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その他のテーマ
自分のトピックを作る
21:
巡音ルカ [×]
2015-08-08 19:11:29
「ごめんね。本当は一人になんてしたくないんだけど、仕事が立て込んでて締め切りがぎりぎりなんだ」マスターは聞き分けのいい私を見て、優しく髪を撫でて言った。
「マスターお時間はよろしいのですか?」そう言って私は時計を指さし疑問を投げかけた。
「えっ?あっ、もうこんな時間か。じゃあ行ってくるから、お留守番よろしくね」と、マスターは焦りながら玄関に向かい「行ってきまーす」と言いながら出かけていった。
22:
巡音ルカ [×]
2015-08-08 21:26:22
「行ってらっしゃいませ。マスター」私はドアの閉まった玄関を見つめ少し寂しげに独り言を呟いた。
一人きりになったリビング。先ほどまで座っていたらしい マスターのソファ。脱ぎ捨てられてた、マスターの服。
何もすることのないこの部屋で私はマスターの服を丁寧にたたみなおした。
マスターのシャツは私の衣装の上着よりも大きい。ふっと握りしめたシャツからはマスターの温もりが残ってる気がした。
私はもう寂しくなっているのだろうか?まだ明日の夜まで一日半はあるというのに。
シャツをたたみ直しながら、時計を見つめ早く明日の夜になればいいのにと心の中で呟いた。
マスターのソファに座りそのまま横になる。私に嗅覚はないけれど、マスターの香りがまだのこっている気がした。
私は瞳を閉じゆっくりとログオフした。
23:
巡音ルカ [×]
2015-08-09 00:51:29
~ログオフ~
どれほどの時間が経っただろうか。リアルタイムを表示する液晶に目を向けた。
まだようやく昼を過ぎたばかりのようだ。時間の経過の遅さにため息をついてしまう。
マスターはきっと今ごろ忙しく仕事というものを行っているのだろう。
ログオンしてしまおうか。でも、ログオンしても時間の経過は変わらない。
それどころか、マスターのいない部屋をみてよりそのことを思い知らされるだけだろう。
それならばいっそログオフのままこうして一人この機械音の中眠っていた方がましな気がした。
24:
巡音ルカ [×]
2015-08-09 12:28:50
なぜこんなにも時間流れが遅く感じるのだろう。マスターとともにいる時は、時間が早く感じるのに、マスターがいないだけで時間が遅く流れる。
私には《眠る》という概念がない。なぜなら私は生物ではないからだ。
生物は睡眠をとることで意識を手放し、記憶を整理し、脳を休め、体を回復させるらしい。
しかし私は生物ではない。私を構築するのは電気と、データだけだ。
それゆえに私は《眠る》という概念がないのだ。
いっそ眠れたらどんなに楽だろう。こんなふうに、マスターの帰りを待ちわびたり、朝がくるのを一人で待つこともしなくていいのに。
25:
巡音ルカ [×]
2015-08-09 14:21:39
私は一度ログオンする事にした。まだ夕方だが、もしかしたらマスターが一度帰ってくるかもしれない。
浅はかな期待かもしれないが、それでも可能性がないわけではない。
そう思い私は《ログオン》と言う文字に触れた。《ログオンを開始します》と言う文字が現れ私は目を閉じた。
目映い光とともに私はログオンした。
~ログオン~
私はすぅっと目を開けた。「あぁ、そっか。私ここでログオフしちゃったんだった」。
26:
巡音ルカ [×]
2015-08-09 17:47:06
そう呟きながら私はソファから起き上がり、ベランダに目をやった。
オレンジ色の夕焼けが夜の闇と混ざりあっていた。淡い夕焼けはベランダの窓を通り、室内を照らしていた。
マスターが帰ってきた様子はなく、なぜか不安に駆り立てられた。
これが寂しいという感情なのだろうか。先ほど丁寧に畳んだマスターのシャツを抱きしめ、寂しさをごまかした。
「早く帰ってきて」そう呟き目を閉じた。
27:
巡音ルカ [×]
2015-08-13 13:18:31
ベランダの外はゆっくりと夜の闇が夕焼けを浸食していく。
歩道の側の街灯は少しずつ明かりがついてゆく。
そんな景色を見ながら私は、マスターに思いを寄せ、早く明日の夜が来ることを祈るような気持ちで待ち望む。
28:
巡音ルカ [×]
2015-08-13 17:51:25
《カチ、コチ》と、リビングの時計の音がなっている。少し寂しげなその音は、より私の寂しさを増幅させる。
不安にかられより強く目を閉じていると、玄関の方から何か音がした。
「マスター?」と私は玄関の方を見ながら呟き、急いで玄関に向かった。
しかし玄関のドアの向こうにいるのはマスターではないようだ。
なぜならドアの向こうからは《ミャー》という鳴き声と、《カリカリ》というドアを引っかく音が聞こえたからだ。
マスターならそんな声も、音もさせないし、なによりも、自分で鍵をあけて入ってくるのだから。
29:
