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個人用・練習用
自分のトピックを作る
■:
Sek_Seed [×]
2013-06-18 20:38:36
あ
1:
Sek_Seed [×]
2013-06-18 20:39:11
夕焼けに染まり空。そこには散り散りに星が輝いていた。
まだ、夏の途中ということもあり、午後5時を回ってもまだ暑い。とは言っても、周りには殆どだれもいない公園を二人の子供がまるで占領しているかのように居た。
二人仲よくベンチに座って、皆が帰ってからも会話は続けていた。
「そうだ。しゅんくん、わたしね、しゅんくんにぴったりのなまえ、おもいついたよ」
そういうと、彼女は、僕に向かってニッコリと笑顔を浮かべた。
「え、ホント?」
とまどいながらも、一応、確認を取る。聞き間違いはないだろうが、今までそういうのがなかったから気になり聞き返しまう。
「うん。ほんとうだよ」
笑顔のままで、彼女は答えた。その笑顔は、夕焼けで紅く染まり、大人でさえも見とれてしまうと思える美しさが、いや、可愛らしさが浮かんでいた。
「どんな、なまえにしたの?」
首を軽く傾げ、彼女に質問する。すると、彼女は夕焼けの|紅《くれない》にも、負けずに薄ピンクを纏った髪を揺らしながら、答えた。
「まーくん。しゅんくんの『しゅん』っていうことばには『またたく』ってもいうらしいんだよ」
誇らしげに笑みを浮かべる彼女の頬は夕焼けの空のように赤くなっていた。
「で、でも、どうやってしらべたの?」
ぼくだってしらなかったのに、と、続ける。すると、再び誇らしげに喋りはじめる
「えへへ~、がんばってしらべたんだよ~」
再度誇らしげに笑う彼女を見ていると、何時しか、自分も一緒になって笑顔になっていた。
そして、率直な思いを彼女に―――桜山咲|(おうやまさき)に、いつまでも自分にとってかけがえのない大切な存在でいてくれるはずの彼女に、今できる、最高の笑顔でそれに答える。
「ありがと、さきちゃん。これからもずっとなかよくしてね」
これが、このたった一言が俺の―――神崎瞬|(かんざきしゅん)の言いたかったことだった。
「うん。もちろんだよ。だって、私。まーくんのこと――――――」
いつまでも守ってやりたいと思った。例え、どんなことがあっても彼女だけは。咲だけは、俺の手で守ってやると、その小さな拳を握りしめ密かに、俺は『まーくん』という名前に誓った。 ☆
四月。新学期や仕事。何事においても始まりの季節。桜がところどころに散りばめられた並木を進み、生徒たちはこれから始まる新学期に、期待と緊張を託し、早足に各々の教室を目指した。
入学式と他校で言う文化祭を控えた、ここ私立碧桜学園|(しりつへきおうがくえん)。その中の一人の男子生徒。2年5A組。出席番号13。神崎瞬は、近々行われる大イベントに心を寄せていた。
「あぁ、はやく始まってくれれば、俺のハーレムが作れるというのに・・・」
「安心しろ、瞬。おまえにゃ、一生無理な話だ」
そんな、有りもしない妄想に軽く突っ込む悪友。寄せていた思いを根っから否定された瞬は、一人勝手に盛り上がり反撃に出る。
「何おう!悠二|(ゆうじ)だって、無理に決まってるだろ!」
悠二。その姓を仙道|(せんどう)とする彼は、ワックスで逆立てている紫いろの髪を軽く揺らしつつ答えた。
「無理も何も、俺はそんなもんに興味はねぇよ。一緒にすんじゃねぇ。この変態が」
「変態じゃねぇし。唯、エロいことが好きなだけだし」
そんなどうでもいい話をしていると、一人の女子が二人の所に歩いてきた。
その女の子は、華奢な体つきで抱きしめれば簡単に折れてしまうのではないかと思ってしまうような女の子だった。
