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自分のトピックを作る
853:
NIGHTMARE [×]
2013-03-17 23:28:13
こんばんは、NIGHTMAREです
忙しくて大分遅れてしまいましたが、新しい話が書きあがりました~ ご確認をお願いしますm(__)m
=C rimson Blaze=
第八十五話 越界者の行方
もう日が沈みきって、赤く染まっていた空が漆黒に飲まれる…… そう、夜といえる時間になった頃。任務を完了し帰還したジェノスとウル、そして彼らの手により保護されたエインとトールは、ある場所に呼ばれて大宮殿の中で歩を進めていた。普段ならブリーフィングルームか、ガルドの執務室に向かうが、今回は事情が事情であるためか“第一大老執務室”に呼び出されていた。
「うわぁ、もう何から驚いて良いのかわからない」
道中、やはり周囲の景色や建物の造りなど、全てがエインたちにとって違和感の塊であるせいか、二人ともずっと辺りを見渡していた。設備などは彼らが想像していたほど基本は変わっていないらしいが、景色が放つ雰囲気があからさまに未来的であるようで、トールは時折感嘆の声を上げている。言葉の内容から察するに、もう具体的に何が違うという風に説明できるレベルではないらしい。
「……というか、所々半端じゃねぇぐらい面積取ってるんだが。大勢の人間が使うにも不自然なぐらいだ」
だが、エインにとっては…… いや、実際はトールも言いたいところだろう。はっきりと違う構造として、一部あからさまに広すぎる場所があるという事。移動の際に街並みを見ていたときも道が広すぎたり、そもそもこの大宮殿自体があまりに巨大であったり。この特徴による違和感は頭一つ抜けているようである。
「そいつは、この街に“龍”が住んでいるのが理由だな」
「風翔龍から始まって、炎龍、霞龍、黒龍、紅龍、祖龍…… 他にも煌黒龍、嵐龍、極龍とか、色んな種族の龍が住んでるからね、この街。流石に老山龍とかあの辺は大きすぎて動けても住めるレベルじゃないけど」
「……どれもこれも見聞きした覚えがある感じがする」
エインの挙げた、不自然なほど大きなスペースを設けている理由について、ジェノスとウルは歩きながらすぐに答えを返す。特にウルは携帯端末を使い二次元式立体映像でモニターを表示しながら、彼らにより掘り下げた話を映像や記録を交えてわかりやすくしていくのだが、エインは何故か既に知っている気がするという妙な感覚を覚えていた。
「……着いた。面倒は起こすなよ」
「そりゃアンタら次第でもあるだろ」
「……フン」
長々と話をしている間にだいぶ時間が過ぎていたようで、ジェノスら四人は既に目的地の執務室を前にしていた。一応、最高責任者の前になるわけなので、口数少なめに粗相の無いように告げるジェノスだが、それに対してドライに返すエイン。そこでジェノスは返事を軽く受け流すわけだが……
「なんか、空気重くない?」
「そう? 気のせいじゃないかな」
無愛想な二人に挟まれているような気分であるトールは、その二人の間が張り詰めているように認識しているようで、この場にいる事を息苦しく思っていた。しかし、内心ジェノスとエインは互いに認め合っている部分がある事を知っているためか、ウルの主観は全く別の風景を映し出していたようだ。……もしかしたら普段の正確になっているゆえの、天然である可能性も否定できないのだが。
ウルとトールがコソコソと話をしている間に、ジェノスは中に到着した事を伝えており、直後に目の前の物々しい扉が静かな機械音を鳴らして横にスライドして開いた。ジェノス達に先導されるままにエイン達も歩を進めていくが、そこで彼らは今までで最も大きな驚愕をする事になる。
「お二人とも、こんばんは。無事で何よりです」
「……ッッ!? 何でアンタがここに!」
彼らの前に率先して姿を現してきたのはなんと、フェイであった。歩きながら浅葱色の髪とクリーム色のロングスカートをなびかせながら、相も変わらず神々しいほどに美しく、暖かい笑みを浮かべて、ジェノス達よりも先にエイン達に挨拶を交わす。まるで、最初から顔見知りであるかのように。
事実、エイン達はフェイと顔見知りの間柄であったようで、何故別の世界であるこの場所にいるのか、と言いながら声を荒げている。その驚きようは、部屋に響く大声だけで充分明白である。
「その質問にはなんといいますか、私がこちら側の存在だから、と言えばそれで終わりなんですけれど」
「今度は俺達の方が、そっちの世界に来ちゃったって事? 滅茶苦茶だよ……」
エインからの動揺と共にぶつけられた質問にフェイは思わず苦笑してしまい、左手に頬杖をつきながらあっさりと返事をしていた。その後のトールのつぶやきやエインとの会話内容から、フェイは彼らの世界に行った事があるようだ。
「今回の件に、アンタは関わってないんだよな」
「少なくとも直接の関わりがない事は、貴方が一番理解しているはずですよ」
ともかく、状況を明らかにしたい二人だが、トールではうまく話せる状況ではない。なのでエインが率先して話を進めていく流れになる。まずはこの転移…… 事実上の世界間移動に対し、フェイが手を引いているかどうか。これにももっともな理由付けを加えながらフェイが応じていくと、エインが表情を曇らせながらトールの方に少しだけ視線を移す。だが、ここから二人の心象が移る前にフェイが先に切り出した。
「ところでエインさんが感じている、見覚えのような感覚…… その訳を知りたくはありません?」
「アンタ、心でも読めんのかよ……」
「時折見せる不自然な挙動で、なんとなく解りますよ」
エインはここに来るまでに、ウルが見せた情報を既に知っているような感覚、そしてこの場所の事を“ゲームの世界”と呟いたことがあった。彼がそれ故に、歯車がかみ合わない歯痒さのようなものを感じている事を看破したフェイ。それをかみ合わせるための話をするつもりなのだろうが、その前に……
「アシュター、それにガルドさん。今からする話は忘れるつもりでお願いします」
「仰せのままに」
「わかった」
フェイにばかり気を取られて意識していなかったが、後ろには腕を組んで立っているガルド、そして顔の前に手を組んで上座に座っているアシュターの姿があった。口外無用を伝えているのは確かだろうが、それにしてはフェイの表情はやや緩んでいる。
「結論から言うと“こちら側”の根本的な世界観は、貴方がいた世界でもあるもので表現されています」
告げ終わったフェイは再びエインたちの方に向き直り、一旦中のソファーに座るように促す。彼等が適当に場所を見繕って座ると、その反対側にフェイは両手を膝に揃えて座り、エインの頭の中にあるピースを合わせる為の話を始めた。
「貴方達の世界で数十年前に実在したビデオゲーム…… ある国では国民的ゲームソフトとまで言われた“モンスターハンター”…… この媒体で舞台となった世界観が、私達の世界です」
「そんなもんが、本当に実在する…… こんな馬鹿な話、誰も信じねぇだろうな」
まず、フェイ達の世界観がエインたちの世界ではどういうものになっているのか、それをはっきりさせる。更には、厳密に言うと舞台となった世界から数百年経った、未来の一つが形になったものであることを告げた。たかがゲームというレベルに収まったタイトルではない為、大きく年代が経った時代でも、何らかの形で残っていたのだろうかと、エインも考察を巡らせる。
「こちらの文明はそうですね…… エインさん達の世界で言えば、二十世紀末から文明が充分進化している計算で、西暦二一〇〇年半ばから二二〇〇年半ばほどに相当します」
「なるほど、道理でSFの空気がすると思ったぜ」
「百年ぐらい先の時代…… 想像できないや」
いつの間にかフェイは、この世界の世界観に関する話題に流れるようにすり替えており、これが彼らの理解を一層早く深めることになった。彼等二人が知りたかった状況は、これでほとんど明らかになったと言っても良いだろう。
「まぁ、大体分かった。ところでだ、俺達は帰れるのか?」
「私なら転移した時間軸も場所も合わせて、時空間転移する事によって、連れ帰ることが出来ます。……ん?」
最後に、エインたちにとって最も重要な命題である、この世界から元の世界に帰還する事ができるのかを確認し、その件に関しても何一つ問題はない事を付け加えた上で、フェイは可能だと返答する。が、その直後に何かを感じ取ったように軽く頭を押さえ、視線も別の方にいったん逸らす。これがしばらくの間経ったわけだが……
「ふぅ、また“向こう側”からの依頼ですか。どうやら貴方達は、数日単位で“こちら側”と“向こう側”を行き来する事になりそうです」
「……は? ちょっと待て、どういう事だ。そもそも俺達の世界の何からの依頼だってんだ」
「今回は“語り手”、と言ったところです」
頭から手を離したフェイは、やれやれと少し呟きながら首を横に振る。そして、ただ単にここからエイン達を帰す、というわけにはいかなくなったようだ。事情については不明だが、彼らはこれから以下のように行動する事になったという。
――数日ごとにお互いの世界を行き来する…… それも、時空間の矛盾が出ぬよう、転移・帰還の時間は同時刻に合わせるようにする条件でだ。こちらの世界でいくら時間を過ごしても、時間さえ合わせれば元の世界の時間は経過していない事になる。その逆も然り。
「……ここんとこの俺らの境遇、横暴過ぎんだろ。ってことは衣食住の確保が要るぜ」
「でも、どうするのさ。俺達だけじゃ……」
元の世界のことまで含めると、あまりに多くのことが一度に起こっているらしく、エインは半ば状況を受け入れられずにうなだれたような様子になっていた。トールも途方に暮れており、両手で頭を抱えている。
「それについては、既に戸籍の用意などは進めているところだ。だが、完成には君達が何処に居を構えるかを決める必要がある。……よろしいか?」
