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(アニメ/マンガ)BL・GL・NL(オリジナル) 小説集/131


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38: ブラック [×]
2015-03-08 17:02:40

二重変装(ルパン三世2nd/オリキャラ)


 ある朝の事だ。
 高校生の少年――六条道恋也は何とも言い表す事が難しい事態になっていた。

「マジかよ」
 
 肩を落としながら頭を掻き、小さく息を吐く。
この事態は想像していたものではない為、対応ができずただ、目の前の『泥棒』を見つめる。
 恋也が右手を挙げると、ベッドがよく映るように置かれていて、尚且つ全身が見えるようになった縦長の鏡の中の泥棒も右手を挙げる。
 表情はげんなりとしているが……。

「俺で良かったと言うのかどうかは知らないけど、アイツはどうなっているんだ?」

 部屋の中でぽつり、疑問に思ったことを口にし伸びをしてからベッドから起き上がり、部屋から出ようとドアの前まで歩いていく。
 部屋から出る事は躊躇われるが、直接本人に会わなければ何も進まないと思い、もう一度息を吐き、ドアノブを回した。
 
 そういえば、夜中まで起きていたなと昨夜の事を思い出しながら裸足で廊下を歩いており、もしかしたら寝ているかも知れないという可能性も考えつつ、目的の部屋の前までやって来る。
 一度深呼吸をし、軽く2回ドアをノックしてあまり音を当てないように木製で出来た、現代風とは言えない古風のドアを開く。
 今から盗みに入るかのような体勢で部屋の主は、起きているのかと辺りを見て、ベッドに横たわる姿を確認すればゆっくり部屋の中に入る。

――やっぱり、寝てたな……。

 はぁ、と溜息と共に、ベッドに近付く。
寝ている部屋の主は完全に『自分』だった。
 そこで納得がいく。

 自分たちは入れ替わったのだと。

……と廊下から足音が聞こえる。

「おいルパン! 冷蔵庫に入れてあった俺のプリン食っただろ!」

 バンッ、と勢いよくドアを開けて次元が入ってくる。
 今現在ルパンは恋也で恋也はルパンなので、当然次元は見た目ルパンの恋也に話しかける。

「起きるのはえーな」
「あ、あぁ。まぁ、な」

 適当に頷きながらも、プリンを食べたぐらいで怒るのはどうかと思いつつも、恋也が食べた訳ではないので「俺はプリン食ってねぇよ」とルパンの口調で答える。

「で、何でお前さんの布団で寝てんだ? コイツは」

 次元が見た目恋也のルパンを見ながら問う。
恋也は暫しどう言い訳するか考えたが、良い言い訳は出てこず「俺が連れて来たんだって、起きたらいつもと違う場所でびっくりするでしょ」と言いのけた。

「そうか。邪魔したな」

 次元は片手をヒラヒラとさせながらルパンの部屋を後にした。

――さて、と。

 次元が出て行ったのを見送ってから恋也はルパンの部屋を見渡す。
辺りにはワルサーや、ジャケットが散らかっているが、今自分はルパンの姿でルパンの服を着ている。
 自分はどうなっているのだろうと、布団を捲れば自分が着ていた服をルパンは着ている。

 自分の格好を見れば、見た目はルパン三世で、服もいつものシャツを無造作に捲り上げて、ネクタイも外されていつもの白のスラックスを着ていた。
 
「俺ってこんな顔して寝てるのか……」

 恋也から見る自分の顔はやっぱり幼くて子供だというのが全面に出ていた。
 ルパンだと分かっていても、何故か手は止まらなくて、恋也はルパンの頬を撫でた。
自分の顔をしたその頬は柔らかく、ひんやりとしていた。

「恋也ちゃん、俺に触れちゃってどしたの?」

 急にルパンの口が開いた。
恋也は驚いてルパンの目を手で塞ぐ。
 目は開けていなかったので、今の姿は見られていないだろうと思いつつ「今の見てないよな!?な!」と自分の声で尋ねた。

「見てねぇから、手どけて頂戴」

 渋々と言う風に恋也は手を退けて、ルパン(見た目自分)と目が合う。
 ルパンは納得したように頷きながら起き上がる。

「やっぱり恋也ちゃんが俺の体持ってたのね」
「やっぱりって、自分の体が違うって知ってたのか」

 恋也は呆れたように言いながらルパンのベッドに腰掛ける。
 ルパンは上半身を起し、互いに見詰め合う。

「…………」

 お互い暫しの沈黙が訪れる。
 その沈黙を破ったのは恋也だ。

「あ、そうそう。次元がプリン食われたーって言って腹立ててたけど、ルパンが食べたのか?」

 今の状況とは全く関係の無い事を尋ねた。
 このアジトに居るのはルパン、次元、五右ェ門で、恋也はプリンを食べていない、五右ェ門は向きもしないだろう、残るはルパンしかいない。

