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その他のテーマ
自分のトピックを作る
2725:
活字大好き [×]
2013-03-04 08:35:18
自分はセンスないんですよね
ひねって外した感じのタイトルしか浮かばない質なんです
タイトルは終わってから考えてもいいんじゃないですか?
2726:
青葉 [×]
2013-03-07 00:37:44
そうかも。終わってからね。
2727:
青葉 [×]
2013-03-07 00:41:44
「それで校長先生に能力のことと能力を持った不安を話したわけですか。」
「校長先生は何でも話せるから。もともと校長先生が何でも相談するように言ってくれたんだし。それに、他に相談する人なんていないからね。」
「校長先生は、先生の話を聞いて何て言ってました?」
「何の心配もいらないって。それに能力を使いたければ使っていい、不思議な能力も自分の実力のうちだ、と言ってくれたわ。凄く安心できた。あとは荒唐無稽な話で、変に思われるから他の人には話さないように、ともね。その点については最初から勿論そうするつもりだったけどね。」
原先生はわずかに嬉しそうな表情をしている。
しかし、校長はどんな意図でそんな風に原先生に言ったのだろうか。校長として、生徒の意思をないがしろにする能力を学校で使っていいと考えるだろうか。校長のモラルを疑う。まあ、この学校で現在あり得ない事件が起きていることを思えば、合点のいく校長の考えがあるのかもしれない。 また、校長は原先生には人に話すなと言っておきながら、自分は日和に話している。原先生の信頼を裏切っているようにも思える。が、 原先生は校長が日和に自分の能力を明かしたというのに、日和に対して悪感情を抱き、校長への信頼は変わっていない。僕の感覚では理解できない。
僕は話を変える。
「先生は、何故に僕が強い能力を持ってると思うんですか?僕は車に跳ねられそうになったり、落下物に当たりそうになったりと危険な目に遭った被害者ですよ。」
「あれは自作自演でしょう?一色君は校長先生や山梨日和からもマークされている。それで二人の目をそらす為に自分でやったんだと思うわ。先生の能力がきかないことといい、親友さえ四階から落とす非情さといい、この学校での奇妙なことを起こしているのは一色君以外いない。今までは確信はしていなかったけど、今日の授業中一色君に睨まれた時に、確実に一色君だと判ったわ。」
原先生は事実を並べて判断していると自分では思っているようだが、自分の考えが入ってしまっている。僕はコウを四階から落とす非情さは持っていないし、実際に落としてもいない。
2728:
青葉 [×]
2013-03-07 00:44:37
さて、僕は原先生から得られる情報はもうないだろうと思った。待たせている日和の所に行かなければならない。しかし、 原先生が勘違いから僕の見方をすることで、新里から狙われたりしないか、そこが心配になった。 僕は誤解を解いておかないといけないと思う。このまま味方にしておいた方が都合がいいが、そうもいかない。新里こそ僕に大ケガを本気でさせようとする非情さがある。僕の味方をする人間にも何をするか判ったもんではない。
「先生、この学校ではゼロが事件を起こしています。そしてゼロ同士の、なんと言うか、抗争も勃発しています。でも、起こしているのは僕ではありません。先生が恐れるのべきは僕じゃあないんです。確かに僕はゼロのようです。だけど僕の能力は攻撃力が皆無です。僕は盾は持っていますが、矛を持っていませんから。」
「ちょっと、一色君。ゼロとは何?何のこと?」
「えっ!」
思わず声が出る。ゼロの原先生がゼロとは何かを訊いてきた。
「知らないんですか?」
「ええ。聞いたことがないわね。先生は時勢にうといから。皆が知ってるものなの、ゼロというのは?」
そう原先生はに言われると、ゼロは知れ渡っていないだろうと思う。僕も日和から聞くまでは知らなかったし、聞いたのはつい最近だ。能力を持っているが、自分がゼロと呼ばれる存在だと気づいてないゼロは原先生の他にも少なからずいると思う。それに、ゼロとは本当に正式名称なのだろうか。日和とその仲間だけが、そう呼んでいるだけかもしれない。