そこで助け舟があるという事を語り始めたのは、手を組んだままエイン達を見ていたアシュターである。フェイは転移に関する関わりは無くとも予見はしていたらしく、事前に依頼をする形で手を回していたらしい。流石に精神的に未成熟な未成年であるエイン達には、重役の持つ貫禄は重いようで、返事は静かにうなずくだけであった。
「うむ、ガルド准将」
「はっ。君達が我々の敵対勢力に狙われているという報告を鑑み、適切な場所に移住してもらいたいのだが…… 君達にも意思というものがある。よって選択肢を与えようと思う」
「エインさん達の身の安全に関する配慮です。行動に制限が掛かったりはしないので安心してください」
エイン達の返事を確認したアシュターは、以後の説明をガルドに促す。そして、彼らの住まいもある程度既に手配していること、そしてその理由までを簡単に説明、補足としてフェイが、基本的にミナガルデ市街地内に居れば安全であることと、軟禁などの状態にはならないという事を伝える。
「一つは俺の家だな。最も近い位置で保護しやすいから理想的であるし、場所など未だかなりの余裕があるのだから、君達にとっても住み易いだろう。昔はジェノスも養子にしていたしな」
「あの頃か…… 懐かしいっすね」
「ふふ、そうだな。もう一つはこちらでマンションの一室を用意する。その際は君達だけで自立して生活して貰う事になる」
続いて、この世界に滞在するにあたり、エイン達に住んでもらう住居についての説明を、ジェノスと昔を懐かしみながら行っていくのだった。とはいえ、こちらの世界に飛ばされて急な話であるので、エイン達の方はすぐに答えを出せずに考え込んでいる。
「すぐに答えを出さなくても構わない。先にセーフハウスとしているあるホテルの一室を手配している。決まるまではそこで生活するといい」
「わかった。こうも至れり尽くせりだと流石に感謝するしかねぇな」
このことも既にエイン達以外にとっては想定済みであり、察したガルドが仮住まいの方の説明まで行う。高級ホテル並みの居住感に従業員のサポートなどもあるので快適な生活を保障…… 仮住まいとしては贅沢すぎる条件に、二人は承諾の意を表し、当面の生活面についての問題はこれで解決した。
「さて、次は商談といこうか…… エイン・レチェンドと言ったな」
返答を受けたガルドはややあって、何かかすかに呟いていた。そして、一旦間を置いてからフェイと席を替わり、エインと正面から話を始める。
「君の戦闘データはすでに確認済みだが…… 流石にあのような力は公にすれば混乱を招く。いいか、緊急時以外は決して使うな」
「元々魔術師ってのは日陰者だ、それぐらいはわきまえるさ」
まず最初に告げたのは、報告を受けている“魔術”の使用制限…… というより、事実上の使用禁止というものだった。あれが起現力と同様に超常能力であることは誰の目にも明らかであるので、無用な混乱を避ける為に釘まで刺して敢えて一番最初に厳命したのだ。エインの方も元の世界でも似たような立場であったことを話し、ガルドの話に十分理解を示して承諾するのだった。
「しかし、我々の持つ力とは違った強さは、俺としては欲しいと考えている」
「……何が言いたいんだよ」
とはいえ、エインの持つ魔術という特別な力は、起現力と比較した際の利点…… 強力な力を継続して使用できるというところに着目すべきところである。ガルドは“それ”が欲しいと感じており、ある程度口に出すが、聞き手側のエインにとっては何が言いたいのかが不透明であった。
「俺が見る限り、エイン・レチェンドという人間は…… “戦場でしか生きられない”」
「……っ!」
そんなエインの眼を真っ直ぐに見据えたガルドは、自分から見たエインの人間像を、一切飾り付けずに直球でぶつける。これにエインは図星のような、あるいは他の感情…… 様々な複雑な思いに駆られるが、否定する言葉を出すどころか思いつくことすら出来ず、噛み殺しながら黙るしかなかった。
「もう言いたい事は、分かるな?」
「……嫌でも、な」
彼らが交わしていた会話の意味…… それはトールただ一人を除き、全員が理解していた。ガルドが行っていたのは一種のスカウト。そして、エインは“闘争”こそが自分の生きる術の中で、唯一無二に近いほど最も優れた要素であることを嫌でも理解していた。加えてガルドが放っている覇気にも近い圧力が、選択の余地を与えていない。
「商談成立、と受け取るぞ」
「先に色々整理させてもらうけどな。そこまでさせないほど、アンタも鬼じゃねぇだろ?」
暫く続いた長い沈黙の後立ち上がったガルドは、承諾と受け取ったことをエインに伝える。それに対して、今のところは仮承諾という事にしておいて欲しいとエインは頼み、ガルドは一も二も無く承諾する形となった。
「今日のところはこれで充分だろう。仮住まいには部下が案内する。既に用意は出来て居るから、部屋を出たらついていくと良い。ジェノス、ウル、お前たちも下がって良いぞ」
以上で、全ての用件が済んだことをガルドがエインに告げると、同時に執務室の扉が開き、そこにはSPを思わせる黒服の男性が数名ほど控えていた。言われたとおりにエイン達が彼らに先導されて部屋を去ると、ジェノス達も後に続くようにこの場を後にする。それぞれ、自分が向かうべき場所に行くのだが、ふとウルが呟く。
「私達、影薄くなかった?」
「……気にしたら負けだ」
第八十五話 終 To be continued…
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854:
鎌虚 [×]
2013-03-19 09:10:20
お久しぶりです。ナルガEXです。
確認しました!
先が完全に見えなくなりましたねw
次回が楽しみです!
あと、ペンネームを変えました!
次の話が完成したらストーリーテラーでこの名前を使うつもりですw
855:
NIGHTMARE [×]
2013-03-19 19:35:26
ご確認ありがとうございます(^-^)
更新間隔が遅れていますが、地道に進めているのでご安心くださいね♪
それでは、また~(^∀^)ノ
856:
NIGHTMARE [×]
2013-03-29 22:09:57
こんばんは~ 今回はナルガさんにもう一つ確認していただきたいものが出来たので参りました
こちら側の人物紹介に合わせた、エインとトールのプロフィールです 問題が無ければこちらの人物紹介にそのまま掲載する予定です
内容は以下のとおりです~ では(゜ω゜)ノ
名前:エイン・レチェンド Ein Rechained
種族名:人間
年齢:17歳
性別:男
身長:175cm
体重:62kg
髪型: ショートヘアー
髪の色: ナチュラルブラウン
瞳の色: 黒
武器:ソルダートアサルト・カービン(正式名称:新62式突撃小銃) 老山龍砲・極
防具:ハプルシリーズ型機動装甲にフルフルZ(頭部以外)装備を着込んでいる
愛想の無さや口の悪さ、特に反抗的な口調が目立つバッドガイ。
必要以上に他人を寄せ付けようとしないが、その裏には困った人間が居ると助けずには居られないという、お人好しな面が隠されている。面倒見のよさという違いはあるもののジェノスと人格的に似通っており、内心馬は合っているのだが、他人から見るとあまりそうは見えない。また、周囲の人間の性格上、表面の性格がなりを潜めたり、調子を狂わせることが多い。
戦闘時は相手が強いほうが燃えるタイプで、これが災いして自己判断での引き際はあまり良くないという傾向がある。とはいえ若年ながら後述の理由で戦闘経験が豊富らしく、兵士としてはプロフェッショナルと言える実力を備える。
服装には気を遣うが、面倒くさがり屋なために他の身だしなみにはそれほど気を遣っておらず、服はしっかりしているが髪がぼさぼさなど、やや偏った容姿を持つ。
実は、私達で言う“現実世界の未来(その平行世界の一つ)”から転移してきた人間であり、その世界の“魔術師”である。実戦経験の豊富さは賞金稼ぎや傭兵を生業としてきたが故のもの。
そのため、この世界には基本的に無い“魔術”の行使をはじめ、武装は支給されたもの以外にも実在する銃器を愛用するなどの特徴もあり、持っている知識なども実在のものに準ずる。ただし、それゆえに常識のズレが生じており、人生の多くを実戦経験に捧げたために、それに拍車をかけてしまう場合も。趣味の銃器いじりなどがまさにいい例
戦闘能力に於いても、両世界観では身体能力の基準が大きくズレている。そのため身体能力では大きく水を開けられており、それを魔術や特殊能力で補う。また、過酷な状況ゆえの急成長も見込めると言える。
名前:トール・マクライシス Thor Ma Crisis
種族名:人間
年齢:14歳
性別:男
身長:156cm
体重:44kg
髪型: リフレッシュショート
髪の色: ブラック
瞳の色: 薄い青
人見知りで気の弱い性格が特徴の少年。
出来るだけ当たり障りの無いように接しがちだが、他人を遠ざける傾向が薄い分エインよりは社交的。思春期真っ只中の普通の少年なため、やや繊細なところもあり、そういった面ではリオンとの共通点が目立つ。また、同じ理由で端麗な女性ないしはその容姿に弱く、緊張しやすい。ただし、調子に乗ると態度が大きくなったりなど、お調子者の面が見られることも。
容姿は年齢相応に幼い印象。他に大きな特徴は無いが、人並みに身だしなみに気を遣っているようで、エインのようにぼさぼさ髪だったりはしないようだ。
エインと同様、彼も“現実世界の未来”から転移してきている。転移は彼が原因と考えられており、何らかの力を秘めているようだが、その片鱗が見られることはこちら側では特にない模様。
エインと違って民間人であるものの、学校などの教育機関に身を置いたことがないのか、学問的な知識の欠如が見られる。このため、年齢相応の中等部に必要な知識までは教え込まれてから学校に通う事になるが、通学後もエインと同様の理由で身体能力に悩まされる。ただし、彼は並外れた努力家であるという一面を備えており、結果的に驚異的な猛追をする事になる。
857:
ナルガEX [×]
2013-04-26 20:38:43
返信遅れてすみません!
