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(アニメ/マンガ)BL・GL・NL(オリジナル) 小説集/131


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48: ブラック [×]
2015-03-21 04:02:10

 ワールドイズマイン(ルパン三世2nd/ryo/初音ミク)


 春の上旬。
寒さを感じない季節はどうしても眠気を誘うものだ。

「ルパ~ン、デートしなぁい?」

 ふとソファにだらしなく横になった次元が「眠気を誘う」と思っていた頃に、アジト内に甲高い女性の声が響く。
 不二子か、と声だけで確認しつつも、不二子が大好きなルパンの返答がない事に気が付く。

「ルパ~ン?」

 一つ一つの部屋を見て回っているのだろう、遠くから聞こえてきた声がだんだん次元に近付いてくる。
 バタンッ、と隣の部屋のドアが閉められてリビングに不二子が姿を見せる。

「あら、次元一人だけなの?」

 不二子の問いに帽子を軽く上げ、「五右ェ門は修行。ルパンは起きた時からいねぇぜ」と返答した。
 どうやら不二子はリビングにルパンが居ると思ったようで、リビングに次元一人しか居ないことに驚きながらも、辺りを見渡す。
 見渡したところであるのはソファとテーブルとウイスキーと、次元とその他諸々なのだが、肝心のルパンの姿がない。
 寝室にも居ないことを確認している不二子は、何処かに出かけたのだろうかと思い、次元の目の前にあるソファに腰掛ける。

「そういや不二子。いつルパンとデートの約束なんかしたんだ?」

 次元は上半身を起こしながらも不二子に尋ね、片手でウイスキーが入ったグラスを持ち、口に運ぶ。

「今よ」

 即答である。

「全く、『お姫様』の扱いも分からないのかしら」

 脚を組みながら偉そうに呟く。
その姿はまるで女王だな、と内心思いつつも次元は口に出さず酒を煽り続ける。
 よく見れば不二子の服装が、いつもとは違う雰囲気を放っていることに気が付き「おめーさん、そんな服持ってたか?」と聞くつもりは無かったのだが、声に出ていたようだ。
 脚を組み替えながら「あら? レディがデートに着る服は普段とは違う服にするに決まってるじゃない」女の常識、と言うように首元にある髪を後ろにしながら述べる。

 今日の不二子の服は白を基調とした大人しめで、腰に茶色の飾りベルトが付けられ、黒のオーバーニーだった。
 太腿にはいつもの様に拳銃があるのだと思うと清楚でもなんでもないのだが。

「ルパンも用事があんだろうよ、今日は諦めな」

 そうした方が身のためだと言う様にグラスを不二子に捧げるようにしては、鼻で笑って残り少ないウイスキーを口に流しこんだ。

「何よ! そんな事言われなくたってルパンが帰って来ないのは何となく分かるわよ!」

 ダンッ、とテーブルを叩きながら不二子は立ち上がる。
どうせどこかの女と遊んでいるのよ、そう言って不二子はリビングから姿を消した。

 **

「たっだいまぁ~」

 玄関から陽気でご機嫌な声が聞こえて次元は溜息を零す。

 ――やれやれ、やっと帰ってきやがったな。

 あれから不二子は部屋から外に出ることはなく、もしかしたら部屋から外に出た可能性もあるのだが、次元は不二子の姿を確認していない。

「あれ、次元ちゃんだけ?」
「部屋に不二子が居ると思うぜ」

 リビングにやって来ては不二子に問われた事と同じことを問われ、不二子の部屋を顎で示しながらソファに横になる。
 ふと、不二子の服装や髪型が頭によぎるがすぐに鼻を鳴らして帽子を深く被った。

「なーんだよ、その俺は見てねぇぜってみてぇな動き」

 何とでも言えと思ったのか、片手を上げ手をヒラヒラとさせて誤魔化す。
ルパンはそんな様子の次元を残して不二子の部屋に向かった。

「ふーじこちゃん、俺の帰り待ってたりしちゃった?」

 おちゃらけながらノックもせずにドアを開ける。
不二子は驚くことはなく、ベッドに横になりながらパソコンを触っていた。
 検索内容は色々お見せする事が出来ない。

「あら、ルパン。どこに行ってたの?」

 振り向いてルパンの顔を見ながら尋ねる。
ノートパソコンを片手で閉じ、色仕掛けをするかのようにベッドに座り体を逸らす。

「おっかなーい、爺さんの所」

 ただの知り合いの店で酒を飲んでいただけなのだが、話の内容はおっかないので大体は合っているだろう。
 ルパンは不二子の隣腰掛けて「それよりポニーテールにしちゃって不二子ちゃんイメージチェンジ?」と、次元が敢えて聞かなかった髪型の変化にルパンは躊躇なく尋ねた。
不二子の髪に自分の指を絡めながら珍しいと思いながら。

「そうよ。こうしている方が動きやすいでしょ?」

 ルパンの太腿の右手を這わせながら不二子は顔を近づけて、息がかかるぐらいの距離まで近付いた。

「服装も清楚な服で。それに靴も普段ブーツなんて履かないのに、俺とデートでもする気だったのか?」

 不二子の考えなんてルパンにはお見通しだろう。
冗談で「デート」と言っていても、どこかに出かけようとしていたなんていうのは普段と違う服装を見れば一目瞭然だった。
 ムッとした不二子の表情を図星と見たルパンは笑みを浮かべ「わりぃな。明日なら予定ねぇから明日行こうぜ」と特に行くところも決めていないのに、提案する。