「いえ、そんなに知名度が高くはないと思います。知らなくても驚くことではありませんでした。すみません。」
僕は驚いたことに謝罪をした。だが、日和も校長も、原先生には深くは何も言っていないようだ。それは二人が原先生を重要視していないことの現れだろうか。確かに原先生は有効な能力を持っているが、人間性が評価出来ない。何といっても信頼度が低い。僕の味方に簡単になると言っていることでそれが判る。日和や校長が原先生を信頼できず、多くを語らなかったのならば正しい判断をしたことになる。
「何なの、ゼロとは?」
「いえ、知らない方が良いのかもしれません。」
2729:
青葉 [×]
2013-03-07 00:47:10
知らないからこそ巻き込まれないかもしれない。心も安定するのかもしれない。ここで僕がゼロの説明をして、さらにこの学校には強力なゼロがいて事件を起こしていると新里の存在をチラつかせたら、また原先生は動揺するだろう。そして、新里が強力なゼロと気づいてしまったら、新里に接触してしまうかもしれない。黙っていれば新里は原先生の存在にきっと気付かないと思う。でも原先生は自分は敵ではないと言うために、僕を今呼び出しているように新里を呼び出し、わざわざ渦中に入ってしまうかもいれない。それは原先生自身も望まないことだろう。
「自分で言い出しておいて、知らない方が良いはないんじゃない?」
「平穏な日々を送りたいなら知らないで良いと思ったんです。とにかく先生は、もう関わらないことです。僕にも、校長先生にも、山梨日和にも。それが先生にとって一番良いことです。」
「そう?一色君の誤解が解けたならば、そうするわ。それが一番の選択ならば。」
原先生は僕の能力や人格を誤解しているが、もうそれでいい。
「はい。それが良いと思います。」
話はこれで終った。
僕は挨拶もそこそこに立ち去る。急ぎ足で日和が待つ校門に向かった。
2730:
活字大好き [×]
2013-03-07 08:11:39
わくわくします
場面転換ですね
2731:
活字大好き [×]
2013-03-22 09:39:30
あげます
2732:
青葉 [×]
2013-03-25 20:44:30
校門に寄りかかっている日和の姿が見える。僕は駆け寄った。
「済みません日和さん、待ちましたか?」
日和が僕の方を見る。表情は相変わらず冴えない。だが、日和は僕をおちょくる言葉を発する。
「大して待ってないわ。それに一色君がモテないことが再認識できたし。女の子を待たせてんのに、あたしの姿を確認してから走り出したでしょう?」
「でも走り出す前も、いつもより倍早いスピードで歩いてきたんですよ。まあ、自分がモテないことはよく知ってます。」
「ならばモテるように努力することね。諦めたら詰まんない人生になるわよ。インテリの一生独身。一色君には似合ってると思えちゃうけどね。」
「そうならないよう気を付けます。それより、まだスッキリしてないようですね。」
日和は苦笑いをする。
「そうなのよ。なんで自分がこの学校にきたのやら。だから、そんなに待ってはいないけど、一色君を一日千秋の思いで待ったのは確かね。答えを知りたくて。」
「まだ、能力を仕掛けてきたゼロの影響下にいるんですね。」
「そうなるわね。誰かしら、仕掛けてきたのは?一色君かな。」
日和は冗談とも本気ともつかないように言った。実際、僕に疑いがあるのだろう。
「歩きましょうか。駅に向かっていいですか?」
僕はそう提案する。
「別に構わないけど早く帰りたいの?ゆっくり話すならば校内のベンチでもこと足りるんじゃない?」
「いいえ、学校を離れることに意味があるんです。きっと日和さんも、朝の時点では学校を離れるつもりだったんだと思いますよ。だから校門を待ち合わせ場所にしたんです。」
「そう。ここを離れることに意味があるのね。」
「そうです。覚えていませんか?学校内では、自分の思考の方向が変わってしまうと言っていたこと。」
少し考える時間がある。
「うーん、言ったような気もするし、言ってないような気もする。どう方向が変わるの?」
「歩きながら話しましょうか。」
僕が歩き出すと日和は素直に着いてきた。
「どう変わるのよ?」
横に並ぶと日和はそう訊いてきた。
2733:
青葉 [×]
2013-03-25 21:48:49
「僕に対して否定的になるそうです。」