特に問題はありません!
858:
NIGHTMARE [×]
2013-04-29 01:05:51
お返事確認させていただきました~
それでは、この内容で進めさせていただきますね(^^) もう少し本編が進んでから掲載します
今日はこの辺で失礼しますね~
859:
NIGHTMARE [×]
2013-06-02 01:16:16
どうもこんばんは、NIGHTMAREです~
今回もご確認いただきたい話が書きあがりましたので、よろしくお願いします(出来れば二週間以内?)m(__)m
注:現在掲載しているものの一話先の話となります
=C rimson Blaze=
第八十八話 エグゼクター
「よし、ジェノスは勝ったみたいだね。この感じで囮に遭遇し無かったっていう事は、多分残りは通常戦力……」
ジェノスによる起現者、即ちシアーズの撃破を確認したウルは、彼が最進行した事に安心感を覚え、予定通りに索敵を続行する。他のメンバーの二倍以上を誇る巡航速度と裂く敵範囲を活かし、凄まじい効率で索敵を進めていたため、居場所についてほぼ当たりをつけていたウルは、その箇所を一つ一つ調べているところであった。
「ただ、これは喜んでいいやら悲しんでいいやら……」
ジェノスの勝利を喜んでいる心の片隅で、微妙な心境もウルは抱えていた。あのチンピラもどきコンビまでも障害を排除し、こちらを目指していたのである。彼らでさえ仮にも同じ部隊に所属する起現者なので、実力“だけ”は確かなのである。脅威を排除してくれたことは確かに助かることであり、実際それが彼らの唯一役に立ってくれるところではあるが、それ以外では何をしでかすか分かったものではない……
「まぁあんなの、相手に直接護衛してるのが居なければ、どうとでもなるか。……と、怪しげな反応見っけ」
とはいえ、そういう連中だからこそ手綱を引く手段は用意していると言うもの。元よりそのつもりだと心を切り替えた頃、センサーに多数の人間らしき反応を見つけた。彼らは付近の洞窟に隠れようとしているように動いており、ほぼ間違いなく当たりを引いたと確信する。瞬時に先回りするルートを構築し、ラージブーストを展開して動力伝達を集中、亜音速巡航を開始する。
「あの二人も近いなぁ…… ええい、ままよっ」
ウルの索敵情報は随時他の三人にも伝わっている為、当然ながら問題児共も接近していた。嫌がるように顔をしかめたが、寧ろ先に到着しておく事を最優先とした。
「もう少しで身を隠せるところに辿り着ける、正念場だぞ」
正面に巨大な岩を臨みながら、森の中をゆっくりと行軍している兵士達がいた。彼らの半数ほどは応急処置を施された負傷兵であるらしく、素早く行動をするのは困難であるようだ。彼らは一帯の地図を端末で表示しつつ、身をおける場所として選んだ洞窟を目指している、というところだ。
「隊長代理、本当に大丈夫なんですか? ここらの洞窟内は極寒だって聞いた覚えがあるんですが」
「シアーズ殿の話を信じるしかない。今はそれにすがらねば、彼らを助けられん」
戦闘にいる者のすぐ後ろに控えている兵士が、歩きながら不安そうな表情で口を開く。確かにメタペ湿密林の洞窟の多くは、内部気温が極めて低く、寒冷地での体温安定剤であるホットドリンクの類が無ければ逆に体力を消耗する事になる。しかし、隊長代理と呼ばれた兵士は気温による影響が無い場所を聞いているようで、今向かっている場所はまさにそこだった。
「周辺の偵察が完了しました、特に脅威は無い模様」
「解った、このまま行けば――」
一通りの受け答えを終えた頃に、斥候として放っていたと思われる兵士が合図をしながら正面から現れ、一帯に危険なモンスターなどは存在しないことを報告する。希望を見出せた隊長――便宜上こう呼称する――は安堵の笑みを浮かべ、案内を受けながら移動を始める。
――しかし、異変が起きたのはその時だった。
異常な量と圧力を伴った“水”が、突如彼らの目の前を掠めるように薙ぎ払ったのだ。これを目で認識した直後、衝撃波の余波である突風と爆音が彼らを襲う。音はともかく突風と自分自身の驚愕に身体を押し込まれた面々は、体勢を崩して尻餅を付いてしまう。
兵士たちの眼前に、飛び越えるなど無謀なほどの巨大な溝を作り出した水は炸裂し、周囲に雨のように降り注いでいた。すると、徐々に視界が晴れていき、何者かの姿が見えてくる。
そこいる者は人間大の大きさでありながら溝上を滞空しており、前にいる者たち、とりわけ隊長にとっては想像していた通り機動装甲を身に纏っていた。上半身は直線、下半身は曲線的なフォルムをもつ重厚な装甲、特に腰から広がっている巨大な花弁のようなスカートアーマーが特徴的であり、空中をブレずに滞空していることから、高性能な機動装甲を装備していると想定できた。
「……!」
「よせ、今の俺達じゃ機装兵は相手に出来ん。それに今のは、例の“力”だろう」
一部の兵士が突如現れた正体不明の存在に銃口を向けるが、隊長が立ち上がりながら後ろの兵たちに右手をかざして制止する。そして、彼はシアーズから受けていた伝言を思い出す。
――追っ手は恐らく君達では勝算の無い相手だ。遭遇したら投降したまえ、相手が人格者であることを祈ってな。
「こちらクルセイド、ドンドルマ方面軍第五一九二小隊隊長代理、アロフ・E・マクラーレン曹長。そちらの所属は?」
「PHADUO特殊作戦軍、第零独立多目的特殊部隊、第十機装兵隊“オルトロス隊”所属、ウルスラグナ・ジルクロフト中佐。こちらに攻撃の意思はない、直ちに武装を解除して投降せよ」
今となっては遺言となった彼の言葉に従う前に、隊長はまず所属を明らかにするためコンタクトを計る。それに対し、形式的ながらもやや安堵したような女性の声色で所属を明かす彼女は、当然と言えば当然、先行していたウルであった。相手の安心感を高める為、バイザーを上げて素顔を晒すと――
「了解、勧告に応じ、武装解除の後投降する」
「賢明な判断、助かるよ。安心しきるには早いけど」
ウルの降伏勧告に応じた隊長、アロフは、全員に武装解除を促して抵抗の意思がない事を表明する。しかし、その直後にウルは鋭い目つきになって彼らの左後方を睨み、同時に右腕のライトカノンを展開してそこへ砲口を向ける。
「ハッ、さっきは面倒だったが、今度はザコ共か!」
「ヒャッハー! 今度は楽しめるぜ兄弟!」
そこからは血走った目を投降した兵士たちに向けて、猛進している類人猿が二匹、もといセンチュリーチームが居た。ウルが降伏勧告を行うことは、各機のネットワークから伝わっているはずだというのに、己の狂気を剥き出しにしている。このままでは、彼らが持っている柄の長いトゲ付き鉄球と短く巨大なトゲ付鉄球が、兵士たちを虐殺の対象にしかねない…… 完全にウルの意向に添わない行動である。
だが、暴虐の徒が意向に沿わない以上、そこで何もしないウルではない。
「エイン君、“コード・コンドル”」
ウルが兵士たちの降伏勧告を行う少し前、作戦区域から十キロ近く離れた岩場の高台に伏せ、ウルたちの様子をつぶさに見ていた者が居た。そう、作戦の現場に一切姿を現さなかったもう一人の存在、エイン・レチェンドである。
「いつも思うが、機動装甲ってのはスゲェな…… こんなバカみてぇな距離なのに、楽に相手を追える」