「そういうのは、他の人からしたら変態っていうと思うよ。瞬くん」
質素が抜けたように白色の髪を揺らしつつ、誰が聞いても不快になるどころか聞き入ってしまいそうな声の持ち主が、苦笑いしつつそう言ってきた。
「そんなことないよ。沙夜|(さや)さん。それにしても、今日は学校に来たんだね」
「まったく・・・。ゲームや、パソコンをやるから学校をちょくちょくサボってるっていう方がおかしいと、俺は思うけどな」
悠二が一人で何か言っているのを無視し、会話を続ける。
「今日は、新学期初日なので、昨日は早く寝てちゃんと来ました」
ニッコリと微笑む彼女を見ると自然と笑顔になる。そう思いながら、答える。
「そっかぁ。沙夜さんもヤル気満々だね」
瞬が、あはははと、いつものように笑っていると、横で悠二が一人ぼそぼそと呟き始めていた。
「・・・逆に言えば、初日じゃなきゃ来ないってことじゃないのか如月|(きさらぎ)?」
と、一人ぼそぼそと呟いていた。
でも、さすがに一人で喋っているのは、頭が痛い子だけで十分なので話に乗ってあげる。
「まったく・・・そんなところばっかり、悠二は頭が回るんだね」
「いや、お前に勉強教えたの誰だと思ってんだ?」
「・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・。・・・・・ところで、如月さん?」
勝てるわけがない。元学年1位の突込みには。そのため、反撃は厳しく、咄嗟に話題を180度程、無理やり変える。
「無視か。いい度胸じゃないか。・・・まぁ、別に俺は良いんだがな。ただ、これを校内外にばらまいてもいいってとらえるけどな」
嫌な汗を柄にもなく垂らし、無視しようとしていた矢先、悠二が不穏なことを言い出す。それに反応して振り返る。チラっと、軽く見てみると、そこでは雄二が持っている機会らしきものがある。それを一瞥するなり、慌てて飛び上がる。
「ま、まさか!貴様、悠二!!なぜ今それを持っている!!」
先程から足している汗を軽く拭き、問い質す。そんな瞬とは対照的に、あくまで落ち着いた雰囲気で悠二が答える。
「護身用さ。お主が何もせんようにするためのな」
武将みたいな口調になってるのは木にせずに続ける。今、悠二が手にしている機械は、
「ボイスレコーダー、って・・・何を録音しているんですか?」
沙夜が問う。「まぁ、聞いた方が早いだろ」といい、平然と落ち着いた様子でいる悠二は、慣れた手つきで操作する。すると、中から響いてくるのは、どこか聞き覚えのある男の声だった。
『我は、高貴なる|騎士団《ナイツ》に所属している。名は無い。代わりに|漆黒の光を放つ賢者《ダークライト・マスター》と呼ばれている。だが―――』
「ヤメローーーー!!!それを、再生するなーーーーッ!!!」
体中からは滝の如く、書きたくもない脂汗を掻く。しかし、それを完全に無視し立ち上がる。
何かをたくらみ笑っている悠二の顔を一睨みし、ボイスレコーダーを奪う。そして、速攻で停止ボタンを押し、そのまま電源を落とした。
「ハァ、ハァ。貴様、悠二。絶対に許さんっ!」
「あ、あのぅ・・・今のは一体・・・。どこかで聞いたことがあるような声だったような気もするんですが・・・」
瞬が一人興奮している間、唯一話について行くことのできない沙夜が聞いてくる。それに、あくまで落ち着居いた様子の雄二が答える。
「ああ、あれは、瞬の面白い過去を録ったものさ」
「面白くないっ!!」
涙ぐみながらも必死に抵抗する。涙ぐんでいるのは、どちらかと言えば早く過去を投げ捨てたくてもどかしい思いが体中を取り巻いているような気もするが。
「コイツの中3の時は何というか。凄かった」