僕の言葉を聞いて日和は言う。
「そう聞くと言ったような気がしないみたい。それで、本当にあたしは一色君に否定的だったの?」
「そうだと思いますよ。日和さんは学校にいる間は僕を一番に疑っていましたから。そして、それは今もでしょう。僕を一番疑っている。」
「 まあね。それで駅まで行けばあたしの思考は自分のものになるの?」
それが問題だ。学校を離れなけばならないのは解っているが、
どこまで行けば日和が能力の影響下から解放されるのかは見当がつかない。
「解りません。朝とは状況が違いますから。」
「どう違うのよ。」
「朝、学校の近くまで一緒に登校しましたよね。その時の日和さんは……覚えてないのかもしれませんが僕に肯定的でした。だから朝の状況のままであれば、何処まで行けば日和さんが能力の影響下から逃れられるのか判るんですが……。」
僕は言葉を止める。今の状態の日和に何処まで話すべきか迷う。
「が……何よ?」
当然ながら日和は僕の話の続きを待っている。
「日和さんに能力を仕掛けているのは僕ではなく新里です。新里には朝と違って雪見がいます。雪見が現れたことで状況が大きく変わり、どこまで行けば日和さんが新里の影響下から逃れられるのか解らなくなってしまったんです。」
僕は日和が今の状態でも、知りたいことを話すことにした。何処まで行けば日和が能力から解放されるのか解らないし、解放されるまで日和の知りたいという気持ちをかわすことは、きっと出来ないと思ったからだ。
「朝と違って新里君には雪見さんがいる?一色君が言ってる意味がよくわからない。」
確かに、こんな中途半端な所から話しても解らないだろう。もっと前から、そして根本的な所から話さないといけない。
「日和さんがこの学校に来たのは雪見が普通では考えられないようなかたちで命を落としたからです。雪見の亡くなり方の異常さから犯人はゼロだと踏んだんでしょう。犯人を探していました。その第一候補は僕ですが。」
日和は歩く速度を早めて僕の前に立ち塞がり僕の足を止めた。
「ふざけてないで真面目に話してよ、一色君。」
2734:
青葉 [×]
2013-03-25 21:53:25
日和は少し怒ってるように見える。
「大真面目ですよ。ふざける意味がありません。」
「だって、雪見さんは学校に来てるじゃない。」
「そうです。恐ろしいことに今日は雪見が登校して来ました。」
「おかしいじゃない!何でみんなが騒がないの?死者が登校して来たのに。何で誰も怖がらないの?」
日和は僕に詰め寄る。
「恐怖でみんながパニックになりましたよ。でも直ぐに収拾しました。雪見が学校に来るのは当たり前だ!という新里の一声で。学校内は新里の思い通りです。新里の一声で、雪見が亡くなった事実は闇の中です。みんな雪見が亡くなったことを忘れ、そして、雪見が亡くなっている間の雪見に関する記憶がない。だから日和さんも苦悩している。」
「全然解らない!」
日和は喧嘩腰で言う。日和も朝から敵の真っ只中で、自分の目的を見失い悩んでいる。そろそろ精神的に限界が近いのかもしれない。僕がこれから長い説明をしようとしてもじっくり聞いてはくれないかもしれない。
「歩きましょう。本来は説明することじゃない話を僕はしています。」
僕は日和をかわして歩き出す。新里の能力の範囲から抜ければ日和に僕の説明など必要ない。
「新里君の影響下から離れるまで歩けということ?」
日和は僕の横に再び追い付く。
「そうです。止まっていては状況が打開できません。」
「でも何処まで歩けばいいか解らないのよね。朝と状況が違うからという理由で。」
「そうです。」
「だから、朝とどう状況が違うのよ?」
「これは日和さんが言ったことですが、雪見もゼロなんです。推測だということですが、雪見の能力はゼロの能力を増幅させるんだそうです。新里の能力の範囲は学校内だという話を日和さんはしていました。でも、ゼロの能力増幅装置である雪見が現れました。そこが朝と状況が違うんです。」
少し沈黙がある。
「雪見さんが新里君の能力を増幅させて、新里君の能力の範囲が広がったと言いたいのね。だから学校から離れる為に歩けと。」
日和の精神状態は悪いが、僕の話は理解したようだ。
「そうです。」
2735:
活字大好き [×]
2013-03-26 10:39:59
いつもながら面白いです!