彼は普段着で参加する羽目になった初戦とは違い、“こちら側”の装備で完全に染まっていた。装備しているのは、構成素材がモンスター素材である割合が多く、ハンター工房で受注生産される特殊な生産形態を持った、“ハンター用装備”のギルドウォリアーによる独自改良型。高い生存性と軍用機に近い兵装運用能力から、軍の一部上位部隊でも使用されている“ハプルXシリーズ”…… のみならず、鎧と言うより外骨格に近いスマートな構造を利用して、その上からフルフル亜種の素材を使った繊維装甲を主体とした、“フルフルZシリーズ”の装備を上から着込んでいる、二重装備状態である。ハプルXをフレームとして扱い、フルフルZを外装として利用しているのだ。
余談だが、長時間どころか数ヶ月単位の長期間の狩猟活動という過酷な運用に耐えることを前提とした“ハンター用装備”である為、連続稼働時間と信頼性に限って言えば、ジェノス達の装備をも凌駕するどころか、天地程も差があると言っても過言ではない。
「それにしてもこいつ…… どう見てもデカくして老山龍の皮を被せたバレットM82…… アンチマテリアルライフルだよな」
そして、伏せながらスコープを覗きつつ狙撃兵のように構えている、身の丈を遥かに超える大きさの得物…… こちらは老山龍が自主提供している素材をふんだんに使って造られた、三十ミリ大型ヘヴィカノン、“老山龍砲・極”を対オーバーG用に改良したものだ。とはいえ、元々が対超大型モンスター用の強力なものなので、こちらは素のままで充分すぎるほどで、使用する弾頭によっては戦場を瞬時に火の海にする事さえ可能である。
「にしても、アレはヤバいんじゃないのか? あの二人の考えガン無視する気満々じゃねぇか」
スコープでジェノスやウル、そしてあの二人の様子を見ていたため、ウルが敗残兵達を見つけたのも把握していたエイン。しかし、例のあの二人の動き方を見て勝手な行動を取り得るのはエインから見ても明白であった。
ここで、エインはブリーフィングルームで、最後にガルドに呼び出された時の事を思い出す。
「ロクでもないって、俺に何させる気だ?」
「……お前の役目は基本的に先ほどマキが言ったとおり、現場チーム四人のサポートだが、もう一つ仕事がある。これは俺のお前に対する“小手調べ”でもある」
時はブリーフィング直後、ガルドがエインを呼び出したところまで巻き戻る。ガルドとマキが猛獣二匹のことで愚痴りあっているところにエインが割り込み、本題に入ったところである。ガルドにはエインに命じることがあるようだが、表情はやや険しい。
「センチュリーチーム、まぁ柄の悪いあの二人が居ただろう。あいつらがジェノス達の意向に沿わない行動をした時の為に、お前に対して出すコードを用意している」
ガルドがエインを呼び出した理由は、モヒカンとスキンヘッドの両名に関係する事であるようだ。エインとしても予想の内にはあったが、あの連中を俺にどうしろと、という意思を目で訴えている。
「コード・コンドル…… これが発令されたときにお前が取る行動は一つ、奴らを行動不能にすることだ。……命を奪ってでもな」
「今回の作戦は、貴方が指令に対して躊躇無く行動に出るための痛みを緩和するための、いわば最後の試練です。 更に言えば、貴方への指揮権はこちらとウルスラグナ中佐、ジェノス中佐です。 持てる力を遺憾なく発揮して目標を撃破してください」
「本気、か? 仮にも味方なんだよな、アレでも」
しかし、その意思をほぼ流して淡々と説明を続けるガルドだった。だが、その内容は例の二人が命令違反、もしくはそれに準じた行動を取った際の、事実上の抹殺命令だった。恐らく、表情が険しいのはジェノス達と正式に組む初の任務で、いきなり汚れ仕事をやってもらうことになり得るという事が原因だろう。しかし、この命令を下す言葉そのものには全く躊躇が見られない。 マキすらも朱色の目を輝かせて嘲笑の下、確実に殺害するよう限り無くストレートに命令している。 この二人、気持ちは抹殺してほしい方向に傾いているであろうことは見て取れる。 マキはセンチュリーチームの機動装甲の弱点を表すシミュレート画像を見せ、確実に撃ちぬける部位を指差していた。
対するエインは雇われたばかりの部隊で、いきなりこのような命令が飛んできた事にやや戸惑っている様子だった。この手の任務遂行の経験があるかは不明であるが。
「連中を“味方”だと思うな。“人”であるとさえ思うな。奴らは強力なだけが取り柄のただの“力”、人の形をした兵器。最も簡単に言えば道具に過ぎん」
そこでガルドはエインの眼とマキの眼を交互に見据え、センチュリーチームのように平時は監禁状態にしている者たちに対しての見解を伝える。人の手で直接制御される銃器や戦車などと言うよりは、どちらかと言うと使い捨ての銃弾やミサイルなどといった存在として見ているようである。貴重ではあっても容赦なく切り捨てるところで一層強調している。
「じゃあ、あのぶっ飛んだ連中は基本的には敵でも味方でもなく、指揮権に服さないなら敵と見なして対処しろってとこか」
「概ねその認識で構わん」
「わかった、気乗りするって程じゃねぇが、身内の不安要素の対処と思えばやりやすい」
エインはガルドやマキの話を聞いて、自分なりにどう認識したかを命令の確認とあわせて話す。そして、問題ないというガルドの返答を受けた彼は指示を受諾、任務に向けて準備を進めるのだった。
――そして時は戻り、今。
「エイン君、“コード・コンドル”」
その不安要素が今まさに、無抵抗の敗残兵に対して猛進している中、エインの予想通りウルによるコード発令が行われた。瞬間、エインは老山龍砲を構え直し、ウルがネットワークを通して指定したターゲットに対して砲口を向ける。
(いいか、あのクラスには同格の者による牽制でもなければ、初撃で当てるのは物理的に不可能と言えるレベルだ。だが――)
「警戒が薄い相手なら…… だから小手調べか」
出撃前に聞かされたガルドの言葉を思い出しつつ、彼の言っていた小手調べの意味を理解するエイン。そして、マキに言われたとおり自分に出来る全てを懸けようと深呼吸をする。
「確実にブチ抜く…… エンチャント・アルムス(兵装・魔術強化)」
エインが呟くように言霊を唱えた時、手にしている老山龍砲が紫色に輝く。更にストックの方から銃身の先にかけてゆっくりと、内側からより強い光を放つようになり、それまでとは雰囲気を一変させていた……!
「加えて…… コッレクティオ(改装)、ブレット・アクセル(弾体加速)」
相手の位置情報を捉え続けながら、続けて詠唱を行い、可能な限り砲の強化を図るエイン。二度目の詠唱が掛かると砲口からうっすらとした紫色の光が伸びていき、一定の間隔を置いて弾道に沿った魔法陣を一つ一つ展開していく。やがてそれは、積層された魔法陣によるもう一つの砲身となるのだった。
「ターゲット・インサイト、時間停止…… くっ、やはり重い……」
発射する準備が整ったエインは、次に違反者の片割れを自分の力と火器管制システムの力を総動員してスコープの中央に納める。そして、限界まで集中する事によって自分の体感時間を刹那の世界に落とし、その上で時間を停止させる。久しぶりに感じる反動の重さを感じながらも、時間を止めた一瞬に全力を懸ける。
(後は、トリガーを引いて点火するのみ……!)
「照準固定、ディールプティオ(破壊する力)・シュート!」
エインが狙っている事…… それは、一瞬の間で少しでも砲弾を前に通過させることにより、相手の視点では“砲身の遥か先”から砲弾が撃ち出されているという状況を作り出すことである。相対的に着弾までの距離・時間が短縮されるので、命中率を底上げできると言うものである。
その準備が全て整い、停止している相手に完全に照準を固定したエインは、最後の詠唱と共にトリガーを引く……! 瞬間、砲口の光が眩い輝きを放ち、エインの魔術で強化された老山龍砲の砲弾が、周囲の岩盤を抉るほどの強烈な衝撃波を伴って射出・飛翔する!
