
「あ、あはは。そんなことないよ」
「そんなことありますよ。私、睨まれたんですからね」
「ご……ごめん」
 申し訳なさそうに謝る優也に、ぷっと吹き出す。昔から誰に対しても優しい優也だが、それ故か気の弱い一面もあった。誰かに対して怒ったことがあっただろうか。
「着いたね。使用許可貰ってくるから、待ってて」
 考え事をしているうちに施設にたどり着いた梨穂子は、受付に向かった優也を待つため手近にあったソファーに腰を下ろした。
 物珍しさに辺りをぐるぐると見回すと、1つの集団が目に付いた。
 あそこにいる人達って、ブレードの強豪校の──確か、慶閃(けいせん)高校だっけ。
 慶閃高校。ブレードに携わる人間なら誰もが知る名で、去年の大会でもベスト3まで勝ち進め更に知名度を上げた。
 そんな有名校がこんな公共の施設に一体何の用事で来たのだろう。
 その時、梨穂子の視線に気づいたのか、1人の慶閃の生徒が歩み寄ってきた。
「失礼、聞きたいことがあるのだが」
「あ、は……はい。何でしょうか」
「君は信修高校の生徒で間違いないか?」
「そう、ですけど」
 梨穂子は頭上にハテナのマークを浮かべた。
 信修高校の生徒を探している──?
「一宮直葉という名前に聞き覚えはないか」
「えっ、なんでその名前を!?」
「知っているのか!?」
「し、知っているも何も、私の友人ですけど」
「そうか、それは都合がいい」
 都合がいい?一体何の話をしているのだろうか。
「一宮がブレードを止めたという話は本当か?」
「あ、えっと……」
 見知らぬ相手に本当のことを話していいのか躊躇われたが、目の前の相手からは誠実さが感じられた。それに何より、直葉を探してわざわざこんな所まで来たのだ。何か訳があるのかもしれない。
「止めた、というより……出来ないという感じで」
「なるほど。やはり過去の事故を引きずっているのか」
 目の前の人物は過去の事故のことも把握しているようだ。あれだけ騒ぎになったのだから、ブレードをやっていて知らない人間の方が少ないだろうが。
「残念だ。あの一宮誠士郎の弟と聞いて、密かに戦えることを楽しみにしていたのだがな」
 一宮誠士郎とは直葉の実の兄で、高校ブレード界において最強と称された今話題の人物だ。
 その誠士郎と戦いたいと思う人間は沢山いるが、直葉と戦いたいと思う人物までいるとは意外だった。中学では名が知れた選手だが、高校生らに比べれば直葉すらもヒヨッコ同然だろう。
「あの、そのためにわざわざここへ?」
「ああ。だが、無駄足だったようだ」
 目の前の彼は表情を曇らせた。その様子から、本当に直葉と戦うことを楽しみにしていたのだろうということが伺えた。
 そんな時、いつの間にか集まっていた慶閃高校の生徒の一人が話に割って入る。
「だから言ったじゃないっスか。最初から行くだけ無駄だって。敵選手を傷つけただけで取り乱すような奴だったんスよ?例えブレードやっていたとしても、大したこと(・・・・・)ないですよ」
 その男は身なりや口調からして、恐らく慶閃の一年生だろうか。口振りからして直葉の事故を目撃していたようだが。
 それよりも癇に障ったのは、直葉を小馬鹿にしたような発言だ。それには梨穂子も黙っていられなかった。
「何も知らないくせに、勝手なことばかり言わないでください」
「あン?──おおっ、よく見れば可愛いじゃん君!どう、良かったら俺らとお茶でもしない?」
「は?何言って──」
「よし決定ー。早速行こうぜ、ほらほら」
「ち、ちょっと離してください!」
 強引に手を掴まれた梨穂子はそれを振り解こうとするが、男の力には勝てない。
「────待った」
 突如、横から伸びてきた腕が男の手を掴み上げる。
「いってぇ!なんだテメェは!」
「それはこっちのセリフだよ。梨穂子ちゃんに、何をしてるんだ?」
 その正体は優也だった。しかし、様子が変だ。普段は聞いたこともない声音で話す優也にゾクッと背筋が震えた。
「ああ?デートに誘っただけだろうが。何か文句でもあンのかよ」
「慶閃高校の生徒がそんな低俗な連中だと、その実力もたかが知れているね」
「……ンだと」
「さっさと消えてくれない?目障りだから」
 声音どころか口調すらも変わる。こんな優也は見たことがない。
「テメェ、誰に喧嘩売ってんのか分かってんのか?」
「理解しているよ。慶閃という泊が付いただけの、小物だろ?」
「もう我慢ならねぇ……!そこまで言うのなら勝負しろ!」
 人を馬鹿にしたことなどなさそうな優也が、煽りに煽って慶閃の生徒らは怒り心頭といった様子だ。
「ああ、構わないよ。どうせなら全員まとめて相手しても構わないけど?」
「ふざけやがって……!」
 慶閃の生徒らは奥のスペースへ向かう。あの広い場所が恐らく試合場だろう。
 優也は彼らの後を追うように歩き出すが、梨穂子はその背中へ声をかけた。
「ゆ、優也君」
「……ごめん、頭に血が上ってさ。梨穂子ちゃんを怖がらせたこと、それとナオちゃんを馬鹿にしたことが許せなくて」
「それは……私もですけど。ですが、大丈夫なんですか?複数人まとめて相手するなんて」
「ああ──平気だよ」
 優也はそれだけを口にすると、奥のスペースへと姿を消した。