2736:
青葉 [×]
2013-03-27 02:39:25
アリガトウ(^-^)/
2737:
活字大好き [×]
2013-03-28 11:01:48
いえいえ、こちらこそ面白いお話を読ませていただいてありがとうございます
続きを楽しみにしています
2738:
青葉 [×]
2013-04-12 20:49:24
そう答えると、
「あたしと一色君は、朝どこで別れたんだっけ?」
と日和は訊いてきた。
「もう少し先です。突然に日和さんが走り出したのは。」
朝、日和は僕を置いて、走って学校に向かった。僕はその後公園に寄ってから登校した。
日和は言う。
「一色君の考えは間違っている。そこまで行けば、あたしは確実に新里君の影響下から抜けると思うわ。」
「どうしてそう思うんですか?」
新里の能力を受けてない僕が、新里の能力の影響下にある日和にそんなことを言われるとは意外だった。状況をより把握しているのは僕の方に決まっている。
「だって雪見さんは亡くなったんでしょう?だったら今いる雪見さんは偽物と考えるのが必然じやない。そして偽物に本人と同じ能力なんてないと考えるのが妥当よ。」
それこそ間違っている。偽物でないことは僕が一番よく知っている。
「いいえ、今日の雪見は雪見でした。疑いようがないほどに雪見でした。本物です。」
僕が自信を持って言うと、日和は短く返してくる。
「理由は?」
「直感です。」
僕も短く答える。
すると、日和は諭すような顔つきになる。
「一色君、ゼロを相手にしているのよ。根拠が乏しいにも程があるわ。本物と思わされているだけよ。ゼロを相手にするということは何がおきても不思議じゃないのよ。」
すぐさま僕は反論する。
「ゼロを相手にしている。それは解ってるつもりです。でも日和さんは僕の能力は知ってますよね。雪見に関することは忘れても僕についてのことは覚えているんですから。僕は誰の影響下にもありません。だから自信を持って言っているんです。」
「確かに一色君の能力はゼロの能力が効かないことだと思ったのは間違いないわ。根拠はよく覚えてないけど。でも、それは百パーセントではなかった。だからあたしが間違えていた可能性はずっと考えにあった。一色君がゼロなのは間違いないけど、能力の予想は間違っていたのかもしれない。」
「では僕の能力は何だと言うんですか?」
2739:
青葉 [×]
2013-04-12 20:55:49
「解らないわ。とにかく朝別れた場所まで行こう。雪見さんが亡くなったのが本当ならば、そしてそのことによってあたしが学校に来たのならば今の雪見さんは偽物よ。」
日和は断言する。そうなると僕の自信がなくなり始めた。僕は人と意見が別れた時は自分を信じることにしている。だが日和が相手だと揺らぐ。僕はそれだけ日和を買っているのだと思う。頭の切れを感じるしゼロとのいさかいは僕より経験がある。
「そうですね。行きましょう。」
その後、僕と日和は無言で歩いた。
沈黙の時間は長くは続かない。目的地は近かった。
僕はまだ校舎が見える住宅街で足を止める。日和の足も止まる。
「ここです。どうですか?」
ぼくは日和の反応を伺うが表情を見るだけで判る。何にも変わってないことを。つまり、雪見は本物ということだ。
「これまで通り。能力から逃れたとは感じないわ。どういうことだろうね、一色君。」
日和は僕の名を呼びながら僕を見ずに考える表情をする。僕は構わず返答する。
「朝とは違うということです。雪見は本物で、新里の能力を増幅しているんです。」
「そうかな?違う気がする。」
「どう違うと思うのですか。」
「雪見さんが亡くなった事実はなかったんじゃない。」
新里の影響下から脱してない日和は僕に否定的だ。まあ、そうでなくとも死者が甦った話なんか否定的に普通なるだろう。だが、ゼロとの接触が今まである日和にしても 命の復活はあり得ないことなんだと解る。そこまで出来るゼロは今までいなかったということだろう。
「僕は嘘をついているわけですか。」
「そうかもしれないし、ゼロの能力でそう思わされているのかもしれない。」
「日和さんは僕を疑っているんじゃないのですか?」
「疑っているのは否定しないけど、可能性は色々とあるでしょう。一色君は敵で、あたし騙し惑わせているのかもしれないし、罠にかけているのかもしれない。もしくは、一色君も誰か解らないけど、ゼロに同じように惑わされ、罠に嵌めらているのかもしれない。」