「あ? この感じは…… ――あべし!」
猛獣の域すら凌駕する超反応で、何かの気配を察知したのは柄の短いトゲ付き鉄球を持ったスキンヘッドのほうだった。いや、反応そのものはモヒカンもしていたが、もう遅い。……首を一瞬傾けた時には、その首はおろか胴の上半分近くまで消し飛んでいた。断末魔を挙げる間もないはずなのに断末魔が聞こえたのは謎だが。
その一、二秒ほど間を置いてから彼の遥か先の場所で粉塵が巻き上がり、モヒカンが居るところまで炸裂音が鳴り響く! その振動に揺らされたかは不明だが、時を同じくしてスキンヘッドだったものはゆっくり膝を付き、その場に倒れ伏すのだった。
「ターゲット、ヘッドショット」
「一旦コード停止ね、ナイスキルだったよエイン君」
対象の撃破を確認したエインは、砲の右側に付いているボルト――ここではレバーの一種と捉えて差し支えない―ーを引き、役目を終えた薬莢を排出、弾薬の再装填を行う。老山龍砲に限らず大半のヘヴィカノンは、一発目を撃ってからの再発射時にトリガーを引く以外の動作が不要であるセミオート方式だが、彼はスライドストップ機能を使用して一部機構の稼動を抑制、現在の方式であるボルトアクション方式に切り替えていた。これは、発射サイクルの動作を簡略化し、少しでも精度を向上させる措置である。
曰く、兄弟であったものの無残な姿を見て固まった状態になっているモヒカンを見て、ウルは彼に砲口を向けたままエインへの命令を一旦解除する。そして、平時では到底聞けないであろう言葉でエインを労った。
「今の、まさかあの――」
「いつまでも喚くな駄犬、耳が腐る。安心しなさい、粒子は回収できてるから」
後から感情が追いついてきたモヒカンは、怒りの感情と共に自分の兄弟の命を奪った者を探そうとするが、そこでウルが心に杭を刺す勢いで辛辣な言葉を言い放つ。戦場に身を置いている上に狂気の塊を相手にしている彼女は、これ以上ないほど言葉に容赦が無かった。
「向こうに起現者が居ない以上、貴方を起現力も使わせずに終わらせてあの人達を確保するのは簡単だよ。……それでもまだやる?」
今の言葉で怒りの矛先を変えてきたモヒカンに対して、ウルは先程の射撃が味方のものであることを半ば明かし、一対一の実力差が大きい事も利用して、置かれている状況を思い知らせる。実際、それが真実であることが何よりの脅威であることを認めざるを得ない彼は、悪態を付くことしか出来なかった。ウルの考えとしては無駄な争いを避ける意図もあったが、それ以上にこのような下衆に使う弾が勿体無いと言うものだった。
「丁度ジェノス君も来たみたいだね。こちらオルトロス2、状況終了」
現状の現場責任者であるジェノスが来た事がトドメになったと判断し、ウルは回収部隊の要請を行う。そして、捕虜の負傷者が多いことを考慮し、合流地点の変更も要請するのだった。
それから暫く時間が経過し、捕虜の一団の収容、エイン及びモヒカンの回収まで完了し、残るはジェノスとウルの帰還を残すのみとなった頃。最後の回収機を待っていたジェノス達に、ガルドから連絡が入る。
「緊急事態だ。メタペタット付近に異常個体のラージャンが二頭確認された。移送部隊は、もう近いな。到着次第、急行してもらう」
やや急ぎ足の口調で、ガルドから市街地近くにモンスターが出現したという情報がもたらされる。このままでは市街地が巻き込まれる危険性があるとの事で、もっとも近い位置にいるジェノス達に緊急指令が下ったのだ。
「了解、ミッションアップデート。忙しくなりそうだ」
「えー、もう終わりだと思ってたのに~」
それをなにくわぬ顔で引き受けるジェノス。しかし、ウルは無線が切れた後に、ようやく戦場気分を抜け出したのに、とその場でへたり込んでしまうのだった。
第八十八話 終 To be continued…
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
860:
ナルガEX [×]
2013-06-02 11:11:55
NIGHTMAREs
どうも、お久しぶりです!w
特に問題はありません!
861:
NIGHTMARE [×]
2013-06-05 22:26:41
お返事確認しました、とても早い回答で助かりました(^^)
また新しい形での描写でしたが、エインの描写がうまくいっていれば何よりです
それではまた~(^-^)/
862:
NIGHTMARE [×]
2013-11-16 23:16:57
こんばんは、かなりご無沙汰してます~ 今回は少し質問があって来ました
今エインとトールが登場する話を描いているのですが、彼らはフェイの事をどう呼んでいるのでしょうか?
他にも特定の人物によって呼び方の指標などはどのようになっているでしょうか?
ご覧になっていましたら回答よろしくお願いしますm(__)m
863:
ナルガEX [×]
2013-11-17 17:44:49
ご無沙汰で〜す!
そこは、普通に「フェイ」で大丈夫だと思います!
他の人物に対しては......普通に苗字で大丈夫だと思いますw
最近はオフラインで文書の練習をしてます。
またいつか、一緒に何か書きましょう!w
864:
NIGHTMARE [×]
2013-11-17 23:19:09
返信ありがとうございます~ なるほど、呼び捨てなのですねぇ
とすれば名字で被る人は名前で呼ぶという感じで良いとして、もう少し詳しい質問をしても良いですか?
例えば、呼び捨てか敬称(さん、など)をつけるとかそういうものですね。目上、目下、年上、年下といった相手、尊敬できる相手などにどう呼んでいるのか教えていただけるとありがたいです~
こちらで決めたほうがいい状況があれば対応させていただきますね
それでは、練習頑張ってください^^ 共同執筆楽しみにしてますね~
865:
NIGHTMARE [×]
2013-11-17 23:23:26
補足;エインとトールで別々に呼び方があればそれも合わせてお願いしますね~
866:
ナルガEX [×]
2013-11-23 21:38:47
遅れてすみません;;
エインの場合は、基本呼び捨て&タメ語ですかね?
こちらの頭の中のイメージでエインが敬語使ってる場面が思い浮かばないのでw
トールの場合であれば基本的に敬称(さん)&敬語ですね。
まぁ、細かい部分はそちらの方で決めてしまってもあまり問題は無いと思います。
867:
ヘルシオ [×]
2013-11-23 21:42:16
お久しぶりです。
スレが浮上してたので挨拶にきました。
最近エネキラで活動してます
868:
NIGHTMARE [×]
2013-11-23 23:00:10
ナルガさん、ご回答ありがとうございますm(__)m これで大体の指標が固まりました~
これならスムーズに進められそうですので、近いうち(うまくいけば明日)に一話ぶんのサンプルをこちらに提示しますね(^^)
それではまた~
869:
ナルガEX [×]
2013-11-24 10:03:32
>ヘルシオs
あ、お久しぶりです!
870:
NIGHTMARE [×]
2013-12-02 02:34:55
こんばんは、多忙でかなり遅くなってしまいましたorz
例のストーリーが書き終わりましたので、一話こちらに置いていきますね
トールの視点による一人称なので、ナルガさんにとっては新鮮かも? 彼の設定を考慮し、敬称はつけますが敬語は使わずに描きました。少し後(多分二話あと?)になってから使わせようかと思います
それでは、ご確認お願いします
~Peace Planet~
第九十三話 脳裏を埋め尽くす毛力(もうりょく)
やあ。
え、いきなりそんな挨拶されてもわからない? あはは、俺なんて分からない事だらけさ。
自己紹介が遅れたね…… 俺はトール・マクライシスっていうんだ。元々は身寄りも無くて、食いつなぐ為に盗賊まがいのこともしていた身の上なんだけど、そこから何をどうしたのか……
色々と良く分からない事に巻き込まれて、挙句の果てには自分が住んでいた世界と別の世界に飛ばされてくるっていう破天荒な人生を、若くして送っちゃってますよ。詳しいことは思い出すだけで頭がぐちゃぐちゃになりそうだから勘弁してくれるかな。
しかも、元の世界とこの世界で同時にすごさなきゃいけないっていう意味分からない事になったもんだから…… で、住む場所が必要になったのをいろんな人が手を回してくれて、それで苦労せずにこの場所での家を見つけることができて、と言っててなんだか良く分からない感じになってきたけど、まぁそんな感じ。
それで、今ジェノスっていうコワモテなにーさんに連れられて、その家の前まで来たんだけど……
「思ったよりかなりでけぇ家だな……」
「うん、遠くからだと普通かと思ったけど」
思った事を先に言われた…… と思って俺は隣を見る。そこに居るのはエイン・レチェンドっていう、まぁ俺の連れ…… っていうか俺の方がエインの連れって立場なんだけど。夏日に厚着でこの世界に来たもんだから、脱いだ黒のジャンパーを肩にかけて暑そうにしてる。エインって基本的に無愛想だから、俺が上手く話を切り出さないとめんどくさいんだよなぁ。元の世界では世話になってるしありがたいんだけどさ。
それにしても、ほんとでかいなぁ。飾り気も無い三角屋根の家ってぐらいしか説明しようが無い、何の変哲も無い見た目だから分からなかったけど、近くに来るといわゆるえーっと、豪邸? みたいな大きさだから距離感がおかしくなるよ、この家。傍にある庭もものすごく広いし、さっきから空飛んでる龍が降りてきて普通に歩きまわれるくらいあるんじゃない?
