TOP > 個人用・練習用

(アニメ/マンガ)BL・GL・NL(オリジナル) 小説集/131


最新 50レス ▼下へ
自分のトピックを作る
57: ブラック [×]
2015-04-02 07:12:03

 エイプリルフール(LUPIN The Third 次元大介の墓標)


 何も無い日、そう言ってしまえばそうなのだろうが、そうでもないと言えばそうでもない。
4月1日、エイプリルフールと呼ばれるその日は「嘘を吐いても良い日」だとされている。
そんな事に興味がない人はただの1日だろう。

 **

 紅色の高級感あふれるソファーに、窓付近に置かれたビリヤード。
先ほどまで誰かが使っていたのか、使用済みのような状態になっている。
 ソファーの前には小さなけれど多少物は置く事の出来る大きさの、木製のテーブルがある。
ソファーは1つで、近くにこれまた木製のイスがポツンと置かれ、虚無感をその部屋は放っているのだ。

 そんな部屋で1人の男、ルパン三世がソファに身を委ねながら新聞を読んでいた時の頃。

 ガチャリ、とリビングと呼べるその部屋のドアが開くと、髭面の男、次元大介が姿を現す。
いつもクールなガンマンと呼ばれる次元の顔は、何かを考えながら、けれどどこか決意したような様子でソファに近付いていく。

 そして、――ルパン。と小さく声をかける。

「次元どうした?」

 名を呼ばれ顔を上げると次元の姿があり、首を傾げながらもテーブルに新聞を畳んで置き、上半身を起こす。
 次元はその間にもルパンの様子をじっと見つめては、小さく息を吐き、顔を上げて「好きだ」と告げた。

「……は?」

 一瞬何を言っているのか分からないガンマンに対し、気の抜けた返事を返すも、何かの冗談なのだろうかと思考をめぐらせるが、次元はルパンと違い滅多に冗談を言わないし、ノリで冗談を言うような雰囲気でもない。
 その中で出た答えは『本心』という言葉。

「いやいや、次元。俺男だぜ? お前の『好き』が尊敬や友情なら受け止めてやるけどよ……」

 ルパンの返しに納得がいかないのか、次元は表情を柔らかくする事はなくルパンの後ろにある、背凭れに両手をつき、「そうじゃねぇ」と一言発した。
そしてボルサリーノの中からルパンが困惑している姿を捉えると、次元はその身を近づけた。
 それから、ルパンの唇に柔らかい何が触れた途端、それが次元の唇だとルパンが気付くのに約3秒。

「おい、次元。何の真似だ」

 次元が離れてからルパンは怒気を含んだ声で、次元を睨みつける。
そういう芝居でもなければ、そんな事をして気を引いて逃亡するわけでもない。
 アジトにはルパンと次元しか居ない、銭形はまだこの国には来ていない。
なので、こういった芝居はしなくても良いはずなのに、この男は、次元大介という男は、馬鹿げたことをしてきた、そうルパンは心中で誰にでもなく呟いた。

「だから言っただろ、好きだってよ」

 本当に訳が分からない、ルパンがそういう表情をしていたのだろう、次元がフッと笑みを零し、ルパンから両手を離して離れるといつもの調子で「わりぃな、ルパン。今日はエイプリルフールだからよ、どんな反応するかと思ってたんだ」と、帽子を押さえながら肩を竦めた。

 エイプリルフール、その単語が頭の中でぐるぐると回り次第に「普段は俺の事嫌ってるのか?」と口元を引きつりながら言えば、次元が「さぁな」と誤魔化した。

 片手をヒラヒラとさせて、リビングから出て行った次元はドアに凭れ――今日ぐれぇしか、本音言えねぇだろ。とドアの中に居るルパンの方を見ながら、小さく呟いた。
 その呟きはルパンは聞こえる事はなかったが、暫く頭を抱え、頬を朱に染めながら動けないでいた。

最新 50レス ▲上へ

名前: 下げ

トリップ: ※任意 半角英数8-16文字
※画像を共有する場合は、外部の画像アップローダなどをご利用ください

規約 マナー
※トリップに特定文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます

【お勧め】
初心者さん向けトピック



[0]セイチャットTOP
[1]個人用・練習用
[9]最新の状態に更新
お問い合わせフォーム
(C) Mikle