13: 宇治抹 [×]
2015-11-17 01:48:50

えー、報告があります。作品改善の為、EXTRA/BLADEは次回の第2話-2で執筆を中断します。申し訳ないです!

まず主人公の活躍する場面が当分先になってしまいそうな点、それと読者を引き込む序章ではない点が原因ですね。この辺りは自分の実力不足です。

今後、こういったことも多々あると思います。いわゆる失敗作を投稿し、それに対する意見を求めて改善したり。そういった試行錯誤が目的となります。完成品が見たいという方は本当に申し訳ありません!

少しずつ成長していきますので、温かい目で見ていてもらえると有り難いです。

まずは短編でも書いてみようかなぁ……。

14: 宇治抹 [×]
2015-11-17 15:27:28

【第2話-2】

 取り残された梨穂子は呆然と立ち尽くしていたが、すぐに現状を思い出して我に帰る。
「平気って言ったって、いくらなんでも──」
「いや、恐らく問題ないだろう」
「ひゃあっ!?」
 突然真後ろから発せられた声に驚き、情けない声を上げてしまう。恐る恐る振り返れば、そこには最初に声をかけてきた慶閃の生徒がいた。
 敬語を使われていたことから、恐らく2年か3年。あの失礼な連中と同類、というわけではなさそうだが。
「すまない。驚かせたか?」
「いえ……」
 梨穂子は顔を赤くする。恥ずかしい姿を見せてしまった。
「それより問題ないというのは?」
「見た感じ、あの優也という男は中々やるようだ。あいつら程度では話にもならんだろう」
 一目見ただけで優也の実力を見抜き、冷静な判断を下す目の前の人物に驚きを隠せない。只者ではないことだけは確かだ。
「あの……彼らは仲間では?」
「ふっ、冗談を。あいつらを一度でも仲間と認めたことはない。勝手に付きまとわれて困っているぐらいだ」
「色々あるんですね、慶閃にも」
「ああ──。と、話しているうちに決着がついたみたいだな」
「えっ!?」
 梨穂子が慌てて優也の元へ向かうと、そこには倒れ伏せる数人の男とそれを見下ろす優也の姿があった。
 この短時間で複数人を相手に勝利したの?
「……大したことないですね、慶閃の生徒も。貴方の弟分じゃないんですか、六条(ろくじょう)信助(しんすけ)さん」
「ふっ……まさか」
「六条……?って、確か慶閃でリーダーを務める人物じゃ──!」
「そうだよ。その本人の真横にいたんだよ、梨穂子ちゃん。気づかなかったの?」
 気づかなかった。確かに見覚えはあるな、と感じていたのだが、まさか本人だったとは。
「申し遅れたな。慶閃で部長を務めさせてもらってる、六条信助だ」
「ひ、ひゃい!こ、これはどうもご丁寧に!」
 梨穂子は動揺のし過ぎで口が回らないようだ。突然のカミングアウトだったし、仕方ないといえば仕方ない。
「君は二葉優也だったな。中学では目立った活躍はなかったが、俺は君のことも評価している。もし君が個人戦に出ていれば、無類の強さを誇っていただろうとね」
「………………」
「え、それってどういう──?」
 興味津々という様子の梨穂子を見て、これ以上隠し通せないと観念したのか、優也は正直に口を割った。
「梨穂子ちゃん。僕の剣異はね、周囲の重量を変化させる能力なんだ。だけどそれは味方も巻き込む力。だからチームプレーには向かない剣異なんだよ」
 でも、待って。優也君は団体戦に出たいんじゃ──。
 梨穂子が二の句を継げずにいると、いつの間にかフィールドの真ん中に佇む信助が優也に声をかける。その手に、得物を持って。
「さて、二葉優也。うちの部員を打ちのめしてくれた礼だ。剣を取れ」
「……戦え、と」
「ああ。お目当の一宮直太郎は腑抜けになったようだしな。──貴様で我慢しよう」
「……挑発なら無駄ですよ。と、言いたいところですが」