「そいつも、ここに白羽の矢が立った理由だな」
「しらは……?」
「要するにここに決まったって意味だ」
俺達が家を見上げていると、前で案内してた赤コートのコワモテさん…… ジェノスが、こっちに少し振り向いてから、なんか難しい言葉で説明してきた。よくわからなかった言葉はエインがフォローしてくれたけど。なんか、今のジェノスってちょっと得意気な感じだった気がする。まるで自分の事みたいだ。
――なんてこと考えてる時だった。
「つっ!」
「うわぁ!?」
突然俺の身体の中を、一瞬で電気が走ったように痺れが走った。エインもそうだったのか、一瞬身構えてから辺りを警戒しながら、ジェノスにも食ってかかろうとしてるけど……
「ん? ああ、心配すんな。大した事じゃねぇから落ち着け」
なにこの全然余裕な顔。この様子だと、何か知ってるみたいなんだけど。なんて事を考えているうちに、ジェノスはさっさと家の玄関前まで歩いていって、呼び鈴を鳴らしていた。エインはあまり納得してないのか、舌打ちしながら渋々ついてってる。
「はーい。あら、ジェノス? 時間通りね」
呼び鈴を鳴らしてから少し待っていると、すぐに玄関が開いて誰か出てきた…… 女の人の声、と思ったらなんだか物凄い美人が出て来たんですけど!? なんていうか、若いんだけどとんでもなくボン、うぁぁ、説明できるかぁ! しかもそんな見た目を薄着なシャツとやたら短いスカートで見せ付けてるし……
「エルさん……」
「ああ、言おうとしてることは解ってるわよジェノス。まぁ、性分だから仕方ないっしょ。リオンも慣れてるんだし大丈夫」
「いや、エルさんが親だからでしょうそいつぁ」
俺の反応を見てから出てきた女の人に、呆れたような話し方で呼びかけていた。女の人も俺を一瞬面白そうなもののように見てから、ノリの軽い笑い声を交えてジェノスに手を振り、平気平気と返してる。いや、全然平気じゃないから勘弁してよ。
「あら、ジェノスにとってのお母さんでもあるつもりよ? いつでも遠慮なく甘えてきて良いんだから」
「いや、もうそんな歳じゃねぇつーか、話を摩り替えられても困るっす。……オイお前ら、挨拶ぐらいしねぇか」
「家族、か」
どうもジェノスもこの人にはたじたじみたいだね。楽しげに自分のペースに巻き込んじゃってるけど、今の話をしてるときは凄く優しそうな雰囲気だった。そういえばこの雰囲気と顔を見てると、頭の中でフェイとダブるなぁ。
フェイかぁ、そもそもあの人に元の世界で最初に会った時からして何から驚いて良いか訳がわからなかったな。青緑っぽい髪と目をした綺麗な人が出てきたと思ったら、バケモノみたいな強さを何度か見せ付けられたし、見透かしたようなわけ分からない事をいってくるし。お蔭で何度か助けられたこともあったけど。
そんなときに、ジェノスは俺達を逃げ道にするようにこっちを見て、小さく声をかけてくる。っていってもこんな人相手にまともに顔見て話せるか…… すると、さっき上を見ながら何か呟いてたエインが反応して、次にガチガチになってる俺の様子を見てからため息を付くと、代わりにと不遜な感じを変えずに女の人へ向く。立場が逆になっちゃったな、しかたないけどさ。
「今日からここで世話になる、エインだ。で、こいつはトール」
「話は聞いてるわ。私はエルグリアス・ヴェリア、ガルドの妻よ。面倒だと思うから、エルって呼んでね」
なるほど、どうりで。さっきこの人が言ってたガルドさんは、俺達の暮らしについて色々と協力してくれた人だ。確かあの人のフルネームがガルデリウス・ヴェリアだから、フェイと苗字が同じなわけで。あの人の奥さんなら顔が似てても少しは納得が行く。
気さくに愛称まで教えてくれると、ここで立ち話もなんだからと俺達みんなに家に上がるようにと、手で招きながら伝えてきた。まぁ俺はあの人を目に入れないようにしながら、エインたちについていくんだけどね。
「広っ!?」
中に入ってすぐにある居間を見て、俺は思わず思った事を思いっきり声に出してしまった。いや、だってホントに広すぎるんだから。“家”って言える建物でこんなに広いとこ、俺知らないんですけど。見るからに食卓っぽいでかいテーブル、奥にはくつろぐ為のソファがこれまたでかいテーブルを囲んでるところがあるし。それでもってなにあの真っ白なクッショ、ン……? にしてはやけにでかいような。
「あ、ジェノスお兄ちゃんっ」
「おかえりなさい」
「ただいまレナ、リオン。今日は客を連れてきてる」
いつも通り何から驚いて良いのか解らない気分でいると、ソファに座ってた二人の女の子がジェノスを出迎えようとしてた。片方はオレンジ色の長い髪で明るい感じ、金髪の方は大人しそうだけど柔らかい笑顔を浮かべて、どっちもいかにも美少女って感じ。どっちもフェイを思い出すような顔だけど、特に長い髪の方はフェイとあのエルさんを混ぜて小さくしたみたいな見た目だなぁ。
「……で、俺も初めて顔合わせるのがいるな」
「そうなの?」
こういう時、どうすれば良いのか分かっているみたいに二人は奥のソファに向かって行く。そんなときになんとなくジェノスを見上げると、ジェノスも見慣れないのがいたのか、少ししかめたような顔っていうのかな。そんなのになってる。
視線の先には、なんだかレナって呼ばれた女の子の髪に光沢が付いたような髪色の美人が後ろ向きで誰かと話して…… ってあれフェイじゃん!? フェイがその人の肩を叩くとこっち向いて…… え、なにあれ? 何ていえば…… とにかく美人だ。
っていうかさ。女子率高いどころじゃなくない? 今のところ男の人誰も居ないんだけど。ええぇぇ!?
「ささ、座って座って~ 別口からまた新しい家族が出来たし、まずは顔合わせと行きましょっ」
俺の頭がぐちゃぐちゃになりそうになるところで、エルさんの声が入ってきた。どうもあのソファでとりあえずは挨拶しようって事みたいだけどさ、俺ちゃんとできるかな。すっごい自信ない。
「改めて名乗らせてもらう。ここで世話になるエイン・レチェンド、聞いていると思うが魔術師だ」
「と、トール・マクライシス…… よろしく」
それでいつの間にかフェイが用意した飲み物とお菓子がテーブルにたっぷりと用意されて、それを囲んで皆ソファに座って自己紹介って流れに。俺は白い巨大クッションの隣に座って、その隣にエイン、ジェノスって続く感じ。他は大体反対側に座って俺達と向かい合ってる感じだ。エインは相変わらず愛想なしの自己紹介で通ってるけど、俺の方はこんな環境じゃ緊張して、まともに話が出来なかった。つ、辛い……
ここの家の人も順番に、あ、フェイはもう知ってるから無かったけど、していく。エルさんはいかにも気さくな感じで、レナって子は元気そうな雰囲気で名乗ってた。ただ、リオンって子は俺と同じように緊張してるのか、途切れ途切れに自己紹介してた。この子だけが俺より年下みたいだ。緊張してるのが俺だけじゃないって思うと、少し安心する。
「フェイさん、もしかしてあの時の――」
「あー、うん。あの時の」
そんな自己紹介の間にフェイの隣に座ってる人がこっち側を、たぶんジェノスの方を見ながらヒソヒソ話してる。 子供っぽいけど綺麗な笑顔で凄く楽しそうだけど、ちょっとだけ声が聞こえたから、たぶんジェノスが初めて見る人なんだと思う。 でもあっちの方は話しでも聞いてたんだな。 でも、受け答えてるフェイはなんか微妙な顔をしてるんだけど。なんだろう、この雰囲気は。
「俺まで名乗る事になるとは思ってなかったが、初顔合わせがいるんだったらしかたねぇ。俺はジェノス、ジェノス・ウェルナードだ。どれくらい顔を合わせるかはわからねぇが、よろしく頼む」
自分まで自己紹介するのは考えても見なかったみたいで、少し頭を掻いてからあの綺麗な人に向かい合うと、気を取り直して自己紹介と挨拶をする。流石にエインよりしっかりしてるなぁ、うん。
「初めましてっ、ここでお世話になっています、グレイス・アダム・ヴェリアです。 お話はかねがね伺っています、これからよろしくお願いしますっ!」
ジェノスの自己紹介が終わった瞬間ってくらいに反応した綺麗な人は、ソファから飛び上がる勢いで立ち上がると、まるで太陽みたいに眩しい笑顔で、でもしっかりした自己紹介で応えてきた。 声高いなぁ、ていうか髪ながっ! 上で留めてるけど膝くらいまであるんじゃない?
「ん……? 俺も少しウルから聞いてる。ま、これからもこいつらと仲良くしてやってくれ」
ジェノスはあんな綺麗な見た目の人相手でも平気な顔で話できるのか、って回りも凄いから当たり前…… ってエインもそうか。いや、エインは根本的に何か違ってる気がする。気を楽にしたのか、顔を緩めてあのレナさんとリオンさんを見渡してからソファにもたれる。見渡されたほうも嬉しそうに顔を見合わせてて、名字が違うけど、あの二人にとってジェノスはしっかりとした兄貴分なんだなぁ。ってあれ? 顔が違うけどこの人も同じ苗字って思ってたら、それを見透かしたみたいにあのエルさんが、この人がフェイと夫婦関係だからって言ってた。あぁ、だから同じなわけね。
「で、ここの男女比率ってどんなもんなんだ。一応聞いとく」
「え、エイン?」
「フェイの前例があるだろ」
向こう側の自己紹介も一通り終わったときに、エインが唐突に質問を投げつける。いきなりの流れだからつい呼んじゃったけど、ここでエインがフェイを見る。あ、そういえばフェイってあの見た目で男だったんだっけ…… だったら何人か居てもおかしく…… おかしいよね。
なんだか俺の中で何かが音を立てて壊れそうな気がするよ、うん。
「はっはーん、あのトールって子が縮こまってるのはそのせいなのね。えっと――」
「エルさんが言うとややこしくなりそうなので、私が。そうですね、この場では私を含めて三人が男性…… いえ、一人は両方ですか。ここに居ない面々まで含めると後一人。女性は三人ですね」
ここであのエルさんが嫌な予感全開のにやけ顔で反応すると、それをすぐにフェイが止めてくれた。うん、また助けられたね、ありがとう。そして、この中ではフェイとリオンさん、そしてガルドさんが男で、他が女の人。グレイスさんが両方って言ってたけど、両方って何? 考えたり口に出そうとしたけど、なんかヤバい気がしたので考えるのをやめた。ともかく、意外にも男女半々なのは安心だ、うん。
「エイン、助か…… ん? あれ、これ――」
一通り見渡してからエインに振り向こうとした直前に、隣にあったでかいクッションが見えたんだけど、なんかおかしい感じがした。それで、それが何かとおもって少し眺めていると、微妙に膨らんだり縮んだりして…… 息してないこれ?
