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参加型小説 「犬子」/19


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自分のトピックを作る
■: 瑛堵 [×]
2015-02-03 09:31:52 

参加型小説です.随所で話の進行に協力して貰えると助かります.然し,完結に行き着くかは未知です.コメントは御気軽にお寄せ下さい.


1: 瑛堵 [×]
2015-02-03 09:33:50

では,start...

2:   [×]
2015-02-03 09:34:41

*―*―*―*―*―*―*―

 ―女なんて、みんなしねばいい。
 Bar「ムルムル」を後にし、ニチカはくさくさした心持ちで猥雑な夜の繁華街を歩いていた。繁華街と云えども、此の辺りは田舎なもので、立ち並ぶ居酒屋の看板も何処かくたびれており、華々しさよりは、専ら薄ら寂しさを感じさせる。
 路傍では幾人か、酔っ払った男たちが喧嘩や罵り合いをしており、それらを視界の端で流し見つつ、ニチカは歩き続けた。
 ―詰まらない気分だ。
 振られた後だから、当然だった。見上げた夜の空には雲が低く垂れ込めており、陰欝な心持ちに拍車をかけるようであった。
 やがて、彼は一件の建物の前で足を止め、その地下へと降りて行く。



3:   [×]
2015-02-03 09:36:36

「あのアマ! また俺の誘いを無碍にしやがった!!」
 店に入るのと同時に、彼は叫んだ。マスターの髭男は他の客と談笑していたが、その怒号で入り口にニチカの姿を認めた。
「お高く止まってやがる!」
 ニチカは苛立った様子のまま、店内へ踏み入ると乱暴にカウンターの椅子に腰掛けた。
「また振られたのか。」
 マスターの髭男は苦笑しつつも、彼に冷やを出してやった。しかし、ニチカはそれに手を付けずにまたも声を荒げる。
「水なんて飲んでらんねぇよ! 今日はもういいんだ。」
 そして、古びたジャケットから、無造作な仕種で金を取り出すと、それをテーブルの上にぶちまけた。
「じいちゃん、これだけある。今日は飲みたいんだ! これで買えるだけのお酒を出してよ。それであんな見る目のないアマのことなんて、俺は忘れてやるんだ!」



4:   [×]
2015-02-03 09:37:16

 先にいた客が、口笛を吹いて冷やかす。兄ちゃん、いいねぇ、その意気で俺にも何か奢ってくれ、と割り込んで来る。
 ニチカは冷やかしてきた男たちの分も気前良く、酒を注文してやった。面白くない気分を晴らす為なら、他のことはどうでも良かったのだ。
 飲んで、飲ませて、記憶が失くなる程に、その日の彼は酒に溺れた。



5: 伝言板 [×]
2015-02-03 09:38:39

《一先ず,此処迄.》

「此の作品は“Boy Meets Girl”です。」
「捨てられない夢を持ちながら日々を送る少年が、特殊な事情を抱えた少女と出会い、擦った揉んだする話となっています。」
「話を進行する上で、閲覧して下さっている方に協力をお願いする前に、以下のことについて、もし、御質問を頂ければ、解答致します。」

1)男の子について
2)女の子について
3)世界観について
4)作品の構想について
5)その他(自由記述)



6: Hr#0822 [×]
2015-02-03 10:18:24

読みやすくて好きかも。
物語の進展に合わせて理解、把握していきたいので
質問は無しで。

7: 伝言板 [×]
2015-02-04 21:42:49

《Thank you for res》>6

8: 瑛堵 [×]
2015-02-04 21:45:15

ゆっくり,続けて往く心積もりです.御付き合い頂けますと,嬉しく存じます.

9:   [×]
2015-02-04 21:46:27

*―*―*―*―*―*―*―

 低く空を覆う雲が、微かな町明かりを反射して、鈍く光を宿す。その下の何処をどのように歩いてきたのか、記憶はない。
 ただ、何かに手繰り寄せられるように彼女はその地に辿り着いた。



10:   [×]
2015-02-04 21:47:13

*―*―*―*―*―*―*―

 翌朝、ニチカは「ガミジン」のバックヤードで目覚めた。かけられていた毛布もいつの間にかしていた移動も、恐らくはマスターの仕業だろう。
 頭が痛くて堪らなかったが、それ以上に喉が渇いていた。彼はふらふらと立ち上がると、バックヤードを出て短い廊下を抜け、無人となっているバーのキッチンに向かった。暗く静かな店内で、ニチカは棚から勝手にコップを取り出すと、蛇口を捻って少しばかり水を飲んだ。



11:   [×]
2015-02-04 21:49:35

 確認したところ、財布の中は文字通り、すっからからんだった。どれだけ飲んだのか、ろくに覚えていないが、これは「ガミジン」で酔い潰れると毎回、起こることだった。介抱料と宿代分が差し引かれているのだと割り切り、ニチカはこの件でマスターに盾突いたことは一度もない。
 飲水して一息をついた彼は、店を出ることにした。「ガミジン」のバックヤードの扉も出入口の扉も、内側からであれば、いつでも開けられるようになっている。しかし、鍵を掛けられている時は、外側から開けようとしても、ノブが回らなくなるという仕様になっている。お陰で外に出る分には、施錠の心配要らずであった。
 気怠さを抱えたまま、彼は細い階段を上った。



12: 伝言板 [×]
2015-02-04 21:57:12

《さて,外の様子は‥》

―晴れていたら一仕事しようかな。

「各話進行に協力をお願いします。」
「どなたか、翌朝の天気を教えて下さい。」

1)快晴だった
2)曇天だった
3)霧雨だった
4)
5)その他(自由記述)



13: 匿名 [×]
2015-03-10 01:10:15


快晴でしたね。


14: 伝言板 [×]
2015-03-10 12:48:38

《Thank you for res》>13

そうですね.確かに,此の日の空は青く澄んで,晴れ渡っていました.



