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モン雑ファミリー集まれ!2/23912


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23445: Green-eyed monster [×]
2014-01-21 21:22:41

ブライトクロス
第七話 脳に響く声

捨てられた弁当を左手に持って立ち去ろうとする少女、ナキネ・ブラックレイ。
「今日の昼飯は弁当二個もあるや、ハハッ…」
右手にも弁当を持っている。
もしかしてあの兄貴と一緒に食べるつもりでいたんだろうか。
「ねぇ!…えっと…そのお弁当だけどぉ…良ければ私に、くれない?」
戸惑いつつもアヴィスが声をかけた。
「いや、ほんとに気にしないでいい
こっちも…自分で食べるからさ」
「あ、いや、その~…」
「平気だよ、兄が私に辛く当たるのは珍しくないし
………でも兄を悪く思わないで欲しい、それじゃ」
流石のアヴィスもこの状況では手を出しがたい。

「お弁当~…?」
突然、気まずい空気の中に、金髪の少女がフラつきながら入ってきた。
「え?な、何、きみ誰?どうしたの?大丈夫?」
「朝から何も食べてなくてお弁当も忘れちゃって…
余ってるって話…聴こえちゃったからぁ~…」
お前はハイエナか。
「アハハ…そうなんだ、大変だなぁ
いいよ、やる、食べてくれると助かる」
右手の弁当を差し出そうとするナキネ。
「ありがとう、ほんとありがとう」
少女はナキネの左手から弁当を奪った。
「あ!そっちのはダメだっ!」
その場に座り込み、お構い無しに包みを広げてふたを開ける少女。
「いただきます♪
んん~!とっても美味しいよ~!
これ、手作り?」
「…そ、そうだけど…ぐちゃぐちゃで、ごめんな…」
「平気だよ、それにほんとうに美味しいもの」
少女は屈託のない、満面の笑みで答えた。
「あ、ありがと…一緒に食べて、いい?」
「もちろん」
ナキネも座り込んで弁当を開けた。
「あ~…さっき転んじゃったもんなぁ~…
これじゃどっち渡しても同じだったな
バカみたい、笑っちゃうよ、アハハ…」
「そっちのも美味しそうだね」
「そうか?君は少し変わってるみたいだ
あ、いや悪い意味じゃなくてだよ?」

「あのさぁ~、そんな地べたに座って食わなくてもさぁ~
テーブル空いてるし、こっちで一緒に食っていいんだぜ?」
「いいんだ、この娘が気にしてないみたいだからさ
私もなんだか、ここが良いような気がして
それに…」
ナキネはガラージに目を向ける。
「ああ、ガラージの事なら気にするな
君の事は許すって、最初から言ってた
アイツは『漢』だからな」
「『男』だから?やっぱり痛いんだ…」
「あっ、『おとこ』っていうのはそういう『男』の事じゃなくて…」
「『漢』だって」
俺の代わりに少女が続きを言った。
「へー、そういう言葉あるんだ、知らなかった
でも、私達はここでいいよな」
「うん」
「そうか、まあ仲良くしなよ」

「ところで名前なんていうんだ?」
「私は…」
「ああ、俺?キュリオ・メルクリル」
「いや、君に訊いたわけじゃ…」
言いかけて気付き、手で口をふさぐナキネ。
でも聞こえちゃったよ…俺すっげぇ恥ずかしい…
「改めて私はナキネ・ブラックレイ、よろしくキュリオ」
もう一度自分の名前を笑顔で教えてくれたナキネ。
気を遣ってくれてるのが分かり、余計恥ずかしい。
「じゃあ、また何か縁があればよろしく」
俺は足早に立ち去る事にした。
「えっと、それで君は?」
「ルナリア・アルトラルっていうの」
「良ければ…これからも時々ご飯食べないか?」
「うん、仲良くしよ~」
背後で聞こえる会話が良い雰囲気なのが、皮肉にも俺にとっては傷口に塩だぜ…

「おかえりキュリオ、恥ずかしいわね~えww」
「るっさいぜッ、チクショオ!」
「それにしてもあの二人、仲良くなりそうね
『技Y・字手服to茄子』、かしら」
「ねえ、お姉さ~ん」
ルナリアが『お姉さん』を呼んだ。
「私がどうかしたのかしらー?」
アヴィスが返事をした。
お前じゃないお前じゃないお前じゃない。
アルメリィの方だろ?そうなんだろ?
さぁ、アヴィスも俺と同じ苦しみを味わうがいい!
「『技Y・字手服to茄子』じゃなくて『災い転じて福となす』だよ~」
アヴィスであってんのかよ…
「まあ!そうだったのー
親切に教えてくれて礼を言うわ、ありがとー」

「つーか、違いがわからねーんだけど?」
「私もわからなかったし、そもそもこの場合は適切な言葉ではない」
「俺も…わからな…かったな…」
やはりアヴィスにしか伝わっていないようだ。
「だからぁ~…こういう事よ」
アヴィスが紙とペンを取り出して文字を書き、やっと俺達にも理解出来た。
「一文字もあってないとかのレベルじゃねぇ…」
「服to茄子…茄子のための服…どういうことなの…」
「それ…よりも、だ…何で二人は…文字を使わずに…意志疎通が…出来た…んだ?」
「あの娘に言われた時にそういう感じがしたのよ
そうとしか説明できない
よく考えれば不思議ね、だけどその時は違和感も無く頭に入ってきたのよ」
「そういえば、さっき単に『お姉さん』と言った時にも、何故か私の事じゃないってわかったわ」
「そうね、その時も私には通じたの」
「キュ…リオ、そん…な感覚…わかっ…たか?」
「わからなかった」
「言っとくけどこんなの私も初めてよ」
「そうだ!さっき話した時も『男』と『漢』を聞いただけで区別した
しかも『漢』と言っただけでナキネにその意図を理解させていたようだった!
て事はあのルナリアとかいう娘、言葉か会話に関する能力者…!?」
「能力者…俗っぽい響きだわ」

「とりあえず仮説は出来上がった
本人もそこにいる
俺達のすべき事は…飯を食う事だな」
「その通りね
色々あって食事が全然進んでなかったわ
『原が滅っては単戈は田未ぬ』よ」
「お姉さぁ~ん
『腹が減っては戦は出来ぬ』、また漢字が間違ってるよぉ~」
「ルナリアちゃーん、度々ありがとねー」
「しかも耳も良い、さっきからの会話も全部筒抜けかもしんねー」
「聴こえちゃってごめんなさ~い
だいたいあっているよ~
でも声に出さなきゃわからないし、私も喋ったら隠し事出来ないから~
それに秘密は守る主義だから安心してくださ~い」
秘密は守る主義なのか、じゃあ安心だな。

「ルナリアはさっきから何の話をしてるんだよ?」
「ナキネちゃんも大丈夫って話♪」

第七話 脳に響く声 終
次回 星の姿

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