 どうやら優也の怒りはまだ治っていなかったようだ。そこに、続けざまに直太郎に対する侮辱。優也はさらにヒートアップする。
「その挑発に乗って──ぶっ倒させてもらいますよ!」
 優也の目がカッと見開く。瞳孔は開き、歯を噛み締める姿はまさに獣。
「梨穂子ちゃん、下がって!」
 剣異の力が梨穂子まで及びかねないと判断した優也は声を上げる。その声に驚いた梨穂子は慌ててフィールド外まで退場した。
「地に伏せろ!」
 優也が剣を地に突き刺すとその周囲の重量が変化し、立っていられないほどの圧がのしかかる。
 ぐらり、と信助の体が揺れる。だが、それだけだった。
 信助の体は揺れこそしたが、地に倒れることはなかった。それどころか重力に慣れたように感じさせる。
「予想以上に|軽いな(・・・)。こんなものか?」
「くっ……!」
「言っておくが、この程度の重さはうちの練習メニューでこなしている。その力、大したことはなかったな」
 優也の首が項垂れる。自身の剣異をあっさりと突破されて、ショックを隠せないようだ。
 梨穂子は何と声をかければいいのか躊躇った。何せ、優也は肩を揺らして涙しているように見えるから。
 しかし、それは見当違いだった。泣いているのではない。笑っているのだ。危機的状況に陥っているというのに。
「軽い、だって?当然でしょう?何せ僕は──」
 優也は背後から小さめの剣、ダガーを取り出した。ロングソードを右手に、ダガーを左手に所持する、いわゆる双剣というスタイルだ。
「本気を出していない!」
 優也はその場から大きくジャンプした。そう、大きく。それは人間の身体能力では不可能なレベルの高さだ。
「───!」
 信助は言葉にこそ出さないものの、表情は驚きに染まっていた。
 何をそんなに驚いているんだろう?重力操作が出来るなら、高く飛ぶことだって可能なんじゃ?
 梨穂子は首を傾げたが、信助が驚いた理由をすぐ知ることになる。
「はァッ!」
 空中から襲いかかるように迫る優也の一太刀を信助はギリギリのところで避ける。その動きに梨穂子は疑問を抱いた。
「何だろう、六条さんの動きが重たいような……。もしかして」
 優也の軽快さと信助の動きの鈍さ、それはつまり信助の重量を増加させたまま、優也の重量だけが軽減されているのでは。
「……なるほどな。この一年で重力操作のコントロールを身につけたか」
「それだけじゃない」
 間髪入れずに優也の追撃が信助に迫る。重力に慣れたというだけあって、2撃3撃目と辛うじて避けられた。
 しかし次の瞬間、信助にのしかかる重力が増大する。
「な、に……ッ!?」
 その重量に耐えきれず、思わず信助は膝を付いた。立つこともままならないのだろう。
 優也は信助の目前に剣先を向ける。
「勝負あり、ですね」
 価値は揺るがない。そういった自信からか優也の声には活気があった。
 今まで優也の実力は未知数だったが、とんでもなく強いではないか。
「……ここまでの実力を有していたとは、な」
 負けを認めた、と梨穂子は思った。しかし、そうではない。
 今の言葉は六条信助という男を本気にさせたということだ。
「なっ──!?」
 この重力下の中でもなお、信助は立ち上がった。その姿は今にも重力に押し潰されてしまいそうで、不安定だ。
 だが何故だろう。今の信助は、さきほどよりも格段に強いと感じさせた。
 優也は首を振る。動揺しては相手の思う壺だ。
 落ち着け。この重力下の中、満足に動けるはずがない。ただのハッタリだ。
 優也は迷いを断ち切るため、満足に動けないであろう信助に向かって剣を振り下ろす。

15: 蜜女 [×]
2015-11-18 07:41:29


もっと語彙を増やせば、
この話はもっと面白くなるだろうし、
情景描写を細かく書いて、
読み手に想像させるようにできたら尚良し。

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