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(アニメ/マンガ)BL・GL・NL(オリジナル) 小説集/131


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50: ブラック [×]
2015-03-26 06:14:42

緑泥棒と赤泥棒Ⅱ(ルパン三世2nd/LUPIN The Third~峰不二子という女~/不定期更新)


 何事もなく位置的に近い緑ジャケットのルパンのアジトに到着し、ドアを開けると見知らぬ人物がお互いに居た。

「よう、ルパン遅かったな」

 片手を上げて黒のボルサリーノを被った男――次元大介、スーツ、ネクタイ、スラックスまで真っ黒で統一されており、緑ルパンが知る『次元大介』ではない。
何より顔つきが全く違うのだ。

「あれ、次元ちゃんでねぇの? どしたのこんな所に」

 ひょいっと後ろから登場した赤ジャケットのルパン三世が、自分の相棒の姿を確認し釘を傾げながらも何故、こんなところに居るのだろうと疑問を感じる。
 だが当然、次元にしてみれば見知った顔のルパンが現れようとも、目の前に全く知らない顔の「ルパン似の男」が居る事に違和感を持ち、警戒しつつも表情を崩さずにソファに腰掛けて脚を組んでいた。

「何だかよく分からねぇ話なんだが、ソファに座った途端よ、グラっと世界が変わっちまったんだぜ」

 次元は普段目にする赤ルパンの顔を見ながら告げた。
 この時次元は気が付いていなかったが、その話を聞いた緑ルパンと赤ルパンは「あぁ、お前も連れてこられたのか」と同時に思った。

 位置的には緑ルパンのアジトで、家具や配置も大体同じなのだが、所々違うかったりもする。
それはおそらく赤ルパンのアジトの物か、はたまた別の世界の物なのだろう。
 そう思う事にして気にかけないようにした。
 だからこうして次元が緑ルパンのアジトに似た部屋でくつろいでいても、良く似た部屋でくつろいでいる、知らない人、という事になるのだ。

「俺の知ってる『へなちょこマグナム』よりかは、砕けてるなぁ」

 何時ぞや、赤い孔雀を追っていた時に強欲な女――峰不二子が次元の事をそう述べたので、不二子の言葉を借り、初対面にも関わらず失礼な事を言っては、次元の目の前にある、つまりは手前にあるソファに腰掛ける。

「てめっ、誰がへなちょこマグナムだ!」

 言われた事に腹を立てた次元はムキになって反論しているが、相棒の赤ルパンに抑えられ緑ルパンと次元の仲介役になりつつも、笑顔でその場を収めた。

「お2人さん。今は言い合ってもしょーがないでしょ!」

 呆れたように言い放つ赤ルパンに次元が「おい、どういう事だ?」と視線を向け尋ねた。

「どういう事もないも無いよ。俺たちは気が付いたらこの世界に居たってだけで」
「冗談も程々にしておけよ」
「冗談だって言うなら、次元ちゃんの目の前に居るお方は誰よ?」
「あ? 知らねぇおっさんだろ」

 赤ルパンでも自分自身の事を「知らないおっさん」と言われた事にガックリを肩を落とし、緑ルパンが腰掛ける深い青色のソファの肘掛に腰掛け、「酷い事言うねぇ」と、緑ルパンの方を見て僅かに口角を上げた。

「何も分かっちゃいねぇ次元によ、信じられねぇ事教えてやるぜ。コイツの名前はなル――」
「ルパン三世だ」
「――あ、自分で言うのね」

 赤ルパンが陽気に、自信あり気で緑ルパンの名を名乗ろうとした途端に、今まで会話に参加してこなかった緑ルパンが口を開いた。
 当然、赤ルパンはぎこちない笑みを浮かべながらぽつりと呟いているのだが。

 ルパン三世、確かに緑ルパンはそう言った。
その事実が次元は信じることが出来ず、暫くの間帽子を押さえながら固まった。

「ルパン……三世、だと?」

 やっと口を開いたかと思えば、驚いた様子で唖然としているのが良く分かる。
それもそうだろう、自分の相棒が目の前に居るのにも関わらず、何故かもう1人相棒と同じ名の人物が居ることに赤ルパン自身も信じられない事だったのに、他人なら余計信じることも出来ないだろう。

「おい待てルパン。ソイツは信じる事のできねぇ冗談だぜ」

 組んでいた脚を下ろして脚の上に腕を置き、手を組みながら次元は上記を述べ、鋭い目つきで赤ルパンを見つめる。
 そんな次元に対して赤ルパンは「俺も信じられないのよねぇ」とちゃらけて、返答する。

「ま、何がどうなってんのかは知らねぇけどよ、おもしれぇからこれからコイツもよろしく」
「何がよろしくだ!!」

 バンッ、とテーブルを叩く次元を緑ルパンは見つめつつ、ジャケットのポケットからジタンを取り出し、口に咥えて火を付ける。

「俺の知ってる『次元』とは別人だな」

 ぽつり、呟いたのだが、どうやら赤ルパンには聞こえてたらしく赤ルパンはニヤリと笑みを浮かべ、緑ルパンの肩に腕を回して「何々? そっちの次元ちゃんはどんなだったってーの?」と、興味津々で尋ねている。

「おい、ルパン……。俺がどうなんて……」
「へなちょこマグナム」
「だからへなちょこマグナムと呼ぶな!」

 いつぞやどこかの眼鏡の少年に『パパ』と呼ばれていた頃を思い出しつつも、近くに置いてあったウイスキーを取って、同じく近くに置いてあったグラスに入れて飲み始める。

「俺アンタの名前知らねぇからよ。人に名乗らせておいて自分は名乗らねぇってのか?」

 顎を上げてお前も名乗れ、というようにしては煙草を灰皿に挟み、ウイスキーのボトルを取り、初めからそこに置いてあったようなグラスに手を伸ばし、次元と同じようにウイスキーを飲み始めた。

