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(アニメ/マンガ)BL・GL・NL(オリジナル) 小説集/131


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64: ブラック [×]
2015-04-19 23:31:10

 次元を迎えに行った帰り道(ルパン三世2nd)


 アジトに向かう途中、そろそろ満開の桜の花びらが舞う頃合いになってきたのを肌で感じる。
 花を感じさせる匂い、眠気を誘う温度に、心地よい風がジャケットの裾を抜けていくのを感じて、思わず鼻歌を歌いながらSSKを右手で運転する。
 そろそろジャケットを着ていると暑くなってきたと思いながら、海沿いの道路をゆっくり走っている。
 普段はこれ位ゆっくり走らないだろう。速度にして60kg。

「海が綺麗だねぇ、次元ちゃん」

 右手をドアの上に置いて後ろに振り返りながら、相棒に声を掛ける。
黒い服を纏った相棒は、今朝の5時までバーで飲んでいた所為か、帽子を頭の上に置いて規則正しく上半身が動いている。
 無論、その声に返答する訳でもなく、いびきを掻きながら靴を脱いで、後部座席を陣取っている。

「そんなに飲むからでしょ……」

 はぁ、と溜息を零しながら左手でジャケットのポケットを探り、煙草とつい最近購入したジッポを取り出す。
 煙草を取り出して、火を点けてカチン、とジッポを閉じれば煙草の箱と一緒にポケットに仕舞う。
 体内にジタンの香りを回し、息を吐き出して、煙草の煙を吐き出して運転していると、ふと、ガードレールの外から生えているのを見つけた。
 そう言えば蕾があったなと思いながらスピードを緩めていく。
 ビュウ、と風が吹けば淡いピンク色の花びらが空を舞う。
 そろそろ雨が多い時期になるだろうな、なんて起きもしない相棒に心中で呟きながらも愛車を止める。
 ダンッ、ドアを閉め、ジャケットを脱いで暑くなって目を覚ませと思いながら脱いだジャケットを相棒にかけて愛車に手をかけて桜を見つめる。
 短くなってきた煙草を口から吐き出し、靴の底で潰して火を消し、腕を枝に腕を伸ばす。
 パキン、人差し指と親指で枝を折り、色々な角度からその花を見物する。
 
「綺麗だねぇ」

 花に向かって言ったのか、寝ている相棒に言ったのか、それは誰にも分からないが自分が盗んだ宝石など以外、こうして平凡に、毎年その時期がやってくれば咲く花に対して、『綺麗』なんて感想を持つ事は無いに等しかった。
 どうしてこう思うのか、そんな事など分からないが、微笑みながら「次元ちゃん知ってる? 桜の木が美しいのは、木の下に死体が埋まってるからだぜ」と、後ろを振り向きながら言ってみた。
 起きる事はないのに、そんな事を言うのはきっと寂しいからではないと否定をしつつ、自嘲した。
 ――その瞬間。「あぁ」とボルサリーノの下から低い声が響いた。
 
「まさかと思うけど、次元ちゃん起きてたの?」

 そう尋ねると、鼻で笑うのが聞こえ、肩を竦めて呆れた表情を晒し「さすが元殺し屋だ」と嫌味を込めて、縁に腰掛ける。

「おめぇの気付きがおせぇんだ」

 俺の背中で寝てただろうが。小さく口にすれば聞こえていたらしく、口角を上げるのが見えて同時に上半身を起こした。
 
「店主さん困ってたぜ? 歩けないぐらい酔うなら止めとけって言ってるだろ」

 赤いジャケットに腕を伸ばし、しかし助手席付近から後部座席までは届かないので、相棒の次元大介に取れと無言で伝え、次元は合図に気付き、ジャケットを手に取り、腕を伸ばして差し出す。
 サンキュ。礼を述べながらジャケットを身に纏い、そのまま軽くジャンプをし、運転席に腰掛ける。
 エンジンを掛け、愛車を発進させる。

「お前にやるよ。暫くアジトに飾っておけ」

 右手に持った桜の木の枝を次元に渡し、右手で愛車を運転する。
 アジトまでそう遠くない距離。甘い花の香りに包まれながら鼻歌を歌っていると、次元に何の曲かと尋ねられた。
 そんな事があった、4月の15日。

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