しみじみと思い出に浸るようにしながら語る悠二は、「でも、そんなやつが今じゃ学年1位なんだからな」と付け加える。そんなのをよそに、瞬は一人過去に囚われ、嘆き続けていた。
☆
「まったく、悠二のせいで朝から疲れちゃったじゃないか。」
8時50分。朝のHRを終え、1時限目の現代国語の準備を周りはしている最中、机に突っ伏しながら全席に座っている悠二に話しかける。
「お前が勝手に暴れだすからだろうが。俺は全く悪くない」
適当に受け流してくる悠二。その代わりに反応してきたのは、沙夜の方だった。
「でも、そのちゅーにびょうっていうのは、そんなによくないものなんでしょうか?」
「よくない!絶対に!」
机を勢いよく叩き立ち上がる。それに驚いたように沙夜は小さく口ごもるように喋りだした。
「そ、そうなんですか・・・でも、ちょっとだけ見てみたかったです・・・。」
何を言っているかは口ごもっていたせいで、よく聞こえなかったのだが、多分大したことないと勝手に判断してゆっくりと瞬は腰を下ろした。
「それにしても、何で悠二がそんなのを|何時《いつ》の間に録っていたの?」
ふと気になり、尋ねる。それに対する答えは、素っ気なく、簡単なものだった。
「簡単なことさ。ただ、普段からお前のポケットに忍ばせてたんだよ。」
それはそれで、犯罪行為のような気もするが、それを『ただの悪戯』と、半ば適当に片付ける。
「まったく・・・あ、そろそろ授業始めるじゃん。準備しなくては」
「だな、でも、来週からは|桜花祭《おうかさい》なんだから、そっちに時間を回してもいいところだと思うんだが・・・。」
桜花祭。毎年、桜の満開の時期に合わせて行われる恒例行事。近隣に住む人や、外の県からもやってくる。その為、ただ、花見をしてもらうだけでなく、各学級からの出し物も振る舞われる。それぞれの収入は、そのまま学級に振り込まれる。振り込まれる大半は、準備や設営の分の返済に回すが、残った収入は全てもらえた。お小遣いにするも、設備や教材の向上に充てるも何でもよかった。
だから、そのために各学級からの出し物はそれだけでも凝っていた。まぁ、ある意味、こっち目当てに来る人も少なからずいるのだが。
そんな人たちのためにも、ここ2年A5組も、話に話を重ね合ってきた。
まぁ、ハッキリ言って、決まってないんだけどね。
「でも、今日の2時限目と3次元目は、桜花祭の準備に充てられるし、大丈夫じゃないかな?」
今日が4月24日、水曜日。あと5日後には桜花祭が始まる。
2:
Sek_Seed [×]
2013-06-18 20:54:34
http://ncode.syosetu.com/n3904br/
ほいっと
3:
Sek_Seed [×]
2013-06-25 19:21:16
http://search.yahoo.co.jp/search?p=Sek_Seed&search.x=1&fr=top_ga1_sa&tid=top_ga1_sa&ei=UTF-8&aq=&oq=
そ
4:
Sek_Seed [×]
2013-07-06 12:33:47
『学年1位になって、生徒会に来なさい。そうすれば真実を教えてあげるわ。あなたが望むもの。そうでないもの。全てをね』
昨年の秋、ある人が俺に言ってくれたこと。今日、初めて生徒会役員が集まることになった。そのため、早足に生徒会室に向かっている最中、ふと、そんなことが|過った《よぎった》。
「真実・・・何なんだろ、一体・・・。」
あの時―――冷えきっている保健室で―――俺は、『なぜ貴女はそんなに頑張ることができるのか』と尋ねた。その時、あの人は、クリームブラウンの髪を軽く揺らし、答えてくれた。