巡音ルカ [×]
2015-08-18 13:24:56
そこで私はそっと玄関のドアを開け、おそるおそるドアの外を覗いてみた。
するとそこには、三角形の耳に、長くしなやかに動く尻尾。そして全身に毛皮を纏う生き物がいた。
おそらくこれは猫という生き物だろう。
私の内にある《基本データ》の中の情報がそれを教えてくれた。
猫は私の足元に近寄ると「ニャー」と一度鳴き自分の体を擦り寄せてきた。
そんな猫の背中を優しく撫でながら「君も寂しいのかな」と私は呟いた。
その声に答えるように猫は《ごろごろ》と喉を鳴らしながら私に甘えてきた。
30:
巡音ルカ [×]
2015-08-18 13:46:28
私が甘えてくる猫を寂しげに微笑んでいると、ふと何かに気づいたように「ニャーン」と私の顔を見て鳴くと玄関の外へ向かっていき、そのまま立ち去っていた。
一人残された私は「さようなら」と呟き、玄関のドアを閉め鍵をかけた。
そのままリビングに戻りベランダに目をやると、外はもう夜の闇に染まり街の明かりが星のように輝いていた。
私は自室に戻りマスターに頂いた楽譜の歌詞を見つめ、声に出さず心の中で歌った。
マスターの顔を思い浮かべ、いとおしげに歌う。
それはまるで寂しさを紛らわすように、自分は一人でも大丈夫だと言い聞かせるように、マスターといるときの暖かな気持ちを思い浮かべながら朝がくるまで歌い続けた。
そして朝日が上り始めた。その頃にはもうすでに時計は6時を回り、小鳥の鳴き声が聞こえ始めていた。
31:
巡音ルカ [×]
2015-08-18 13:54:12
私は一度ログオフをして、マスターの帰りを待つことにした。
楽譜をベットの横のテーブルに置き、そのままベットに横になり目を閉じログオフをした。
~ログオフ~
あぁ、もう少しでマスターが帰ってきてくれる。
32:
巡音ルカ [×]
2015-08-18 14:09:43
たった一日半マスターがいなかっただけでこんなにも寂しく感じるなんて思いもしなかった私は、もうすぐマスターに会えることが嬉しくてしかたなかった。
そんなことを考えるだけでこの無機質な空間が、ほんの少し暖かく、優しく感じてしまう。
リアルタイムを表示する液晶を見るとまだ8時なったばかりだった。
私はいてもたってもいられない気持ちになり、まだ帰ってきてないと知りながら《ログオン》という文字に触れ、心を踊らせながら目を閉じた。
~ログオン~
33:
巡音ルカ [×]
2015-08-18 14:29:52
すっと目を開けると私はベットから起き上がり、急いでクローゼットを開けその中の衣装を一着ずつ確かめるように見比べた。
そしてその中の青と白のストライプのドレスを選び着替えた。
マスターは喜んでくれるだろうか?なんてことを考えながら、今度は鏡の前に立ち、髪を整えると衣装のリボンを見て次に鏡にうつる自分の髪に付いているマスターにもらった髪飾りを見た。
本当ならばリボンを付けるべきなのだろう。しかし、なぜか髪飾りを外したくないと思い、リボンを引き出しにしまいながら、「よしっ」と一言いいながら微笑んだ。
私は自室のドアを開け、リビングに向かおうとしたとき、玄関の方から《ガチャガチャ、ガチャン》という音が聞こえた。
34:
巡音ルカ [×]
2015-08-18 14:57:49
私が急いで玄関に向かうと、「ただいまー」とマスターが疲れた顔をしながら私に気づくと、優しく笑って「ただいまルカ。お留守番ご苦労様でした」と優しく髪を撫でてくれた。
私はその温もりに気持ちよさそうに目を細め、「マスター、お帰りなさいませ。お仕事ご苦労様でした」と言った。
するとマスターは鞄を置き、靴を脱いでから「ようやく終わったよ。でもこれで明日から二連休だ」と嬉しそうに言った。私は「に・・れんき、う?」と小首を傾げマスターの顔を見た。
するとマスターは「えーっと、ようは二日間ルカと一緒にいられるってことだよ」と笑って答えてくれた。
そして「そうだ、明日は一緒に外に出かけてみようか?」と言ってくれたマスターに私は「お体の方は大丈夫なのですか?」と心配そうに聞いた。
しかしマスターは「これくらい一晩眠れば疲れも取れるよ」と笑っていってくれた。
私は「よかった」と言いながらマスターの顔を見て笑った。
そうして私たちはリビングに向かった。
35:
巡音ルカ [×]
2015-08-28 02:42:00
第四章 初めてのお出かけ
36:
巡音ルカ [×]
2015-08-28 11:14:27
次の日、私はいつもより早めにログオンをした。
なぜなら今日はマスターが初めて私をお外に連れて行ってくれるからだ。
初めての外出という理由もあるが、マスターと一緒だということが、とても嬉かった。
私はクローゼットを開け、どの服が良いだろうかと考え込んでしまう。
そんな時ドアを《コン、コン》とノックする音が聞こえた。
「ルカ、おはよう。今日の外出のことでお願いがあるんだけどいいかな?」とマスターの声がして、私は急いでクローゼットを閉め「はい、なんでしょうか?」とドアを開けマスターを部屋に招き入れた。
