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(アニメ/マンガ)BL・GL・NL(オリジナル) 小説集/131


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21: ブラック [×]
2015-02-21 17:29:56

バレンタイン(ルパン三世2nd/オリキャラ) 


2月14日土曜日。
日本は「バレンタイン」で大騒ぎしていた。

 **

「全く、朝5時に呼び出すなよ……」

 はぁ、と溜息を吐きながら歩く少年――六条道恋也はブレザーのポケットに手を突っ込む。
ブレザーが暖かいというわけではないが、羽織る物がないと言うわけでもなく、たまたま手前、つまりは近くにあったのがブレザーという事だ。
 コートを出す事に面倒臭さを感じた恋也は、ハンガーに掛けていたブレザーを手に取り、クリーム色の長袖シャツの上に羽織った。

 ブレザーの色は赤色、ではなく紅色。
どこかのモンキーを連想させる色に、今は感謝している恋也だった。

 恋也の通っている高校は、一言で言ってしまえば名門高校で私立である。

 これは私の偏見に近いものだが、私立は公立よりも制服は凝っていると思っている。

 さて話を戻そう。
取り合えず家から出た恋也は、半ズボンを穿いていたことに後悔するも軽く舌を打ち、家に戻る事もせずにそのまま歩き出す。
 真夏に穿くような薄着で綿で出来た半ズボンを穿き、靴はサンダルで、上はクリーム色こちらも同じく綿で出来ており、その上に学校のブレザーと言うバランスが悪すぎる服装で、午前5時に目的の場所まで向かう事になる。

「……はぁ」

 本日、といってもこの時間帯だけで何回の溜息を吐いただろう。
恋也は欠伸をしながら空を見上げる。
 周りは真っ暗で、自分の吐いた息だけが白く水蒸気となって空に舞っていく。
その光景を見つめながらも、恋也はゆっくりと視線を戻す。

ヴーヴー。

 不意に端末が震える。
人がいないかを確認してから、通話ボタンを押した恋也は端末を耳に当てる。

『よぉ、恋也ちゃん。目的の場所には辿り着けたかなぁ?』

 からかうような声で電話の向こう側の相手は、語りかけてきた。
恋也は溜息を再び吐いて、自分の後ろにいる相手に言葉を投げる。

「こんな朝早くから呼び出さなくても良いだろ……ルパン三世」

 ルパン三世、そう呼ばれた男は携帯の電源を切って、恋也の傍に近付く。
ゆっくりと、後ろを振り向かせないように、近付いて、後ろからそっと抱きしめる。

「会いたかったぜ。俺が居なくて夜寝れなかったろ?」

 抱きしめられた事に驚きを隠せないで居る恋也は、頬を赤らめながら端末を仕舞う。
恋也の周りはただの公園で、目の前に自販機があるだけで、それ以外は至って普通である。

「……離せって、誰かに見られたらどうするんだ」

 さっき人が居ないのを確認したくせに、と返されると真っ赤になりながらも俯いてルパンの顔を見ようとはしない。
 ルパンはイタリアに仕事で、恋也は日本に残って学業をしていた。
 今日がバレンタインと言うのは、恋也もルパンも知っていた。

 だから、つい何時間前に仕事が終ったので、そのまま日本に帰ってきながら恋也を呼び出した。
 イタリアと日本では時差が違うので、日本刻は午前5時という時間になってしまったのだが。

「俺仕事で疲れてるから、今日は恋也ちゃんの家に泊まらせて」

 猫が飼い主に頭を擦り付けるように、ルパンは恋也を抱きしめながら呟けば、まさかそんな事を言われるとは思っていなかった恋也は一瞬で汗を流し始めた。

 当然である。

 自分と似ている兄が居る家に、想い人を家に招きいれるなど、出来る訳が無い。
容姿も似ていれば、兄に何も勝てない恋也は、それを知られたくないのか、恋也は頷く事が出来ないで居る。

 仕事で疲れているかどうかは分からないが、もし自分が断ってしまったら、どうするのか分からない。
だから泊めてやりたいとは思っている。

「兄、居てるけど……それでも大丈夫なら……」

 結局、自分が一緒に居たいので、恋也は遠慮気味にルパンに尋ねた。

 ルパンは問題なしのようで、了承すれば両腕を離して、恋也から離れた。

 午前5時の中央公園での出来事だった。

 **

 恋也の家の前まで来れば、汗を流している恋也をルパンは無言で見続けて、エレベーターが止まって、ドアが開き、ゆっくりと廊下を歩いている。

 一番奥の部屋で生活をしており、真っ暗なはずだった部屋には明かりが点いている。
一瞬で血の気が引いていくのと同時に、身体に力が入らなくなっていく。
 ドアの目の前にやってくれば、深呼吸をして「取り合えず入れよ」とルパンに笑みを浮かべながら言って、ドアを開いた――その刹那。