「もう“一人”女の子が居ましたね、そういえば。フェルミ、お客さんだよ~」
「んきゅ、エインにトール、さっきさわった」
そこで、フェイが今思い出したかのように、左の手の平を握った右手でぽんと叩くと、この息してる毛玉に声をかけた。
そしたらでかいクッションが動いた! モサモサしたと思ったら猫みたいな顔が出てきて、凄いユルユルした声で喋った! え、これなんて生き物? というか女って…… 動物じゃないのこれ?
「フェルミは、フェルミっ! ビリビリもフェルミっ!」
とか思ってたらなんか電気ピリピリしながら高い声で叫んだ。 あ、もしかして入り口前でビリビリしたのってこれが?
「あの痺れは、フェルミの自己紹介代わりだ。好きに撫でてやれ、喜ぶから」
「手触りは保証しますよ、まさに見た目どおりです」
「天にも昇るって、あんな感じよねぇ」
「そうそう、まさにそれ」
「ふわふわ……」
ジェノスから始まって、フェイ、エルさん、レナさん、リオンさんが続いて、このフェルミって言う何かをもふもふする事を進めてくる。一斉に勧めてくるもんだから戸惑っちゃって、それでフェルミという名の毛玉の方も見たら……
にぱー。
こ、これはやるしかない、やるしかないんだ……!
……もふ。
――……
――――……
――――――……
「……なにこれしあわせ。そうか、ここが天国なんだ」
「にゃうー、トール、げっとだぜ」
フェルミに触れたその瞬間俺の頭はもふもふで支配された。埋め尽くされた。焼き尽くされた。癒された。もう俺なに言ってるのかわからない。しかもフェルミは擦り寄りながらのどを鳴らしたり、猫みたいに気持ち良さそうな鳴き声だしたり、耳動かしたりしてる。なにこれかわいい。あはは、あはははは。
第九十三話 終 To be continued…
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
871:
ナルガEX [×]
2013-12-02 16:28:53
いやぁ、流石ですね!
私にとってはとても新鮮な物でしたww
トール視線で物語を考えたとがありませんでしたからねぇ......。
参考にさせて頂きます!
あ、特に問題はないですよ!
872:
NIGHTMARE [×]
2014-01-27 02:11:45
こんばんは、NIGHTMAREです。またも間を空いちゃいました
以前こちらに上げた話の後編が上がりましたので、確認をよろしくおねがいします~
~Peace Planet~
第九十四話 嫌な予感しかしない……
「あら、早速フェルミに懐いたのね」
フェルミをもふもふして頭が吹っ飛んでたら、いつの間にか銀髪? いや、微妙に違う…… まぁそんな感じの綺麗な髪を横で縦ロールにしてる、またいかにも美少女な子がもう向かいのソファで座ってた。エインに聞いたら、軽く十分ぐらいはもう経っていると言われて俺は慌てて正気に戻る。でも片手はフェルミから離せなかった。いわれていたように、本当にゲットされてしまったのかもしれない。
「わたくしの名前はアテナ・レオンハルト・ヴェリア、お見知り置いて頂戴」
「……ああ、仕事の時に資料で見せてもらったな」
あまり年は離れて無さそう…… アテナと名乗った子の自己紹介は、他の人の自己紹介と比べても結構丁寧な気がした。初対面のフェイも似たような風だけど、やっぱり人それぞれなのか、この子にしかない感じがある。
なんて事を、フェルミを撫で回しながら思っていると、隣のエインがやっぱりぶっきらぼうに自己紹介を返して、けどその後に何かを思い出したかのように呟いていた。直に会ったのは初めてだけど、別の意味では見覚えがあったんだね。
ついでにいうと、俺も自己紹介を返したときは最初に比べてあまり緊張しなかった。多分フェルミのお蔭でほぐれたって言うかゆるくなったのかもしれない。
「しかし、お前こういうのにそこまで弱いんだな。すげぇ意外なんだが」
「いや仕方ないじゃん、エインも触ったらわか――」
「……やめとく」
自己紹介をまたひとつ済ませると、珍しくエインが少し不思議そうな顔で俺を見てから、さっきまでの俺の事に驚いてたことを言う。こいつはフェルミがどんなにもふもふかわかってないと思って、ちょっと言い返してみたりしたんだけど、スルー。はっはーん、まさかキャラが崩れるのが怖いとか思ってるのか?
「さて、これで一通り紹介は終わりましたね。実は、ちょっと提案があるんですけど、いいですか?」
なにか打ち鳴らしたような音が聞こえたと思ったら、フェイが両手の平を合わせていた。そのときの目は俺の方に向いていて、どうも俺の事について話があるような気がしたので、つい自分に指を差す。
「自己紹介にあったようにエインさんは十七、トールさんは十四歳ですが、エインさんはすでに仕事もなさっているので問題ありません。しかし、向こうでも民間人同然だったトールさんは中等部の学校に編入させたほうが良いのではと思いますが……」
フェイは俺達の年をもう一度確かめると、エインはともかく俺はこの世界で学校に通って普通に暮らせるようにする、みたいなことを言ってる。そうか、普通俺くらいの年だったら、学校なんてとこに通ってるんだよな。でも俺は…… なんて思ったときにはもう、フェイが俺の身の上について話し始めていた。俺が元々貧しい場所で親兄弟も無く、エインに拾われるまでは盗人みたいなことをしなきゃ生きてはいけなかった、そんな感じで生き続けてきたこと。だから俺は、学校とかそういうのは何とか聞いた事があるくらいで、ぶっちゃけ通ったことなんてない。だから、どういうところなのかもほとんど知らないんだ。
「最低限、中等部程度の学校に通うための教養を積む必要があるんです。出来るだけ短期間で終わらせられればいいんですけれど……」
だから、まずはそこから知らないといけないという事を、周りの皆に話していた。ここに来た時、いやその前に元の世界から、何で俺達に対してそこまでしてくれるんだと声に出そうとしたとき、丁度フェイがアイコンタクトをしてきて…… それで向こう側で初対面の時に言われたことを思い出す。
――上手くやっていきたいですから。
こんなことを言われていたら、もうぐうの音も出ない。しかもそれを解っているみたいに優しく笑いかけてくるし。くそ、あのときみたいにプレッシャーのあるときならともかく、今みたいな普通の時間でその顔は反則だっての。
「学力以前に礼節倫理道徳、常識と法律は一通り習わせた方が良さそうね。 貧しい空気が見るに耐えないわ……」
アテナさんはそんなフェイの顔を遮るように覗き込んで一通り俺達を見回すと、大きなため息を付きながらソファに戻っていった。 そしてかわいそうな者を見る目でもっと基本的に教える事が多いみたい、な事を言ってるんだけど…… わざとなのかな? 凄く馬鹿にされてるような言葉が聞こえたんだけど。
「僕はエインさんの方が心配というか、鉄と火薬と油の臭いを振り撒いてるのは……」
「ほっとけ」
そして誰も入る隙が無いくらいの勢いでグレイスがエインの事を話す、んだけど…… 隣に居てもそんな臭いしないんだけどな。 こっちの方も苦笑いって感じで微妙な空気になってた。 そういえばエインはいつも銃持ってるんじゃないかな。
「コイツはもう手遅れレベルだ、諦めたほうがいいかもしれねぇ」
「てめぇ…… いつか覚えてろ」
なんて思ってたら、いつの間にかジェノスはエインから銃をスってて、少しの間指で回しながらからかうように笑ってた。そして、エインが気付いて取り返そうと振り向いたら元の鞘に収まっている。カンペキに手玉に取られてたエインは気分のやり場がわからなくなるけど、やがてジェノスにドスの効いた声で唸っていた。お、重い……
「わたくしはあまり寛容ではないの、せめて家の中では持ち歩かないでほしいものね。 汚いし臭いし危険なのよ?」
「あ、アテナは潔癖症だから、ちょっと厳しいですよ」
アテナさんはエインにも言いたい放題って感じで銃を持たないように、少し不機嫌そうにして武器を指差していた。 グレイスさんはアテナさんがどんな人なのかを簡単に説明したみたいなんだけど、潔癖症ってなんだっけ?
