>透子 物は近くにはあるんだよな。金じゃ買えないもんだし、実力で手に入るもんでもねぇ…難儀にも程がある(手に入れたい張本人から応援されてしまうと遠回しに断られてるような気がして複雑な気持ちで相手をジーっと見て気付いて欲しいが伝わらないでも欲しい矛盾した心情を内に秘め。ヘタレた予防線を張った告白にショックではあるが思った通りホッとした様子に心が傷付くも承知の上で乾いた笑みで応え「はは…。お前の事言ってる場合じゃねぇな。俺も嫁どころか彼女作れる気もしねぇよ」軽々しくない一歩勇気で踏み出した台詞なんだが反論出来る筈もなく、自分が数字付きの英雄である事は知っているも女性に好意を持たれている事は一切知らずに恋は盲目一直線に相手の事しか見えていない故の視野の狭さであり。嘆く形で述べる上記は遠回しに相手以外には考えられないと伝えているのだが、伝わる筈も皆無で。本来の目的は相手と共に暫く行動をしたい故の回った口だったのだが正論に言い負かされてしまえば他の行動は面倒臭いの一言に尽きる。美しい瞳に見つめられ懇願され心が揺れそうになるも腕組みしてきっぱりと断りを述べるべく言葉を続け「よく考えたら俺らしくないし、六道と透子に任せとけば大丈夫だろう。よって断る!無駄な練習するよりも俺は俺で好き勝手に動いた方が効率的だ。A little learning is a dangerous thing、だろ?」生兵法は大怪我の元と態々英語にして言った理由は英語だけは堪能だから何とか相手に印象付けて英語圏に行く際には一緒に連れてって貰おうと出来る仕事の幅を広げようと画策し。長い事手を繋ぐこの何上ない幸せな状況ににやけそうになるのを唇を噛み締めながら表に出さないよう心掛け〝これは…絶好の告白の雰囲気では?いや、舞い上がってると失敗した時今の関係も壊れる〟とドキドキと恐怖に揺れ動くが、手を繋いだまま相手の肩にもう片方の腕を置き何か言葉を出そうとした瞬間に霊力を増した陰魄。更に霊力に釣られたのか少女の能力か周囲から陰魄が集まり出してるのを感じ、見事に一世一代の告白の準備の準備の準備が邪魔されてしまい。陰魄に反応して周りの奴らを一掃しに行こうとするが現在の甘い状況を流してしまえば一生後悔が残ると葛藤し、一瞬手を離してしまうが「さーて、と。どうすっかねー」名残惜しさに瞬く間に再び手を握ると恋人繋ぎになり惚けながらも〝手繋ぎの幸せ〟の離別という史上最強の強敵になすすべもなく表情には出さないが、手を離そうかやっぱり離せない理性の戦いで握々と指を絡める形になり)
まるで謎かけみたいですねぇ。……貴方なら、欲しいと思ったものは何だって手に入れてしまいそうなのに。珍しいこともあるものです。 (近くにあるのに手に入らず、お金では買えない、かの貴人のような何か。思い当るようなものもなく降参を示すように微苦笑を浮かべつつ首を横に振れば、唯我独尊の相手が難儀している現状にもの珍しさを覚えてぽつりと呟き。嘆くよりも先に軽率な発言を反省してもらいたいところだが、あまりしつこく言うのも不自然かと思えば意識を切り替え「別に、恋人なんて作らなくたって良いじゃないですか。結婚なんてしようものなら、貴方の借金の被害者が増えるだけですよ」ともっともらしい事を述べるが本心はただ単に相手に彼女ができてしまう事が嫌なだけで。しかし他人が口出しできる事でもないと思えば、いつか友人として結婚式に呼ばれてしまうような日が来るのかもしれないと嫌な想像をしてしまって小さく溜息を吐き。やたらと良い発音で述べられた言葉にくすりと微笑めば「One who is not willing to learn is not worth teaching……確かに、仰る通りですね。まぁ、いざやるとなったら生兵法なんかでは済ませませんけれど」完全にやる気を失っている様子に、進んで学ぶ気のない者には教える甲斐がないと英語で返答すれば肩を竦め、しかし実際に自分が教えるのならば付け焼刃など許さないと言わんばかりににこりと微笑み。相手の手が肩に乗せられ、何か言いたげな口元の様子に首を傾げていると着々と周囲に集まって来る陰魂たち。流石に意識をそちらに向けない訳にもいかず、視線を相手から少女へと移せば同時に繋いでいた手も離れてしまい。しかし予想はしていたものの何となく寂しくなって軽く拳を握ったところでまた手が取られ、指を絡めるように繋がれれば驚いたように隣の相手を振り仰いで「ちょっと、涼…あの……」とやや頬を赤くして狼狽えた様子で意味も無く名前を呼び。そのまま言葉に窮して黙り込んで俯いてしまえば、数秒後にキリッと顔を上げて若干自棄になりながらも「――琥珀!」と使い魔の名を呼び。直後、長く伸びた影からその名の通り透明感のある焦茶をした全長2メートルほどの蜘蛛が姿を現し)