「さすがルパン! 愛してるわ!」

 ご都合主義者と次元が見たら思うだろうが、この際次元はこの場に居ないので関係がない。
 抱きついた不二子の背中に手を回し、軽く頭を撫でた。

 **

 時は進み、翌日。

「ルパ~ン。アレ買って」

 盗め、ではない。
ただのクレープを盗むとなんてルパンファミリーはしない。
 街中を歩いていると甘い匂いがふんわりと飛んできて、何事かとそちらに目を向けると不二子の目の前に『クレープ』と書かれた看板が目に入ったのだ。

「クレープで良いのか?」
「クレープが良いの」

 クレープが良いと言うのでクレープを購入する。
味は普通に苺味。
 不二子の服装は昨日と同じである。
決して風呂に入っていないという訳でもなく、何着も同じ服があるという事だ。
 
 さて、クレープを食べるべく、近くにあるテーブルとイスに腰を下ろす。
日陰の具合が丁度良く、暖かい風が時々吹いて春を感じさせる。
 生憎と桜は咲いていないのだけれど。

「不二子にクレープってあんまり似合わねぇな」

 頬杖を付きながらそう述べた。
普段不二子は札束、宝石、金、などと言った物が回りに付いており、女性が好きな『スイーツ』とはあまり縁がない。
 
「失礼ね!」
「冗談だって」

 ルパンはクレープ屋で買ったブラックコーヒーを飲みながら、苦笑いを浮かべる。
本当に冗談ではないのだけれど、こういう時は大体冗談と言った方が良いのだ。
 フンッとそっぽを向きながらもクレープをモフモフと食べ、急にルパンの目の前に差し出した。

「一口あげるわ。お礼よ」

 不二子にしては珍しいと思うルパンだが嬉しさ満々で差し出されたクレープをかじる。

「不二子ちゃんの味」
「何よそれ」

 どんな味だろうかと考えながらも、不二子は肩を揺らしながら残りのクレープを食べるのを再開した。
 こうしてみれば一人の女性なのだけれど、良い女ほど強欲なのだろうかと思えてくる。

「ごちそうさま」

 クレープを食べ終えて、生地を包んでいた紙をゴミ箱に捨てに行き、席に戻って来て「そういえば次元は?」と、今頃あのガンマンはどうしているのかと、尋ねる。
 ルパンは背凭れに凭れて「多分寝てるぜ」と他人事にした。
寝ていようが、起きていようが、襲撃がなければ連絡も入らないだろう。

「ルパン、今回の仕事で盗んだ宝石私にくれる?」

 急にいつも通りに手に入れたお宝をくれるのかと尋ねた不二子に、ルパンはどうしようかなという表情を浮かべた。
 今回の仕事はまだ作戦も立てていないが、あげる人が居るので不二子に渡す事ができない。
しかし、それを口にすることも出来ない。

「不二子ちゃんのお願いは分かるんだけど、俺にもちょぉっと考える時間くれない?」
「何でよ」

 一気に不機嫌になる不二子。

「俺も色々考えてぇ事あんのさ」

 宝石をあげる人の事は言わずに、何かを考えているようにでたらめを言う。
特に用が無くなればあげるとは言っているものの、不二子の不機嫌な顔つきは変わっていく気配がない。

「酷いわ! 私以外に女が出来たのね!」

 端から見れば被害妄想で、次元が見ればいつもの事だ。
当然ルパンもいつものことだと思っているのだが、急に不二子が「私以外にプレゼントするなら、私死んでやるわ!」などと言い出した。
 ここに次元が居れば『アホかお前は』と一言飛んでいそうだが、生憎と次元は居ない。
 
「そんな不二子ちゃん。ちょっとの間だけだって」

 苦笑いをしながらも落ち着かせようとしているのだけれど、不二子は立ち上がって走り出して行った。

 ――トーリャンセ、トーリャンセ……。

 すぐ近くにある信号が青に変わった事を知らせる音が流れる。
不二子は走って何処かに行こうとして、その信号の方に走っていったのだが、ルパンが「おい、不二子!」と叫んで立ち上がる。

 続いてルパンも走って不二子の後を追う。
当然男女の違いでルパンの方が足が速い。

 不二子が信号を渡ろうとしたその瞬間――。

「きゃっ!」
 
 物凄い勢いで後ろに引き寄せられる。
バランスを崩してそのまま倒れるかと思えば、誰かが受け止めてくれたようで、それ以上後ろに行く事はない。

「……轢かれるところだったぜ」

 不二子の胸の上あたりにある腕は赤色のジャケットで、それが誰の腕かなんて聞かなくても分かる。
 ルパンが不二子に追いついて、抱き寄せた。

 ルパンの声が聞こえたと同時に明らかにスピード違反の車が不二子の前を通過し、もしあのまま信号を渡っていたらと考えると背筋が凍る。

「……こっちの方が危ないわよ」

 急に、抱き寄せるなんて――。

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