「てめぇ……、偉くはえー時間に遊びに行くようになったなぁ」

 ドアの目の間に立っていた兄に待ち伏せされていたのか、第一声から怒気を含んだ声で恋也の兄、りとは恋也を睨みつけながら言葉を放った。

「呼ばれたら、向かっただけで……、夜遊びとかじゃないって……」

 恋也の反論などどうでもいいのか、りとは恋也の胸倉を掴んで、そのまま地面にボールを叩き付けるように、恋也を叩きつけた。

 間一髪のところで、受身を取った恋也は頭を打つ事はなく、だけどその場から動こうとはしない。

「おいおい、ちょっとばっかしやりすぎってもんだろ」

 ルパンが見ていられないと感じたのか、りとの手首を掴んで真剣と言える顔で述べた。

「触んなよ、つかアンタ誰……え?」

 きっとりとも予想していなかったのだろう。
急に部屋から出て行った弟が有名人を連れてくるとは、予想できなかった。

 ルパン三世が目の前にいると分かったりとは、笑みを引きつらせながらも「まぁ、受身取れるようにしてたから、まだマシな方だ」と恋也を見ながら言い、恋也に立つように言って、何が起きているのかと説明を求めた。

 りとの手首は離され、ルパンと恋也とりとはリビングで何があったのかを話し、りとは溜息を吐くだけだった。

「だったらメモぐれぇ残していけって……」
「悪いって……」

 恋也はぎこちない笑みを浮かべつつ、3人テーブルを囲み、恋也から見て右にルパン、左にりとでイスに腰掛けて、話していた。

「まさか、ルパン三世が居るとは誰も思わねぇよ。ビビった」

 一瞬、強盗に来たのか、と思ったがそういう訳ではなかったことにりとは安心し、一息つきながらコーヒーを飲み、マグカップを置いて「恋也の兄のりとだ。さっきは悪かったな、いきなり変なの見せ付けて」とルパンに挨拶をした。
 いつもあんな感じじゃねぇんだけど、と付け足しつつも口元を軽く上げて、社交辞令の笑みを浮かべた。

「いきなりだったから驚いたぜ」

 ルパンは肩を竦めながら上記を言い、恋也を横目で見る。
特に何もしていなかった恋也は、何故見られたのか分からずに居て「どうした?」と尋ねるが、取ルパンも何か意味があった訳ではない。
 なので、すぐに視線を逸らす。

「取り合えず俺は学校だから、恋也は今日休むのか?」
「今日って土曜じゃなかった?」
「進路関係だ」

 背もたれに凭れながら恋也はりとを見つめて、そういえば2年は進路関係もあって土曜も学校に行かないといけなかったな、と思い出す。
 まだ1年の恋也にはあまり関係がないが、校内1位のりとは色々と面倒なことが起きている。

「落とせば良かったのに、テストの点くらい、すぐに取り戻せるのに」

 恋也の呟きにりとは得意げに微笑みながら「校内2位のお前に抜かされたくはねぇんでな」と呟いた。
イスから立ち上がって部屋から出ていったりとを見送って、恋也はルパンを見つめる。

「そんなに疲れていたんだったら、最初から言えって」

 頬杖を付きながら目を閉じて、寝息を立てているのを見て、恋也は呆れた表情をしながらぽつりと呟く。

「ルパン、寝るなら、俺のベッド使えって」

 ルパンの肩を軽く揺すりながら、自分のベッドに移動させようとする。
だが、余程疲れていたのか、ルパンは起きる様子もなく寝息を立てていた。
 ガチャリ、とドアが開き、制服姿のりとが姿を現して、中々起きないと理解したのは早くて、無理矢理と言って良いほどルパンの腕を引っ張った。

 そのまま抱えるようにして、1番近い恋也のベッドに連れて行き「じゃ、行ってくるからな」と言い、学校に向かった。

 **

 恋也はベッドの縁に座りながら、自分のハンガーにルパンのジャケットを掛けている。
 カン、と木製のハンガーにワルサーが当たった音がして、ワルサーを取り出してみた。
 長い間使われているワルサーを見つめては、元に戻し、ハンガー掛けにハンガーを掛けた。

「……おやすみ」

 一言呟いて、恋也は立ち上がってブレザーのポケットの中から、抱きつかれた時に入れられた掌に乗るサイズのチョコを取り出した。
 恐らくコンビニで買っただろうと思われる、チョコに苦笑いしつつも紙を剥がして口に含んだ。

 見た目がチロルチョコで、実際はウイスキーボンボンだったというのは食べてすぐに気が付いた。

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