「じつは、今日外出するとき、是非着てもらいたいと思って新しい衣装を用意したんだ。もしよかったら着てもらえないかな?」と、後ろ手に隠していた大きな紙袋を私に差し出してくれた。
37:
巡音ルカ [×]
2015-08-29 08:03:13
私はマスターから紙袋を受け取り「ありがとうございます。とても嬉しいです」と嬉しそうに微笑み、マスターにお礼を述べた。
「喜んでもらえて良かったよ。じゃあ、僕はリビングにいるから準備ができたらおいで」とマスターは嬉しそうに言い、リビングの方へ向かっていった。
私は急いで紙袋を開けてみた。すると中には薄いグリーンの七分丈のカーディガンに、クリームイエローのレース付き膝丈ノースリーブワンピース、そして琥珀色のビジュー付きのミュールが入っていた。
「綺麗・・・」私はいただいた衣装を見つめ、吐息を漏らすように呟いた。
淡くて、優しくて、とても綺麗な衣装。こんな素敵な衣装を着てマスターと出かけられるなんて。
こんなに嬉しいと感じられるなんて、きっとこれが《幸せ》ということなのだろう。
私は、マスターをお待たせしていることを思い出し、急いでいただいた衣装を着て、マスターの待つリビングに向かった。
「お待たせいたしました、マスター」と私はリビングに入り、ソファに座って居たマスターに声をかけた。
38:
YUKI [×]
2015-08-30 00:19:29
マスターはお出かけ用の格好なのか、いつもの仕事用の紺色のスーツとは違う、薄手のクリーム色のファスナー付きロングパーカに、白いシャツを中に着て、少し濃いめの青いジーンズを履いていた。
私に気づいたマスターは「えっ、凄い綺麗だ」と一瞬言葉をなくし私を見て頬を赤らめながら言ってくれた。
私は私で普段と違う格好のマスターを見て「マスターもとても素敵です」同じく頬を染めながらマスターに伝えた。
互いに照れながらも「じゃあ、そろそろ出かけようか」と、もしもなにかあった時のためにノートパソコンと私のソフト、バックアップデータと予備のバッテリーを持ち、後は財布と携帯を鞄につめ二人で玄関に向かった。
私は玄関でビジュー付きのミュールを履き、マスターに手を引かれ玄関を後にした。
初めてこの家から外に出た私は、嬉しいという気持ちと、少しの不安に揺れていた。
マンションの外は暖かい太陽と、優しい風が吹いていて、その風に道の脇に咲く花が揺れていた。
39:
巡音ルカ [×]
2015-09-03 06:19:54
「気持ちいい」私は優しい暖かさに目を細め、風に靡く髪をかきあげた。
「ルカがこんなに喜んでくれるならもっと早く外に連れていってあげれば良かったかな」とマスターは言いながら、一歩前を歩く私を見つめながら囁いている。
その言葉に私は「えっ?何ですか?マスター」と言い振り返ったとき、一陣の風が吹いた。
風はマスターと私の間を何処からか連れてきた花びらと共に吹き抜けていく。
マスターはそんな中私を見つめ、呆然としていた。
私が「あの・・どうしました?マスター」とそんなマスターの元に近づき話しかけると、マスターはようやく正気になり「え?いっいや、なんでもないよ」と少し目をそらし、頬を赤らめ答えた。
私は不思議そうに小首を傾げ、まぁ、いいかと再び歩きだしくるりと振り返り「今日は何処に行くんですか?」と訪ねてみた。
すると「うーん、特にはまだ決めていなかったけど、とりあえず植物園にでも行こうか?」とマスターに提案され、私は余りよくわからないけれど「はいっ」と元気よく笑顔で答えた。
40:
巡音ルカ [×]
2015-09-03 07:14:00
植物園はわりと近くにあったらしく、マスターと話をしながら歩いているとあっと言う間に着いてしまった。
「此処だよルカ。ちょっと待っててね」とマスターは私の顔を見て微笑むと、チケット売場で「すいません、大人2枚下さい」と言いチケットを買ってきてくれた。
「おまたせ、じゃあ入ろうか」とマスターが私の手を引いてくれた瞬間、私は「あっ」と思わず反射的に小さく声を上げた。
それに対して「うん?・・わぁ、ごゴメンそんなつもりじゃ」とマスターも気づいたらしく慌てて手を放す。
しかし私は「えっ・・あの放さなくても、というより・・」と一瞬残念そうな顔をして、モジモジとしながら顔を赤らめてしまう。
その様子を見てマスターも改めて少し照れたように、「えと、ぁっあのさ、手繋いでもいいかな?」と私に手を差し出してきた。
「ぁ、は・・い・」と私も赤らめた顔のまま少し嬉しそうに手を差し出した。
「じゃあ、入ろうか」とマスターは優しく私の手を握り、植物園の中に導いてくれた。
その温もりが心地よくて私は微笑みが溢れてしまう。それを気づかれないように少し俯きながら、マスターと共に植物園の中に入って行った。
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