あの時、感じた不思議な感覚は今でも忘れられない。何かに包まれるような感じ。かといって、強すぎもせず、弱すぎもせず。優しく、俺を包んでいた。あれは、一体なんだったのか。
様々な疑問が巡る中、|何時しか《いつしか》、生徒会室の前についていた。
中からは、2人分の声が聞こえてくる。・・・喧嘩してる?なんか、妙に騒がしいんだけど。
2人分。今年の生徒会役員は全員で5人。つまり、自分を除いてあと2人来ていないことになる。
と、考えつつ、ドアに手をかけたその時だった。
「あ、あのすみません・・・」
背後から、幼げな声が聞こえてきた。先程から、周りには自分しかいないので、ゆっくりと振り返る。
するとそこには、俯き気味で黄金色の髪を小刻みに揺らしながら、|身動ぎ《みじろぎ》している、小さな姿があった。
「ん?どうかした?」
優しくと以下賭けると、黄金色の髪の子はゆっくりと顔をあげ、その童顔を見せながら話し始めた。
5:
Sek_Seed [×]
2013-07-20 14:36:05
「奈緒さんには急いできてもらって申し訳ないけど、今日はこの辺で集まりはお仕舞ににしたいと思うわ。明日の放課後にもう一度集まって桜花祭についての話し合いをしましょう」
吹っ飛んで|逝く《いく》神流を|完全に無視《パーフェクトスルー》し、話しを進める。
「わ、分かりました。けど、紅木先輩はどうするんですか?」
笑顔で倒れて行った方を見つめながら問う奈緒。つられる様に瞬も次いで神流の方を見る。
そこではもう、立ち上がってズボンに着いた埃をほろっていた。
「大丈夫だよ。なんも心配する事は無いさ。というより、紅木先輩じゃ硬いから、神流でいいよ。・・・特に、瞬」
|何故《なにゆえ》指名してきた!?
一先ず、一呼吸。そして、返答。
「わ、分かりました。けど、何で俺なんです?」
聞き返すと、なぜか美波が「ハァ…」と深いため息をついていた。
「何でって、そりゃ、ライバルだからに決まってんだろ」
「はい!?」
何この人?高二病かなんか?
「大丈夫よ、無視していいわ」
戦ったことも、競い合ったことも。というより、今初めて会った人にライバル視され、焦っていると、美波先輩が小声でそう言ってくる。
素直に頷き、無視をする。無視された本人は部屋の隅でしょぼくれていた。勿論、皆無視してるケド。
「それじゃあ、今度こそ解散にするわね。また、明日もよろしくね」
そう言いながら、美波が立ち上がる。そして、立ち上がり俺の方を見て口を開く。
「神崎さんには、ちょっと話したいことがあるの。この後、いいかしら」
自分が指名されて軽く慌てる。それでも、神流先輩とは勿論対応も何も違くなるため、そんなに動揺もせず、聞き返す。
「ええ、構いませんが。何かあるのですか?」
「そうよ。大事な話、がね」
『大事な話』が若干強調されていたような気もするが、今は、それよりも、他の3人に動揺が走っている。その中でも神流はショックで気絶しているようだった。
「だ、大事な話、ですか・・・。分かりました、けど、この後帰りの支度してこなきゃならないので・・・30分ぐらいに校門前で待ち合わせで良いですか?」
今の時間が5時10分。そんなに時間はかからないであろうが、念のために多めのに時間を取る。早く着いたときは、それはそれでいいだろう。
6:
Sek_Seed [×]
2013-07-25 19:44:54
「み、美波先輩。どこから!?」
「ここからよ。それより今は、下がりなさい。今のあなたは簡単に殺されてしまうわ」
足元を軽く指差しながら話してくる。しかし、状況が呑み込めないが故、自分で聞いたのに、周りを分かろうとする方が先決だった。
「え、え?意味が……。てか、殺されるって、お、俺を狙ってるんですか?