「その誰かは新里ですよ。でも僕は新里の影響を受けてませんけどね。」
2740:
青葉 [×]
2013-04-12 21:30:04
「そう思ってるだけで、一色君はゼロに一人架空の思考世界をさ迷わされているのかもよ。雪見さんが亡くなったなんて言ってるのは、一色君だけでしょう。他の誰もそんなことは知らないのに、一色君だけがそう考えているんだから。」
「日和さんがどう思おうと雪見は本物です。そして一度は亡くなった。」
「一色君が何と言おうと雪見さんが亡くなったとは信じないわ。一色君があたしに嘘をついているか、または一色君もあたしと同様にゼロの能力の影響下にいて雪見さんが亡くなったと信じ込まされている、そのどっちかだと思う。」
こういった話の流れは想定内だ。と言うより、日和が新里の影響下から脱することができないのだから当然だ。このまま日和と話をしていても前進はない。本来ならばこの状況を打開するために努力をしなければならないが、今はそれを後回しにしたい気分になっている。
「朝、日和さんに依頼されたことの結果を伝えます。新里は同学年の野球員達から敬語を使われていました。そして野球部員達は不機嫌な新里の機嫌をとるような言動をしていました。大事にされていると言えるし媚びられているとも言えるような感じでした。日和さんが他校で見たという、新里への怒りや呆れというものは感じませんでしたよ。」
僕は日和とここで別れることにした。だが、一応は頼まれたことを遂行しないと気が済まないので、日和が戸惑うのを解っていながら報告をした。
「一色君、急に何を言ってるの?」
日和は予想通りのことを訊いてくる。
「きっと日和さんが新里の影響下から抜ければ解りますよ。それじゃあ、ここで失礼します。」
僕は話を切って駅に行くことにした。何と言っても今日は僕にとって一番の大事は雪見だ。雪見に会わなければならない。日和のことは二の次だ。
「待ってよ。こんな中途半端な状況で帰るつもり?」
しかし、日和はそんなことを言う。
「日和さんにとっては中途半端でしょうけど、僕には了解できる当たり前の状況です。」
「酷いね、一色君は。あたしが朝からずっと悩んでるのを知ってて見捨てるんだ。」
2741:
青葉 [×]
2013-04-15 19:51:43
「見捨てるも何も話は噛み合わないじゃないですか。とにかく日和さんはここで僕と話をするよりも学校から離れることです。そうすれば記憶と自分の思考を取り戻せますよ。何処まで行けばいいのかは知りませんけど。僕は僕で行かなければならない所があります。」
僕の心は完全に雪見に行っている。僕は駅に向かって歩き出しだ。
「だから待ってよ、一色君!あなたの学校に遊びで来たんじゃないのよ、あたしは。それは目的を見失っても解る。何せ、あたしは潜入しているんだから。だからこのままではいられないのよ。みすみす一色君という手掛かりから離れる気はないわ。」
僕は足を止めて振り向く。
「じゃあ、どうするんですか?」
「決まってるわ。一色君に着いていく。」
僕は着いてきて欲しくないと思う。
「日和さんは僕のプライベートにまで入り込むつもりですか?」
僕はわざと迷惑そうに言う。実際迷惑だ。
「入り込むことになっても、そうする。言ったでしょう。遊びじゃないのよ。あたしは本気なのよ。」
「自分の都合で人のプライベートを邪魔するんですか?それに僕は強力かつ凶暴なゼロかもしれませんよ。日和さんは無事でいられないかもしれません。」
「一色君がそんなゼロならばますます着いていかなくちゃ。どんな能力か見極める良い機会じゃない。」
僕のちゃちな脅しは原先生と違って日和には全く効果がない。だいたい僕自身が仮定の話をしている。
「僕の能力はゼロの能力が効かないことですよ。考えれば解るじゃないですか。僕は日和さんとこうして真剣に話をしているんですから。日和さんの能力を考えればそれで僕の能力は解るはずですよね。」
自分で脅しておきながら言い訳をすることになっている。
僕はこれから雪見の家に行こうとしている。雪見が帰っていればそれでいい。雪見と話ができる。帰っていなければ家の中で待たせてもらい、帰って来た雪見と話せばいい。そうしようとしているのに日和が着いてくるのは避けたい。雪見と二人で話をしたい。
2742:
青葉 [×]
2013-04-15 19:58:16