「ちっ、そういう事情か…… 場所が場所でもあるか、努力はする」
エインは解ったみたいだけど、そういうわざわざ突っ掛かるような言い方とか、直らないのかな…… と思ってたら、ちょうど目が合ったジェノスは目を閉じて黙って首を横に振る。無駄に楽しそうな感じだけど。まぁ、時々見るお人好しが出てきた分まだましかもしれない。なんだかんだ言って、困った人はほっとけないらしいからね、元の場所で他の人から聞いたんだけどさ。
「さて、教養というものが必要なトール・マクライシス君、わたくしとフェイでしっかりと人としての基礎を叩き込んで差し上げるわ、といっても、わたくしもこの世界の事をそこまで知らないのだけれど」
「ふふ、お呼ばれされちゃいました。というわけで、改めてよろしくお願いします」
今度は話が俺に戻ってきて、意地悪そうな目で勉強を教えるって言ってるけど、後で冗談みたいに表情が柔らかくなっていた。 この人達も別世界から来たってことなんだ。さっきまでは正直気圧されて、苦笑いするしかなかったんだけど、今の顔を見ると思ったよりはきついことにはならないのかもしれないって思える。さりげなく呼ばれてたフェイもなんか嬉しそうにしてるし。
いや、そもそもきついことだったとしたって…… もしかしたら向こうに居る時よりは気持ちよく生きられるかもしれない。正直、ろくな目に遇ってなかったし…… 向こう側では、ずっと。
「“普通”に生きる、かぁ」
俺はそんな風に、エインに拾われる前の事を思い出しながらそんな事を考えていた…… 時だった。
「軽々しく普通という言葉を使わない方が良くてよ。 あなたの世界の普通はイコールこの世界の普通ではないのよ?」
「うーん、よくわからないや…… ってあれ、この手は?」
「普通以前に、この家で暮らしていけるよう、早急に享受してもらいたい事が山のようにあるのよ、さ、わたくしの部屋ですぐに始めるわよ?」
俺の手にアテナさんが触るような感じで掴んで軽く引っ張り始めた。 それからアテナさんの目を見て、触るくらいにしか握っていない手を絶対に離せなくなった。 この人は俺を良く思っていないのかもしれない、その気に入らない部分を叩き直してやろうと怒っている…… そうだ、ピリピリしてるって感じなんだこれ。
「え、こういうのって普通、一日間を置いたりとかそういうのってないの!?」
「あぁ、アテナに火がついていますから、諦めるしかないと思いますよ」
「そ、そんな、気持ちの整理くらいさせてぇぇ」
うぅ、ジェノスとエインが鉢合わせするのを見るのが少なくなりそうだから、重い空気とはおさらばと思ったのに。いきなりこれじゃ先が心配だよ。これからどうなるのさ、俺は……
とか思ってても、この手はもう俺を離してくれず、そのまま地下の部屋まで引き摺られていくのだった。
トールの奴が引き摺られていった――いや、一応は歩いて行ったんだが抵抗出来無かったってとこか――あたりで一旦解散って話になった。トールがここに居ねぇから、俺一人が予定されていた個室に案内されて、そのせいであいつの荷物まで俺が持っていく羽目になっちまった。何で俺がこんなことを……
だが、部屋に俺を案内した奴が、色々と想定外だったことには気付くべきだったかも知れねぇ……
「――といった感じで、僕から説明できることはこれくらいです。 これから一緒に生活する家族としてよろしくお願いしますっ」
まずおかしいと気付いたのは、俺達の居た世界とこの世界の文明の違い、そして俺の生活の仕方だ。 アテナって奴の方は仕事先の上司からも聞いていたから、多分あいつの方も知っててトールだけ連れていったんじゃないか、と思う。 でもこいつ、グレイスは初対面のはずだ、何で俺とトールの荷物とか気になってるとこ全部に説明が入るんだ? あっちの世界で会ったフェイならともかく、どう考えても出来過ぎだろ。
俺の荷物を整理した頃にはトールの荷物は片付いてるし……
「ところで、エインさんはいつも武器を持っているんですよね? どんな武器を持っているんですかっ?」
振り向いたらグレイスは鼻がくっ付きそうなくらい密着していた。 俺が後ろを取られたってのか! っていうか俺の武器がそんなに気になるのか、満面の笑みって顔でストレートに聞いてきやがった。 この見た目で武器に興味があるのか……?
「近ぇ。……まぁ、そんなに見てぇなら好きにしろ」
とにかく、考えたことが顔に出ないように振舞うことにする。俺は今まで相槌を打つか、最低限の返事をするだけだったが、喋る、といえるほどに物を言ったのは今が初めてかもな。本当ならおいそれと見せるなんざ、その気はさらさら無かったんだが、この妙に強烈な“押し”の感覚を覚えてからは考えが変わった。口に出して居ない時でこれじゃあ、下手な断り方をすると後が面倒になるのは間違いねぇ。
俺は表情一つ変えねぇのを意識してこいつから一旦離れて、とりあえずは常に携帯しているやつを近くのテーブルに適当に置いておく。持ってきている物を考えれば、こいつを一丁、護符を一枚出しときゃ良いだろ。
「わぁ、ありがとうございますっ! これが魔法の武器で、こっちが機械の武器ですね。 対人戦用の武器ってこんなに小さいんですか」
俺の返事を聞いてまた満面の笑み。 で、早速護符の方を先に見る。ま、普通は銃より魔術の方が興味あるはずだ。 特にこいつは表から見てもお花畑だし、中身もファンタジーな想像でもしてんだろうな。 これだから付いていけない、想定内さ、銃の話なんてこの家じゃタブーってやつか。
「そいつは滅多に使わねぇがな。ただ使うだけなら礼装だ、媒体だなんてのは要らん」
見た目と文字通り、マジになったときの切り札みたいなもんだしな。つっても、そこまでやってもまともにぶつかれねぇ奴が居るってのはたまったもんじゃねぇんだが。
適当にグレイスに返しながら、俺はこれからどうするかだとか、この先の仕事だとか、そんなもんに考えが移っていた。生きている時間の大半を戦場で生きてきた俺にとっちゃ、民間区域で長期間暮らすなんて状況には、正直まだ慣れてねぇからな。まぁ、下手に慣れ合わねぇのが最善なのはハナからわかってるし、性分としてそんな気は最初からねぇ。
そんなことを考えていたわけだが、グレイスの独り言が妙に耳に入ってきたんで、俺は椅子に座ったままグレイスを見てみる……
「弾倉はこれで外れて、入れるだけで再装填とはではなさそうですね。 あ、やっぱりここが後ろにスライドして排夾、スプリングの力で戻る時に給弾…… スライドが最初に引っ掛かるような感じになるのは、弾丸が銃身から射出されるまで銃身を固定するための抵抗なんですね。 弾倉が空になったらこのレバーが弾倉のスプリングで押し上げられてスライドを引いたまま固定、弾倉を再装填してこのレバーを引けば初弾が膨張室に装填されて素早く射撃ができるんですね。 後ろのレバーがハンマーになっていて、引き金を引くとハンマーが薬莢の信管を叩き着火、爆発して発射…… 銃身は六条螺旋の施条式ですか」
想定外だった。 こいつ、初めて見るはずのハンドガンを物凄いスピードで理解してやがる……! 銃自体は多少知っていたらしいからマガジンを最初に抜いて安全を確認、スライドを引いてその動きが何を意味しているのか、っていうか俺の銃っていう機械って奴を見て解るスピードで使いこなしていく!
「少し見ただけでそこまでわかったのかよ……」
物を言う手間は省けてんのはいいんだが、流石に注釈一つ入れる間すら殆どねぇレベルまで行かれると、何とも言えねぇ気分だ。見た目格好との滅茶苦茶なギャップまであるしな。銃にまで尋常じゃねぇ興味を抱くに飽きたらず、その構造をいじり倒してあっさり理解するとか、信じられねぇ。
「妙ないじり方して壊すなよ。パッと見でそこまでわかるなら、心配するだけ無駄だと思うが」
「あはっ、すみません、機械のことになるとつい」
まぁ、考えれば別に何か言う必要は無いわけだ。そういう風に頭を切り替えて、適当に釘を刺した後にもう一度物思いに耽ってみる。
「あ、ここに刻みの合いマークが――これが引き金とハンマーの機構で――あ、やっぱり撃針があるんですね――それにしても、部品点数が多くて繊細ですね、だから鉄と油の臭いが出ちゃうんですねっ」
「……マジで大丈夫か不安になってきた」
さっき止めておいた方が良かったかもしれんな…… まさかこの着飾った人形みたいな奴が、こんなスピードで銃をバラすとかまでやっちまうなんて思ってもみなかった。 もう一度振り返った時には…… 俺の銃は完全に分解され尽されてた。 工具使わないとバラせないところまで完全に外されてテーブルに並べられ、何故か艶が出るくらい磨き上げられて…… 新手の手品か?
「お前、戻すこと考えてんだろうな……」
「――組み立ても面白そうですねっ、では、これから組み立ててみますかっ!」
ふと不安の原因になっていたことを実際に口にして見たんだが、夢中になりすぎて何も考えてなかった。 絶対そんな顔で俺を見た…… そして間を置いてまたお花畑な笑顔に戻って、俺を不安にさせる一言を言い放ったんだ……
グレイス・アダム・ヴェリア、こいつがヤバいってことは覚えておこう。
しかし、一つでも話題が合う奴だということは…… いや、また嫌な勘が働いてきた。やめとくか。
第九十四話 終 To be continued…
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