」
目の前では神流が短く溜めて拳を振り切っているところだった。それに対し、女は軽くいなしていた。
そんな、異様な光景を目の前に戸惑いながら質問する。
「そうよ。あなたは|天力《てんりょく》を有しているから。それを見て、殺しに来たのよ」
「て、天力?なんですか、それ?」
目の前の光景もだが、今の話もだいぶ意味が分からず問い返してしまう。それに答えるよりも先に、神流の蹴りと、女の蹴りが交錯する。その余波により校舎が崩れてくる。
それにより落ちてくる瓦礫を、美波が先程見せた白い羅列で次々とはじいているようだった。
「後で、全てを説明するわ。だから今は、逃げなさい」
語気が強まるの感じ、軽く気圧される。しかし、それに後押しされるような形で立ち上がり、走り出した。
☆
「! 逃がさない」
瞬が走り出したのを見て、女が小さく呟く。しかし、追うにも、目の前の物を倒さねばならない。そう判断し、右の拳を構える。
「|強化《ブースト》。……|瞬《あいつ》のとこには、行かせねぇぜ?どうしてもっていうなら、俺を|倒し《ころし》てけ」
強化。これで7度目だった。口にする度、力や|速さ《スピード》が増していっていた。女は厄介なやつだ。胸中でそう呟くと詠唱を始めた。
「ッ!させるかよ!」
唱え始めてすぐに、神流は全力で振りかぶり殴りかかる。そして、触れるかどうか、寸前で女の姿が無くなる。
|空《くう》を殴り、軽く舌打ちをし、上を見上げる。すると、そこには、巨大な魔法陣が雲に囲まれた空に描かれていた。
「―――チェック」
女が小さく|結びの言葉《ラストワード》を口にする。刹那、黒い塊が超範囲にわたって放たれた。校舎には穴が開き、地面は抉られる。草木はボロボロにになっていった。
神流と、南はそれぞれ魔法陣を展開し、防ぐ。しかし、慌てて逃げ惑う瞬は、なす術もなく、正面から食らってしまった。
「グハァ……」
血を吐きながら、地面に倒れていく。それを確認するなり、女は足元に魔法陣を展開し、その姿を完全に消した。
「チッ……そうだ、瞬は!?」
神流は舌打ちをし、思い出したように瞬の元へと走っていく。
近づくにつれ、赤い血が地面に広がっていた。
「これじゃあ、天力まで一緒に流れちまうじゃねぇか……。どうする、美波」
一足遅れて到着した美波、血を出し続ける瞬を見るなり、
7:
Sek_Seed [×]
2013-08-03 22:38:04
血のように紅く染まる空。
その下に広がるのいは、まるで夢でも見ているかのような、非日常的光景だった。
黒い大きな翼を背にしている男が4人、円を作って立っている。その中心には、夕日の輝きを受け、赤みを帯びていた|黄金《こがね》の髪を携えている少女が立っていた。
加えて、その後方に、少年が一人座りこけていた。
少年と少女は、先程まで二人仲よく遊んでいた。しかし、この4人が現れた途端、全てが壊された。一緒に漕いでいたブランコは跡形もなく壊れ、砂場に有る、小さな砂のお城には、黒の羽が落ち、崩れていた。
全てを破壊され、何もできず、ただ目の前の光景を見る事しか、少年には許されていなかった。
そんな中、一人の男が少女の腕を粗々しく掴み、黒い翼で包んだ。その一瞬。包まれる直前、少年はほかの物はまるで見えなかった。でも、それだけは。電子顕微鏡でを介してみたかのように、鮮明に、見えた。
少女の眼から零れ落ちていく|雫《なみだ》を。
|雫《なみだ》を見た少年は奥歯を強く噛みしめ、動かない体を無理やり起こし上げた。衝動に駆られ起きたわけではない。
ただ。|唯《ただ》守りたかった。
少年は立ち上がるとよろよろとふらつきながら歩み始めた。先程倒れていたところから、男たちまでは精々10メートル前後。その間を少しずつ、可能な限り早く進んでいった。