15: 瑛堵 [×]
2015-03-10 18:29:03

>>匿名さん

コメントを有難う御座います.実のトコロ,レスポンスはもう来ないだろうと思っていました^^;
構想も忘れかけていたので,続きは思い出しながら,また,ゆっくりと書かせて下さい.

16:   [×]
ID:a65a790ed 2016-04-29 12:00:18

*―*―*―*―*―*―*―

 外に出ると、澄み渡った空の彼方から降り注ぐ朝日の光りが、寂れた繁華街を白く照らし出していた。
 二日酔いが醒め切らない頭で、彼はその様子を確認すると、自分の両頬を軽く叩き、気を引き締めた。
 ―出掛けよう。ちょっくら稼いで来よう。
 ニチカは駅のある方角へ歩を進めた。
 この町にあるものと言えば、名ばかりの役場に警察署、古びた学校と診療所、後は魚市場、船着き場、それから幾らかの飲み屋と今、彼が向かっている駅ぐらいであった。
 生活を営む分には、これといって不自由がないが、彼のような血気盛んな若者には些か退屈な町であった。

 それと比すれば、列車で片道二時間程の距離にある街のほうがまだ賑やかで刺激的なのである。このあたりの交通網の中心地であり、人の行き交いも多い。その分、危険な人間も多く、それを取り締まるための警察にも乱暴者が多々いるため、住み着くのには向かないが、仕事をするのには持ってこいの場所であった。
 ニチカは駅に着くと、上着の内ポケットから取り出した旅客券を用いて改札口を通過した。



17:   [×]
ID:a65a790ed 2016-04-29 12:01:01

 ―列車に乗るときはいつも一番後ろの車両から…
 それは彼の習慣であり、決め事であった。プラットホームには疎らに人がいる。端に向かう途中でニチカは今日一件目の仕事をこなした。
 反対の乗り場に列車が入ってきたのと同時に、その列車を待っていた様子の見知らぬ男がベンチから腰を上げたのだ。その一瞬を逃さず、ニチカは男の尻ポケットから財布を抜き、自分の上着に入れた。男はそのまま、反対方向に向かう列車に乗っていく。
 顔どころか、手も足も男の視界には入らなかったはずだ。朝から上出来だと、ニチカは内心でニヤリと笑った。彼の仕事とは、即ちスリであったのだ。
 少しの間を置いて、こちらの乗り場にも列車が来る。乗り込んだらまず、座る席でも探すかのように、最後尾の車両から先頭車両までをゆっくり歩いて標的を物色する。
 列車内では万が一、気付かれた場合に逃げ場がない。それでも、中には葱を背負った鴨もいるのだ。好機はいつ訪れるか分からない。そういう思いが彼にこの行動を習慣づけていたのであるが、かといって、それだけが理由というわけでもなかった。
「………!」
 さりげなく、乗客を見て回っている最中にニチカは一度、その目を丸くした。視線の先にいたのは、車窓から外を眺める若い女性。
 仕事柄、外見も内面も常に自然体を心掛けているが、この時ばかりは胸の鼓動を抑えられなかった。手を当てなくとも分かるほどに、彼の心臓は激しく脈を打ち始め、身体全体に緊張が走る。
 ―まさか…。まさか、な…。
 しかし、その緊張も瞬時に高まった期待も、女性が窓から目を離し、正面を向いたときに消え去った。



18:   [×]
ID:a65a790ed 2016-04-29 12:01:40

 ―ああ、やっぱりか…。
 未練がましく、ちらちらと女性の顔を伺うも、失望は深まるばかりだった。
 知らない顔がそこにあった。記憶の中の残像と、似つきようもない顔がそこにあったのだ。似ていたのは後姿の雰囲気だけだった。
 沈んでいく気持ちを振り払うように、ニチカはその場を歩き去った。



19:   [×]
ID:a65a790ed 2016-04-29 12:19:05

*―*―*―*―*―*―*―

 ―ここはどこだろう…。いや、真っ直ぐに行けばきっと…。
 ふらふらと、何度も人にぶつかりそうになりながら歩き続けた。たまに上を向く。土埃の所為か、霞んだ空がある。それでも空は青い。その青さに何故かとても引き付けられる。
 しかし、空に近付くことはできない。
 ―私が目指している場所は…、そう…。
 彼女は時折騒音に身をすくませながらも、人通りの多い街の中を歩き続けた。



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