「俺は次元大介だって、聞かなかったのか? その赤いジャケットのルパンに」

 脚を組んでつま先で赤ルパンを差し、グラスをテーブルに置けばその瞬間赤ルパンの手が伸び、次元のグラスを取ってウイスキーを注ぎ、自分の口に運ぶ。
 相性は悪いものの、酒の好みは合っている。

「いーや。次元ちゃんとは言ってるが、次元大介とは限らねぇだろ」

 グラスをテーブルに置いては煙草を手に取り咥える。

「そりゃぁ、正論だ」

 赤ルパンが声を出した。
そして続ける。

「此処に居るのが、俺と次元とお前さんなら、五右ェ門や不二子、とっつあんは一体どうなってんだ?」
「とっつあんも巻き込まれてんのはゴメンだな」

 緑ルパンは『とっつあん』が誰の事を差しているのかは分からないが、違う言葉にすれば『銭形』も巻き込まれているのは面倒だと、口に出さずにいた。

「ところでよ、俺は何て呼び分ければ良いんだ? 『ルパン』」
「ん?」
「あ?」

 次元の問いに緑ルパンと赤ルパンが声を揃えた。
『ルパン』だけだとどちらを差しているのか、検討もつかないので取り合えず2人とも返事をしたものの、尋ねた次元が固まっているようにも見えたため、溜息をついた。
 その動作もシンクロしているのは、もはや双子を見ている気分になる。

「赤ルパン、緑ルパンで良いだろ」

 と赤ルパン。
なるほど、と我に返った次元は手を叩きこれからそう呼ぼうと決めたのだった。

 **

「なぁ、ルパン」
「…………」
「おいルパン聞いてるか?」
「…………」
「ルパーン」
「どっち呼んでるか分からねぇから、分かるように呼べ!!」

 リビングにて。
結局昨日は3人でウイスキーを飲み、賭け事をして親睦を深めたのだったが、酒に酔って良い気分だったのもあるのか、次元は昨日『緑ルパン、赤ルパン』と言い分けると決めたのだったが、酒のせいで忘れてしまった。
 泥棒稼業がそれで良いのかという問題なのだが。

 2人とも覚えていたので、次元が呼び分けるまであえて無視をしていたのだが、どうにも呼び分ける様子はなく、声を揃えて発言する。

「あぁ、わりぃ……」

 帽子を押さえて謝罪するも、あまり誠意はないように感じられた赤ルパンは溜息を零して、「っで、どっちを呼んでたの? 次元ちゃん」と問う。

「あっちの、黒シャツ着てる方だな」

 只今緑ルパンはジャケットを着ておらず、服で表すなら黒いシャツを着ているので、黒ルパンになってしまうが、そこは気にしないでおこう。
 次元は緑ルパンを指差し、お前だよと言うような目つきをした。

「俺に何の用だよ」

 緑ルパンはソファーの背凭れに掛けていたジャケットを羽織って、次元を見つめる。

「いや、何かお前さんのその緑のジャケットを見てるとな、あの頃を思い出しただけだ」
「だったら呼ぶな」
「ま、良いじゃねぇか。見たところおめーさんは俺達よりもまだわけぇんだから、おっさんの思い出話に付き合ってくれよ」

 向かい側のソファーが次元が移動して緑ルパンの隣に座る。
何故だか肩に腕を回す次元。
 その様子を壁に凭れながら赤ルパンは「次元ちゃん飲んだ?」と尋ねた。

「ん? あぁ、数滴な」

 そう、次元が飲んだのは赤ルパン試作の『飲めば必ず絡み酒になる液体』である。
今度と言ってもいつになるのかは分からないが、いつか約に立つだろうと試作段階ではあったが、一応作っておいたのだ。
 それをどうやって手に入れたかは分からないのだけれど、どうせ昨日このテーブルにでも置いていたのだろうと予想をつけて、次元を元に戻すには大体1時間か、と心中で呟いた。

「暫く相手してあげて。1時間もすれば元に戻ると思うから」

 そう言って赤ルパンは逃げるようにその場を去った。

 **

「1時間、ねぇ……」
 
 短いようで長い、長いようで短い時間なのだ。
昨日飲んでいた時は何も変化がなかったのだが、今日何かを飲んだのだろうかと考えながらも、適当に相槌を打ちながら「眼鏡のガキがよぉ~」と言ってくるので、どこの誰だと思いつつも、煙草を咥えて「それから?」と適当に返事をする。

「おいルパン。聞いてんのか?」
「俺はお前の知ってる『ルパン』じゃねぇよ」

 思い出話を聞かされても、自分がそこに居たわけでもなく、そんな話をされるとは思っていなかったのだが、何かの情報を得られるだろうと聞いていたのだが、次元が『ルパン』と連呼するのを呆れて、次元にあえて否定の言葉を言った。

「あぁ、確かにそうだな。でもよ、俺にとっちゃぁ、『相棒』がまた増えたってのには変わらねぇだろう? ルパン」

 元からそういう性格なのか、それとも何かを飲んだせいなのか、緑ルパンには分からないがおそらく後者だという事は分かり「そうかよ。そりゃ、光栄だ」と、自嘲気味に頬を上げた。


 それから1時間後、次元は元に戻り、「俺は一体何をしてたんだ……」と緑ルパンの向かい側のソファで頭を抱えていた。

 緑ルパンはそんな次元を見つめながら――あぁ、そういう世界もあるみてぇだな、なんて普段思いもしない事をふと思い、本当に馬鹿らしく思えてソファに横になった。

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