黒い翼に包まれながらも、少女は必死に抵抗しているようだった。黄金色の髪が何度も、黒い翼の中から覗く。その度に少年の体は、鞭を打たれたかのように、身を震わせていた。
あと5メートルというとこまで進んだ。その時だった。地面に有った黒い羅列を少年は踏んでしまった。
刹那、男が一人、少年に気付く。直後、右手を
8:
Sek_Seed [×]
2013-08-31 15:09:57
そんな、シスコンみたいなことを考えながら、ふと時計に目をやる。すると、いつの間にか8時を回っているところだった。
「おっとやべぇ。ほら皆。早く食べないと遅刻するぞ。ほら、花織も」
飲みかけの味噌汁を一気に飲み込む。次いでご飯。行儀は悪いがこの際、そんなことは言ってられない。
「さて、行くとするか」
コップに注いであった水を一気に飲み干し、立あがる。
食器を持って台所まで行き水に軽く浸してもどってみると、美波先輩と咲は準備が出来ているようだった。
「それじゃあ、私は先にいかせてもらうわね。咲さん、ご馳走様でした」
微笑みながらそういうと美波先輩は身を翻(ひるがえ)し、先に行ってしまった。
「咲、俺達も行くぞ?花織も遅れるなよ」
廊下を歩きながらしゃべる。そのまま玄関でお気に入りの靴を履いて外に出た時、花織も玄関まで来ていたらしい。
「ハーイ。気を付けてね、お兄ちゃん。咲お姉ちゃん。いってらっしゃーい」
玄関で手を振る花織に軽く手を振りかえし歩く。
……ていうか……
「咲、さっきから黙ってばかりだけど、なんかあったのか?」
咲の肩に手を置いて聞く。それに反応するように、口を開いて答えた。
「……どこも悪くないよ。ただ……」
「ただ?」
少しだけでも口を開いてくれたことに喜ぶ暇もなく、次の疑問が湧く。
しかし、その答えはとうの昔に誓っているものだった。
「ただ、まーくんが、本当に美波さんの彼氏になっちゃって、遠くに行っちゃうような気がして……」
「……そんなことはないさ」
そう、そんなことは絶対にない。だって―――
「―――俺はハーレムを目指してるんだ。仮に美波先輩が本当に俺の彼女だとしても、咲は俺の大切な幼馴染だ。てか、もう、兄妹のようなものだ。んで、咲も俺のハーレムの一員なんだ。だから、だから……。俺が遠くに行くなんてことは無いんだ。ていうか、寧ろずっとそばにいられるんだから、な?」
何時(いつ)、俺がハーレムなんてものを考え、目指したのか。そんなのはとっくに忘れてしまった。
だが、理由だけは確かに俺の手の中に。そして、胸の中に刻まれ続けている。
そう、俺の周りにいる人は幸せにしてみせる。俺を愛してくれる人ならなおさらだ。馬鹿にされたっていい。でも、俺の周りだけは、絶対にそうする。例え、どんなに厄介なことがあろうとも。
「ほんと……に?」
「ああ、本当だ。だから、安心していいぞ?」
誓った日も忘れてしまった、周りからみたら馬鹿な夢。それを幼馴染(いもうと)に話すというのは、どこか照れくさい。でも、ありのままを話した。その為か、咲も一気に顔を綻ばる。
「うん!じゃあ、ずっとまーくんの側にいられるんだね。良かった~」
先程までとは打って変わって、喜んでいる。それだけでなく、軽くステップすら踏んでいる。そんなにうれしかったのだろうか?
「ほらほら、そんなにはしゃぐと、転んで怪我するぞ?」
「大丈夫だよ~。それより、私先にいってるからね~」
スキップをしながら、咲は先に行ってしまった。
一人残される形になった瞬は、咲の行動に苦笑いしつつも歩き出した。
「よき、友人だな」
低い声が響いた時、一陣の風が強く吹き抜けた。
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