「ご名答! このルパン様が美味しく頂きましたよ」

 右手を胸の前に持ってきてお辞儀をするが、恋也の姿なのでいつものおちゃらけた感がどこか違和感を持ち、見た目ルパンは黙る事しか出来ないのだ。

「アホか!」

 ベシッと容赦なくルパン(くどいようだが見た目恋也)の頭を叩く。

「いった!!」

 頭を押さえたのはルパンではなく恋也だった。

「……おい、これって」

 ルパンと恋也は同じ事を思ったのか、顔を見合わせ、笑みを引きつらせる。
2人が思ったことは『痛みは本人に適用される』ということだ。
 つまり、恋也がルパンを叩いても痛みは恋也に返ってくる。

「ちょぉっと面倒な設定なのね」
「設定!?」
「仕組みって事だ」

 恋也が普通に話すと周りからはルパンが恋也の口調で話していることになる。
逆にルパンがいつも通り話すと、恋也がルパンの口調で話していることになってしまう。

「でもさ、コレ結構ヤバイだろ。次元とか五右ェ門にすぐバレるな」

 もうバレても良いかと恋也が諦めていた頃、ルパンが何かを思いついたようにポンッと手を叩いて、明らかに良くないことを考えている顔になり「おもしれぇ事思いついたぜ」と、高校生の顔で言いのけた。

 **

 一方プリン勝手に食べた犯人捜ししている次元はルパンと恋也が入れ替わった事など知らず、五右ェ門に誰が食べたのか知らないかとか、野良猫が食べたのかと半分諦めていた。

 期間限定と言うわけでもないプリンはまた買えばあるのだが、行くまでが面倒だ。
特に今居る国日本は髭面、目が見えない、全身真っ黒と言うのはコンビニに行っても怪しまれるのだ。
 そして暫し考えた案が『恋也に買いに行かせよう』だった。

 気分はルンルンで再びルパンの部屋で寝ている恋也を起すべく、既に起きている恋也を求めてリビングから廊下に出て、鼻歌を歌いながらルパンの部屋に向かう。

『それどうせハーレム味わいたいだけだろ!』
『うるせぇ! こうしねぇと仕方ねぇだろ!』
『絶対クラスの女子に声かけてるに決まってる!』

 何やら次元には理解出来ない会話が部屋から漏れている。
ハーレムだとかクラスの女子だとか、一体何の話をしているのだろうかと思いつつもドアを2回ノックしてルパンの綺麗とは言い難く基本汚い部屋のドアを開けた。

「おいルパン。外まで会話聞こえてるぜ?」

 次元は見た目がルパンに話し掛ける。
ルパン役の恋也は肩を竦めて「そりゃぁ、悪かったな。で、どうした? 何か用か?」と普段のルパンらしく笑顔を作り、気さくに何かあったのかと尋ねる。

 次元は目の前に居るのが恋也だというのには気づかず、恋也役のルパンに近付いて「お前さんに頼みごとだ」とニィと笑みを浮かべた。

「……風呂沸かせとか、新聞取って来いとか、風呂沸かせとか風呂沸かせ以外なら聞くけど」

 ルパン自身、次元と風呂を沸かすのにじゃんけんで決めて、負けて風呂を沸かしたのを根に持っているのか、恋也っぽく、けど本心を含めて風呂沸かしだけはしないと告げた。

「実はよ、無くなったプリンを買ってきてくれねぇか?」
「自分で買おうよ……」

 ルパンは呆れた表情で返答するも、この季節寒くて誰も外に出たがらないので、結局は誰かが行くしかないのだ。
 だが、次元は一向に行く気はないらしい。
 ここは諦めるしか無い為ルパンは「オーケー」と片手を振った。

 **

 それからルパンは次元の為にプリンを購入し、アジトへ戻ってきた。

「やっぱこのプリンだよなぁ」

 ご機嫌でプリンを食べている次元の向かい側のソファで、赤色のノートパソコンを弄りながら恋也は『体 入れ替わり』と検索をしていた。
実際のところ良い検索結果など出てくるわけでもなく、ノートパソコンの電源を切って閉じてはソファにだらしなく横になる。
 この場に不二子が居れば「ルパン、あなた次元みたいよ」というセリフが飛んでくるだろう。