「ゼロを相手にしているのに自分の目的を見失うことがどれほどのものか一色君なら想像がつくんじゃない?この状況であなたの能力を断定することこそ無事でいられない状況に陥ると思うわ。」
「とにかく僕は日和さんと行動を共にするつもりはありません。」
少しイラついているのが自分で解る。早く雪見のことだけに集中したいと思う。
そんな僕の気持ちを察したのか、日和は態度を突然に変えた。
「分かった。あたしは一色君の助言通り行動してみる。つまり学校から離れることにするわ。ごめんね、一色君のプライベートに入り込もうとしちゃって。焦りのせいかな。赦してね。」
あまりにも急な日和の方向転換に僕は言葉が出ない。
「………。」
そして足も動かない。
日和は笑みを浮かべている。その笑みは魅力があるが、何だか鼻につく。
「さあ、一色君。あなたには行かなければならない所があるんでしょう。あたし達は違う目的を持った。行っていいよ。」
日和が何故に考えを曲げたのか解らないが、僕を解放してくれるのだから今はそれでいいと思う。
「済みません。失礼します。」
僕はそう言って再度駅に向かって歩き出した。
「謝ることなんてないわ。」
日和の声が後ろから聞こえた。その言葉を聞き終えた頃には、僕はもう雪見のことに頭が完全に移行していた。
閑静な住宅街を僕は一人歩く。そして考える。
雪見と上手く接触出来たとして、雪見は僕にどんな態度をとってくるだろうか。朝、雪見の教室で会った時は僕が雪見の教室に入ってきて、さらに新里がいるにも関わらず近づいていったことに驚きを感じていた様に見えた。つまり雪見は自分が一度は命を失いながら甦ったことに気づいてはいないのかもしれない。気づいていれば、僕が近づいたことに驚きはないはずだ。僕が雪見のことを大事に思っていることは雪見も重々承知しているはず。
2743:
青葉 [×]
2013-04-15 20:15:20
だから自分が逝った後の僕の心境と復活した時の喜びは理解出来るだろう。ならば、いくら新里が近くにいたからといって僕が自分に近づいたことに驚くはずはない。新里の存在なんか関係なく僕が近寄ることを理解しただろう。雪見が自身に起きたことの記憶がないならば、子供の頃はともかく近頃は寄り付かなかった自分の家に何故僕が訪問したか解らず教室での態度と同じく、やはり驚くだけかもしれない。そんな状況であれば僕の訊きたいことに答えてくれることはないだろう。いったい何が起きているのか、新里の能力は何なのか、そして雪見はゼロなのか、きっと解らないままになるだろう。そんな気がする。願わくば雪見に記憶があり、全てを話して欲しいと思う。考えてみると僕が雪見の家に行く意味はどれ程あるのだろう。
いや……
いいはずじゃないか、それでも。
僕は思う。僕は雪見に会いたい。それが雪見の家に行く一番の理由だ。僕が新里と事を構える上での情報収集など付随する理由に過ぎない。生きている雪見と話すことができる。それだけで充分だ。
何を話そうか。
何だかとても楽しくなってきた。足取りが軽くスピードが速まる。商店街を越えてすぐに駅に着くことができた。
改札を通り駅のホームに行く。タイミングよく電車を待つ時間もほとんどない。すぐに電車はやってきた。朝のラッシュ時と違い車内の混雑もない。良い流れが来ているような気がして僕は明るい気持ちでシートに座った。
その瞬間僕のすぐ後に乗車した誰かが僕の隣に座った。車内の混んでいない。というより空いていると言える。立っている乗客はなく、席も誰かの隣に座らなくてもいくらでも空いている。誰かの隣に座るしかないならば僕も何も思わないだろう。しかし、そうでないためにパーソナルエリアに意図的に侵入された思いで僅かに不快感を感じる。僕は正面を向いているから相手の顔は見えないが服装は分かる。女性で僕の学校の制服を着ている。
パーソナルエリアはお互いにあるものだ。僕のパーソナルエリアに侵入するということは、自分のパーソナルエリアに自ら他人を侵入させたということになる。つまり、僕が近くにいても不快感を感じない僕をよく知っている人物が横にいる可能性が高い。
僕の胸が高鳴る。
雪見?
2744:
活字大好き [×]
2013-04-17 08:36:40
うぉう!
ドキドキです
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