 そんな事を気にする暇があるなら、今から学校に行こうとしているルパン三世をどうにかして欲しいと恋也は思った。

「お前さん、今日も学校か?」

 プリンを食べながら次元はブレザーを羽織ってリビングにやってきたルパンに問いかける。

「まぁ、今日からテスト週間だからな」

 今日『も』という表現は可笑しいだろと恋也は、ソファに横になりながら思ったが、敢えて口にすることはせず、ルパンが玄関に向かうのを目だけで見送った。

 当然ルパンの事だから恋也の体を使ってクラスの女子に声をかけまくり、面倒な事になっているのだが……。

 **

 リビングに居るのは恋也と次元のみ。
五右ェ門は和室で何やら花を生けていた。
 暫しの沈黙が続く中、体が入れ替わっているとバレても良いのだが、ルパンが『折角だから演じてみようぜ』などと言い出して、こうやってルパンのフリをするしかない。

 小さく溜息を吐いたのが聞こえたのか次元は恋也をじっと見つめている。

「……何だよ」

 頭の後ろで手を組みながらどうしたのかと視線を向けるが、次元は一向に口を開く様子は無く恋也を見つめる。
 逆に何も話しくれないと恋也の方は焦りが募る。

 1分、はたまた10分が経ったかも知れないぐらいの頃合に、カチリとアナログの小さな振り子時計の長針が動いた。
12時を示したのだ。

「次元ちゃん、用もないのに俺に声なんて掛けちゃった?」

 そこではっと我に返り、いつものルパンらしく振舞った。
用も無いのに声を掛けたとただ尋ねただけだったのだが、長年相棒をしている彼は、きっとこの時見抜いたのだろう。

 ――ルパン三世ではない、と。

「てめぇ、ルパンをどこへやった?」

 表情は読み取れないが、無機質でもない彼自身が持っている声質で目の前の『ルパン三世』に問う。
 変に回答すればきっと撃たれるだろう、頭に組んでいた手を胸の前に持っていき、降参のポーズをとり「学校」と一言だけ告げた。

「学校!?」

 驚いているのか次元の帽子がずれる。
帽子を元に位置に戻しながら次元の目の前にいる恋也に近付いて、頭の先から足の先まで関心するように眺める。

「しっかし、アイツがルパンだとするとおめぇは恋也か?」
「ご名答!」

 誤魔化す必要も無いのだが、ルパンのおちゃらけた口調で正解だと言い、上半身を起こす。

「いつから入れ替わってんだ?」
「次元がルパンの部屋に入って来ただろ? プリン食っただろとか言いながら。あの時から入れ替わってた」

 恋也は人差し指を立てて次元を見上げながら発言する。
それで合点がいったのか1人で頷いては次元は恋也の隣に腰掛けた。

「じゃぁ、部屋の外まで聞こえてた会話は入れ替わってどうするかって話だったのか」

 くだらねぇな、と次元は鼻で笑ってソファを挟んで真ん中にある木製のテーブルに脚を投げ出した。
 背丈もルパンと次元じゃ変わりはなく、大体同じ高さなのだから当たり前なのだが、次元がいつもより近くで見える恋也にとって、入れ替わる事に意味はあるのかと聞かれると特に意味はない。

「俺だって別にバレても問題は無いって言ったのにさ……」

 がっくりと肩を落としながら恋也は呟いた。

 丁度その頃合に玄関のドアが開かれた。
時計を見ると12時半を示しており、テスト週間は早めに帰されるのだと思い出す。

「ルパンか?」
「この時間ならそうだな」

 とっくにバレているので、バレていないと思っているルパンを観察してやろうと次元と決めたのである。

「ただいまー」
「はぇな」
「テスト週間だからな」

 何の変わりもないので、1番恐れていた事を実行していないかと『ルパン三世』で、ルパンに尋ねる。

「レディに声かけて遊んでたんじゃないの?」
「良く分かったな」

 何の躊躇いもなくルパンは答えた。
その瞬間、恋也はソファから立ち上がり未だにリビングのドアにいるルパンのネクタイを思いっきり掴んだ。

「てめぇ、人が心配してた事見事に実行しやがって!!」
「恋也ちゃん落ち着いて……」

 冷や汗を流しながらルパンは恋也に落ち着けと言うが、落ち着く様子は無く、ネクタイを掴みながら恋也は更に続ける。

「次元も何とか言ってやれ! コイツの女癖の悪さ」
「お前はアホか」

 恋也の姿をしたルパンを次元がノリで叩いた。
その瞬間、次元に叩かれた頭を押さえながらルパンの姿をした恋也は蹲った。
 痛みは本人にいくのだ、どれだけ手加減をしようと僅かな痛みでさえも体の持ち主にいく。

「次元ちゃん、痛みは体の持ち主に向かうみたい」

 ルパンが告げた言葉に次元は口角を上げて蹲っている恋也の頭を試しにという感じに叩いた。

「いた! 痛いでしょ! それと遊ばない!」

 当然遊んでいることがばれた為、次元はピタリと手を止める。

「――そんな事より元に戻る方法考えろよ……」

 恋也の発言にルパンと次元は頷いたものの、先に酒だと言いだしてグラスを持っていていた。

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